フランス料理

July 22, 2017

フランス料理: Le cinq@パリ

 パリ滞在最終日は、レストランLe cinqでランチ。
 5年前にパリを訪れたとき、三つ星レストランLedoyenの料理に感心したけど、そのときのフランス料理界のスターシェフChristian Le Squer氏がLe cinqに移ってきたそうで、かの名シェフの料理を期待しての訪問である。

【Amuse bouche】
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 アミューズブッシュは、一口大のジンジャー味のシャンパンゼリー。これって、Ledoyenでも出て来た料理であり、シェフの得意料理だったんだ。
 口になかにいれると、ふるっと震えて、それから弾けた。それと同時に、前に食べたときの感覚もよみがえった。

【前菜1】
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 焼いたアーティチョーク。タイム、トマトのスープに、香草。
 それぞれの素材の香りが軽やか、かつ鮮やかである。

【前菜2】
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 「現代のパリスタイルの玉葱グラタン」という、なんだかよく分からないネーミングの料理。これ一目、松露みたいに見えるけど、じつは小玉葱で、そして焼かれた玉葱は外側だけであり、なかにはクリーム状のオニオンスープが入ったグラタン仕立て。
 カラっとした玉葱をかじると、なかから熱いスープがこぼれて来る面白い食感。そして玉葱もスープも味は豊かであり、そして甘み、苦み、塩味、それぞれのバランスが絶妙である。
 名シェフの腕が存分にふるわれている。

【メイン1】
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 真鯛を焼いたものに、トマトとジンジャーのソース。
 フランスでの魚料理は、魚の素材そのものがピンとこない印象を私は持っているけど、この鯛は見事。仕入れ、仕込みがうまくいっている。さらにあっさり系のスープがさらに鯛の味を引き立ていて、素材のよさをよく演出している。

【メイン2】
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 全体が黒い、見た目へんな料理。
 素材が「黒米とブータンノワール」なので、黒くなるのは当たり前なのだが、あまり食欲をそそる外観ではない。 しかし口に入れてみると、食感といい、味の広がりといい、ブータンノワールと黒米の相性といい、まさに完璧に近い出来。

【デザート】
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 フランス料理の、もう一つの華である。デザート料理。
 今までの料理でけっこうな量があったが、デザートは別腹ということで、この美しく、また鮮やかな香りの料理をいただく。


 Le cinqの料理は、コテコテのクラシックなフランス料理と異なり、和食的な引き算の方法も用いた、優雅にして繊細な料理。素材がよく、それぞれのバランスもまたよく、食べていて驚きと新しさも感じることができる。
 パリをまた訪れたときは、是非とも再訪したい、とても美味しいレストランであった。

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July 21, 2017

フランス料理: Le Taiilevent@パリ

 1946年創業の、パリの老舗フランス料理店。
 フランス料理のレジェンドであるシェフ「タイユヴァン」の名前を店名としているだけあって、伝統的で本格的なフランス料理を出す店で有名である。

 専属のドアマンに扉を開けられ店内に入ると、高い天井、豪華な照明,調度品、壁に掛けられた数々の大きな名画、そして優雅にして品のあるスタッフたち、その高尚たる雰囲気にまずは圧倒され、わが身の場違い感に戸惑いを覚えてしまう。
 ほんと、入るなり回れ右をして帰りたくなるほどの圧倒感。まあ帰るわけにはいかないので、席に案内され、着席。ちなみにこの店は、1~2人までのゲストは壁サイドの椅子に案内され、その椅子は固定されているので、案内するスタッフは重たいテーブルを動かして、それからゲストが着席するというおもしろい形式。そしてゲストはたいてい壁サイドにいるので、食事中ず~と、店のなかで他の客がほぼ全員、互いに素通しで目に入るという、ややシュールな状況となる。

 メニューが運ばれると、フランス語のみであった。
 国際観光都市パリでは、有名レストランに行くと、外国人に対してはたいてい英語のメニューが持ってこられるので、少々珍しい経験。(スタッフとはもちろん英語で会話できます)
 ディナーにコースはないので、前菜、メインはアラカルトで頼む方式。
 まずは前菜を2種類。キャビアを使ったものと、それからタイユヴァンのスペシャリテである蛙のリゾットを頼んだ。

