天草を食べ尽くそう 1日目 :寿司たいと@天草市本渡
4月下旬の熊本大震災から3ヶ月ほど経ち、交通機関や宿泊施設の復旧は相当進んでいるのだけど、観光客の戻りは悪く、いずこの宿泊施設、そして飲食店が客の減少に困っている状況が続いている。
これに何らかの応援をしたいと思った熊本在住の者が音頭を取り、県外の美味いもの好きな人たちに連絡をとって、そういうことでもない限り滅多に来ない天草で食べ歩きツアーをしようという企画が持ち上がった。
天草は私は以前住んでいたことがあり、店の新規開拓という面では興はそそられなかったが、それでも天草を訪れること初めての人ばかりのツアーゆえ、天草観光のガイドの役にでも立つではあろうと思い、それに参加することにした。
そして企画がまとまって、具体的にどの店に行くかとのプランが送られてきたのだが、
・1日目夜 寿司たいと→二次会 鮮魚系居酒屋あるいはバー
・2日目昼 奴寿司 夜 串焼よみや→二次会 蛇の目寿司
・3日目昼 田中畜産 A5牛食べ放題
というハードなプラン。
一日目はともかくとして、メインの二日目は天草を代表する寿司店2店のハシゴに串焼店がはさまるというカオスなプランであり、三日目は昼から焼肉食い放題。
これは若いものならともかくとして、中年主体の一行にはきついのでは、とは思ったが、今回の参加メンバーを眺めると、いずれも鉄の胃袋を持つ人達ばかりで、・・・とにかく皆さまの健啖ぶりに感心しつつ、こちらはもっぱらお酒を楽しむことで乗り切ろうと思い、天草にGo。
熊本にとって天草は観光宝庫のような場所であるが、交通の便が悪すぎるため、集客に限界がある。
交通難の理由は簡単で、天草の島々にかかっている橋が一本ずつしかないからで、どうやってもここで交通渋滞が起きるからである。
それを解消するために、まずは天草一号橋の横に、新たなバイパスを設けるべく、新天門橋が建設中だ。これが完成すると、天草の交通の便はぐっとよくなると思う。
天草の五つの橋を越え、そして本渡への瀬戸大橋を越えて、ホテルにチェックインしたのち、本日の夕食店「寿司たいと」へ。
この店は、天草本渡の寿司店に勤めていた職人が、自分流の寿司を握ろうと10年ほど前に独立して開業した店である。
店主は江戸前指向なのであり、鮨の形はほどよい大きさで、地紙型のシャープな形。
鮨種は地元の素材にこだわり、鯛、クエ、アワビ、イカ、海老、鰆、雲丹等々、いずれも天草のものである。
天草は海産物の宝庫であり、良い素材がとれることで有名である。とくにコハダやハモなど。しかしそれらは熊本ではあまり人気がないため、もっぱら福岡や築地に卸され、地元でそれらのネタを食うことができないという、和食好きなものにとっては理不尽な状況になっていたが、それでも少数の店がなんとかそれらの素材をキープし、そして良質な鮨にして供してくれている。
「寿司たいと」はその代表的な店である。
鮨全体としては、江戸前直球というわけでもなく、〆方はやや浅目であり、またシャリも酢や塩は柔らかな塩梅。あえて言えば、優しい江戸前流といった感じで、そしてこれは天草の人たちが好む味付けにあっており、天草流ともいえるであろう。
そして写真でわかるように鰹のユニークな形、鮑の包丁の入れ方、海老の茹で方と切り方、穴子のシャリのゆるやかさとかが示すように、仕事はじつに丁寧であり、たいへん好感のもてる鮨である。
季節の変わり目ごとに天草を訪れ、この鮨を食いたくなる、そういう魅力あふれる鮨であった。
鮨を食ったのち、二次会はバー「ランティエ」へ。
この店には、「寿司たいと」から徒歩で行ったのであるが、途中ラーメン店「鳥骨鶏 龍」があり、福岡から来た者が、「天草にもこの店があるのか。福岡とどう違うか調べてみる」と言い、2名がそこに行ってしまった。
我々はそのままランティエに行ったのであるが、・・・失礼ながら、天草本渡にこういうエレガントな店があるとは、ぜんぜん思っていなかった。いい店であった。
そして30分ほどして、先ほどのラーメン組が合流し、さんざん騒いでそれからホテルへ戻る。
他の者はタクシー使用とのことだったが、ホテルまでは2kmほどの道だったので、私は歩いて帰ることにした。するとそれにつきあう者が一名いて、一緒に歩いて帰ることにした。彼女は食文化に造詣が深い人であり、食について語り合いながらの文化的散歩、ということはまったくなく、互いにスマホをチェックしながらのポケモンGo。
あの快活な音楽を聞きながらのポケモン探しであったが、・・・天草本渡って、ろくなポケモンいないねえ~とお互い嘆きながらの帰り道であった。