イタリア料理

November 03, 2017

イタリア料理:イ・ルンガ@奈良市

 以前、イタリア本場で修業した日本人イタリア料理シェフ15人のその後を追ったルポ「シェフをつづけるということ」という本を読み、料理人という職業の過酷さをつくづくと知ったけど、そのなかでもとりわけ奈良で店を開いた堀江シェフの「イ・ルンガ」が気になっていたので、今回訪れてみた。

【アミューズ】
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 天然鮮魚のカルパッチョ、シャンピニオンのソース

【前菜】
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 熟成ジャガイモのクレマ 牛頬肉のグリル

【パスタ】
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 コッツェ ヴォンゴレ 白身魚の唐墨まぶし

【リゾット】
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 牛ラグーとポルチーニ茸のリゾット 白トリュフ添え
 栗のラルド巻きとパルジャミンソース

【メイン】
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 蝦夷鹿のタリアータ フォアグラのマリネと赤ワインソース

【デザート】
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 店は奈良公園の近くにあり、建物はイタリア料理店とは一見思えぬ、重厚なつくりの古民家。照明、調度品も重厚、壮麗なものが取り入れられており、グランメゾンの雰囲気が濃厚である。そしてスタッフのサービスもしっかりしており、ということはやはりグランメゾンである。

 料理は本格的な北イタリアの料理をベースにさらに多彩な仕事を加えた華やかなものである。ときおりやり過ぎといった感じの、攻撃的な料理もあったけど、これはシェフの情熱が前に出て来た、「熱い料理」と感じられ、たいへん好感が持てた。

 奈良は、かつては「奈良にうまいものなし」と言われた、あまり食文化が盛んでなかった地だったようであるが、現在は若手の意識高い料理人が幾人も進出して、食文化がおおいに高まりつつある地となっている。

 現在、関西は日本有数の国際観光地になろうとしており、しかし京都はもう飽和状態となっているなか、京都よりも観光コンテンツが豊富な奈良は、これからより多く注目されていくだろうし、そこにこのように素晴らしいレストランが存在することは、さらにその魅力を高めていくであろう。

【夜の興福寺】
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 イ・ルンガからは興福寺を横切って、ホテルへと。
 満月の一日前の大きな月のもと、ライトアップされた五重の塔は妖しく美しく、奈良の夜の散策を楽しませてくれる。
 イ・ルンガはこういうすばらしいロケーションにあるのだ。

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October 07, 2017

イタリア料理: ロカンダデルクオーレ@愛媛・東温市

 松山市に一泊。
 松山市の隣の東温市に、美味しいイタリアンレストランがあるとの話を以前から聞いていたので、この機会に訪れてみた。

【ロカンダデルクオーレ】
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 本日は涼しく、美しい月が出た夜空のもと、庭のテーブルでディナー。

【前菜盛合わせ】
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 鯛のカルパッチョ、地元の野菜にイタリア輸入の野菜、猪のサラミ、などなど。
 良い素材を使って、ほどよく火を入れ、丁寧に作られた料理の数々。

【パスタ】
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 パスタはマッケロンチーニを使ってのアマトリチャーナ。
 グアンチャーレもトマトも質の良いものであり、普通のイタリア料理店では出てこないような、本格的なもの。

【メイン】
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 メインは豚肩ロースのグリル。
 これも地元の素材を使ったもので、素材そのものの味に加え、火の通し方もほどよいものである。


 素材はおもに地元のものを使ってはいるものの、料理そのものは見事に本格的なイタリア料理であり、レストランの雰囲気もそうなので、食事中イタリアにいるような気分が味わえた。
 愛媛のなかのイタリア、という感じの店であり、料理の良さもあわせて、貴重な存在であると思う。

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September 03, 2017

「天空の船」&レストラン「Festa del mare」@上天草松島

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 念珠岳から下りて、車で30分ほどの位置にある、本日の宿「天空の船」へと向かう。
 この宿は天草のリゾートホテルであり、天草松島の絶景を高台から望みながら、露天風呂に入られるというのが売りの宿であり、残暑の天草登山で汗をたくさんかいた身には、絶好の場にあるホテルといえる。