【前菜1】
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 「Boeuf de Salers Préparé en Tartare Caviar et Condiments」。
 フランスの銘牛「サレール牛」のタルタルをオシェトラキャビアで包んだもの。
 一見、鉄火巻にいろいろ乗せたような料理に見えるが、鉄火の中身は牛のタルタルであり、海苔にあたるのはキャビア。キャビアをふんだんに使った、ゴージャスな料理。キャビアって、とにかく量を使うことが必要だと思うが、理想に近い使い方。サレール牛もまたキャビアの強い味に拮抗する旨味を持ち、見事なバランス。

【前菜2】
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 「Epeautre du Pays de Sault en Risotto.Cuisses de Grenouilles Dorées」
 黄金カエルの脚と、それにフランス産の特殊な小麦を使ったリゾット。
 とにかく濃厚な味。チーズ、クリーム、香草、それに小麦にカエルと個性的な食材をいくつも使い、積み上げていく足し算の料理。
 これが下手な調理法だと、いろいろな色を混ぜて結局は鈍重な色になってしまう駄絵画みたいなものになりがちだけど、ここではそれぞれの色が、それぞれ引き立てあって印象鮮やかな絵になっている、そういうふうな色彩感のある料理であった。

【メイン1】
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 「Turbot Sauvage en Tronçon. Marinière de Coquillages」
 メインは魚料理から。
 ヒラメの厚切りと、貝のワイン蒸し。これもまた濃厚系の料理。やはりそれぞれの個性が強く、ソースがまた美味。
 ただ、どうもヒラメそのものの味がピンと来なく、これはメインの魚よりも、ソースのほうを味わうべき料理と、どうも日本の魚に慣れた身としては思ってしまった。

【メイン2】
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 「Homard Bleu en Cocotte Lutée . Artichaut Poivrade, Basilic et Tomate Mi-Séchée」
 メインのもう一つは肉料理ではなく、海老料理を選んだ。
 この料理を注文したとき、「これは海老ですけど、アレルギーはありませんか?」と聞かれた。レストランで海老料理を注文して、海老アレルギーがあるかどうかを尋ねられたのは初めての経験である。頭に?マークが浮かんだが、もしかして私がフランス語を読めず、これを海老料理と知らずに適当に選んでいるのでは、と思われているのかなあとか思い、いや、そんな注文するやついないだろうとも思い、とりあえず軽く「Je sais que c’est un homard. merci. (私はこれが海老であることは知ってますよ。どうも。)」と返そうとしたが、「homard」の発音って日本人には難しく、こう返答したところで、はあ?という表情をされそうな予感がして、余計な恥をかくのもいやなので、「I have no allergy. Thank you」と簡潔に答えておきました。
 この料理はぷりぷりのオマール海老に、やや辛目のアーティチョークとバジル、トマトを添えたもの。これも多層的、多重的な料理であり、本日の料理全体を通して、いかにも典型的フランス料理という一貫した芯の通った品々を経験することができた。

 料理の非日常感に加えて、店内の雰囲気もまた非日常的であり、店内にはフランス語は聞こえず、英語・中国語ばかりであった。
 前日訪れた「114フォーブル」はフランス語ばかりが聞こえる地元の人によく使われている店であったが、この店は「パリならではの特殊な食体験をしたい」という人が集う店らしく、そしてその価値が十分ある名店であった。


 本場そのものフランス料理に満足して、タクシーを頼んでホテルへと。
 タクシーに乗って行先を告げたら、フランス語でホテル名を言ったせいか、運転手がフランス語で「料理の印象はどうだった?」と聞いてきたので、「力強く、個性的で、素晴らしく、なんとかかんとか」と答えると、運転手はパリのレストランを自慢、そのまま会話が続き、愉快に時を過ごせた。酔っぱらってると、異国語の会話ってけっこうできるものである。まあ、もっとも冠詞、文法、適当だったので、もしかしたらお互い相手の言い分がよくわからず、自分の言いたいことを勝手に言い合っていただけなのかもしれないが。

