洋食

June 07, 2019

かわむら ステーキ店@銀座

【かわむら】

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 銀座に「かわむら」という有名なステーキ店があり、そこは日本で一番美味しいステーキを出すが、値段もそれ相当にとても高い、ということでも知られている。
 私はステーキにはさして興味はないので、そういう店があるんだなあ、程度の知識しか持ってなかったけど、ときおりSNSに載っている同店のコンソメスープの写真はとても美しく、そしてその味も「ステーキレベルにとても美味しい」との評判であり、一度は飲んでみたいものだと思うようになった。
 というわけで、「かわむら」常連氏の定期的な参加者募集の連絡時に手を挙げて、銀座まで行ってみることにしてみた。

 この店は8名のカウンター席を2~3回転で回す形式で、はっきりした時間開始は決まってなく、先の客がはけたのち、代表者に電話連絡が来るようになっている。それでとりあえず、店の前あたりでうろうろしていると、今回の参加者5名が集うことになった。5名のうち、私を含め3名が初参加である。うち一名が「食べログ見ると、最近この店10万越えは当たり前みたいなこと書いていてこわいんですが」と言うと、常連氏は「え、そうなんですか。いつもはコース一通りで5万くらいです。でも今回は〆の料理にスペシャルメニューを追加しているのでけっこういくかも」とか、やっぱりこわいことを答えている。

 と雑談をしているうち、前の客の食事が終わったので、我々がぞろぞろと入って行った。
 この店はステーキ店なので、メインは当然ステーキであり、好みの重量を聞かれる。男性は150g、女性は100gということでまとまり、肉が客の見えるところで焼かれる。そのステーキが焼き上がるまでに、前菜、スープ、サラダが出て来る、というのが通常の流れだそうだ。

【コンソメスープ】

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 タルタルステーキの前菜が出たのち、これがお目当てのコンソメスープ。
 とにかく美しい。澄み切った、淡い黄金色のスープ。
 これが前に出されたときから尋常でない豊かな香りが漂うが、それを口に入れれば、いっさいの雑味のない、肉の旨さのみを抽出したような、エレガントにして豊潤な味が口いっぱいに広がる。
 絶品としかいいようのない、本物のコンソメスープ。これつくるための手間暇考えると、自分って今とんでもない贅沢しているんだなあ、と思ってしまう。

【野菜サラダ】

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 野菜サラダはどれも新鮮でシャキっとしたもの。
 まあ、普通に美味しい。

【ステーキ】

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 ステーキはずっと焼いているところが見られるが、べつだん何かの名人芸があるようにも見えず、たーだ普通に焼いているように見えていた。そしてサラダが終わると、メインのステーキ登場。
 これが実に見事な焼き方。外はカリッと焼かれているけど、中は均等に火がゆるく通っていて、旨味が見事に閉じ込められている、極上のミディアムレア。肉の食感と温度感は官能的といってよい滑らかさで、その焼き方は食べてみると、まさに名人芸。
 そして肝心の肉そのものは当然超一級のものなので、この焼き方により、まさに最高のステーキとなる。世評の高いのもよく分かる。
 ………よくは分かったけど、ステーキって一枚が均質な料理なので、一切れ目で感動、二切れ食って感動確認、三切れ目でこれも同じ味だな、とここで既に飽きてしまい、半分くらい食べたとことでどうでもよくなってしまった。ステーキって、寿司で例えると中トロ握りを10貫くらい連続で食べさせるようなものなので、料理としてはいろいろ無理があると個人的には思う。
 この店は余ったステーキ肉はサンドイッチにして持ち帰りできるサービスがあるとのことなのでそれにしようかとも思ったけど、周りの者をみると、憑かれたように一心不乱に食べていて、あっという間に平らげてしまったので、こっちも頑張らないといけない気になり、あわてて食べるのを再開し、なんとか完食。疲れた。