 そして部屋から見たホテルの本館の姿。
 たしかに、岬の突端から空へと漕ぎ出す、客船のように見え、「天空の船」が見事なネーミングということが分かった。

【露天風呂】
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 オーシャンビューの部屋のテラスのなかにある、掛け流しの露天風呂。
 リクライニングソファもあり、ここでゆったり時を過ごし、日がな、太陽の動きとともに変わる松島の風景を眺めたりすれば、贅沢な時を過ごせるだろうなと思った。

【夕暮れ】
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 天草の海は西に面しているので、サンセットビューが売り物である。
 本日は、大気が澄んでおり、そこまできれいな夕焼けにはならなかったが、それでも沈む夕日に、刻々と色と姿を変えていく、雲や海の姿がとても印象的であった。

【天空の船@夜】
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 ホテル本館は、夜になると、内部かの明かりが自らを美しく照らし、まるで豪華客船のように見え、このホテルの真の姿は夜にあると思った。

 風呂と夕焼けを満喫したあとは、ホテルにあるレストランで夕食。

【前菜】
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 天草の食材を使った盛り合わせ。
 海老の包み揚げ。天草の名物の天草大王のササミのマリネ。甲イカの昆布〆。
 野菜のバーニャカウダ。

【前菜(オプション)】
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 今が旬の天草赤雲丹。甘くて旨い。
 これはオプションメニュー。

【前菜】
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 アワビと天草野菜のガスパチョ。香草添え。

【前菜】
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 トウモロコシのクロカンテ。クルマエビの唐辛子風味。

【パスタ】
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 天草産魚介類とトマトで和えたサルディニア風フレゴパスタ。

【魚料理】
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 有明町産さざえと鮮魚のソティ・新ごぼうのソース。
 鮮魚はイシガキダイ。

【肉料理】
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 阿蘇赤牛の網焼きもろみと、赤ワインソースと夏野菜添え。


 「リゾートホテル」なるものは、サービスが多角的であり、種々のことに手を出さないといけないので、そのどれもが平均的になりがちで、食事も「とりあえず最大公約数的に満足できるようなもの」が出てきがちなのだが、このディナーを食べてちょっと驚いた。
 本格的なイタリア料理である。
 もちろん素材は地元のものを主に使っているけど、組み立て、調理法は、じつに真っ当なイタリア料理であり、都市部の専門店で十分に通用するレベルのものである。
 こういう地方の観光地で、しかも多数の客を相手にする観光ホテルで、このような本格的かつ真摯なイタリアンを食べられて、イタリア料理好きの私としてはとても感心した。さらに、ワイン揃えも立派なものであり、それもまた驚きであった。

 海産物、野菜の豊富な天草は、それを利用した美味しい店が多いけれど、基本的には新鮮な素材勝負な店が主体であり、そのなかでこのように、素材をうまく生かして、イタリア料理に昇華できる腕を持つシェフのいるレストランがあることは、天草にとって、じつに良いことだと思った。

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August 19, 2017

サーラカリーナ福岡店閉店

 福岡市のイタリアンの名店「サーラカリーナ」が今月末で閉店との知らせが突如届いた。
 レストランが閉店するのにはいろいろと理由があり、もっとも多い理由は経営的問題なのであるが、サーラカリーナの場合は客はコンスタントに訪れているし、よい常連客も多くついている店なのでそれは考えにくく、なぜなんだろうと思ったけど、理由は閉店の2番目に多い理由、「店主の体調不良」なのであった。

 そして、さらには店の借地期間の関係もあって、閉店とともに、あの瀟洒なレストランも取り壊され、更地になってしまうということで、物理的にもサーラカリーナはなくなってしまうのである。

 これはたいへんと、店がなくなってしまう前にとにかく訪れることにした。

【サーラカリーナ】
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 訪れたのはひさしぶりであり、緑あふるる蔦がさらに生い茂っていて、店の外観が変わっており、いったん通り過ぎてしまった。

【Ca' del Bosco Terre di Franciacort 2003】
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 サーラカリーナは一流のイタリアワインを仕入れている店であり、貴重なワインがいくつもセラーのなかにある。
 店の突然の閉店により、それらのワインの行く末が気になるところであり、今回は料理にあわせるのでなく、ワインを主役として白・赤出してもらった。

