食生活

January 29, 2016

天麩羅なかがわ@築地

 週末は出張で東京。
 大寒波到来ののち九州はまた暖冬に戻っており、気楽な天候になっているのであるが、週末の天気予報をみると、東京は週末にまた寒波が到来し、土曜の朝は雪が積もる可能性があるとのこと。
 東京は雪に脆弱な地であり、これだと先週に全国ニュースで放送されたとおりに、交通麻痺に陥る可能性大である。
 もっとも東京は巨大な都市とはいえ、半径5kmの範囲で歩けば、だいたいどこにも行けるので、足元を固めれば少々の雪が降ろうが積もろうが移動に問題はなかろう。それでそういう情報はあまり気にしないことにした。
 しかしながら今回は仕事なので、さすがに登山靴で歩きまわるわけにもいかないので、こういう場面での最強の靴「ベルルッティ・ウルティマ」を履いて、準備を整えて東京にGo。

 結論からいえば、週末に訪れた寒波は関東を襲いはしたが東京には届かず、雪ではなく雨の日となり、交通機関は全く正常に流れた。
 ウルティマの出番はなかったもの、出番はないにこしたことはないのであり、よかったであります。

 ただ雪は降らなかったものの、やはりそれなりに寒いことは寒く、夜はあったかい食事ということで、築地の「天羅なかがわ」へ。

 天麩羅コースを頼み、最初は車海老から。
 全体に温もっているのに、食感はレア風な海老は、絶妙に熱が加えられたことから、食感がじつに官能的。甘く、柔らかく、ほどよい弾力ではじけ、この店の揚げの技術に最初から感心。
 キスは、海老と違ってカラリと揚げられ、全体的によい具合に抜けきって、サクサクした食感で味わうことができる。
 それからのイカ、メゴチ、タラの芽、茄子、椎茸、どれもどれも、良い素材を最高にいかきった技術で揚げられた天麩羅を味わうことができる。

【穴子】
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 この店のスペシャリティ、穴子丸ごとの天麩羅。
 金串で二つに分けられると、そこから蒸気がぱっと立つ。
 穴子はホコホコした食感で、旨み甘みも十分。

【白子】
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 コースの追加料理で、トラ河豚の白子を。
 白子はそれ自体が素晴らしい素材だが、これを天麩羅にするには、それに向いて、かつ新鮮そのものの素材が必要なので、けっこう大変なのである。(と、某河豚料理店から聞いたことがある。で、滅多に出せないそうだ。)
 この店は、でも日本の台所築地が傍なので、こういう料理も出せるのである。
 じつは、河豚の白子の天麩羅、私は初体験であった。

【天茶】
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 なかがわでは、〆の料理は、かき揚げの天茶か天丼を選べる。
 そして天茶は、茶ではなく、出汁なので、さらに酒の肴になる。
 そういうわけで、天茶を肴に酒を飲み、寒い東京の夜を暖かく過ごすのであった。

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March 23, 2014

最後の最後まで香港を味わいつくそう Tapagria(スペイン料理店)@香港尖沙咀

 香港最終日は、15時15分発の福岡行きの飛行機で帰国である。
 チェックインは済ませたものの、国際便ゆえセキュリティーが厳重だろうから、時間的に余裕を持って飛行場には行きたい。
 しかし、ツアーメンバーは最後のギリギリまで香港の食を味わいたいとの希望が強く、最終日の12時から尖沙咀の料理店で食事をして、それから飛行場に行くとの日程が組まれた。

 小心者の私としては、外国の飛行場には2時間くらい前に着いておきたいのだが、…旅行慣れてしたメンバー達がこれで間にあうと判断しているのだから、その計画に乗ってもよかろうと思い、参加することにした。

 昼食はTapagriaというスペイン料理店にて。
 なぜスペイン料理かといえば、中華料理ばかり食べていたので、少しは趣向を変えてとのことらしかった。
 そして本日の会食は香港の有名中華料理店のオーナーの御招待によるもので、オーナー氏には今回のツアーに於いてもいろいろとアドバイスを頂けたとのことであった。

