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February 2019の記事

February 28, 2019

香港 音楽と食の旅

 毎年春に香港で開かれる芸術祭で当代一流のアーティスト達の演奏を楽しみ、かつ香港特有の多彩な中華料理も満喫しようという、恒例の音楽と食の旅に、今年も行ってきた。

 初日、香港に夕方到着。
 演奏会は午後8時からで、夕食はその後10時からというゆっくりプランなので、ホテルでのんびり寛いでそれから出かけようと思っていたら、スマホのグループメールに「演奏の前にホール近くの料理店で小腹を満たしてからコンサートに行きましょう。皆そろっています」とのお知らせが。
 それで、せっかくなのでその料理店へと。

【華苑 潮州閣】
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 この店は予約とかはしていなかったのだけど、ネイザンロード界隈を歩いていて、よさげな雰囲気の店なので入ってみたとのこと。
 私が着いたときにはだいぶ料理が来ていて、みなわいわいと楽しく騒いでいた。
 潮州料理の店のようで、素材をシンプルに味付けした料理の数々。一通り食べたのちの〆は、炒飯に焼そば。
 美味しかったけど、「小腹を満たす」なんて量ではなかったな。ビールもさんざん飲んだし。

【NHK交響楽団】
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 食事を済ませたのち、すぐ近くの文化センターホールに行き、NHK交響楽団による演奏を観賞。
 プログラムは、(1)武満 徹/ハウ・スロー・ザ・ウィンド (2)ラヴェル/ピアノ協奏曲 ト長調 (3)プロコフィエフ/交響曲 第6番という何やら玄人好みの構成。指揮はN響首席指揮者のパーヴォ・ヤルヴィ氏。

 香港に来てまでN響を聞かなくとも、という気がしないでもないが、この芸術祭は各国の一流オーケストラが来ているので、それらと日本のオーケストラの聴き比べが出来て、ためになった。

 曲のなかでは、ラヴェルが一番良かった。曲そのものが親しみやすいし、ピアノを弾いたツゥオ・チャン氏も大変なテクニシャンで、快適なリズム・メロディに溢れたこの曲の魅力を存分に引き出していたと思う。
 武満徹の音楽については、こういうのは「音楽的教養」の勉強みたいなものなんだろうなとか思いながら聞き、プロコフィエフと共に、こんな音符が好き勝手に飛び交うような難しい音楽を正確に弾ききるN響の技量に感心した。さらには聞きながら、音楽って本来はエンターテイメントそのもののはずなのに、どうしてクラシック音楽の歴史は、その本質と離れる方向に進んでしまったのだろうとかいろいろ考えた。

【潮福蒸気石鍋】
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 演奏会のあとは、尖沙咀の料理店「潮福蒸気石鍋」。
 この店の料理は、「中華料理」の本道とは少し外れたところにあり、潮州料理を東南アジアの料理器具を用いてアレンジしたもの。
 テーブルの上に載せてある陣笠帽みたいなのがそれで、この下に素材を置いて、蒸気で蒸すという、ある意味シンプルな料理であるが、この器具の構造に何やら秘訣があるらしく、通常の蒸し料理よりも香りや味の凝集度が増している。

【素材】
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 こういうふうに生きている新鮮な具材を展示して、それらをチョイスして調理してもらうのが潮州料理の特徴である。

【料理】
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 この店では様々な素材を蒸したあと、それらから滴り落ちたエキスによるお粥で〆るという流れになっているので、まずは鍋底に米と具を敷く。

【料理】
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 貝、魚、海老、鶏肉、野菜、糸瓜等々が、高圧蒸気で一気に調理され、次々に出てくる。

【お粥】
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 そして、全部の素材が蒸されたあと、それらの全てのエキスを吸い込んだお粥がいつの間にか鍋底に出来ている。
 これがやはりとても見事な味。

 日本にはない珍しい料理であり、普通に美味しいので、香港に来た際はぜひ経験すべき店だと思う。

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February 23, 2019

早春の行縢山 南面崖下コース

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 2月というのに気温は高くなる一方で、山々に雪は期待できない。
 もう早春といってよい気候になり、そうなると例年よりも花の咲くのが早くなっている。
 それでは好天の休日、花を観に山に登ってみよう。