 白は、フランチャコルカの最高峰、カ・デル・ボスコのシャルドネ。ヴィンテージは2003年。この年には深い意味があり、サーラカリーナが薬院に開店した年なのである。
 店とともに14年の年月を積み上げ、そして閉店の年に栓が開けられる。けっこう劇的。
 ワインは当然、素晴らしい。

【Le Pergole Torte Montevertine 1994】
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 赤はトスカーナのワイナリー「モンテヴェルティネ」の最上キュベ、レ・ペルゴーレ・トルテ1994。20年以上の歳月をかけて熟成されたこのワインは、果実の豊かな香りとともに、奥深いコクがあってすこぶる美味であった。

【パスタ】
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 キャビアのフェデリーニ。

【パスタ】
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 ポルチーニとトリュフのラビオリ。

【パスタ】

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 この時期のサーラカリーナのスペシャリテ 桃の冷製カッペリーニ。

【パスタ】
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 唐辛子とアナゴのパスタ。

 食事に関しては、パスタ尽しをアラカルトで頼んだ。
 サーラカリーナは、やっぱりバスタの実力が抜群に高いゆえ。
 それにはもちろん理由がある。それこそ30年以上も前は、九州においてパスタって、洋食麺料理であり、「ミートソーススパゲッティ」か「ナポリタン」とかしかパスタの概念がなかったのだが、そこに今井シェフはまったく新しい概念を持ち出した。
 まずパスタには形にしろ、細さにしろ、生麺、乾麺じつに様々な種類があること。そして茹で方、オイルの使い方、茸、野菜、スパイスの使い方等々。パスタには無限の素材と調理法があり、サーラカリーナで供されるパスタは、カルチャーショックものだったのだ。
 そして、サーラカリーナは九州のイタリアンの最前線を走り続け、そこで修業したシェフたちが九州の第一級のイタリアンレストランを経営している。

 今井シェフは、九州のイタリアン界にとってレジェンドであり、特別の存在なのである。

 そして、今回食したパスタ料理、素晴らしものではあるけど、今井シェフがキッチンで陣頭指揮をとって料理していたころと比べると、微妙に違うものを感じてしまった。
 今回の訪問は、私はサーラカリーナの料理というより、今井シェフの料理が好きだったんだなあ、と思い知った時間でもあった。


 サーラカリーナは、でも、これで終幕というわけでなく、今井シェフは静養したあとは、また新たなところで店を起こしたいとの意思を持っているとのこと。
 今井劇場はこれでEndというわけではなく、次の幕開けが、これから予定されている、そういうことだそうだ。

 私も、次の開幕の日を、楽しみに待っております。

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June 20, 2015

イタリア料理:GEN@日南市油津

 日南市に、「雛には稀な」と称すべく、本格的なイタリア料理店があり、日南市に行ったときに寄ることにしている。といっても私が日南市に用があるのは、じゃからんた見物くらいであり、だから私は店には「年一度、じゃからんたの季節に訪れる客」として認識されているようだ。

 ディナー料理、あれこれ。

【地魚のカルパッチョ】
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 この店は基本的には地ものを大事にしている。
 そして、この料理の色彩感覚がまたよろしい。

【フォアグラ】
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 フォアグラの表面をキャラメリゼして香を高め、茄子とともに。
 上に載っているのはイカ墨を焦がしたもの。
 イタリア料理の手法以外にも、さまざまな手法を取り入れた複雑な創作系料理。

【浅蜊のアクアパッツァ風】
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 大きな浅蜊(特注品らしい)と、海老、野菜類を煮込んだもの。
 スープもよいし、またプリプリした浅蜊も見事。

【パスタ】
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 サーモンと豆、茸、野菜のパスタ。
 パスタの食感、全体的なバランス。完成度の高い、本格的なパスタである。

【肉料理1】
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 羊のリブステーキ。
 いい肉を使っている。

【肉料理2】
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 宮崎牛を使ったコンソメスープと、羊肉の取り合わせ。
 コンソメスープがまた実に美味。