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July 20, 2017

フランス料理: 114 faubourg@パリ

 114フォーブル。パリの中心街の瀟洒なホテル「ル・ブリストル」のなかにあるカジュアルなフレンチレストラン、またはブラッスリーともいう。
 ブラッスリーということで、気軽な気持ちで訪れたら、入り口は高級ホテルの玄関なので、ちょっと緊張してしまった。
 とりあえずフロントで「114 faubourに予約しています」と言うと、スタッフがにこやかに笑みを浮かべて案内してくれます。

【114 faubourg】
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 レストランはこんな感じ。
 室内の壁の絵や調度品はいい感じで気軽であり、リラックスして食事を楽しめる。スタッフの方たちのサービスもたいへんフレンドリーであった。

【前菜1】
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 このレストランのディナーはコースはなく、アラカルトのみ。
 それらの一品ごとの量が分からないので、とりあえず前菜2+メイン1で組むことにして、最初はこの店の名物料理である「King crab eggs, ginger and lemon mayonnaise」から。
 この料理、写真でしか事前情報はなく、卵と蟹を和えてそれを卵に入れたものと思っていたけど、いざ目の前に来たら、この卵は陶製の容器なのであった。
 卵容器は小さめの鶏卵サイズ。そのなかにタラバ蟹の身とマヨネーズを和えて、そして3つの器ごとに違う香草を載せて変化をつけている。
 濃厚なタラバ蟹の味がまず良く、それにマヨネーズを追加し、さらに重層的な味にしている。美味しいけど、蟹+マヨネーズって、強すぎる組みあわせであり、3つ食うと途中で飽きて来た。隣の組は、一人につきこの料理を卵一個分のみ注文していたから、「なるほど、そういう頼み方があったんだ」と感心、今度来る機会があればそうしようと思った。

【前菜2】
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 次の前菜は、「Artichoke soup with pan-seared foie gras, black truffle emulsion」。
 私が海外のレストランで特に興味があるのは、キャビアやフォアグラ、トリュフといった高級食材の使い方。日本だと、この手の食材は、「高級」という印象のみ先走った、なんだかそれだけがとんがっている変な料理にでくわすことが多いのだけど、(特に和食系)、前回パリに来たときに、これらの食材の醍醐味を知ることができたので、今回もそれに期待。
 そしてその期待にそぐわぬ見事な料理。軽く熱を入れたフォアグラは豊かな味で、香ばしいトリュフと、まろやかな乳化アーティーチョークのスープがあわさり、じつに豊穣な味わいの料理となっている。一口、二口、とその世界にひきこまれる。
 ただ、豊かなのはいいが、おしむらくは味付けに塩が効きすぎていて、五口目くらいからはけっこうきつかった。 あっさり系の味を好む人には、少々つらい料理かも。

【メイン】
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 メインの魚料理は、「Fillet of Sea Bass softly baked, cockles cooked with seaweed butter, “charlotte” potatoes」。
 前菜2品がけっこう腹に来たので、メインは「ライトな魚料理をお願いします」といったところ、この料理を勧められた。
 鱸を焼いたものに、海藻バターで炒めたコックル(ザル貝)とシャーロットポテトと野菜を和えたもの。見た目美しく、魚にかけられたソースもじつに手の込んだ豊かにして豊穣な味わい。
たいへんに美味い。
 ただ、フランスでの料理全体に思えたのだけど、主役の魚の味がどうもピンとこない。
 サイズといい、食感といい、良い鱸を使っているのは間違いないのだけど、日本の白身魚の淡泊だけど複雑な味わいに慣れていると、どうもソースで無理やり美味くしているという印象がしてしまう。
 おそらくは、獲ったあとすぐからの魚の処理が日本と違うからなんだろうけど、それからすると日本の漁業文化(特に漁師さんたちの技)の奥深さに改めて感心してしまう。


 などと、少々気になったポイントも書いたけど、全体的には、日本では食べられない、パリならではの素晴らしい料理をとても楽しめたディナーであった

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July 18, 2017

遥かなるモン・サン=ミッシェル 1日目

 世界遺産、モン・サン=ミッシェル(Le Mont-Saint-Michel)に行ってみようと思った。
 それで行く方法を調べてみたら、けっこう不便なところにあることが判明。日本からダイレクトに行こうと思ったら、空港→バス→TGV→バスと何度も乗り継ぎがあり、大きな荷物を持っている旅行者には辛い。だいたい半日かけてのフライトあとに、そんなに何度も交通機関を乗り下りするのは体力的には無理があると思い、いったんはパリに宿泊し、そこを起点としてバスツアーを利用し一泊二日でモン・サン=ミッシェルを観光するという、いちばん楽そうなプランを立ててみた。