 …じつは今回の食ツアーではそのオーナーの店も入っており、他の人たちはその店に夕食に行ってたのだが、あいにくその日はオペラの日であったため、私としては3時間以上かかるオペラの前にがっつり食事をする気にはなれず、そこだけパスしていた。それで私だけがNice to meet you.の挨拶となった。ついでながら、メンバーのY部長はオーナー氏の店での夕食の際、挨拶に現れたオーナー氏をギャルソンと勘違いしていたそうである。この店でオーナー氏が自己紹介したとき、Y部長は仰天していたが、まあ、そういう勘違いがあってもおかしくないほど、オーナー氏は若く見える人であった。

【料理&サングリア】
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 料理は、タパス、パエリア、ハムと帆立のソテー、アサリスープ、イベリコ豚のロースト、ハンバーガーなどなど。オリーブオイルとガーリックやスパイスの利いた、いかにもといった感じのスペイン料理の数々であった。
 新鮮な魚介類と、油、スパイスの多用というところで、スペイン料理は潮州料理と似たところがあるなとも思った。
 飲み物はサングリアというスペイン名物のワインカクテル。軽い味わいの飲み物で、昼でもサクサクと飲めます。
 オーナー氏はじめ地元の人たちと歓談しながら、デザートまでしっかり食って、終わったのは午後1時40分。

 それからタクシーに乗って九龍駅まで行き、特急で空港駅へと着。
 セキュリティーチェックはスムーズに行きほっとしたもの、香港国際空港は広く、構内を列車で移動する必要があったりして時間がかかり、搭乗ゲートに着いたのは、チケットにこの時間までに来てくださいと書かれていた14:50分ちょうどであった。まさにギリギリ。
 しかし空港駅から一直線に登場口まで来た私と違って、他の人達は、香港空港には美味しいサンドイッチの店があるとか、面白い土産を売っているとかで、それらの買い物に行ってしまっている。
 搭乗が始まっても姿を見せない彼らを、間にあうのかねと心配しながら私は待っていたが、彼らは搭乗する人の列がそろそろなくなり、乗務員たちが「福岡行きのお客さんは残っていませんか」とロビーの人たちに声をかける頃にようやく姿を現し、悠々と飛行機に乗った。
 食べ物に留まらず、買い物などでも、最後の最後まで香港を楽しみ尽くす。旅の達人とは、こういう人たちのことを言うんだろうなと私は思った。見習いたいものだが、チキンハートな私には、いつまでたってもこの域には達せられない、とも思った。

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March 22, 2014

徳記潮州菜館@香港西環

【二階建トラム】
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 香港3日目の夕食は西環の「徳記潮州菜館」にて。
 香港というところは地下鉄が縦横に張り巡らされていて、たいていのところは地下鉄の駅から徒歩圏内にあるのであるが、西環には地下鉄駅がないので、上環駅から何らかの交通手段を使う必要がある。
 とりあえず上環駅まで行って地上に出ると、駅前に路面電車(トラム)が走っていた。路線図を見ると店の近くまで行くようなので、これを利用。香港は公共交通機関が発達していて、便利である。また殆どの交通機関は共通のプリペイドカード(オクトパスカード)が使えるので、小銭を持ち歩く必要もなく、これもまた便利だ。さすが、国際観光都市。

【徳記潮州菜館】
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 徳記潮州菜館は潮州料理の店である。
 潮州料理というのは福建省の海沿いの地域の郷土料理である。新鮮な魚が手に入ることから、それらを使った蒸し料理や煮物がメインで、店頭に並んだ食材を客が選んで、それを客の好みに料理させるのが代表的形式だそう。

【メニュー表】
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 潮州料理は基本的にはアラカルトで頼むのがいいようであるが、今回我々は選択する時間があまりなかったことから、コース料理を選んでみた。
 8人前で、計1488香港ドル(約2万円)。これなら店の名物がそれなりに網羅されているであろう。

【前菜】
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 前菜は、イカや海老、蟹、白身魚のすり身を揚げたもの。それに野菜サラダに、中国クラゲ。
 この時点でコース料理にしたことの失敗を悟る。
 これは量多すぎ。そしてこのあと、7品も来る。
 この量は、普段でも多すぎと思うに違いないのに、我々は2時間半前に龍景軒でけっこう食っており、いくら胃袋の強い人たちの集団とはいえ、完食は無理であろう。
 …もっとも、その状況でも最後まで完食を目指した者が、約一名いたことはきちんと書いておこう。