【デザート】
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 今までのコースで結構な量があったが、デザートは別腹。
 これもおいしくいただけました。


 GENの若い店主は、南イタリアで修業してきた経験の持ち主。
 素材の選択、調理の技術、アレンジの仕方、腕は確かなものである。
 店主は帰国してから、本国のイタリア料理を自分でアレンジした料理を出す店を出したいと思った。しかし、店を出すところが都市部だと、家賃等余分なお金がかかり過ぎ、料理の値段が高くなってしまうことに不満を覚えた。たとえば1万円の料理を出すとき、都市部と地方では、材料に使えるお金が相当に違う。
 イタリア料理で客が出す金はだいたい決まっている。それゆえ、土地代の安い地方で店を出したなら、その値段で、より自身の満足行く料理が作られる。というわけで、自分の地元の日南油津に開店した次第。
 こういうところに本格的なイタリア料理の需要があるとは思えぬが、それは徐々にその手の料理の美味さを浸透させていって、客を増やしていこうという遠大な計画を店主は立てていた。しかしながら、やはり最初のほうは閑古鳥が鳴いていて、参ったこともあったそうだが、結局は当初の目論見通り、客は徐々に増えていき、4年目の今なかなかの人気店になっており、宮崎市から贔屓の客も訪れるそうだ。
 美味しいものは誰でも好きなのだから、少々辺鄙なところにあっても、人は集まってくるという、なんかの格言が作れそうな話である。

 さて、来年もじゃからんととGENを目的に日南を訪れることにするか。
 来年は、じゃからんた満開だといいのだが。

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August 24, 2014

ビーチパーティ (La soirée sur la plage ) @日南伊比井浜

 宮崎は北から南まで美しい海岸線を持っており、そういう海岸線で、宴会が出来るような砂浜使ってワインパーティをやりたいという希望を某氏が持っておられ、それを実現するための話がいつのまにかまとまり、今回開催の運びとなった。

 ビーチでのパーティは普通はBBQということになっている。
 風光明媚なところはたいていまともなレストランとかはなにもない。それで宴会をするには食料・燃料を持参する必要がある。そのなかでBBQなら食材、燃料等の準備が簡単だし、技術を持った調理者も不要で(これはいろいろ意見はあるだろうが)、そしてそこそこの値段がおいしいものも食うのが可能であり、だからビーチパーティはBBQが主体となっている。
 しかし主催者の某氏は食い物に関しては妥協のない人物であった。彼の主張によれば、不便なところでは真に美味しいものを食すのが困難なため、かえってそれを達成すれば、満足感はさらに増す。これをBBQなどやってはそれが体験できず、もったいない話となってしまう。

 というわけで某氏は宮崎市内のイタリアンレストランに強引にケータリングを要請して、日南の伊比井浜に臨時出張店が出来上がることになった。
 それに私も便乗し、いざ伊比井浜へ。

【臨時出張店】
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 伊比井浜は宮崎有数の良い波の押し寄せる浜で、サーファーのメッカみたいなところであり、普段はサーファー達が波乗りを楽しんでいるはずだけど、日暮も近いなか、今は浜辺には宴会の準備をする人たちのみであった。

【浜辺 日暮前】
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 浜辺にはタープのもとにテーブルがセットされ、シャンパングラスに、シャンパンが用意されている。
 …これって、南仏とかなら似合う風景だよなあとか思う。でも宮崎日南では、なにか無理があると思わぬでもない。

【調理器具】
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 ケータリングはいわゆる仕出しとは違い、その場で調理をするものゆえ、こんな野外では大変である。
 それでも、それ用の様々の調理器具を持ってきて、うまく調理してくれたレストランスタッフに感謝。

【ピザ】
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 この店はピザが最大の看板であり、経験豊かなシェフが高品質の小麦粉を用いた生地を上手に熟成させ、石窯で焼き上げるというのが売りである。
 しかしさすがに、仕込んだピザは持ってきたものの、ビーチに石窯を持ってくることは出来ず、移動式の器具で焼くことになった。
 オーナーは店の真のピザを出せずに悔しがっていたけど、十分に美味しかったです。