 近場の山では、行縢山の山麓に椿の群生があるので、それを目当てに登山。

【南面崖下コースへ】
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 雄岳への正規登山道は造成林が多いので、雑木林のなかを行く南面崖下コースを行く。このコース、以前は台風による落石で通行止めになっていたけど、今は復旧されている。

【登山道】
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 崖下コースは名前の通り、行縢山名物の屏風のような崖に沿って高度を上げて行く、分かりやすいコースである。 ただし、道自体はけっこう荒れている。

【椿の落花】
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 椿目当ての登山であったが、もう時期は過ぎていたようで、花がいっぱい散っていた。

【椿の花】
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 それでも幾輪かは枝に残っていた。

【椿】
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 まともな椿の樹を探しているうち、行縢神社からの雄岳直登コースに一本まだ花を多く付けている樹を見つけ、崖下コースを外れ、しばし尾根を下った。
 この登山道、踏み跡はほとんどなく、もはや廃道になっているようであった。

【山頂】
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 花をつけた椿の樹を見たことに満足し、それから山頂。いい眺めである。

【渡渉部】
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 下山は正規道で。
 この道、一ヶ所渡渉部があるが、いつのまにか丸太の橋がかけられていた。

【行縢の滝】
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 行縢山にはいろいろ名物があるが、そのうちの一つが行縢の滝。梅雨時に来ると、流れに迫力がある。

【舞野神社】
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 行縢山の近くにある舞野神社は、ちょうど菜の花の旬であった。
 菜の花に鳥居が埋もれる姿は、なかなか趣がある。

 今日は椿を目当ての登山であったが、菜の花のほうが印象的であった。

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映画:エリック・クラプトンー12小節の人生ー

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 エリック・クラプトンについては、「ギター演奏に革命をもたらした天才で、マニアからはギターの神とも称されていた。しかし曲作りはイマイチで、「レイラ」の一発屋と長くみなされていたが、40代後半になって突如傑作「アンプラグド」を発表し、これが全世界で大ヒットして一般人からも広く受けいれられるようになったミュージシャン」というふうぐらいに私は認識していた。
 「アンプラグド」はそのなかの曲が職場の演奏会で選ばれ、私はベースを担当したこともあって、たいへん気に入り、そして他のアルバムを聞いてはみたが、「アンプラグドみたいな曲のほうがいいよなあ」との感想でどれも終わっていた。

 今回、エリック・クラプトンの伝記映画が上映され、「アンプラグド」のライブ場面が見たい程度の興味で観てみた。
 これが、「アンプラグド」以外にもなかなか面白かった。それと私が「アンプラグド」以外の曲に違和感を持っていた理由も分かった。―「アンプラグド」は特殊だったのだ。


 音楽映画では、昨年ボヘミアンラプソディが大ヒットして、じっさい名作だったと思うが、そこでは敢えてフレディ・マーキュリーの異常性については曖昧な表現をおこなっていた。
 しかしこの映画では、エリック・クラプトンは露悪的なまでに、赤裸々に自分の人生を語っている。なにか、もう遺言のようにも感じさせるまでの迫力をもって。

 エリック・クラプトンは若い時に音楽、なかんづくソウルの魅力にとりつかれ、尋常ならざる努力を積み重ね、当代一の技術、表現力を見につけ、聴衆のみならず、プロのミュージシャンからも称賛される存在になっていた。
 しかし私生活は出鱈目であり、酒と麻薬に溺れ、女性関係も荒れ放題で、親友の妻に横恋慕して奪いとり、しかしすぐに他の若い女に目を移し、また乗り換えて行く。アルコール中毒がひどくなると一時期音楽活動を休止していたが、それが治らぬままにコンサート活動を再開し(生活のため?)、酔いどれの状態で演奏をして、観衆から「お前は過去の栄光だけで仕事をしている」と詰られ喧嘩になる。
 そういう具合に映画はここまで描くか、というぐらいにエリック・クラプトンの荒廃した姿を見せているが、やがて彼に子供が生まれ、彼は子供が自分の人生の全てだと思うくらいに溺愛し、酒と麻薬の日々から脱出する。
 しかし残酷なことにその子供、コナー少年は4才にして事故死してしまう。エリック・クラプトンの落込みは悲愴なものであり、周囲の者たちは、彼はまた酒・麻薬に溺れ、廃人になるだろうと思っていた。