【カツカレー】

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 メインのステーキのあとは〆の食事となる。通常は、牛丼、カレー、炒飯等から選ぶようになっているそうだが、そういうのばかり食べていた常連氏に対して、店主が「じつはカツカレーが自慢の品なのです」と言ったそうで、常連氏は今回はスペシャルメニューとしてカツカレーを頼んだそうだ。
 それで出て来たカツカレー。
 カツカレーって、カツとカレーというどちらも御飯の供として主役を張れる食材をごっちゃにしているカオスな料理であり、少々の下品さが必要とは思うのだけど、この店のカツカレーはそういうものとは違っていた。超一級のヒレ肉を使ったビーフカツ、それはそのまま食べてとても美味いのであるが、その美味さを邪魔しないよう控えめのスパイシーさと辛さをもった上品なカレーを添えた、ビーフカツ主役のカツカレーであって、正当的(?)カツカレーからすると少々邪道ではあるが、しかしこれはこれでなかなかいけるのであった。

 

 前菜、ステーキ、カツカレーと、三品肉料理を食べたことになるが、とにかくその肉の質の良さ、そして調理技術の高さに感心した。さすが日本一と称されるステーキ店である。肉料理、ステーキが好きな人にとっては、聖地的存在になるのもじゅうぶん納得である。

 

 料理とともに、この店で有名な会計は、さてどうであったろうということになるが、この店で出す肉のレベルと、銀座の一等地という条件からすると、いたって常識的、というよりかえってお得系、リーゾナブルな値段であった。まあ、だからこそ予約の取れない超人気店になっているんだろうな。
 ところで、今回のスペシャルメニューのカツカレー、これは一皿1万5千円であった。肉の原価からすると、そういうところでしょうねとしか言いようもないのであるが、それでも「カツカレー」としては規格外の値段である。カツカレーに詳しい常連氏も、「人生で最高額のカツカレーであった」と言っていたので、ここはさすが「かわむら」とは言えるかもしれない。

 そういうわけで、いろいろと話のネタになった「かわむら」初訪問であった。美味しいし、楽しいし、名店であるとは思うけど、まあ一回経験すればもういいか。

 

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March 01, 2019

歌劇:タンホイザー@香港芸術節2019年

Tannhauser

 吟遊詩人であるタンホイザーはエリザベート姫という恋人がいたが、清き乙女である姫との愛に物足りなさを覚え、愛欲の女神ヴェーヌスの統べる国ヴェーヌスベルクに赴き、そこで情欲の日々に溺れる。しかしタンホイザーはその生活に飽きてそこを去ろうとする。タンホイザーに惚れていたヴェーヌスは彼を引き止めようとするも、もうヴェーヌスに興味を失っていたタンホイザーは彼女を振りきって、元住んでいた国に戻り、姫とも復縁した。
 そして国では歌合戦が開かれ、そこでの歌のお題は「愛とは何か?」というものであり、歌手たちは騎士道精神に満ちた奉仕の愛の歌を次々に歌いあげる。それを聞いていたタンホイザーはその欺瞞性に腹を立て、さらには俺は本当の愛欲というものを知っているのだぞと自慢したくなり、ヴェーヌスを称える愛欲賛歌を朗々と歌い、その場にいた騎士達や領主から総スカンをくらい追放されてしまった。
 一時の私憤で全てを失ったタンホイザーはうろたえ、元の生活に戻るためにローマまで行って教皇に赦しを乞うのだが、「お前のような罪深きものが赦されることは永遠にないだろう」と冷たく突き放される。そういうことならばと、一回袖にしたヴェーヌスのもとに戻り、また愛欲の日々に浸ろうとヴェーヌスベルクに向かうことにした。そこへエリザベート姫の葬列が通る。エリザベート姫はタンホイザーの罪の赦しを得るべく自分の命を絶ったのだ。己の愚かさに悲嘆にくれ、姫の亡きがらにすがるタンホイザーのもと、ローマの教皇から使者が現れる。エリザベート姫の願いが聞きいられ、タンホイザーの罪は赦されたのだとの知らせをもって。