【ブイヤベース】
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 ビーチサイドパーティゆえ、ブイヤベースはやはり出なければ。
 そして、これはプロの味。具材、出汁、全てがよい。
 浜辺の料理で、これほどあうものもない。
 さらにこれに加えて、この出汁を使ってのリゾットも〆に出てきました。じつに美味。

【日が暮れて】
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 九州は終末は台風が来るなり前線が南下するなり、天気の悪い日が続いていたけど、本日は幸運なことに晴れであった。しかも新月だったので、日が暮れてからは闇が濃くなり、天空に横たわる天の川がクリアに見えて、人里離れた地での夜の宴会の魅力を満喫することができた。
 ただ、風が強く、ずっと浜辺を風が吹き荒れていた。
 そのうちタープが吹き飛ばされ、…結局タープを回収しての宴会となったけど、満天の星空のもとの宴会もたいへん趣あるものであった。

【花火】
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 誰もが、イタリア料理を食べ、ワインを飲み、ということを楽しんでいたけど、それでもビーチパーティゆえ、花火もしようということに。
 周囲に明かりのないなか、こういう線香花火みたいなものは、かえって明かりがまし、夏の風情を楽しめた。

 このケータリング ビーチパーティ。
 ワイン会グループでは初めての試みだったそうだけど、この雰囲気での食事だけでもとても満足できた。
 そしてせっかくこういう美しい地で行うのだから、前後に野外イベントを加えればもっともっと楽しくなりそうなので、それを考慮し、さらに続けていきたいと、おおいに希望した次第であります。

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January 11, 2014

イタリア料理:フォリオリーナ・デッラ・ポルタ・フォルトゥーナ/Fogliolina della Porta Fortuna@軽井沢

 イタリア料理が好きな人なら、誰でもその名前を知っており、伝説的な存在となっているレストランが軽井沢にある。レストランは上記の長い名前の店で、シェフはイタリア料理界の鬼才として知られる小林幸司氏である。

 この店が伝説的存在になっているのには、いろいろな理由があるのであるが、その一つは予約がとても困難なことである。
 小林シェフは創作系イタリア料理の名人で、その料理は独創的、芸術的なものであり、ゆえに調理に手間がかかりすぎ、一回に対応できる客の数が限られてしまうため、一日に昼・夜各一組ずつしか予約が取れない。そのため需要に対して、供給がまったく追い付かないので、予約がたいへん困難となっている。
 それで私もこの店については、名前はよく知ってるが、結局行かないまま終わる店だなくらいに思っていた。ところが、マリーエ時代からの常連氏が予約が取れたとのことで、参加のお誘いがあり、ありがたくそれに便乗し、はるか軽井沢まで遠征。

【店の前】
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 この店、軽井沢でも辺鄙なところにあり、位置は分かりにくいはずだが、有名店であるため地元のタクシーの運転手はだいたい知っており、軽井沢駅で「小林さんの店」といえば通じる。
 軽井沢、雪道を走って行き、このイタリア国旗があるところが店の入り口である。

【メニュー表】
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 ダイニングに入れば、窓から見える庭には、白い雪が積もっている。暖炉には火がくべられ、外とは隔絶した心地よい空間。デーブルにはメニューが並べられており、本日のコース料理とワインの内容が詳しく書かれているが、それがずいぶんと達筆である。最初のほうは、Proposta di Fogliolina e Fortuna / Vino Rosso alla Bagne Maria profumo di gingaroとなんとか読めるけど(正確な綴りは自信ない)、後のほうになると、筆に勢いがついてきたらしく綴りが絵画的になってきて、よほどイタリア語に慣れた人でないとたぶん読解不能。このメニュー表だけで、「この店は尋常な店ではない」と分からせてくれる。

 それはそうと 、迂闊な私は、上の 一行≪Proposta di Fogliolina e Fortuna ≫を見て、「最初から自分の店の名前を間違っているけど、これはなんなんだ? なにかのギャグか?」と思ってしまっていた。
 今、blogを書くにあたってメニュー表を見直したところ、あっさりと疑問解決。というか、店の中での会話で「店名のうち、Fogliolina(葉)は小林シェフの奥さん葉子さんから取られている」との知識を得たことから気付かねばならなかったのだ。あとのFogliolina の次のFortuna(幸運)は当然小林幸司シェフのことだろうから、これは「葉子と幸司の提案」、すなわち「今日のメニューは小林シェフ夫婦の二人でつくり上げたものです」との意味だったのである。
 …しかし、普通はやっぱり分からないよなあ。