 けれどもエリック・クラプトンは、この悲劇のどん底から立直るには、音楽しかないと決意し、自分の魂を、そして幼くして亡くなった子供の魂を救うために、一心不乱に曲を書ことにのめり込む。その結果出来あがったのが、「アンプラグド」の曲々であり、だからこそあれらの曲には今までの彼になかった、真摯な祈りが込められていて、それが人の心を強く揺さぶったのであろう。

 映画では、この「アンプラグド」作成が、頂点であり、終点みたいなことになっていたが、あれから30年近く経っていて、エリック・クラプトンがそれからも酒や麻薬に溺れることなく演奏活動を続けていること、これもまた同様にたいしたことだと思う。


 ついでながら、この映画の売りとして、ミュージシャンたちの貴重な映像が数多くあるということであったが、たしかに大物たちのライブの映像はどれも興味深いものであり、これらを観るだけでもこの映画を観る価値はあると思う。
 そのなかで、ソウルミュージシャンが集うスタジオで、エリック・クラプトンが彼らに混じってセッションを行う映像があったけど、「ボーカルのアレサ・フランクリンは、白人のエリック・クラプトンにソウルが演奏できるのという疑いをもっていたが、いざ演奏を始めるとその演奏を信用した」というふうなシーンがあった。
 しかし、そこで歌が始まると、声量といい表現力といい彼女の歌はとんでもなく素晴らしく、他を圧している。ギターなんて、どうでいいという感じ。ソウルの女王、アレサ・フランクリンの歌を聞くと、圧倒的な才能ってのは、こういうのを言うんだな、と思い知った。それもまたこの映画で得ることのできた知識。

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 エリック・クラプトンー12小節の人生ー

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February 16, 2019

自然のパラボラアンテナ@岩宇土山の福寿草

 今シーズンは、近年記憶にないような暖冬であって、まっとうな雪山を経験せずに冬が終わりそうである。2月の弟三週末も、2月中旬というのに寒波は来ず、山に登っても、降り積もる雪や凍った滝は見られそうにない。
 それで雪山は諦めて発想を転換し、この暖冬で既に咲いているであろう、春の訪れを告げる花「福寿草」を観賞しに登山に行くことにした。

【久連子古代の里】
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 八代から五木までの道はダム工事のおかげもあって広々としているけど、国道445号線から久連子への県道247号線に入ると、それはまさに酷道であって大変な狭路であったが、交通量の少なさに救われ、なんとか久連子古代の里に到着。
 本日からこの界隈は「福寿草まつり」が開かれている。それでここより1kmほど先にある駐車場は満車状態が予想されるので、ここに駐車してそれから出発。
 しかし予想に反して、登山口駐車場には車は3台しか止まっていなく、余計な分を歩いてしまった。

【石仏】
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 登山口より急傾斜を登って行き、やがて登りが緩やかになるころ、この石仏があり、癒されます。

【脊梁山地】
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 樹々が切れ視界が開けると、隣の脊梁山地の山々―積岩山から蕨野山にかけての稜線が霧氷で白く染まりきれいである。

【福寿草】
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 岩宇土山への尾根の杉林のなかで、福寿草の群落があった。しかし時期が早く、ほとんどは固い蕾であった。

【鍾乳洞】
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 岩宇土山は石灰岩で形成された山であり、久連子岳直下に鍾乳洞がある。
 冬の寒い時期は、この鍾乳洞に地面から氷が生える「氷筍」があることで有名だけど、今回は気温が高かったせいか、一つもなかった。

【霧氷】
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 岩宇土山へもう一息。標高1100mを越えたくらいから、樹々は霧氷をまとっている。

【岩宇土山山頂】
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 霧氷で輝く岩宇土山山頂に到着。
 この山って、上福根山に続く稜線にあるいくつものコブの一つにしか思えず、山として扱っている理由がよく分からない。
 この標識がないと、たぶん誰もここが「山頂」だと気付かないであろう。