 パリで二泊して時差ぼけをある程度修正したのち、早朝からのJTB主催のバスツアーに参加。JTBのオフィスはオペラ座の近くにあり便利である。パリでは、テロの影響がまだあるのか日本人観光客はとんと見なかったが、さすがにJTBのツアーでは日本人ばかりが30名ほど集まって来た。
 日本人のガイド氏はフランス在住の長いベテランであり、話題が豊富であって、バス旅行中楽しめた。
 ツアーは海岸の小さな港町オンフルールに寄ったのち、モン・サン=ミッシェルの対岸に到着。パリから6時間ほどかけての長旅である。
 まずは昼食ということで、モン・サン=ミッシェルがよく見えるレストランで、名物のオムレツを食べる。

【モン・サン=ミッシェルとオムレツ 】
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 これ、噂に聞いていたほどのジャンボなものではなかった。
 モン・サン=ミッシェルのオムレツは、レストラン「ラ・メール・プラール」が本家なのであるが、あれは大きすぎて日本人観光客には不評なことが多く、それでこのレストランでは小さめのサイズにしている、とのことであった。
 このオムレツ、日本のものとはまったく違っていて、ふわふわの泡々で、まるで玉子と空気を食べているような不思議な食感のものである。そして、玉子とバターの素材はとても良く、普通に美味しい。

【大雨襲来】
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 モン・サン=ミッシェルのあるノルマンディー地方の海岸沿いはたいへん天候が不安定であり、晴れと曇り、雨がしょっちゅう入れ替わる。
 本日も午前中は天気が良かったが、午後から厚い雲が一帯を多い、そして土砂降りの雨が降って来た。写真ではよく写っていないが、いまその大雨が降って、歩いてモン・サン=ミッシェルへ行った人たちが急いで戻ってきているところ。

【雷雲のもとのモン・サン=ミッシェル】
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 我々は雨が止むのをレストランで待ったのち、それから出発。
 雨は上がったものの、雨雲はまだ残っており、そこに幾度も稲妻が走っている。
 稲妻を背負ったモン・サン=ミッシェルの姿は格好よく、なんとか一枚の写真に収めようと何度も何度もtryしたが、雷が光ったときシャッターを押しても、すでにそれは手遅れで、といって雷が出るタイミングなど予想も出来ず、結局一枚も雷を撮れなかった。残念。

【モン・サン=ミッシェル】
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 モン・サン=ミッシェルは、シャトルバス駐車場付近から見る姿が一番絵になるそうで、これがそこからの写真。
 このあと、島のなかをしばし散策して、それからまた橋を戻ってホテルへと。

【ルレ・サンミッシェル】
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 ホテル、ルレ・サンミッシェルはモン・サン=ミッシェル対岸にあり、正面にモン・サン=ミッシェルがあるので、どの部屋からもその姿を見ることができるというのが売りである。
 で、私の泊まった部屋からは、・・・木立に隠れてあんまり見えない。
 じつはこのホテルには「冬(つまり樹が葉を落としたとき)にしかモン・サン=ミッシェル全貌が見えない部屋がいくつかあるのだが、その一つに当たってしまった。
 まあ、モン・サン=ミッシェルはさんざん見たし、あえて部屋から見たいとも思わなかったのだが、なんか納得いかないなあ。

【夕食】
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 午後7時半から夕食。
 フランスはサマータイムなので、まだまだ外は明るい。そして雲はいつしか吹き払われ、青空が広がっていた。その青空のもとのモン・サン=ミッシェルを眺めながらの食事である。
 モン・サン=ミッシェルは、干潟の牧草地に、潮風の当たる牧草で育った「プレサレ羊」が名物だそうで、その羊のロースト。日本の羊料理と違って、羊特有のにおいと味がしっかりとして、いかにもヨーロッパの料理という感じである。