【帆立と海老とブロッコリー炒め】
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【豚肉、ハムの盛り合わせ】
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 豚肉は八角と中華スパイスで香りつけされ、漢方薬っぽい、いかにも中国の下町的な香りがあった。

【清蒸魚】
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 中華料理では、清蒸魚はいろいろなヴァリエーションがあるようで、これは潮州料理的な調理が為された清蒸魚だったようだ。どちらかといえばあっさり目の味付けである。
 魚はハタで、新鮮なたいへん質のよいもの。

【フカヒレスープ】
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 場末っぽい雰囲気の店であったが、高級食材も使っており、フカヒレスープがコースに入っていた。

【八宝菜】
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 魚の浮き袋の干物、海老、貝、サヤインゲン、コーン等の炒め物の餡かけ。
 浮き袋の食感が面白い。味付けの処理も丁寧である。

【アワビの餡かけ】
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 アワビと中国野菜の炒め物に、濃厚な味の餡をかけたもの。
 この料理も高級食材を使ったものである。

 このあと、鶏料理が出る予定であったが、8時からのガラコンサートの時間が迫って来たので、テイクアウトにした。

 慌ただしい食事だったゆえ、どうも印象が散漫になっているのだが、どれも個性的で面白い料理であった。
 次回来るならば、潮州料理風に食材を選ぶところから始めたいものだ。

【店外】
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 この店はコストパフォーマンスの良いこともあり、地元民に人気のある店のようで、我午後6時を過ぎる頃から店は満席となり、外にもずらりと行列ができていた。
 地元民に愛され、そして時にマニアックな観光客も来る、そういう店であった。

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広東料理:龍景軒@香港中環

【フォーシーズンホテル】
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 フォーシーズンホテル内にある「龍景軒」は広東料理の店であるが、広東料理にとどまらず、全中華料理店のなかで、香港のトップクラスの店とのことである。

 フォーシーズンホテルはショッピングセンターも併設している巨大な施設であり、ちょっとした町レベルの規模がある。景龍軒はホテルの4Fなので、玄関からまずはエスカレーターに乗って4Fを目指すが、エスカレーターはあちこちに分散しており、それらを使いながら4Fに着いたけど、そこには広大な庭園が広がっており、どこに龍景軒があるのか探すもさっぱり分からず。どうも知らぬ間にホテルを出て、ショッピングセンターに迷い込んだようであった。初心に戻りいったん元の玄関に引き返して、今度はエレベーターを使ったら、それが龍景軒直通であってようやく店に到着。
 私のように、エレベーターを待つのが苦手で、エスカレーターを使いたがる人間は、龍景軒にはたどり着けません。「龍景軒」の情報収集目的で、私のブログにたどり着いた人に情報提供。

【店からの眺め】
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 そういうわけで遅刻して店にたどりついた私であったが、メンバーはメニュー選びに没頭している最中で、食事スタートが遅れてはいなかったので、迷惑をかけたようでなかったのはラッキー。

 頼んだメニューは、こういうものであった。

【小龍包】
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 今まで味わった小龍包とは違って、ずいぶんと優しく繊細な味付けである。

【ワンタン】
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 皮の滑らかさからして違う。中の具も当然よい。

【海老焼売】
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 これは「龍太子蒸餃」といって、この店のスペシャリテ。
 これを食べると、中華料理の概念が全く変わってしまうほどの料理であった。
 まず、素材の海老と、ホタテの素材が抜群に良い。その素材が、一番美味しく食べられるように味付けし、蒸されている。餡に含まれる軽めのスパイスが中華風なので、中華料理かな、とは思えるが、ほとんど和の世界に近い、繊細にして複雑なる見事な料理であった。

【アワビのパイ】
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 これもスペシャリテ。見ていてなにやら楽しくなる料理。
 これは柔らかに煮られたアワビと鶏肉をパイ生地に包んで焼きあげたものである。
 パイのサクッとした食感と、もっちりしたアワビの食感、それに上品な餡の味が特徴的。

【揚げ春巻き】
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【焼き豚】
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【ローストチキン】
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【蛙の唐揚げ】
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【酢豚】
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【魚のボタージュ】
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【麺】
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【炒飯】
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 どれもこれも、素材の良さを上手に引き出し、上品に味を整えた料理の数々。
 私は今まで中華料理って、油や香辛料や辛子をギトギトに使って、なんでもかんでも中華風の味に塗りつぶすようなものと思っていたけど、龍景軒の料理はそういう偏見を吹き飛ばす料理であった。
 …ただし、今回の旅行で色々訪れた店のなかでは、やはりこの店だけが極端に違っており、こういう料理は中華のなかでは相当に異色であることは間違いないとは思う。