 というふうな話。
 あら筋だけ書くと、いかにもつまらないというか、男にとって都合のいい話、というのはヴァグナーの楽劇の特徴ではある。しかし良い脚本を書く才能はなかったけど、音楽の創造については音楽史上希にみる才能を持っていた大天才の造り上げた作品だけあって、いざ幕があけ音楽が鳴り出すと、序曲最初のホルンの抒情的な調べから一気に音楽に引き込まれ、その旋律が盛り上がっていきトロンボーンが咆哮するころには世界がこの音楽に満たされているような、圧倒的な迫力でもって劇は進んでいく。

 そういうふうに音楽はとてもよい。しかし、ヴァグナーの楽劇は、CDとかで聞くぶんにはそうも思わないのだが、劇場でライブを観ると、「筋はこんなにくだらないのに、何故こんなにも自分は感動してしまうのだろう」という感想が、どうにも頭のなかに浮かんでしまうのが常ではある。

 ヴァグナーの劇はだいたいワンパターンで、「情欲、情動に溺れた人物が、自らの救済を試みるも、己の欲の深さにそれはできず、結局は自分を愛する乙女の献身にてようやく救われた」というものである。タンホイザーは典型的なそれであり、ヴァグナーはその後もえんえんと似たような筋の楽劇を亡くなるまで書き続けることになる。
 ヴァグナーの伝記を読むと、ヴァグナー自体が情欲に溺れ続けた人であり、自身の懊悩を一貫して書き続け、そして己の欲望を音楽に浄化することによって己の精神を救おうとした、芸術家としてはある意味立派な人であり、しかし情欲から死ぬまで逃げられなかった点では、業の深い人であった。

 ただしヴァグナーの時代の倫理観は現在では少々厳しすぎる点があり、(もちろんヴァグナーその人のように、人妻ばかり手を出して、さらには自分の弟子の妻を奪って我がものにしてしまうようなのは、さすがに今の基準でも論外だとは思うけど)、あの時代の倫理観に基づくタンホイザーの苦悩について、現代人には理解しがたいことも多く、そのため今回の演出は、全体的にすべてを曖昧にした、観客によって解釈自由というふうなものになっていた。
 今回の演出を担当したビエイトという人は、独特のエログロ路線で有名だそうだが、べつにそんなに個性的な演出はなく、演出家自身の独自の解釈はあえて盛り込まず、ヒントは与えますが解答はありませんよ、といった抽象的な場面が続いた。これはつまりは演出家自体、タンホイザーについてよく分かっていなかった、あるいは現代の倫理観では観客をうまく納得させる解釈を作れなかった、というふうなことだったのだろう。

 そういうわけで、演出に関してはグダグダだったと思うが、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏はさすが本場だけあって立派なものであり、ヴァグナーの偉大な音楽に酔いしれることができた。

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September 21, 2018

イギリス料理:サヴォイ・グリル@ロンドン

 近代ホテルの歴史はここから始まったと称される老舗ホテル「ザ・サヴォイ」のなかのレストラン。
 ガイド本「地球の歩き方」のイギリス料理の項に、このレストランが一番最初に紹介されていたので、それなりの店ではあるだろうと思い、選んでみた。

【ザ・サヴォイ】
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 このホテル一目見た時、どうも見覚えがある気がしたが、「ノッティングヒルの恋人」のロケに使われていたのをあとで思いだした。

 ホテルに入ると、さすが高級ホテルの典型であって、全てが格調高いつくりであった。
 レストラン「サヴォイ・グリル Savoy grill」は玄関から入ってすぐのところにあった。
 中に案内されると、室内はホテル同様に、高級感あふれる空間であった。客もドレスコードをみなきちんと守っており、今回訪れたレストランではここが一番格が高いと思った。

【舌ビラメのグリル】
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 この店のスペシャリテである舌ビラメのグリル。
 ドーバー海峡の質のよい舌ビラメを厳選して調理したものだそうだ。