 夕食を終えたのち、日が暮れるのを待ってから、モン・サン=ミッシェルのライトアップを見に行こうと思っていたけど、いつまでたっても、午後10時を過ぎても暗くならず、バス旅の疲れもあり、ついつい熟睡。
 起きたら深夜の2時であった。これはいかん、と思い、とにかく外出。

【深夜のモン・サン=ミッシェル】
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 ホテルを出ると、橋の手前までは、小さいながらも明かりがあったが、それからは明かりはなく、真っ暗である。
 そして遠くにモン・サン=ミッシェルが見える。
 当然ライトアップの時間は過ぎており、いくつかの照明のみがぼんやりとその姿を浮かばせていた。

【深夜のモン・サン=ミッシェル】
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 暗いなか、橋の上まで来たが、どこまでが橋の端か分からないくらいに真っ暗であり、ライトとか持ってきてなかったので、これ以上進むのを諦めた。
 しかし暗いのと雲が払われていたことで、頭上には無数の星々がきらめいていて、そして天空にまさに天の川が、輝く川の姿をして横切っていて、そのもとにモン・サン=ミッシェル、という荘厳な光景を見ることができた。
 写真では捉えることは不可能であったが、あの美しい姿はくっきりと記憶に残っている。
 いいものを見ることができた。


 ホテルに帰ったのち、また寝なおす。
 明朝は、「朝日に照らされるモン・サン=ミッシェル」を見たいので、目覚ましは日の出前の時刻にセットしておいた。

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February 05, 2017

雲仙観光ホテル

【雲仙観光ホテル正面 (宿の公式HPより)】
Hotel

 私が九州の旅行のネタ本としている「九州遺産」という本には、九州の近現代の歴史的建造物が101件おさめられており、いずれも歴史的価値の高いものばかりである。
 そのうちホテル部門で唯一つ選ばれているのが「雲仙観光ホテル」である。
 九州には立派なホテルがいくつもあるけれど、そのなかでこのホテルのみ選ばれたのにはもちろん理由があり、それは建物自体の価値と、その歴史的役割による。

 かれこれ80年ほど前、戦前の日本は財政難に苦しんでいた。その当時日本は輸出が不振であり、地下資源の乏しい日本は外貨獲得の手段に乏しかった。そこで外貨を得る方法として観光を思いつく。日本全国の風光明媚なところに、外国人の好むような豪奢なホテルを建てて、そこにどんどん観光に来てもらおうと思ったのである。
 複雑な地形を持つ日本ゆえ、山、海、湖、・・・風光明媚なところはいたるところにある。そこから15ヶ所を選りすぐって、多額の費用をかけて本格的なホテルを建設した。いわゆる「国策ホテル」である。
 考え方としては、悪くなかったとは思うのであるが、選んだところが悪かった。赤倉、阿蘇、唐津、松島、河口湖、中禅寺湖と、たしかに風景は良いが、交通の便の悪い、いわゆる僻地ばかりである。現代よりはるかに交通に手間暇かかる時代、そんなところにわざわざ外国人観光客が来てくれるはずもなく、いずこの施設も建てたはいいが閑古鳥が鳴き、営業はまったくふるわず、年月を経るうち多くは廃業し、取り壊されるか、廃墟化していった。
 九州にあるもう一つの国策ホテル「阿蘇観光ホテル」は、そちらの部類で、今も山なかに廃墟として朽ちるままとなっている。

 そういう悲惨な経過をたどってしまった国策ホテルのうち、「雲仙観光ホテル」は80余年間を生き残り、建築当時の重厚な姿を伝える数少ないものの一つであり、ゆえに国から文化財に指定されている希少なものなのである。

 今回雲仙岳を訪れたついで、不思議物件めぐりの一環として、このホテルに泊まることにしてみた。

【フロントロビー】
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 入ってすぐのフロントロビー。年期の入った太い木の柱や梁、大きな絨毯、高い天井。山岳リゾート風の意匠が、存在感高い。
 このホテルにはエレベーターはなく、階段を使っての移動になるが、それもまた味があってよい。廊下の天井も高く、ふんだんに使われている手入れの行き届いた木材とあわせて、「奈良ホテル」に似ているなと思って、案内のスタッフにそう言うと、「みなさま、同じ感想を言われます」とのことであった。