【デザート】
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 デザートはゴマ団子に、雪蛤ゼリー。
 これも上品な甘さである。

【デザート(香芒楊枝甘露)】
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 このデザートは龍景軒のスペシャリテで、マンゴー、タピオカ、ザボン、ココナッツミルクを使った手の込んだもの。フレッシュな果実の旨みと、プチプチした食感がたまらない。

【桃饅頭】
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 これは店のバースデーサービス。
 なかなかめでたそうな饅頭である。
 今回、メンバーのなかに丁度本日が誕生日の者がいたので、それを告げるとサービスで出されてきた。
 この店を訪れるときは、たまたま誕生日の人がいたら、是非それを申告いたしましょう。


 龍景軒の料理は、素材の選択、調理の繊細さ、技術の高さ等々、感心するしかないレベルのもので、今まであまり中華料理に興味を持たなかった私にとって、思考のチェンジを強いるものであった。
 これは中華をもっと知るべき、と思い知った。
 というわけで、今回のメンバーは食の造詣の深い人ばかりなので、食事のさいに「日本で、こういった中華料理を出してくれる店を教えてください」とたずねたら、「そんな店はない」と一言で済まされてしまった。

 龍景軒レベルの料理を食べるには、龍景軒に来ねばならないようである。
 そして龍景軒はHPを持っているけど、そのメニューを見ると、たくさんの種類の料理が載っている。
 いつか、これらの料理を食べにまた香港に来てみよっと。

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 龍景軒 メニュー

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March 21, 2014

飲茶:龍皇酒家@香港銅羅湾

 香港二日目の昼食は、香港島の銅羅湾の世界貿易センタービルの12階にある「龍皇酒家」にて。
 この店、飲茶が美味しい店として有名だそうで、今回の旅行メンバーが香港に来たときには必ず寄る店だそうだ。

【海を望む】
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 テーブルが窓側だったので、海を眺めながらの食事。
 古いビルやら、工事中の湾などで、少々殺風景気味だが、それもまた香港の魅力である。

【点心】
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 蒸し餃子、包子、海老と茸の春巻き、カツレツ、小籠包、野菜とアワビの炒め物、炒飯、子豚焼き、中華スープ、などなど。
 一番上の黄色い藁巻き瓢箪みたいなのは、藕斷絲蓮という料理で、この店の名物らしい。甘い小麦粉の生地に海老や果物を入れて焼きあげたもので、今まで食べたことない独特の味であった。
 点心はいずれも出来たての熱々で運ばれてきて、食感、食味抜群であった。もちろん素材も良く、点心として大変レベルの高いものと思う。

 そしてメニューを見れば、点心の種類は大変多い。これが写真もなしに、見慣れぬ文字の料理がずらずらと並んでいて、初心者には何が何やら分からない。
 それを、ディスカッションしながら、外れのないメニューを選びあげるメンバーたちに、私は感心いたしました。
やはり慣れている人は違う。こういう人たちと一緒だと、食事は外れがないので、楽だし安心であります。


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 龍皇酒家

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March 20, 2014

湖南少奶@香港九龍城

 香港到着初日の夕食は、九龍城地区の「湖南少奶」という店で。
 今回の旅のメンバーは高級系の店を好む人が多いので、この店もそのたぐいの有名な店かと思っていた。そして、最寄りの駅でタクシーに乗り、店の名前を示したら、知らないと言う。有名店ではなかったのかとここで知り、とりあえず近くまで行ってくださいと言って、スマホを見てナビをしながら店のあるあたりに到着。

【九龍城地区】
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 香港は、ヴィクトリア湾周囲は高層ビルの立ち並ぶ近代都市であるが、そういうところから外れると、相当に魔界都市チックな雰囲気となる。
 この店は九龍城地区にあるのだが、この界隈、いかにも怪しげな雰囲気に満ちている。そして湖南少奶は容易に見つかったが、ずいぶんと場末感漂う店である。外見は場末ぽくても中に入るとエレガントという店はけっこう経験しているので、この店もその手の店かなと思いながら中に入ったら、やはり外見そのものの、雑多な安っぽいつくりの店であった。