 そして、食前酒ののち、料理が運ばれてくる。

【前菜1】
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 鹿肉のローストに、シチリアのチーズと黒胡椒、蕪の薄切りを乗せ、それにニンニク、アンチョビ、野菜のスープをかけたもの。
 味が豊かで強い食材の、多重奏のような料理。
 主役は鹿肉なのだろうけど、どれもが主役のようでもあり、なんとも賑やかな料理である。

【前菜2】
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 ヒメジのムニエルに野菜とアーティチョークオリーブ等でつくられたスープに赤ワインビネガーで味を整えたもの。
 白身魚にしては味の強いヒメジに、これも個性の強いソースがからみ、豊かな香りと味を楽しめる。

【スープ】
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 白インゲン豆と、茸、ニンニクなどのスープと、黒キャベツ、ドライトマトのピュレ。これにフォアグラのロースト。

 …と、今までメニューを簡潔に並べてみたけど、この店では一品ごとにシェフが運んできて、そこで料理の説明がある。
 これがまたやたらに詳しくて、聞いているうちに唖然呆然とする内容の濃さ。
 このスープでいえば、
 (1) まずトスカーナ産の小粒の白インゲン豆を使う。これを茹でる。
 (2) 合わせるのはまず茸である。この時期が旬のイタリアの野生のオルモ茸(フランスではシャントレル茸)、これをオーブンでロースト。これに薄切りしたエシュロット、ニンニク、ローストしたハムを加え、香りを立てる。それに白インゲン豆を加えてから、野菜のスープを入れて煮込む。それをミキサーで濾してスープの出来あがり。
 (3) 緑色のピュレは、イタリア産の黒キャベツに、ニンニク、エシュロットを加え、それに半分のドライトマトを加えて酸味をつけて、さらに野菜のスープを加えて煮込んだあとミキサーにかけて濾したもの。
 (4)なかに入っているのは鴨のフォアグラ。紙で包んで焼き、香りを高くして、それから表面を強く焼き、オーブンに入れてローストして切り分けたもの。

 という複雑にして大変な手間暇をかけてものである。この長く難解な手順について、それを、料理の温度が適温のうちに一挙に怒涛の早口でシェフが語り、その内容と語り口にテーブル一同圧倒されるということが、料理が運ばれるごとに続く。

 いやはや、料理そのものも一流の芸であるが、このプレゼンもまたシェフの一流の芸となっている。

【パスタ】
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 パスタはフィットチーネのカルボナーラ風。
 ホロホロ鳥の卵黄を使ったパスタに、チンタネーズ豚の頬肉、チコリ、黒トリュフなどを合わせている。

 香り豊かで、それに個性的なパスタ麺と、食材の取り合わせで、いかにも豪華なパスタとなっている。

【メイン】
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 メインは野生の山鳩の胸肉の鉄フライパン焼き。
 サルミソースは山鳩の肉と内臓と骨に人参、白玉葱、生ハム、セージ、白ワインビネガー、赤ワインを加えてオーブンで煮込んだあと、骨を除いて細かく刻んだもの。さらにサフランを使った羊のチーズを熟成させたものをピュレにしてホロホロ鳥の卵を溶いたものをソースにして合わせている。
 野菜は苦みのあるイタリア産のもの。

 このサルミソースが、まさに絶品であり、それぞれの特徴あるソースと素材とぶつかりあって、さらに味を変化させる。

【チーズ】
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 羊と牛を半々つかった白カビチーズの表面を炙ったもの。これにアザミのフリットを添えて。

【デザート】
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 デザートは林檎のコンポートにチョコレートソースをかけたもの。