【図書室】
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 ホテル内には図書室、ビリヤード場などもあり、どれもクラシカルな雰囲気十分。

【眺め】
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 ベランダからは雲仙の街が眺められる。
 すぐ近くに雲仙地獄があることもあり、街のいたるところから蒸気がふき出ている。

【大浴場】
Bath

 大浴場は、湯量豊富な雲仙にしてはこじんまりした感じ。しかし、浴場全体の雰囲気はレトロかつクラシックで風情がある。

【レストラン】
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 食事はダイニングルームにて。
 この部屋がまた広くて、柱からアーチ型に支えられた天井も高くて、いかにもクラシックスタイルである。給仕のスタッフも正装であり、それも加えてさらにクラシックな雰囲気だ。

【ディナー】
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 オードブル:子牛のパテ 自家製ピクルス添え、帆立とオマール海老のボローバン、魚料理 鮮魚のムースリーヌ ノイリー風味の雲丹ソース 肉料理:黒毛和牛ロース肉の炭火焼

 料理は建物と同様にクラシカルスタイル。余計な創作性やいじったところはなく、堂々のストレートを行くフランス料理であり、いずれも普通に美味しい、旅先で安心して食べられるものであった。

【デザート】
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 デザートもまた本格的。いくつものスイーツがワゴンサービスで運ばれ、取り放題である。こういうのに慣れた外国人なら全種類制覇も可能であろう。

【夜の花火】
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 冬の雲仙の週末の特別サービス、花火大会。
 街の中心部から幾発もの大きな花火が打ち上げられ、冬の澄んだ夜空に広がる様は、たいへん趣がある。

【夜の花火】
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 もっとも冬なので、ベランダから見ていると寒くてしかたないから、しばらくして部屋に入り、ベッドに寝転がってガラス窓越しに花火を眺める。
 暖房の利いた部屋から、冬の花火を見る、これもいいものであった。

 建物、施設、部屋、調度品、ダイニングルーム等々、いずれもクラシカルスタイルで非日常感があじわえたホテルで、もう一つ冬の花火という非日常感も楽しめた一日であった。

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November 26, 2016

りょうりや ステファン パンテル@京都市中京区

 フランスの三ツ星レストランで修業した経験を持つフランス人シェフが、奥さんの母国である日本に来て、フランス料理店で働いていたところ、京都の和食を味わっているうちに、その素材、調理法に感銘を受け、和食とフランス料理の融合性に自分の新たな料理の可能性を感じ、そこからインスピレーションを紡ぎだして、創作系フランス料理をつくっている店。
 京都ならではといえる独自の高みにある料理をぞんぶんに味わうことができます。

【Hors-d’oeuvre】
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 前菜はしめ鯖料理から。
 京都はやっぱりまずはしめ鯖なのである。
 当然ながら普通のしめ鯖ではなく、シャンパンビネガーを使ってしめている。これに柿と祇園豆をあわせて。上にのっているのは生クリームで、それに炙ったピスタチオを散らしている。色どりあざやかで、見た目も、そして食べた味もにぎやかで豊かな料理。

【Hors-d’oeuvre】
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 この店のスペシャリテ。フォアグラのコンフィ 奈良漬け巻き 南国フルーツソース。
 シェフが奈良漬けを食べたとき、これはフォアグラに合うのではないかと思い、それから創作した料理で、これによってシェフ流の料理がスタートした、記念碑的料理。
 たしかにとても美味。そして、この料理の主役フォアグラの質がとてもよいこともまた特筆ものである。

【Hors-d’oeuvre】
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 スープは、かぼちゃのポタージュで、中には茸のソテー、トリュフ入りの白いクリームのなかには赤味噌が入っていたりして、非常ににぎやかな料理。

【Hors-d’oeuvre】
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 ホタテ貝のソテーに、それにいろいろな種類の人参を、様々な料理法で。
 人参はどれも火の入れ方が違っており、それぞれが独自の美味しさを主張していている。