【湖南少奶】
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 「湖南少奶」は、湖南料理を出す店である。
 湖南料理は日本ではあまり知られていない分野の中華料理であるが、名前の通り湖南省の郷土料理であり、四川料理を更に尖鋭化させた料理だそうだ。

 それにしても初っ端からずいぶんとディープな店である。
 その理由は、「せっかく香港に来たのだから、本場でしか食べられないようなものを食おう」というコンセプトがあったからだそうだ。
 この店は、ほとんど地元民しか使わないような店であるけれど、香港在住の食通の人から、「湖南料理では、この店が一押し」ということで選ばれたそうで、さてどんな料理が出て来ることか。

【ブロッコリーを赤・緑唐辛子で炒めたもの】
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【蛙、赤・緑唐辛子とニンニクの石釜焼き】
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【昆布の細切りを唐辛子と香草で和えたもの】
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【豚足と豚腿肉を燻製にして、葱と唐辛子を煮込んだスープで煮たてたもの】
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【ピーマンを赤・緑唐辛子で炒め、酢をかけたもの】
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【川鱸(たぶん)の頭を赤・緑唐辛子と発酵唐辛子で蒸したもの】
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【麺を唐辛子と酢で和えたもの】
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 と、こういったものをまずは注文したわけだが、それらが短時間のうちにずらずらと運ばれ、テーブルいっぱいに並べられる。本場の中華料理って、調理が早いんだなあ。

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 味についていえば、当たり前だが、辛くて酸っぱい。そしてどれもがベースは似たような味付けであり、湖南の人たちがこういうものを大変好んでいるのがよく分かる。そしてこの味付け、決して大雑把なものではなく、かなり複雑な漢方的なスパイスと、それに発酵食品を使っていて、今まで経験したことない味がどの料理にも満ちていて、食べていて面白かった。

 料理はこれからも続き、蒸しパン、スープ、豚リブと餅米の蒸し物など、どれも個性強い料理であった。

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 これだけ大量の料理を食い、酒を飲んで、さて会計となると、一人250香港ドルほどであった。日本円にして約3300円。驚嘆すべきコストパフォーマンスの良さである。
 まあ、地元民専用みたいな店で、観光客などほとんど来ない店だろうから、値段安めなのは予想していたが、それにしてもこれには驚かされた。


 店を出たあとはデザートということで、地元の人に率いられ、お勧めの甘み処でぜんざいのようなものを食べて御開きとなる。

 ホテルのある香港の中心地、尖沙咀に帰り着いた頃は、とっくに日付が変わっていた。
 そして午前1時過ぎというのに、尖沙咀の街は煌々と明かりが灯され、人通りも多く、香港の別名「眠らない街」が、まさにその通りであることがよく理解できた。

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June 24, 2012

コリアンダーはお好き?

 気合いの入った中華料理は様々なスパイスを使い、香り豊かな料理に仕上がっていることが多い。なかには、素材の香りを徹底的に消してしまい、そのスパイスの個性で染めてしまうような、なかなかに微妙な料理もあったりするが、それはそれで中華料理の魅力であったりする。

 先日行った中華料理店の食事会で、メインの料理は「オコゼの清蒸 白髪葱と香草添え」であった。オコゼの質も、蒸し方も、味付けもたいへんよろしく、上物といってよい料理であった。

【オコゼ清蒸 大皿】
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【オコゼ清蒸 取分け】
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 ただ、このオコゼ清蒸、香草がコリアンダーであった。(清蒸では定番の香草ではある)
 コリアンダーは、中華料理では春菜(シャンツァイ)、タイ料理ではパクチーとも呼ばれるが、その独特で強力な香りで有名なスパイスである。

 コリアンダーは本来は日本にはない植物であるけど、似たような香りを放つモノがあるので、香り自体は馴染み深いものだ。

 まずは(1)ドクダミである。

【ドクダミ】
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 湿っぽい季節に、そのあたりの道端、あるいは庭によく生える雑草であり、近づけばきつい臭いがする。
 名前からして怪しげな草なのだが、薬草みたいなものでもあり、私も子供のころはこれを干してつくったドクダミ茶を、「身体にいいから」ということでよく飲まされた。