【鶏の丸焼き】
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 この店のスペシャリテは魚は舌ビラメ、肉はローストビーフだそうだが、メニューをみるとビーフは300g以上からとなっており、その量をとても食べられるわけないので、鶏を選んでみた。

 それで、魚も鶏も、普通に火を通して、普通に味付けしたという感じで、よく言えば昔からの料理を伝える伝統的な料理、悪く言えばあんまり特徴のない料理、というところで、私の感覚としては、いわゆる世間一般が想像する「イギリス料理」に、これはけっこう近いものではと思った。

 もちろん、不味い、とかいうことはまったくなく、普通においしい料理である。
 そして何と言っても、クラシカルなレストランの雰囲気がたいへん良く、かつてハリウッドの大スター達がこのレストランを贔屓にして幾度も訪れたという歴史をダイレクトに感じとれる、そういう大いなる魅力がある。

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September 17, 2018

イギリス料理:ファイブフィールズ@ロンドン

 イギリスに行ったからには、レストランではイギリス料理を食べてみたい。
 もっとも私はイギリス料理なるものについて良く知っておらず、ちょっと調べてみたら「イギリス料理は素材を単に煮たり焼いたりするのが特徴で、味付けはシンプルであり、イギリス人自体が美味しいと思っていない、そういう料理です」とか失礼なことを書いてある文献ばかりが見つかり、どうにも料理そのものには期待が持てそうにない。
 といってイギリスでフレンチやイタリアンましては和食を食べても仕方ないので、初心貫徹ということでイギリス料理店にまずは行ってみよう。
 ネットで検索すると、イギリス料理店はいろいろあれど、「ファイブフィールズ five fields」という店が、美味しそうな雰囲気濃厚であったので、そこに予約をとってみた。

【前菜】
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 前菜はフォアグラのキノコ、根菜類の付け合わせ。ボール状のものがフォアグラであり、フレッシュフォアグラを用いた優しい味つけのもの。野菜もフォアグラも素材がたいへん良い。
 味付けは控えめだけど、素材を上手く支えている。

【メイン:魚料理】
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 イギリスの魚料理って、どこに行っても、ヒラメとスズキをサーモンしか見かけなかったが、これもヒラメの料理。葱とカイワレ、それに紫蘇のソース。
 火の入れ加減は丁度良く、ヒラメも良いものを使っている。

【メイン:肉料理】
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 メインの肉はマトン。マトン料理は、この店のスペシャリテらしい。腹肉、腰肉、頬肉の三種を用い、それぞれの味の違いを味わせてくれる。マトンにはどうしても独特のくさみがあるけれど、ワインソースや付け合わせの野菜やハシバミがそれにうまくあわせていて、総合的によい感じの肉料理となっていた。

【デザート】
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 デザートは林檎。それをジャスミンで香りをつけて。爽やかな一品。

 どうにも事前勉強していた「イギリス料理」とはそうとう異なる料理であって、良い素材を、繊細な仕事を加えて、さらに美味さを引き出す、まあ極めて真っ当な、美味さの本道を行く料理であった。
 料理全体からいえば、モダンフレンチに似た方向だとは思うのだが、とにかくどの料理もレベルが高く、文句なしの名店である。
 あまりに感心したので、チェックの時、マネージャーらしき人に感想を聞かれたさい、「たいへん美味しかったです。イギリスに来るのは私は初めてで、そしてイギリス料理は美味しくないと聞いていましたが、それは嘘と言うことを思い知りました」とつい言ってしまったら、彼は肩をすくめて「ああ、それはとんでもない大嘘です」と笑って答えました。

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November 25, 2012

ジビエ第二弾をGazzat@名古屋市で

 岐阜の柳家でジビエをしこたま食ったけど、名古屋にはまだ美味しいジビエを出す店があるという。
 今からがジビエの時期なので、それをはずすわけにはいかず、食通P氏の引率にて、一行はジビエ第二弾をGazzat(ガザット)にて味わうことにした。