【poisson】
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 魚料理は甘鯛。やはり京都の魚は甘鯛の若狭焼き、というわけなんだが、大胆にアレンジされている。甘鯛は海老芋を摩り下ろしたものと一緒に焼かれ、たがいに味を高めあってカップリングして出される。そしてその上には、甘鯛のウロコを焼いたものが載せられ、この歯ごたえがまたいい。
 そのまわりに京野菜が、甘鯛で出汁をとったバターソースが配され、ソースとともに食べればこれがすこぶる美味。

【viande】
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 肉料理は、京都産の豚を焼き、煮、揚げと様々な調理法で、元の素材の旨さを存分に引き出している。

【dessert】
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 デザートもまたレベルが高い。シェフはパテシィエの経験もあるので、料理全体、とてもレベルの高いものが一貫して楽しめます。


 京都に来ると、日本の和食の最高の地ゆえ、どうしても和食店に行きたくなるけど、これだけ食のレベルの高い地だと、素材の入手、料理人たちの活性等で、その他の料理のレベルも当然引き上げられてくるわけであって、「りょうりや ステファン パンテル」は、そういう京都の食文化の高さに影響されつつ、自分のスタイルを築きあげつつある良店であり、季節の移り変わりとともに幾度も訪れたい店だと、あらためて思った。

【Inspiration サイン】
Signe

 シェフのステファン パンテル氏は、フランスから京都に来て、今の料理に開眼するまでの記録と、それにレストランで出す料理のレシピを著したものをinspirationという書名で出版しており、写真の美しさもあって、素晴らしい良書となっている。
 私はこれを購入しており、そしてパンテル氏にサインしてもらった。
 このサイン、筆書きでなされており、じつに見事。そして、ここまで日本文化に精通しているのかと、感嘆いたしました。

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November 05, 2016

オーベルジュ:楓の木@耶馬渓

【楓の木】
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 「楓の木」は名勝地耶馬渓にあるオーベルジュで、庭も建物も純和風であるが、料理は創作系のフランス料理を出す、ユニークな宿である。

【部屋】
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 この宿は広大な敷地を持っており、各部屋から見える庭もまた広い。
 樹々や岩が豊富な庭は、借景としている裏山にそのままつながっていき、なんともスケールの大きな庭である。

【夕食】
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 オードブルは、手長海老のフリット、それから海産物のエスカルゴオイル焼。
 それらに続きメインの魚料理。アルミホイルにくるまれた山女は、この宿のスペシャリテ。一見、山女をコンソメで煮込んだものように見えるが、じつは山女の身を完全に外してそれを帆立とともにムース仕立てにして、山女の形に整えたもの。
 10数年前この宿を訪れたときもこの料理はあり、その時は「せっかくの山女の繊細な味が台無しだよ。せめてムニエルくらいにすればよいのに」と思った記憶があるが、今食べてみると、これは意外と複雑にしてバランスのよい料理だということに今更ながら気付いた。山女料理として考えるとどうかとも思うが、しかしコンソメ+帆立+山女の足し算がうまい具合に調和がとれていて味も香りもよろしい。おそらくは日本全国でもここでしか出ない料理であろうから、一度はこれ食してみる価値あるものだと思う。
 メインの次の肉料理は豊後牛を好みの加減に焼いたステーキ。
 デザートはクレームブリュレ。これもこの宿のスペシャリテで、ずっと変わらず出しているそうである。

 (・・・オーナーによると、この宿は基本的にはあまり変わらないことを大事にしているそうだ。ただ以前と変わったことは庭に餌台を設置したことで、それから小鳥が多く遊びに来るようになったそうだ。たしかに食事中にも、美しい小鳥の舞う姿をよく見た)

【風呂】
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 この宿は天然温泉であり、そして露天風呂からの眺めがよろしい。昼に見る深山幽谷の姿はもちろん、山奥の宿ゆえ、夜は真っ暗となり、雲のない夜は満天の星を眺めることができる。湯の質もよろしく、身体がよく温まる硫黄系の湯である。


 建物、庭、温泉、料理、それぞれ良い宿であるが、この宿の真価は、宿の名前が示すように紅葉の時期にあるのであり、庭にたくさん植えられている楓の木が赤く染まるときは、さぞかし美しいであろう。今回は紅葉はまだ始まったばかりであり、そういう姿は見られず残念。
 まあ、そういう時期は予約とるの大変なんだろうけど。