 ドクダミでもけっこう臭いがきついが、コリアンダーの香りを持つものその(2)のカメムシはその遥か上を行く臭さを持つ。

【カメムシ】
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 田圃に近いところに住む人にはとくにお馴染みの昆虫、カメムシ。
 見た目はつややかな緑のきれいな虫であるが、これを迂闊に触ると、悪臭を放つ分泌液を放たれ、どんなに洗おうが数日間は指に臭いが残ってしまう。
 それくらい、きつく、強烈な臭いである。
 これはまさに毒ガスなみの威力のあるもので、たとえば密閉した空間にカメムシを閉じ込め、そこで分泌液を噴出させると、あまりの臭いの強烈さに、カメムシ自身が悶絶死してしまうほどのものであり、…まあ、そういう間抜けな虫でもある。

 という、本邦でも馴染みがあり、それゆえ上品系統の料理には忌避されがちな香りであるが、エスニック料理ではじゃんじゃん使います。

 このオコゼ清蒸でも、春菜がどっさりと乗っているので、香りも強烈だ。
 食べてる途中で、春菜の香りが口から喉までの全体を占め、そのうちオコゼを食っているのか、春菜を食っているのかよく分からなくなってしまう。
 食ったあとの記憶でも、春菜の香りのほうが主に残ってるし。

 まあ、そういう料理であったのだが、食いしんぼうばかり揃っているメンバーなのに、料理全体に手のついていない者や、春菜を全部どけている者がいた。
 このメンバーでは、料理が残ることは相当に珍しい。
 それくらい、コリアンダーは好き嫌いが激しいスパイスであるのか。

 内訳としては、コリアンダー大好き 30%、そこそこ好き 20%、食べられないことはない 30% まったくダメ 20%、といった比率であった。

 私はコリアンダーは好きだけど、日本人相手では使い方の難しいスパイスではあるなと、今回の食事会で思った。

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January 29, 2012

広島編(2)鞆の浦→尾道 31.8km

【朝食@鴎風亭】
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 鞆の浦での朝食は、洋風のこってりしたもの。いかにもホテルの朝食といった感じである。
 本日の目的地は尾道なので距離は短く、それで午前午後とゆったりと鞆の浦を散策してみた。

【一夜干し】
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 漁師町でもある靹の浦は一夜干しが名物で、浜辺に、カマス、カレイ、サヨリ等がたくさん干されている。なかでも、サヨリがキラキラと光り、たいへんきれいである。
 食べても美味しいのだろうけど、見るだけでも名物になりうるものだ。

【仙酔島】
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 鞆の浦は、近くにユニークな地質を持つ仙酔島という島があり、鞆の浦から「平成いろは丸」という船ですぐに渡ることができる。船の名前はもちろん、坂本龍馬が所有していた船に由来。この地で沈没してしまった、という少々縁起の悪い船なのだが、まあ気にしないでおこう。

【トンネル】
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 鞆の浦からは海沿いの道を行き、途中の小高い峠を越えるさいにトンネルがある。
 このトンネル「崖の上のポニョ」に出て来るトンネルのモデルのものらしい。
 映画でのこのトンネルの役割は、一種の異次元空間への入り口であったわけだが、この古いトンネルは言われてみれば、たしかにそういう雰囲気がある。

 もっとも自転車乗りにとっては、トンネルそのものがモンスター的存在であり、長く暗いトンネルでは、ここ無事生きて出られるか?などと(特に交通量の多いとこでは)、よく思うわけで、…トンネル恐いなあ。

【尾道】
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 鞆の浦からは2時間ほど走って尾道到着。
 尾道は中国地方屈指の観光名所であり、私も何度も泊まったことがあることから、今回はpassしてもいいのだろうけど、訪れたい店があったので、尾道泊とした。その店は、串揚店「一口」。尾道の新鮮な海産物を抜群の技術で揚げる店として、名が響いている。

【一口】
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 この店は予約不可なので、確実に料理を食べたいなら、開店前に並ぶ必要がある。
 5時半開店なので、5時から寒いなか並びました。
 なお、とても人気があるというわけでもないらしく、待っていたのは私だけであった。

