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June 2020の記事

June 27, 2020

森の貴婦人に会いに行ってひどい目にあった話

【森の貴婦人 オオヤマレンゲ】

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 その清楚にして華やかな佇まいから、「森の貴婦人」とも称される山の名花オオヤマレンゲ。美しい花であるが、標高1000m以上でないと育たない樹に咲くため、高いところに行くことが好きな人しか見ることのできない、やや観賞に難易度を持つ花である。
 この花は梅雨の時期が開花の旬であり、そして雨にそぼ濡れた姿がより魅力的であるため、少々の雨くらいは気にせずに山に登って、そしてその姿を愛でるということがままある。

 6月最終末、土曜日の天気予報では梅雨前線が北上して北部九州は豪雨であるけど、宮崎は午後までは薄い雲がかかる程度の曇り時々雨で、そして夕方から豪雨になるとのこと。それなら宮崎の最高峰の祖母山(九合目にオオヤマレンゲの大群落がある)なら、さっさと登ってさっさと下りれば大丈夫だろうと思い、尾平の登山口まで行ってみた。

【尾平登山口】

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 普段は突兀たる岩峰をいくつも突き立てる祖母山の勇壮な姿が見られる尾平登山口であるが、本日は中腹から雲のなかに隠れている。稜線に出てからの展望はまったく期待できないだろうけど、今回の目的は展望ではなくオオヤマレンゲなので、ノープロブレム。

【奥岳川】

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 祖母山の登山道はまずは奥岳川に掛けられた橋を渡る。深山の渓谷なので、水は透明に澄んでいてうつくしい。いくつかの橋と渡渉を経て、黒金尾根にとりつき登っていく。

【雲の中】

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 本日は最高気温が30℃で、そして湿気が高く、登っていて蒸し暑くてしかたない。しかし標高1000mを越えたところからは雲のなかなので涼しくなるだろうとそれを楽しみに高度を上げていったが、いざ入った雲のなかは小雨であって、雨具を着ないといけなかった。風がなく気温の高いなか、急傾斜の登山道を雨具を着て登っていくと、余計に蒸し暑く、稜線に出るまでは修業の登山であった。

【稜線】

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 稜線に出ると小雨から霧雨に変わり、フードを被らなくてよくなったので、大変楽になり、風景を楽しむ余裕も出る。
 薄ピンクの縁取りを付けたベニヤマボウシの奥、霧の中に天狗岩が見える。

【オオヤマレンゲ】

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 山頂を過ぎ、九合目小屋周囲がオオヤマレンゲの大群落地。
 半球型の純白な花びらを付けたオオヤマレンゲがいたるところで咲き誇っている。雨の季節、束の間の饗宴を楽しむ貴婦人たちの宴の舞台。そして目論見通り、霧雨に濡れ雨滴をまとった花々はさらに瑞々しさを増していっそうその魅力を高めていた。
 修業の末に観ることができた、この素晴らしい世界に満足してあとは下山するのみ。

【宮原登山道】

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 帰りは宮原尾根を下山。
 しかし宮原尾根の雲のなかは大雨であった。稜線越えるだけで天気ががらりと変わるのは山ではよくあることだが、しかし尾根一本違うだけで雲のなかがこうまで違うとは驚きであった。大雨に登山道は水で満ち、小川と化している。こちらの尾根もけっこうな傾斜なので、とにかく滑って歩きにくい。そのうち遠くで雷が鳴りだした。そんなの予報では言ってなかったぞ、と腹を立てつつ、それはさておき山のなかの雷ほど怖いものはなく、ゴロゴロ鳴る音はたいへん心臓に悪い。そして雷に加えて、夕方になると雨が本格的になるのは予報で分かっていたので、さっさと下山したく気は焦るが、無理に急いで滑って転んで足でも捩じったら大変なので慎重に時間をかけて下るしかない。
 急ぎたいが、急げないという苦行の時間を経て、標高1000mくらいでようやく雲を抜けて雨は小雨となった。雷もどこかに行ってくれた。やれやれである。

【宮原登山道渡渉部】

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 下っている最中、下の方から沢の音が轟々ととんでもない音で響いて来ていたので、今日は渡渉は無理かなと思っていたが、迂回ルートは遠回りになるので、とりあえず渡渉部がどうなっているかそこまで行ってみた。
 すると水量はたしかにいつもと比べはるかに増量していたけど、渡って渡れぬこともないようなので、十分に気をつけて渡渉に成功。

【奥岳川】

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 宮原ルートの橋の上から見た奥岳川。
 午前中の清流とはうって変わって、濁流うずまく荒れた川となっていた。

【尾平登山口】

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 尾平登山口から祖母山を振り返る。雲はさらに下に下り、あたり一面も水浸しであった。
 このあと車を走らせていると、尾平トンネルを越えたところあたりから、雨は土砂降りになった。下山がもう少し遅れると、前も見えないような豪雨のなかを歩く羽目になったわけで、なかなか危ういタイミングであった。

 本日は、霧雨に濡れたオオヤマレンゲ観賞というミッションは無事に達成できたが、天気図の読み方がまったく甘くて、いろいろと反省多き登山であった。ちなみにこのオオヤマレンゲの旬の週末、祖母山では誰にも会わなかったし、また駐車場にも私の他には一台も駐車していなかった。通常の感覚だと、この予報では登山自体が論外だったようで、それもまた反省材料の一つである。

 

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Mtsobo

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