エスニック料理

September 18, 2018

インド料理:Amaya@ロンドン

 日本における代表的インド料理「カレーライス」はじつはインドから直接もたらされたものではなく、かつてこの国を植民地としていたイギリスがインド料理を輸入したさい、それを洋風にアレンジして作られたものであって、オリジナルとはずいぶんと異なっていた、というのは有名な話である。
 そしてイギリスは、インド料理をけっこう好んでいたようで、インド料理店がいまもかなりの数がある。

 現代の日本では、本場で料理をつくっているプロの料理人がいたるところにインド料理店を開いており、そういう店でオリジナルに近いものが容易に食べられる時代となっている。
 ただし、この手の料理がイギリスで受けがいいとは私にはあまり思えず、イギリスのインド料理は、「カレーライス」と同様にオリジナルとは異なった進化をたどっているであろうと予測し、ロンドンの有名なインド料理店「Amaya」を訪れてみた。

【キッチン】
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 広いレストランには、広いオープンキッチンがあり、強い炭火で焼かれた料理が次々をつくられる活気ある店である。
そして客は地元の人がほとんどであり、インド料理はすっかりイギリスに溶け込んでいる印象だ。

【料理】
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 料理は種類が多いけれど、たいていは地元産の肉、魚のたぐいをスパイスを利かして煮たり焼いたりしたもの。それから当然、カレー。
 これらの料理は私が予想していたとおり、オリジナルのインド料理とはけっこう異なっていて、スパイスの利かせかたが柔らかかつ繊細で、うまく元の食材を味を引き出す、上品なものであった。
 オリジナルを輸入したときから、ずっと工夫をこらし続け、イギリス流の繊細なインド料理が完成したのであろう。
 元々のガツンと来るインド料理も好きであるが、こういうエレガントなインド料理もたいへん美味しいものであった。

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May 05, 2018

タイ料理:Nahm@バンコク

 タイといえば当然タイ料理。
 当地で評判の高い、タイ料理店「Nahm」でdinner。

 基本的にはアラカルト方式だけど、コース料理ふうにもできるということで、前菜、スープ、メインといった感じでオーダー。
 猛暑のなかの観光で疲れていたので、シンハビールをまずは頼んでから料理を待つ。
 しかし、いつまでたっても料理が出てこない。
 まあ、バンコクでは列車の運行もいいかげんだったし、昨日行ったレストランも、「6時集合厳守」とかメールで連絡してきたわりには、6時からは目の前で調理をするばかりで、最初の料理が来たのは6時半であり、タイの時間概念のアバウトさは理解していたけど、このレストラン、1時間たってようやく注文した料理が出てきたのには、やはりため息がでてしまった。

【コース料理】
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 そして1時間待ったのち、ようやく料理が出たら、コース料理の全て、前菜、サラダ、スープ、メイン(タイカレー)が一挙に出てくるという豪快さ。

 それぞれの料理は、どれも精度ある完成感あるもので、この店の料理人のレベルの高さを示していたと思う。じっさい美味しかった。

 それにしても、いつまでたっても出ない料理、私は途中でイライラしてしまったのだが、周囲の人たちは、のんびりと談笑しながら待っていた。
 これがタイ流なんでしょうね。
 「郷に入りては郷に従え」という格言。ひさしぶりに思い知った。

 海外旅行は異文化を知ることにも醍醐味はあるのだから、それを改めて知られたわけだ。

 ……そして予定よりも長引いたdinnerののち、空港にドタバタしながら向かったけど、無事に飛行機に間に合ったので、いちおう良き思い出、ということにしておこう。

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May 04, 2018

創作系インド料理: Gaggan@バンコク 

 バンコクで一番有名なレストランは、タイ料理店ではなく、インド料理店の「Gaggan」である。
 タイでわざわざインド料理を食わなくとも、とちらりとは思ったが、「バンコクを訪れたならここは是非訪れるべき」という店であるので、やはりバンコクを訪れてみたからには行ってみることにした。

【Gaggan】
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 Gagganはルンビイニー公園から住宅街に入ったところにある。
 周囲は雑多な雰囲気であるが、この店は高級感あるたたずまいである。

【キッチン】
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 予約したのちの、店からの確認のメールには「6時きっかりに来てください。15分以上遅れたら、キャンセルにします」とか書いていたので、時間丁度に訪れたのであるが、コの字型になったカウンターには、6時には全ゲストがそろった。
 タイ人というのは、時間に関してそうとうにアバウトなのに、これはたいしたものだと思ったものの、……じつはゲストは皆外国人なのであった。