 ガザットは、カウンター前にオイル漬けのサーディンやサンマ、それにキッシュ等、おいしそうなツマミが並べられており、そういった洒落たツマミでワインを飲むワインバーなのであるが、寒くなってのジビエのシーズンからは、ジビエが本道とばかり、絶品のジビエ料理を出す店となる。

 今回のジビエは、野鳩、小鴨、赤足ウズラ(Perdrix rouge)であり、すでに羽をむしられ、焼く準備の整えられた鳥をまず見せてくれた。羽をむしられた鳥の姿が苦手でない人は、次のリンクを参照。(→こういうもの

【炭火焼き】
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 鳥はカウンター奥で、マスターが手慣れた様子で、ガンガンと焼いてくれます。

【野鳩】
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 こんがり、ふんわりといい焼き加減。

【野鳩】
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 これを食べやすいように、切り分けてくれます。
 いいあんばいに塩加減も利いており、鳥肉の美味さがよりよく強調されている。

【小鴨】
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 次は小鴨。

【小鴨】
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 この焼き加減も素晴らしい。
 切った面を見ると、それだけで美味さが分かる美しさ。
 鴨肉は、洋食によく使われる素材だけど、ここの鴨肉は非常に味と香りが濃厚であり、たしかに今までそのへんを飛んでいた鴨らしい、独特のクセがあり、力強い、いかにもジビエという料理であった。

【赤足ウズラ】
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 赤足ウズラって、じつは初めて食べるけど、フランスではジビエとして代表的な鳥のようだ。

【赤足ウズラ】
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 赤足ウズラは見た目はけっこう派手な鳥であり、味も個性的なのだろうなと思ったが、意外とマイルド。あまりクセもなく普通に美味しい、良質な肉質を持つジビエであった。
 ジビエといっても、いろいろと種類があることをあらためて認識。

 名古屋、岐阜の名店をさんざんに楽しませくれた、P氏主催の11月の食ツアーであった。
 深く、感謝。

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November 24, 2012

至福のディナー@トゥラジョア(Tout la Joie)名古屋市 

 名古屋の名店「トゥラジョア(Tout la Joie)」で、ディナーを楽しんできた。
 昨年lここを訪れたときは、ランチであり、夜に京都の「桜田」を予約するという、無茶なプランを立てていたため、ワインは控えめにしていたのであるが、今回はディナーなので、心置きなくワインと料理を楽しめる。

 この店は、いちおうフレンチということになっているようだが、料理全体としては、フレンチもイタリアンも和も中華も、ぜんぶいいところを取り入れて、シェフ独自の料理に昇華している、世界でここしかない創作系料理店という位置づけになろう。

【百合根と浅利のスープ】
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 百合根と浅利のスープは、北海道産の特殊な百合根を用いて、きわめて滑らかな食感を保ち、それに浅利ベースの濃厚なスープをからませて、複雑な香りと味を持つ料理となっている。

【トリュフ風味の栗きんとん】
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 トリュフ風味の栗きんとんもまだ独創性豊かなもので、もとはトリュフ添えの薩摩芋の料理からインスパイアされたものなのだが、これをさらに進化させ、栗の上品にして豊かな甘さに、トリュフの豊かな香りをぶつけたもの。
 椀の蓋を開けたとき広がる削りトリュフの香りがまず素晴らしいが、栗きんとんにもトリュフが包まれており、さらにまた違ったトリュフの香りが立ち上る。

【鮑とタラバガニの香草パン粉炒め】
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 鮑とタラバガニという華やかな高級食材を使ったものに、さらに面白い食感を持つパン粉炒めがアクセントをつけ、しかも全体としてまとまりのある見事な料理。

【フカヒレの白味噌風味】
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 中華料理の定番フカヒレと、京都風の白味噌スープ。中華のフカヒレスープとは違うスープが、フカヒレの新たな魅力を教えてくれる。

