香港文化センターでのオペラ鑑賞が終わったのちは、船で香港島に渡り、そしてフォーシーズンホテルの広東料理の名店「龍景軒」へ。
この店は我々の香港ツアーの、メインの定番店となっている。龍景軒は、一度でもその料理を経験すると、普通に考えて世界中の中華料理の最高峰の店と思われるゆえ、香港を訪ねたときには外せないのだ。
ただしそういう考えを持っている人は大変多いので、龍景軒は予約を取るのも困難な店になっている。ところが、我々には強い味方がいて、現地滞在のとある人が、龍景軒の料理にほれ込み、毎日のように通っている常連さんとなったので、その人を通せば予約は取りやすくなっており、今回はその常連氏経由で、予約がGetできた。
その常連氏が、通いつめていて、気に入った料理をリストアップし、そのリストを造って我々に送ってくれた。それに従って、龍景軒のディナーが始まる。
【突出し】

突出し、といっていいのかどうかは知らないけど、とにかく最初に出て来る料理。
イカのフリットであり、そのへんの居酒屋でも出て来るような一品であるが、揚げたてであり、適度な香辛料が加えられ、ホコホコほかほかの食感と食味がたまらない。
これを一口、口に入れただけで、「ああ、この店は素晴らしい」と分かる、そういうスタート料理である。
そして、これからの料理は、常連氏のお勧めに従っての料理。
【潮蓮静焼鵝】

出て来たときは、北京ダック? と思ったが、これは鵞鳥を焼いたもの。
皮はパリパリ、中の身はほっこりジューシーであり、素材の良さと、焼きの技術が一体化して、素晴らしい料理となっている。
「素材と技術」。このどれもが傑出しているのが、龍景軒の料理である。
【沙薑浸乳鴿】

いわゆるジビエ料理になるのであろうか?
鳩を柔らかく煮て、特徴あるソースを和えた料理は、鳩の個性がよく出ている。
鳩って、ふだん食べる食材ではないのだが、食べれば独特の香りと食味があり、これはもっともっと知られてよい食材だと思う。
【上湯】

このスープは常連氏が先に連絡していないと出てこない特別料理。
この店の鍋系統の料理のベースとなるスープが、ただそのまま出された。
で、これを食すと、なるほど、足し算の美学が現れて来る。
京都とかの鋭い出汁に比べ、このスープはとにかく香りも味も豊潤である。
だから上湯を使った料理は、このスープに負けぬ、強い味と香りの具財がこれに合わされていくわけだ。
【皇湯鶏絲羹】

こういう椀物料理が、じつは一番店の実力が分かる。
濃厚にして、豊かな味のスープに、鶏肉、キクラゲ、野菜、茸があわさり、賑やかなハーモニーを奏でる、豪華にして洗練された料理。
香港に来て良かったなあ、と嬉しくなります。
【黒松露蟹肉春巻】

中華料理は、料理の名前を見ても、どういう料理かよく分かりにくいのであうが、この料理は簡明。蟹肉と黒トリュフの春巻きである。
蟹肉はぎっしりと詰め込まれており、蟹の香りが豊か。それにアクセントを加えるように、ひっそりと黒トリュフが香りを添え、なんとも贅沢な香りの料理となっている。
【有機黑蒜爆大千蝦球】

海老と無臭ニンニクの豆鼓炒め。いわゆる海老チリである。
見た目は雑多だが、それぞれの素材がうまく引き立っており、なにを、どこを食べても美味しい。
【鮑汁一品魚肚煲】

先の「上湯のみスープ」で、この店の出汁の実力は分かったが、さらにそれに足し算を加えて、スープをもっと豊かにしたのがこの料理。
魚の浮き袋に、鮑、海老、帆立まで加えているのだから、どれほど美味くなるのが、書いただけでも、見ただけでも分かる料理。で、食えばノックアウト。
今回のコースの、これが最高峰。たぶん。
【秘製扣迷你元蹄】

豚の膝の煮込み。
元の豚の味がよく分からぬまでに、濃厚なスープで煮られ、とろとろになっており、それを食せば官能的な食感が得られます。
その味、見た目はこってり系統だけど、じつは洗練された味わいの料理。
【銀芽炒素菜】

いわゆる野菜炒め、というかモヤシ炒め。
それぞれの素材に独自の火入れが為され、どれも食感が異なり、食べていてとても楽しい野菜料理。
【デザート】


デザートは、この店の代表作の「マンゴー サゴクリーム」は外せません。
それやこれやで、龍景軒の旬の名料理をたらふく食べたディナー。
もう大満足。
この店に来るためだけでも、香港を訪れる価値はある。
ミシュラン三つ星の定義がぴったり当てはまる名店である。
じつは今回は、常連氏とまた会えることを期待していのであるが、よんどころない事情で常連氏は来れなくなり、それが残念であった。
この店の予約をしていただき、そしてこのような素晴らしいコースを用意していただいたことを、あらためて心より感謝。
来年は是非とも、龍景軒で。