令和2年5月 宮崎のアケボノツツジ
【狛犬@延岡今山八幡宮】
GWは遠方へ旅行するか、あるいは登山遠征に行くかがここ数年のルーチンであったのだけど、今年はコロナ禍による緊急事態宣言のために、遠方に行き難くなった。この宣言の本来の目的である感染抑制の趣旨からすれば、人との接触を避けながら車中泊を繰り返し、遠方地で散策なり登山をするなら、とくに問題はないようには思うものの、(じっさい、そういう人々はある程度いたとは思う)、感染者数の少ない県では、ウイルスの持ち込みに対して敏感になっており、宮崎県においてもGW期間中は主な観光地や登山口の駐車場は使用禁止となっていて、さらに「県外の人の来訪は御遠慮ください」との立看板も設置されている。これは他県も同様と想定され、ならばそういう排他的な場所を他県ナンバーでこそこそ移動するのは、どうも精神衛生上よくないと思え、今回のGWはおとなしく宮崎県内をうろうろとすることにした。
GWの宮崎といえば、なんといっても山に咲き乱れるアケボノツツジ。標高が高く、自然条件の厳しいところにしか生えない樹ゆえ、そこに行きつくまではけっこう大変なのだけど、いったん見ればそれまでの苦労があっさりと報われる絢爛豪華な花なのである。
【諸塚山】
アケボノツツジは見るのが大変とは書いたが、例外的なのが諸塚山である。諸塚山のアケボノツツジは登山口から歩いて5分のところに大群落があり、散歩気分でそこまで行くことができる。ただしこれは諸塚山の登山口が標高1200mの高さにあるという、ある種反則的な理由による。そしてその登山口まで車で着くのにはくねくねした山道を長距離走らねばならず、結局はやはり大変なのだ。
【大崩山】
GWは全国からアケボノツツジを目指して登山客が集まり、登山口近くは路上駐車があふれる大崩山も、今年ばかりはさすがに閑散としていた。
人は閑散としていても、それとは関係なく、旬のアケボノツツジは岩稜帯に密集して咲き誇っていた。どの樹々も花のつきが多く、今年は当たり年だったようだ。袖ダキから小積ダキまでの道は満開のアケボノツツジだらけであり、花に酔ったような気になった。
【パックン岩@鉾岳】
近頃発見(?)され県北の有名スポットとなった「パックン岩」。ナムコのゲーム「パックマン」のキャラとそっくりということで名付けられた岩である。
県北の者として、一度は見に行くべきとは思ってはいたもの、ここの登山口に到るまでの県道が狭いうえに、近くに鹿川渓谷という観光地があるため交通量が多く、運転にいろいろと気苦労があるため行く気が出なかったのだが、今なら交通量も激減だろうと思い行ってみた。予想通りに交通量が少なくスムーズに登山口に到着。
パックン岩は鉾岳への途中にあり、たしかに特徴的な岩である。ま、話のネタにはなるでしょう。パックン岩に来たついでに鉾岳にも登ろうかと歩を進めたが、適当に登っていたせいで尾根を一つ間違え、反対方向の山の頂きに出てしまった。で、同じような高さで向かいの鉾岳を見ると、もうそこでどうでもよくなり、さっさと下山した。そこで咲いていたアケボノツツジが美しかったこともあり、私としては満足であった。
【尾鈴山】
尾鈴山は稜線上にアケボノツツジとシャクナゲがほぼ同時期に咲くので、この時期は一粒で二度美味しい登山が楽しめる。
それで登った尾鈴山、すでに花の旬は過ぎており、シャクナゲは終盤、アケボノツツジはほぼ終わりであった。薄桃色の花びらが散りばめられた登山道を歩きながら、そこで眺める終わりかけの花々もまた風情あるものと思うのであった。
アケボノツツジの咲く山は、他にも夏木山、五葉岳、祖母山、傾山・・・といい山がたくさんあるけど、それらは稜線が県境になっていて、半分大分県みたいな山なので、今回は遠慮して、登るのはすべて純宮崎県の山にしておいた。
それにしても新型コロナ禍、相手はウイルスなので無くなることはあり得ず、免疫獲得、診断治療法の進歩、弱毒化等を経て、既存のコロナウイルス並みの存在になるまでは、相当な時間がかかるのは確実で、我々はこの厄介なものと長くつきあわざるをえない。今、一般人が普通にやれることは感染の大きな原因となっている「三密」を避けるということが一番であろうけど、そうなるといろいろな文化がなくなってしまうだろうなあ。
山でいえば、「山小屋」なんて三密の典型みたいなもので、今後数年間は山小屋の営業はどこも無理であろう。そうなると今年からの日本アルプスは、テントと寝袋食料を担ぐ体力のある人しか入れない山となってしまう。それはそれでいい面もあろうけど、山小屋がなくなると、登山道をメンテする人がいなくなるわけで、これから登山道はそうとうに荒れることが予想される。コロナのせいで、登山の文化も変わっていくのは哀しいものがある。登山以外にも、あらゆる文化においてひどい影響が出るだろう。
ただし、人類が経験したウイルスのパンデミックは必ず終焉があった。どんな形にせよゴールは必ずある。この厄介にして面倒なコロナ禍が一日でも早く終息しますように。
【今山大師@延岡】