 須本シェフの料理は、こだわりある素晴らしい食材を、自由自在に調理して、魅力あふれる独創的な料理が次々に出てくる。
 今宵も、喜びに満ちた夜を過ごせた。
 トゥラジョアは、その店名のとおりに、「Tout la Joie (all the joy)」を与えてくる店である。

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November 10, 2012

秋の洋食といえば白トリュフ! @ベルエポック

 秋の茸といえば、和食では松茸、洋食では白トリュフということになる。
 白トリュフは、香りが強く、その香りは刺激的かつ官能的であり、秋とともに是非食いたいという食材である。しかし、なにしろ個性的な食材なので、組み立てが難しく、出てもパスタに振りかけるだけ、なんて店が多いなか、ベルエポックの佐々木シェフはやってくれました。
 メインは白トリュフ尽くしのコース。
 どれもバランスが良く、トリュフは主人公にならず、個性的脇役として料理を盛り立てる、そういう素晴らしい料理が続きました。

【白トリュフ】
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 容器から蓋を開けたところ。
 トリュフの濃厚な香りが、ぷんぷんと店中に漂います。

【メイン1】
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 地元の鮑。鮑も香豊かな食材であるが、これにトリュフのリゾットを添えて、二つの香を混ぜて、さらなる高みの香りの世界へと誘ってくれる。

【メイン2】
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 コンソメスープだけでも極めて良質だけど、これに素の味を最大限生かした宮崎牛のしゃぶしゃぶが入り、そこに宮崎の見た目も美しい野菜が色彩を整え、そして、全体を統括するように白トリュフが載り、見事な料理となっている。

【メイン3】
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 ジビエの季節にはまだ早いが、それでも諸塚村の鹿を使って、そこにトリュフを刻んで載せて、ジビエの香りとトリュフの香りとの重奏。

 白トリュフという、個性が強く、かつ美味な食材を用いて、万華鏡のごとく、種々の料理を花開かせてくれた佐々木シェフの技量にただただ感嘆するディナーであった。

 宮崎に佐々木シェフあり、ですわ。

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January 18, 2012

高知編(3) 高知市→土佐山 19.6km

【高知市】
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 高知市の朝。
 高層ホテルの窓から眺める、と高知市の形がよく分かる。
 太平洋が嚢状に陸地に割り込んで湾をつくり、その湾のまわりに都市をつくっている。
 だから目の前を流れているのは川というより湾の細くなったところが正しい表現か。

【はりまや橋】
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 高知の名所「はりまや橋」は昨夜見たが、明るいときにも来てみた。
 日本三大がっかり名所の一つとして有名である、はりまや橋。
 三大がっかり名所のうち、「札幌市時計台」と「長崎オランダ坂」は訪れたことはあるが、「はりまや橋」は初めてである。
 がっかり云々はともかくとして、名所になることがおかしいような、なんということもなき橋ではある。
 ただ高知市の、ど真中にあるものゆえ、目立つといえば目立ちます。

【高知城】
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 高知市を散策したついで、高知城にも登ってみた。
 土佐藩の城、高知城は江戸時代からの建物が残存しており、重要文化財の指定も受けている。
 天守閣からは、高知市を一望でき、広々とした風景を楽しめる。

【山に向かって】
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 高知で有名な料理店といえば、私は「オーベルジュ土佐山」しか知らないので、今夜はそこに泊まり、夕食をとることにした。
 「オーベルジュ土佐山」は高知市郊外に位置していたが、自転車を走らせると、えらい山奥にあった。「土佐山」という地名なんだから、山で当然なんだろうけど、…高知の山はけっこう深い。いったん山に入ると、ずっと山である。

 高知は海岸線が長くて、海に面しているところがずっと続くが、そのわりには平地は少なく、実質上は山国なのである。
 土佐藩は土佐二十四万石と称されていた。四国の半分ほどの面積を占める、大きな藩のわりには石高が少ないなと漠然と思っていたが、高知に来たらその理由がよく分かった。