【一口の串揚げ】
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 さて30分待って一番の客として入り、そこで食べた一口の串揚げは、
 ・・・いやはや、美味しかったです。メニューがずらりと壁に載っているのだけど、どれも大変美味しかったので、ほぼ全部制覇しました。20本以上は食いました。
 タコ、トリガイ、イワシ、キス、カキ、アナゴ一本、ニシ、イカ、エビ、牛、トンカツ、クジラ(素揚げと串揚げ)、コバシラ、レンコン、シシトウ、アサリ、などなど。

 特に海鮮系は微妙な味付け具合と、絶妙な揚げかたで、逸品としかいいようのない揚げ料理となっていた。いわゆる「串揚げ」とは一線以上画した別の範疇の料理。
 尾道はラーメンと海産物が有名なので、尾道を訪れたときは、ラーメン店か料亭に寄っていたが、これからは尾道に来たときは「一口」に限ると思った次第。

 一口の店主は大阪の寿司屋で勤めたのち、尾道で50年くらい前に自分の店を開店。
 寿司屋で始めると設備投資が大変なので串揚げ屋にしたとのこと。修行した寿司店は、握りばかりというわけでもなく、揚げ物もするので、その時覚えた技術と、それからの独自の工夫でこの店のスタイルを築き上げたそうである。

【浅蜊の唐揚げ】
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 一口のスペシャリテの一つである、浅蜊の唐揚げ。
 これは危険なほどビールが大量に飲めてしまう、酒盗ならぬビール盗的料理。ひたすらぐいぐいとビールが飲めた。

 もっとも、隣の席の常連客は、「自分は呑み助なんだけど、この店では料理が美味すぎ、酒を飲むとせっかくの料理を食う量が減ってしまうから」と言って、その言葉通りウーロン茶一杯で大量に串揚げを食べていた。
 見習いたい態度に思えるけど、修行不足の私にはとても無理だな。

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June 21, 2011

御馳走の記@藍海(宮崎市・中華料理) その2

【効外油菜遠】
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Serve1

 莧菜(ひゆ菜)の炒めもの。
 中国野菜らしい味の強さと歯ごたえの良さが特徴的。
 これをピリ辛風味の辛子和えと、蟹玉和えの2種類でいただく。
 なお給仕をしている姿が写っているスーツ姿の人物は、シェトランホテルのサービスマンではなく、食事会参加者のリトル・キミヤ氏である。(ビッグ・キミヤ氏のほうは今の時間は光洋で鮨を握っており、ミドル・キミヤ氏は光洋で和食をつくっている。)
 リトル・キミヤ氏は光洋は忙しいのに、時間をもらって食の幅を広げるための勉強に来ているはずなのだが、大皿の料理を見ると、横浜サローネで鍛えた給仕の腕をついつい発揮してしまうようであり、全員に料理を配る。それは、たしかに上手な取り分けかたと、そしてタイミングであった。

【上頂鳳凰燉】
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 手羽先に、挽肉餡とフカヒレを包み、それを濃厚スープで煮たもの。
 控えめに入れられたフカヒレのむにょむにょした食感が面白く、その食感を引き立てるスープと鶏の味がまたよろしい。

【清蒸鮮石斑】
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 中華料理のスター、清蒸魚。酒蒸するのは、キジハタである。
 このキジハタの素材が抜群であった。そのまま和料理に使えるような鮮度抜群のものが、強引な中華味付けをされ、それに負けてたまるかというがごとき、本来の旨さを押し出し、じつに見事な料理となっていた。
 本日の文句なしのNo.2といえる、すばらしい美味。

【豉汁燜渡蟹】
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 渡り蟹とマッドクラブの野菜炒め。
 元々、味濃厚な二種の蟹に、これも味豊かな野菜を加えての、強力な料理。
 これは美味い。美味いのだが、さすがに、今までの濃いい料理の流れとしては、疲れてきた。
 本日の食事会は、若手の人は半分ほどであったが、横目で見るかぎり、彼らも疲れていた感じであった。

【揺柱香炒飯】
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 炒飯はその料理店の核とも言われるが、この薄味で整えた、ハラリとした食感の炒飯は、核そのものといっていいようなもの。
 この炒飯だけでも、この店に来る価値があると思います。

【衣笠茸・浮袋・椎茸のスープ】
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 料理が始まる前に、スープを最初にしますか、最後にしますか、との問いが店側からあった。
 そう言うからには、これが藍海の最強兵器のはずなのだろうが、最終兵器が最初に来てはそこで終わってしまうというNKさんの提案により、このスープは最後に出てくることとなった。