 フルコースを通し、小林劇場とも称すべく、独自の世界にどっぷりとつかれた。シェフの目指していた「非日常空間の演出」の見事な具現化と思う。
 いやはや、イタリアンレストランは数あれど、これほどまでの個性の強い料理と空間は、まずはないと思う。というより、レストランの範疇を越えたところに、この店は存在しているように思える。

 ただ、この店での料理、美味い不味いでいえば、もちろん不味いわけはなく、美味しいに決まってはいるものの、万人向けの美味しさかといえば、疑問なしとはいえない。目指すものが尖鋭あるいは高すぎ、どうにも私のような一般人にはついていけないところもあった。
 ここでの調理はなにかの化学実験のようでもあり、出された料理は精密にして複雑なる化学実験の成果のようにも思える。それこそ、シェフからは、この世の様々な物質を集め、それに種々の手を加え、ついにはそこから全く別の究極の物質を生み出そうと努力した古の錬金術師のような鬼気迫る熱意、執念が感じられ、そうなるとこの店の料理は美味い、不味いなどを超越した次元でつくられて当然とも思える。
 それで、この店の料理を食べていると、「そもそも料理とはいったい何なのか?」という根源的、哲学的な命題まで頭に浮かび、そうだ、料理とは舌でのみ味わうものではない、頭でも味わうべきものなのだ、などと考えてしまう。

 とにもかくにも、伝説的存在の小林シェフの料理、聞きしに勝る独創的にして個性的なものであった。まさに世界に一軒、オンリーワンの店。イタリア料理好きな者にとっては、必ず経験すべき店。
 予約の超困難なこの店を体験でき、とても幸運であった。このような機会を与えてくれたY部長にひたすら感謝。

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December 22, 2013

サーラカリーナでクリスマスディナー

 福岡市に来たので、サーラカリーナでディナー。
 この店ではアラカルトで頼むことが殆どなのだけど、今はクリスマスシーズンなので、メニューはクリスマスディナーコースしかなく、久しぶりにコース料理を。

【アミューズ】
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 アミューズは、一口で食べられるようにスプーンに載せたものが3つ。黒米ピラフ、キャビアと冷製カッペリーニ、リコッタのパンケーキなど。いつものプレートで出されるものとよく似た感じだけど、これがスプーンに載るとまた新鮮な印象を受ける。

【スープ】
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 店の実力をよく示す、澄み切った味のコンソメスープに、小さな詰め物パスタ。

【前菜】
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 生ハムは蝦夷鹿と牛。山羊のチーズと野菜のサラダ。

【メイン1】
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 メインの魚料理は、鰆、平目、鮪、タラバガニ、紫ウニの食材を使って、丁寧に手を加えて、小さくまとまった、美しい料理が皿に並ぶ。
 サーラカリーナならではの、一枚の水彩画のような、芸術的な料理である。

【パスタ1】
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 最初のパスタは、オマール海老のラビオリにトマトとバジリコソース。

【パスタ2】
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 続いてのパスタは、白トリュフとブラウンマッシュルームのラグー。
 トリュフをかけているところから、濃厚なトリュフの香りがテーブル中に漂う。

【トリュフ】
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 白トリュフ、置いているだけでもじつはいい香り。
 このトリュフ料理がパスタだけなのももったいないので、追加でリゾットを頼んだ。

【リゾット】
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 香ばしいチーズのリゾットに、さらに香りを高めあうトリュフが合わさり、なんとも豊かな香りを楽しめるリゾットの出来あがり。

【メイン2】
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 メインの肉料理を、ここはストレートに尾崎牛の炭火焼。
 とても上手な火の入れ方であり、尾崎牛の良さが十二分に味わえる。

【デザート】
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 デザートはクリスマスケーキとのことらしい。
 ホワイトチョコレートは雪に見立てているようだけど、円筒形のケーキはサンタの煙突?


