宮崎国際音楽祭の夕べ ラ・ボエーム&らんぷ亭
【舞台@宮崎日日新聞より】
連休をまたいで毎年行われている宮崎国際音楽祭。
最終日は演奏会形式のオペラ上演が恒例になっており、今年も聞きに行くことにした。
しかしその日は宮崎では前日から空の底が抜けたかのような大雨が止むことなく降り続き、列車は動くのだろうかと不安に思っていた。(雨は結局翌日まで、つまり3日連続で降り続き、月曜は多くの通勤難民を生むことになってしまった。5月のこれほどの大雨は初めて経験した)
じっさいこの大雨で、宮崎の交通機関はどこも大混乱になっていたが、日豊本線は運よくほぼ定時運行が出来て、雨のなか無事に会場に着くことができた。
今回の演目はプッチーニの「ラ・ボエーム」。
19世紀のパリを舞台に、若い芸術家たち(ボヘミアン)の、貧しいけれども、心に夢と大志を抱いて、逞しく、そして快活に生きていく姿を描いている。
話の筋も、また曲の旋律も分かりやすく、幕開きとともにすんなりとオペラの世界に入っていける、良い作品である。
ただ、若いときには何とも思わなかったけど、ああいう「青春」という、中年族には遥かに過ぎ去ったものを題材にしている作品って、今の年代になって見ると、なんだかとても「痛く」感じる。
もはやあの情熱や感性はもう自分にはないという自覚のかなしさや、自分の才能を信じて夢抱く若者の姿を見ているとどうしても想像してしまう彼らの末路とか、あるいは作品中いじられ苛められている中年族に対する同感とか同情とか、いろいろな要素が舞台を見ていてチクチクと心を刺し、どこかしこの場面で、「これは痛い」と思ってしまう。
そういう意味では、久しぶりにずいぶんと心に響いたオペラであった。
筋に関してはそういうふうに始終痛かったけど、音楽の演奏はじつに立派。メリハリ利いた活気あふれる広上淳一氏の指揮、福井敬氏のホールいっぱいに響く高音、世界的ソプラノ歌手中村恵里さんの情緒あふれる美声。とても素晴らしく、国際レベルの演奏が宮崎で経験できる幸せを感じた。
演奏会ののちは宮崎市繁華街へと夕食へ。
【らんぷ亭にて】
この音楽祭のときは、必ず誰か知合いが来ているので、その誰かに便乗して食事に行くことにしており、今回はバーNのマスター御夫婦と、演奏会のほぼ全てに参加しているMさんとの四名で「らんぷ亭」へ。うまい具合に4名ぶんのみ空席があったのだ。
写真はこの店のスペシャリテ「宮崎牛テールのシチュー」。その他、いろいろな料理を取り分けつつ、美味しいワインもいただく。
良い音楽を聞いたあと、その余韻が残るなか、美味しい食事とワインを味わいつつ、談笑しながら楽しい時を過ごす。
一年に一度の定番の実りある夕べであった。
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