興福寺あたりを散策して、それから昼食を「玄」にて
奈良を代表する風景はいろいろとあるけれど、猿沢の池から見る興福寺の五重塔も、誰が見ても「ここは奈良」という、いい風景だと思う。
興福寺内を散策。
興福寺は国宝の宝庫みたいなところで、この五重塔も当然国宝。
奈良市ではどこからでも目立つ、古都にふさわしいランドマークである。
興福寺では、国宝館も当然訪れるべき場所である。
乾漆八部衆立像(阿修羅像が特に有名)、乾漆十大弟子立像など、その造形の完成度、技術の素晴らしさ、深い精神性、いつ見ても感銘を受ける。
日本の彫像における芸術は、奈良時代に既にこの途方もない高みに達しているのであって、日本の文化の底力を改めて認識できる。…ただし、このへんあたりがピークになっているのも、またなにか納得いかないものもあるが。
興福寺あたりは、道路が複雑に走っており、だんだんと狭くなって、袋小路に近いようなつくりの道もある。
ある道は、「軽自動車しか通れません」との表示が掛けられていたのだが、その道にVWビートルが入って来た。
地元の人が駐車場に入るのかな、くらいに思っていたら、そのビートルはだんだんと狭まり、最終的には車の幅とほぼ同じ幅になる道を、悠々と抜けていった。
…世の中には名人がいるものだなあ、と感心。
蕎麦好きの人なら、誰でも知っている奈良の「玄」。
玄の蕎麦を食うためだけでも奈良に行く価値はある、とも称される老舗店である。
その「玄」は、このように古民家風の建物の店であり、たいへん趣がある。
蕎麦は、せいろと田舎があり、両方を頼んだ。
極細といってよい細さの麺であり、見た目美しく、丁寧さ、繊細さを感じるものである。
食べてみれば、まったく繊細そのものの蕎麦であり、蕎麦の味、香りとも、儚ささえ感じるような、…そして儚さを感じたのち、さらに箸が蕎麦に伸び、一挙に一枚を平らげてしまう、じつに美味な蕎麦であった。
この繊細な蕎麦には、塩のほうが良くあうと思い、ほとんどは塩で食べることになった。
そして、〆の蕎麦湯は、これはトロトロの濃厚なものであり、その対比もたいへん面白い。
いやはや、満足いたしました。
たしかにこの蕎麦店は、奈良を訪れたときは外してはならぬ名店である。