 カウンターはオープンキッチンであり、料理の行程が見られる、よいロケーションだ。。
 そして奥にはなぜか「神田明神」の御札が。

 この店は、コース一種類のみであり、25品の料理がずらずらと出て来る方式。
 そのメニューについては、料理の「絵文字」を記したメニュー表があらかじめ置かれている。
 そしてその料理が供されるときに、料理人チーフから料理の説明が、あるのであるが、それがユーモアあふれるものが多く、店内なごやかな雰囲気で、食が進んだ。

【Youguri Explosion】
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 これはガガンのスペシャリテ。風船状のゼラチンン膜を噛んでやぶると、スパイスのきいたヨーグルトが飛び出て来て、口のなかで「爆発」を感じる。

【Lick it up】
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 店内にキッスの名曲「lick it up」が大音量でかかると、この皿が出てきます。
 料理の名前「舐めろ!」の通り、ゲストはこの皿をそのまま舐めて味わう。羊の脳味噌を使った濃厚な味わいの料理。

【Caviar Horseradishegg】
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 卵クッキーの上に大粒のキャビアを載せて、それに山葵を添えたもの。
 キャビアだけでも相当に立派なものだったので、上下別々に食べたい気分であったが、料理チーフがカウンターを回りながら、ゲストにそれぞれsimultaneously!(一口で!)と何度も釘をさして言うものだから、いっぺんに食べました。

【Tom Yum Kung】
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 北海道産の甘エビに薄皮を巻いて、そこにトムヤンクンソースを入れたもの。
 海老が主役のトムヤムクンの変化球技。

【Eggplant cookie】
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 炙った茄子をフリーズドライでカラカラにして粉状にして、クッキーに仕立てたもの。なかは玉葱ペースト。
 とんでもなく手間暇かかった料理である。

【茄子:前後】
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 料理の説明として提示された茄子。
 フリーズドライにする前と後のもの。ここまで水分が抜けます。

【Chiiy bonbon】
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 デザートっぽいが、そうではなく、名前の通りチリソースが入っていて、ぴりりと辛い。

【Keema Pao】
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 点心風料理。山羊を使った肉まん。中華料理と違って、やはりスパイシー。

【Turnip Uni taco】
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 「雲丹のタコス」ということだが、トルティーヤは使わず、そのかわりに薄切り蕪を。
 この下の雲丹の殻には、南瓜と魚と海葡萄。
 雲丹は北海道産のバフンウニだそうだ。

【Chutoro Sushi】
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 「中トロ寿司」とのことだが、寿司とは似て非なるもの。和風スパイスを利かした中トロのマリネに、その下はメレンゲ。味わい、食感、全てはこの店独自のもの。
 私が日本人なので、「本場の中トロ鮨と比べてどうですか」聞かれたけど、「中トロは江戸前鮨にして最も完成度が高くなる素材です。普通の料理人はそこで留まるのですが、それをここまで踏み越える、そのチャレンジ精神に感心しました」と、大人の回答をしておいた。

【Foie Gras Yuzu chewa】
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 フォアグラと柚子のタルト。クリームたっぷり。
 これは手に載せて食べるのだけど、その前に香りつけに、柑橘系のリキッドを手にスプレーされ、より重層的な香りを楽しめる。

【Anago Mole】
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 穴子のチョコーレートモーレ巻き。これを燻して、燻製風。
 メキシコ料理を応用した一品とのことであるが、元のメキシコ料理に知識がないので、よく分からなかった。

【Kintoki carrot Rasam】
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 抹茶椀を使った、金時人参のスープ。とても豊潤な味である。京都からの直輸入であるから、とても高価だとのこと。
 素材が抜群によいのか、あるいは調理法が素晴らしいのが、とにかく絶品であった。

【Pok Vindaloo Blackgarlic momo】
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 一見黒い餃子に見えるが、これはmomoというチベット料理。て、やっぱり餃子なんだけど。

【Prawn Balcho】
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 タンドリーブラウン。このあたりはストレートなインド料理という感じ。

【Edamame Shitake Charcoal】
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 この店のスペシャリテの、枝豆と椎茸のコロッケ。炭まぶし。見た目なんとも印象的な料理である。

【King Crab Curry Rice Patur】
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 キッチンが暗くなり、そしてフャイヤー。
 バナナの皮で炙られた、タラバ蟹のカレーです。これ非常に美味しく、量が少なすぎるのが残念。