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October 29, 2016

オーベルジュ:ア・マ・ファソン@九重

【ア・マ・ファソン】
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 我が国にもオーベルジュと名のつく宿泊施設は増えていく、そしてそれらは日本風アレンジを施した個性的なものが多いわけだが、九重の「ア・マ・ファソン」はいかにも本格的、本道をいくオーベルジュとして、強い存在感を示している、名オーベルジュである。

 ア・マ・ファソンの建物は比較的新しく、またしっかりした建築物だったので、ここも先の大地震では無傷であったろうと勝手に思っていたが、けっこうダメージがあり、10月まで補修のために閉館していたそうだ。
 私の考え通り本館自体はダメージはなかったのであるが、しかし地層がずれてしまい、地下の配管が損傷してしまったのでその補修が大変だったそう。また、横揺れが激しかったため、回廊の木の柱と地面の石との継ぎ目がずれてしまいそれも直す必要があったそうである。
 ア・マ・ファソンはゆるやかな傾斜地に建てられており、それで阿蘇方面の眺めがよいのであるが、傾斜地ならではの弱点があったわけである。

【ディナー】
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 前菜はサーモンの白ワインマリネ、サラダ仕立て。続いてサザエのブルゴーニュ風。魚料理は鱸のポワレ、ラタトゥイユと牛蒡、車海老添え、肉料理は黒毛和牛ヒレ肉と安納芋のベニエ、マデラ酒ソース。
 見事に本格的なフレンチである。素材は地元のものを使っているけど、これらを輸入したものに変えると、そのままフランスで供されるフランス料理となるであろう。
 九重の美しい山のなかのオーベルジュでこのように都会的に洗練されたフランス料理が食べられる、素晴らしい経験のできるオーベルジュである。

【朝の風景】
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 今の時期は日が暮れるのが早いので、ディナーは景色は楽しめなかったが、日のあるときは九重から阿蘇にかけての雄大な風景を眺めながらの食事が楽しめる。

 ロケーション、建物、料理、その全てがよく、理想的なオーベルジュであろう。

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February 29, 2016

ワインバー&フレンチ:ヴィニュロン@薬院

 香港から福岡に戻って、空港におりると、とんでもなく寒い。
 香港が暖かったのと、今年が暖冬だったので、まったく意表をつかれてしまった。大きな低気圧の発達によりその日は全国的に冷え込んでいたのであるが、福岡も低温のうえに、強風が吹き荒れ、痛いほどの寒さであった。
 それで戸外を歩く時、まさかのために用意していた、モンベルの超軽量ダウン、プラズマ1000がたいへん役に立った。その軽さとコンパクトさと、保温機能の高さによって、山道具における近年の傑作といわれているプラズマ1000であるが、山以外でもじゅうぶん使い道があるのである。

 さて福岡に着き、福岡は美味い店が多いところである。
 中華料理食いまくりツアーの帰り、せっかく福岡にいるのだから、食いまくりツアーの勢いのまま、夕食はワインを飲みに行こうということで、薬院のワインバー、ヴィニュロンへ。

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 この店、深夜までやっており、ワインバー的な使われ方が多いけど、料理のほうはきわめて真っ当なフレンチであり、ワイン、料理ともレベルの高い店である。
 そして、美味しさに加え、ワイン、料理ともリーゾナブルな値段であり、コストパフォーマンスが大変よい。
 こういう店が地元にあったらなあ、と思ってしまう、とてもいい店である。

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November 22, 2015

トゥラジョア@平成27年秋

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 秋の恒例、名古屋在住の食通氏主催による、レストラン「トラジョア」での宴。
 最初にこの店の料理を味わったときは、まさに衝撃であった。そして幾度も訪れるとさすがに衝撃度は減って来たけど、そのぶん落ち着いて食べられるので、それゆえ須本シェフの料理の奥深さ、広がり、独創性というものがよく分かり、この店の食事の時間がかけがえのない時間というものがよく分かる。

 美味しいもの大好きの主宰者氏は、「須本シェフと同時代に過ごせることが本当に幸せである」とかねがね言っているけど、私もこの店を訪れるたび、そのことを実感し、須本シェフ、そして予約をしっかりとキープしている主催者氏に感謝することしきりである。

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