【オーベルジュ土佐山へ】
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 オーベルジュ土佐山へは、山奥へ、山奥へと入っていくのであるが、そんな山奥を訪れる人は、オーベルジュ土佐山に泊まる人しかいないので、標識は要所要所にしっかりとあり、迷うことなくたどり着ける。

【オーベルジュ土佐山】
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 山を登って行き、ようやく到着。
 川ぞいの山荘風の洋館であり、温泉施設もあった。
 人里離れ、のんびりとくつろぐ、そういう使い方をする宿のようである。

【夕食】
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 オーベルジュ、というからには洋食系の料理が出て来るかと予想していたけど、和・洋、混じった創作系の料理であった。
 こういう山奥に料理宿を出すだけあって、素材には相当なこだわりがあり、メニューには各素材ごとに生産者の名前が書かれてあった。

【夕食】
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 創作系ばかりというわけでなく、土瓶蒸しも出て来た。
 そういえば今シーズン、土瓶蒸しを食べるのは初めてだな。

【夕食】
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 料理はいずれも良かったけど、とくにこの鶏のソテーは、見た目がリズミカルで、そして味も変化に富んでいて面白い料理であった。

【部屋】
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 オーベルジュ土佐山の部屋は、木材を多用したロッジ風であり、音の反響が大変良い。そして部屋には高性能CDプレイヤーが設置されていて、CDの貸出しもしている。
 グールドのCDがあったので、そのイタリア協奏曲を鳴らしてみたら、予想通りに大変良い音で響いた。
瑞々しく、生命力豊かで、霊感にあふれた音。

【不思議物件】
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 オーベルジュ土佐山で見かけた不思議物件を紹介。
 この宿は山奥にあるので、周囲には明かりはほとんどなく、夜には漆黒の闇につつまれる地である。
 ただ、その闇の中、川を越えた山の頂近く、裸の木が一本、枝まできちんと見えるくらいに金色に輝いている。
 おそらくは、よく反射する素材で造った人工の木を、ライトアップしているものと思われるが、高知の山奥、一面の闇のなか、そのようなものが深夜から夜明けまで、ぽつんと輝いていているのは、なんともシュールな光景であった。
 梶井基次郎的世界というか、なんというか。

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December 24, 2011

愛知編(3) 名古屋市 忘年会2日目

【トゥ・ラ・ジョア 海老芋のウニ風味】
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 忘年会2日目の昼食は、名古屋市の創作系料理店「トゥ・ラ・ジョア」にて。
 会員制に近い店であり、名古屋では最も予約の困難な部類の店だそうだ。
 名古屋市在住の食の大御所のような人が今回の忘年会の主催者であったので、そのおかげで我々一行がこの店を経験でき、ありがたいことである。

 トゥ・ラ・ジョアはいちおうフレンチに分類される店なのだが、実質的には大阪のカハラみたいな、自在な創作系の店のようであった。
 その日のメニューを、メニュー表から書き写すと、

 ・源助大根と鮑の椀物
 ・トラ河豚のスープ
 ・海老芋のウニ風味
 ・下仁田葱と真鱈白子のオーブン焼
 ・カニ真丈の甲羅蒸
 ・すだち牛のビーツソース
 ・Mのサラダ
 ・帆立貝ご飯
 ・ブッシュドノエル

 調理も素材も過剰なくらいに手間暇かけているのだけど、フランス料理にありがちな、出来た料理もその流れで「過剰なもの」になる、ということはまったくなく、どの料理も見事にバランスが取れており、スマートかつクールな料理であった。
 同じ創作系の「カハラ」がホームランバッターが次々と出てくる打線とすれば、この店はイチロークラスの巧打者がずらりと並ぶ感じである。