 はい。ノックアウトです。

 金華ハムの旨みを徹底的に仕込んだスープに、宮崎諸塚産の極上椎茸の出汁がからみ、それを飲んだ人がみな言葉を失ってしまうまでの、広がりと深みのある、…遠い世界へ連れて行ってくれるがごとき、黄金のスープ。
 「藍海」では、御馳走ばかりの料理であったが、そのなかでも最上のものが、このスープであった。

 最初から最後まで、めくるめく豪華な食の世界を経験させていただいた。
 これって、…大阪の「カハラ」以来の経験だな。
 でも「カハラ」がコース23000円なのに比べ、藍海はコース8000円。
 比べてみれば、素晴らしきCPである。
 ただし料理の内容からすると、それなりの大人数で来ないと、このたぐいの料理は出せないようにも思え、そうすると、本日の大人数参加の料理会はじつに正解であったと感心する次第であった。

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御馳走の記@藍海(宮崎市・中華料理) その1

 何が何やらよく分からないまま適当に使っているFacebookであるが、これは遊びのツールとしてはきわめて有効なことが、近頃分ってきた。
 Facebookは基本的には実物を知っている人しかPartyに入らないわけで、となると各自が互いの趣味嗜好を理解しているので、容易に目的ごとに遊びのイベントの誘いがかけられる。だから定期的にそういうイベントがFacebookに載ることになり、自分の日時の合う日がそこにあれば、それを選択して遊びに行くことができる。
 そういうわけで、今回初めてFacebook発の食事会に参加した。

 とはいっても面子はいつもとさほど変わらぬ人達なんだけど…

 今回の食事会は中華料理であり、宮崎県が日本に誇るバブルの巨塔「シーガイヤ」の一画にあるシェトランホテルのレストラン「藍海」でのディナーである。

 総勢13名の美味いもの好きたち面々の引率者は食通W氏であり、「W氏の連れて行くところ外れなし」というくらいの信頼度ある存在ゆえ、本日の期待度は高まるわけだが、…いつにもまして今回は大当たりであり、豪勢豪奢な貴重な時間を経験することができた。

 あまりに豪華だったゆえ、レポートは2回に分ける。本日はその1である。

【風味三小碟】三種冷菜盛り合わせ
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 まずは挨拶として前菜が。
 鮪、玉子、クラゲが中華風の味付けで出てくる。
 今日の料理は中華なんだ~という気を高まってくる。

【海上鮮鴛鴦】蛤とアワビの二種蒸し
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 蛤自体の素材が大変よろしい。和食派としてはこれをただ焼くなり蒸すなりすればそれで良いと思うわけだが、そうでなく中華風に肉やスープをかけることにより、強引に中華料理にしており、それはそれで納得できる料理である。

【遊水酔中蝦1】
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 ここから、目にも耳にも鼻にも、そして当然口にも楽しい、広東料理の真髄が始まる。
 まずは小柄なサイズの車海老(サイマキ)を大きなガラス瓶に入れ、中国酒(老酒)を注ぎ込む。車海老は当然暴れるが、暴れるうち酒をたっぷり吸いこみ、やがてはおとなしくなる。

【遊水酔中蝦2】
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 こうして、酒を吸い込んだ海老には、全体に酒の香りと味が回る。それを茹でれば、ほんのりと酒の香りが漂い、酒のコクをうっすらと身にまとった、なんとも不思議な味わいの茹で海老の出来上がり。

【焼烤富貴鶏1】
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 次に出てくるのは、この妙な茶色い大きな塊。

【焼烤富貴鶏2】
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 これがなにかと言えば、中国風鶏の蒸し焼きである。
 内臓を抜いたところに野菜を詰め、まわりを岩塩で覆い、ひたすら焼く。
 十分に火が回ったところで、カンカンと塩を砕き、そして中から蒸し鶏が出てくる。

【焼烤富貴鶏3】
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 鶏そのものも美味いけど、中でしっかりと旨みを吸った野菜、それにスープも当然美味い。
 それらをごっちゃにして食べると、混沌として、野性的な料理を楽しむことができる。

 ここまでの料理の演出、料理の濃さだけでもすごいが、まだ半分である。
 これからもメインが続く。

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