徳山鮓@滋賀県余呉
【徳山鮓】
「徳山鮓」は琵琶湖の上にある小さな湖の余呉湖を見下ろす高台にある、発酵料理で全国的に有名な店である。
ずいぶんと不便な所にあるのだが、それにはもちろん理由があり、自然豊かなこの地で獲れる川の幸、山の幸を専ら使っているゆえであり、この土地に店を建てる必要があったのだ。
【前菜盛合わせ】
前菜は季節の野菜、山菜、稚鮎、鹿のテリーヌなど。
面白い形の器は、余呉湖の形を模したものである。
【造り】
造りは、鯉の刺身に、鮒鮓の卵をまぶしたもの。
鯉はうまく処理できていて全く臭みはなく、歯ごたえもよい。鮒鮓の卵も濃厚な味で、鯉の淡泊な味をうまく支えている。
【山菜天麩羅】
山菜はもちろんこの地で採れたもの。コシアブラ、モミジガサ、コゴミ。
山登りが趣味の者として、今の時期山のなかでは見慣れたというか、身飽きたようなものばかりだけど、極上の油と技術で揚げられたこれらの天麩羅は見事としかいいようのない出来栄え。
【ハム盛合わせ】
猪、鹿のハム。季節の野菜を添えて。
【熊鍋】
本日のメインは、熊肉に豪華にどっさりと花山椒を盛った熊鍋。
花山椒の種類を変えたもので二種の鍋。
花山椒の香りは鋭角的であるけど、熊肉もまたシャープなエッジの利いたものであり、互いの味がぶつかり合って引き立てているという感じの、鮮烈な印象を与える鍋であった。
今では京料理では当たり前のように使われる花山椒だけど、それはこの店が走りだったそうだ。なぜなら余呉の山には花山椒がいくらでも獲れるため、それを豪勢に使うことが出来たから。今の時期はちょうどその時期なので、料理長は親子そろって毎日険しい山に入って、花山椒を採取しているとのこと。
ただし、花山椒が高級食材として京料理に当たり前のように使われてしまうようになって、今では新しさを失ってしまったので、徳山鮓では花山椒を使った鍋は今シーズンで終了になるそうである。
初めて訪れた徳山鮓であったが、ちょうど間にあってよかった。
【珍味三種】
これは熟鮓を使った、この店のスペシャリテ。鯖とチーズ、鮒鮓、鮒鮓サンド。
どれも酸味とほのかな甘みをもった、上品で洗練されたものであった。
鮒鮓は滋賀では郷土料理的なものであり、また家庭料理にも使われたりするのだが、これらの料理はそれらとは異なる、いわゆるプロの料理的なものであった。
【熊雑炊】
熊鍋は雑炊で〆ものとしてまた出て来る。
熊の肉にはまったく獣臭さはなく、かえってあっさりとした脂と旨味が乗った出汁で、美味しい雑炊となっていた。
初めて経験する徳山鮓、冬は雪に閉ざされる地にあることもあって、コテコテの保存食系の発酵食品みたいなものを想像していたのであるが、じつは全然違っていて、発酵を料理を旨くする技として自在に用い、素材の美味さを存分に引き出す、洗練された料理の数々を出す店であった。
そういう意味では、こんな僻地でそんな料亭的料理を出さなくとも一瞬思ってしまたりもしたが、いやいや、この素材の料理を出すためにはこのロケーションではなければと、すぐ気付きもする。
まったくこの店の料理はじつに魅力的であり、それゆえこんな不便な地にあっても、全国から客が来るわけである。
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