 久々のフルコースであったが、いずれの皿も繊細にして丁寧なもの。
 サーラカリーナの醍醐味を味わえた、素晴らしい料理の数々であった。

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August 25, 2013

サーラカリーナ@8月

 8月のまだ強い日差しで庭園の緑が生き生きと輝くサーラーカリーナにてランチを。
いつものごとく、本日のお勧めの品々をアラカルトで。

【パスタ1】
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 夏らしい彩りで、唐墨、烏賊、パブリカのスパゲッティ。
 鮮やかな原色がパスタの上に華やかに開く、見て楽しく、香りもよく、そして食べればもちろん美味しい、二度も三度も愉しい料理。

【パスタ2】
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 今井シェフの自慢の新作だそうで、本日一番のお勧め料理。
 オマール海老のラビオリで、外から見るとなにやらよく分からない料理だけど、割ってみるとまた複雑な料理である。
 オマール海老、白身、ホタテと魚介類を練りこんだものを包み、それに野菜にニョッキをあわせ、海老のソースを添えるという、サーラカリーナにしては珍しく濃厚系の料理。
 でも、もちろん全体のバランスは絶妙で、美味このうえなし。

【パスタ3】
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 〆のパスタは、強めの料理で、タリアテッレのポロネーゼ。これは赤ワインによく合います。

 このほか、前菜盛り合わせ、魚介類のフリット、ニョッキなども頼み、ランチといえど、よく飲みよく食べ、いつもながらの大満足のサーラカリーナであった。


 ところで、サーラカリーナの最新のニュース。
 免許皆伝のお弟子さんが独立して店を出すことの多いサーラカリーナであるが、今度阿蘇の瀬の本に、直営の支店を開店するとのこと。
 場所は高級旅館の界ASOとかフレンチのアマファソンとかある、熊本の食好きの者なら誰でも知っているあの界隈であって、そこに新たにイタリア料理店がまた加わるわけだ。
 なぜ瀬の本?というのは、今井シェフが元々そういった高原の地が好きだからだそうで、いずれはそこに住むのでは、なんて話も出ていた。
 10月末にオープンとのことで、宿泊も一室あるというオーベルジュでもあり、これは訪れてみないといけませんな。

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July 27, 2013

夏のサーラカリーナ 

 福岡での夕食はイタリア料理、薬院のサーラカリーナにした。だいたい行動がワンパターンな男なのである。
 思い立っての当日の予約だったので、店はほぼ満席だったのだが、本来は5~6人用である個室なら空いているとのことで、そういう所を小人数で使うのも勿体ない話であるが、せっかくなので使わせてもらうことにした。

【前菜】
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 前菜は、桃の冷製カッペリーニ。
 さっそく食欲の進むメニュー。

【前菜】
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 ムール貝の白ワイン蒸し。
 ムール貝のほどよい柔らかな食感がまずよろしい。そして、ムール貝のエキスがつまり、スパイスもほどよくきいているスープがまた絶品。これにフランスパンをひたして存分に味わおう。

【パスタ】
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 唐津の赤ウニを使ったスパゲッティ。
 赤ウニの旨みと甘み、それがパスタと絡み合って、どちらの魅力も高めあう。

【パスタ】
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 アーティチョークと仔羊と黒トリュフのフェットチーネ。
 香り、味、全てが濃厚であり、パスタの味もまたそれに拮抗する豊かなもの。

【リゾット】
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 タコミンチのリゾット。
 海の香り、それに食感が面白い。

【肉料理】
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 メインは、蝦夷豚とバスク豚のアロスト。
 素材が抜群に良いし、それに火加減もまた絶妙。
 ピノネロ 2010 FRANZ HAASとの相性もばっちりである。

【厨房】
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 ところで、サーラカリーナの個室は初めて利用したのだけれど、厨房がダイレクトに見えて、スタッフの働き具合がよく見えて面白かった。
 特に幾人ものスタッフを従える今井シェフはホール、キッチンとも全てを把握しており、料理の流れを統括する、獅子奮迅とでもいうべき仕事ぶりであった。本日66歳の誕生日を迎えた今井シェフであるが、ますます意気軒高というところか。
 この仕事ぶりをみていると、サーラカリーナの独自の料理の流れにおいて、まさにこの時というタイミングで皿が出て来るその理由もよく分かった。まあ、その流れを完璧にするために、シェフ自ら皿を持ってきたりするのには、恐縮してしまいましたが。

 庭やインテリアを楽しめるホールもいいけど、サーラカリーナの更なる魅力を知るためには、機会があれば個室も選択に入る、ということを書いておこう。

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