 写真で紹介している料理は、海老芋に辛味風味のウニを芯に入れて、茹でたものに、ウニを和えて、アラレで食感にアクセントをつけたもの。
 相当な試行錯誤を経て、完成された料理なのだろうけど、複雑にして、深く、鮮やかな味にただただ陶酔するのみ。そして見た目も、写真のごとく、優美である。

 トゥ・ラ・ジョアは、ミシュラン言うところの三つ星店、まさに「そのためだけに旅行して訪れる価値のある店」である。
 これは来年も来なくては、と、主催者の予約に便乗して、私も来年の同時期に訪れることにした。


 忘年会2日目の夕食は、名古屋を離れ、京都の割烹「桜田」にて。
 その時間で、自転車で京都市に行くのは無理なので、新幹線で訪れることにする。
 新幹線だと、名古屋から京都までなんて、あっという間だな。

【京都 桜田】
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 2011年忘年会は、「柳家」「トゥ・ラ・ジョア」と個性の強い店を2軒訪れたのち、京料理の伝統の粋のような店「桜田」で〆となる。

 桜田は数多い京料理の名店のなかでも、スタンダードに近い、本流の京料理を出してくれる店である。
 いい素材を仕入れ、それを引き立てさせるような、切り方、煮方、蒸し方、焼き方で、シンプルながらも精緻な計算で成り立つ料理の数々。
 長い歴史のある京都でしか味わえない、「日本人の究極の家庭料理」を堪能しました。

 写真は虎魚の椀もの。
 研ぎ澄まされた出汁が、くっきりと具材の味を際立たさせ、立体的に迫る山水画のごとき世界。和食の世界の奥深さというものを教えてくれます。
 京料理、そして桜田の真骨頂。

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December 17, 2011

大阪編(1) 神戸→大阪 32.2km

【神戸市風景】
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 神戸市の裏山的存在の布引展望台にロープウェーで登って、神戸市の風景を眺めてみた。
 ここから見ると、神戸市って、海と山にはさまれた狭い地に、ぎっしりと建物がつまった街ということがよく分かる。 

【大阪府へ】
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 国道2号線を走行していき、小さな橋を渡ると、ここから大阪府との標識があった。
 県境というのは、どこもそれなりのドラマがあるのであるが、こんなあっさりした県境は初めて経験する。

【リッツカールトン】
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 出張などで大阪に滞在するときはリーガロイヤルを使うことが多いのだけれど、今回は、誰もが素晴らしい褒める大阪リッツカールトンに話のネタに泊まってみることにした。
 部屋に入れば、たしかに凄い。どっかの貴族の部屋のようである。眺めも淡路島まで見えてたいへんよろしい 。
 そしてホテル全体としても、いたるところに個性的な空間があり、ディズニーランドのごときテーマパーク的楽しさがあった。
 観光などで大阪に来る人には、受けるだろうな、という感想。
 しかしビジネスとかで使うには、ちょっと…という感じもある。

【御堂筋イルミネーション】
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 大阪市に来た目的はこれ。
 御堂筋のイルミネーション。道と街が光に満ちている。

【川添】
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 夕食は「川添」で。
 ここは大阪北新地のフレンチで、シェフの川添氏は、あのカハラの一番弟子であり、師匠譲りの創作系の料理を出す店である。
 そして川添シェフと宮崎の食通W氏は、幼少からの付き合いもある方とのことで、大阪市に行ったときには是非と勧められていたので、これを機会と行ってみた。
 料理は小技大技を適宜用いた、創作感と遊び感にあふれた料理。
 楽しく美味しくいただけました。
 写真はフレンチとしては反則の旬の素材を用いた海鮮丼。でも、〆としてぴったりはまっていました。

 Facebookに「リッツカールトンなう。」などと書き込んでいたら、たまたま仕事で大阪市に訪れていた九州在住のワインマニアI氏から、一緒に飲みませんかとの誘いあり。
 それで「川添」で合流することとし、ワイン飲みながら、店主も含めて楽しく歓談。
 Facebookって、遊びのツールとしてはほんとうに便利だなあ。



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