【ワイン+日本酒】
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 Gagganには立派なワインリストがあるが、多彩な料理にあわせたペアリングがあるので、それを注文。
 ワイン8種に日本酒1種のラインである。料理2~3品ごとに、グラス一杯をあわせる形であり、日本酒は雲丹と中トロのとき。

 「インド料理」ということであったが、料理は、ベースはスパイスを利かせ、凝った調理法を行った創作的なものばかり。スパイスは和から洋まで様々であり、どれもこれも幅広い範囲に広がっている。
 敢えていうなら後半のいくつかのものはインド料理の傾向が強かったけど、他は和から洋まで扱い、食べていてさながら世界を旅している気分であった。

 どの料理も個性的で、鮮烈で、新鮮である。
 そしてその料理を供される空間が、激しい音楽が鳴り、料理人のパフォーマンスも強烈で、そしてMCも達者であり、まさに食の総合芸術。超一流のGaggan劇場であった。

 こんなにexicitingでentertainingでpleasantな店、私ははじめて経験した。
 いやあ、ほんと面白かった。この店を訪れるためだけでも、バンコクに行く価値がある。まさにアジアの珠玉の名店。


 そして、このメニューから、シェフのガガン氏は、日本料理にずいぶんとインスパイアされていると分かるのだけど、じつはガガン氏は2020年にバンコクの店を閉じて、それから福岡市でフレンチの「Goh」の福山剛氏とともに新たな店を出すそうである。
 となるとバンコクに行かずとも、この素晴らしい料理の体験が福岡市で出来るようになるわけで、「食の都」福岡にさらに食の魅力が増すことになりそうだ。

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May 03, 2018

タイスキ COCA @バンコク

 GW後半の4連休を利用して、近場のバンコクへと旅行。
 福岡発の直行便は、時間的に使い勝手が悪く、初日はホテルに着いたのが夕方。
 5時間強のフライトはそれなりに疲れるし、そのあたりでさっさと夕食を取って、ビール飲んでホテルで休むことにしよう。

 タイ料理といえば、種類はたいへん多かれど、いちおうは「タイスキ」がガイドブックの最初にあがる名物料理となっている。せっかくタイに来たからには、それを経験してみたい。
 それでタイスキの店を検索してみると、ホテル周囲に何軒があるので、まずは最も有名な老舗店らしい「COCA」へと行くことにした。

【屋台】
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 店までの道は、屋台が多く並び、どれもなかなか食指をそそる料理をつくっている。
 タイとは「信仰」と同時に、「食」の地でもあるのだ。

 そして「COCA」の前へと着いた。
 入ってから、「予約はしてませんけど、空いてる席はあるでしょうか?」と英語で聞くと、「チョット、マッテクダサーイ」と日本語で返ってきた。地元の人も多いけど、日本人もよく使う店のようだ。
 というか、だいたいどこの店の人もそうだったけど、どうして客商売の人たちって、東アジア人の人種を容易に見分けられるのだろう? 私にはチャイニーズもコリアンもジャパニーズも、言葉を発していないかぎり、とても見分けがつかないのだが。

 それはともかく、多くの人でにぎわっている店であったが、席はとれて、目当てのタイスキを頼む。

【タイスキ】
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 「タイスキ」とは「タイ風のすきやき」とのことで、すきやきをタイでアレンジした料理とのことであるが、出てきたものは、日本におけるすきやきの、どのヴァージョンとも異なっている。おそらくはこれを開発したタイ人が「すきやき」と思いこんでいたものが、すきやきとは全く違う別のもの、おそらくは「ちゃんこ鍋」のたぐいであったのだろう。
 ゆえに具材は、だいたい「ちゃんこ系」と同じもの。
 そしてこれらの具材を、慣れた店員のかたが、どんどんと鍋に入れて調理してくれる。

 スープは一種類あるいは二種類から選べ、「トムヤムスープ」と「肉骨系スープ」を選んだ。「トムヤムスープ」はおなじみのトムヤムクンのスープ。とてもスパイシーであり、いかにもタイ料理。肉骨系スープは、けっこうあっさり系。これに辛いタレを加えて味を調節する。

【シンハビール】
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 飲み物は、タイのシンハビール。
 コクはないけどキレはある、あっさりとした味わいのビールである。

 バンコクは熱帯に位置するだけあって、とにかく蒸し暑い国であり、これにスパイシーな料理と、爽やかな味のビールはとてもあい、どちらもその風土から生まれたものだということがよくわかった。

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