自然のパラボラアンテナ@岩宇土山の福寿草
今シーズンは、近年記憶にないような暖冬であって、まっとうな雪山を経験せずに冬が終わりそうである。2月の弟三週末も、2月中旬というのに寒波は来ず、山に登っても、降り積もる雪や凍った滝は見られそうにない。
それで雪山は諦めて発想を転換し、この暖冬で既に咲いているであろう、春の訪れを告げる花「福寿草」を観賞しに登山に行くことにした。
八代から五木までの道はダム工事のおかげもあって広々としているけど、国道445号線から久連子への県道247号線に入ると、それはまさに酷道であって大変な狭路であったが、交通量の少なさに救われ、なんとか久連子古代の里に到着。
本日からこの界隈は「福寿草まつり」が開かれている。それでここより1kmほど先にある駐車場は満車状態が予想されるので、ここに駐車してそれから出発。
しかし予想に反して、登山口駐車場には車は3台しか止まっていなく、余計な分を歩いてしまった。
登山口より急傾斜を登って行き、やがて登りが緩やかになるころ、この石仏があり、癒されます。
樹々が切れ視界が開けると、隣の脊梁山地の山々―積岩山から蕨野山にかけての稜線が霧氷で白く染まりきれいである。
岩宇土山への尾根の杉林のなかで、福寿草の群落があった。しかし時期が早く、ほとんどは固い蕾であった。
岩宇土山は石灰岩で形成された山であり、久連子岳直下に鍾乳洞がある。
冬の寒い時期は、この鍾乳洞に地面から氷が生える「氷筍」があることで有名だけど、今回は気温が高かったせいか、一つもなかった。
岩宇土山へもう一息。標高1100mを越えたくらいから、樹々は霧氷をまとっている。
霧氷で輝く岩宇土山山頂に到着。
この山って、上福根山に続く稜線にあるいくつものコブの一つにしか思えず、山として扱っている理由がよく分からない。
この標識がないと、たぶん誰もここが「山頂」だと気付かないであろう。
山頂からは急峻な坂を下って行き、杉林が切れると、沢沿いに窪地が広がり、ここから道はゆるやかになる。
登山道はやがて崩れた石灰岩の広がる白崩平へ。そして、ここでお目当ての福寿草を見る。
福寿草は独特のお椀型の形で咲いていて、とても愛らしい姿である。そしてその艶やかな黄色が鮮やかであり、ほんとうに名前の通り、福々しい、幸せを運ぶような花に見える。
ところで、福寿草がこのようなお椀型をしているのには立派な理由があり、それはこの花が、自然のパラボラアンテナだからである。
まあ、パラボラ(parabola:放物線)という概念じたいが自然そのものであり、自然にはこの形はありふれているのだが、人工のパラボラアンテナが電波を集めて増幅しているように、福寿草はこの形で太陽光を集めて中を温めている。しかも福寿草のパラボラアンテナは開閉式であり、日光を感知すると花びらを開かせ、日光がないと自然に閉じる。
花というものは何のために存在しているかというと、植物の生殖のためである。植物の有性生殖のためには昆虫を介した他家受粉が必要であり、そのため植物はいろいろな手段を講じて昆虫を花に集めるのであるが、福寿草の場合は、花に太陽光を集めて暖かくして、冬の時期、寒さに困っている昆虫を花のなかに誘う、という方法をとっている。
上の写真は、その暖かさにつられて、花に集っている昆虫の姿。
だからこういうふうに開ききった福寿草って、受粉をもう終え、役目を終えた花なんだろうなと思う。
白崩平からの下山路は主に沢沿いの道となる。
石灰岩という脆い地質のせいもあるのだろうが、あらゆるところが崩れている山であり、治水、治山がたいへんだろうなと思いながら下っていったら、林道に出てからは、大規模な砂防ダムの工事だらけであり、やはり脊梁山地は厳しい山が多いなと実感した。
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