【窪地】
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 山頂からは急峻な坂を下って行き、杉林が切れると、沢沿いに窪地が広がり、ここから道はゆるやかになる。

【白崩平の福寿草】
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 登山道はやがて崩れた石灰岩の広がる白崩平へ。そして、ここでお目当ての福寿草を見る。

 福寿草は独特のお椀型の形で咲いていて、とても愛らしい姿である。そしてその艶やかな黄色が鮮やかであり、ほんとうに名前の通り、福々しい、幸せを運ぶような花に見える。
 ところで、福寿草がこのようなお椀型をしているのには立派な理由があり、それはこの花が、自然のパラボラアンテナだからである。
 まあ、パラボラ(parabola:放物線)という概念じたいが自然そのものであり、自然にはこの形はありふれているのだが、人工のパラボラアンテナが電波を集めて増幅しているように、福寿草はこの形で太陽光を集めて中を温めている。しかも福寿草のパラボラアンテナは開閉式であり、日光を感知すると花びらを開かせ、日光がないと自然に閉じる。

【福寿草】
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 花というものは何のために存在しているかというと、植物の生殖のためである。植物の有性生殖のためには昆虫を介した他家受粉が必要であり、そのため植物はいろいろな手段を講じて昆虫を花に集めるのであるが、福寿草の場合は、花に太陽光を集めて暖かくして、冬の時期、寒さに困っている昆虫を花のなかに誘う、という方法をとっている。
 上の写真は、その暖かさにつられて、花に集っている昆虫の姿。

【福寿草】
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 だからこういうふうに開ききった福寿草って、受粉をもう終え、役目を終えた花なんだろうなと思う。

【オコバ谷】
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 白崩平からの下山路は主に沢沿いの道となる。
 石灰岩という脆い地質のせいもあるのだろうが、あらゆるところが崩れている山であり、治水、治山がたいへんだろうなと思いながら下っていったら、林道に出てからは、大規模な砂防ダムの工事だらけであり、やはり脊梁山地は厳しい山が多いなと実感した。

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February 11, 2019

不思議物件:山口市のパラボラアンテナ群

 中国自動車道を走っていると、山口IC近傍で、巨大なパラボラアンテナをいくつも空に向けている施設が見え、その特徴ある姿は誰しも強い印象を受けているであろう。

 これは民間企業の一施設なのであるが、構内の立ち入りが一部許されているので、山口市に行ったついでに寄ってみることにした。

【山口衛星地球局】
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 遠目にもたくさんのパラボラアンテナが並ぶ施設だなあと思っていたが、近づいてみると、小さなものもさらに多数あることが分かり、その数に驚かされる。
 こういう施設はじつは日本にはここにしかなく、日本における業務用重要なパラボラアンテナはここに集約されているので、これほどの数が必要になるのだ。

 さて、この施設、誰しも疑問に思うことがいくつかある。それらを書いてみると、
 (1) アンテナはみな勝手勝手な位置を向いているが、何故なのか?
 (2) アンテナはいろいろな大きさのものがあるが、特に大きなものは直径30mを越える巨大なものである。なぜそんなに大きなものが必要なのか?
 (3) このパラボラアンテナ群施設は日本に一つしかないのだが、なぜ山口市がそこに選ばれたのか?

 (1)については、この施設の正式名称が「KDDI衛星通信センター」ということを知れば容易に解ける。すなわちパラボラアンテナは衛星の電波をキャッチするための装置であり、各自が目的とする衛星にその面を向けているから、アンテナごとに向きが違うのだ。

 (2)については宇宙開発史の知識がいる。衛星通信の黎明期、衛星を宇宙に運ぶロケットは性能が低く、小さな通信衛星しか打ち上げられなかった。その衛星の発する電波は微弱であり、その電波を拾うためには、巨大な面積を持つアンテナが必要だったのである。
 現在の技術では、5トンもの重さの通信衛星でも、ロケットは平気で宇宙に運べるため、そういう衛星の発する電波は強力であり、アンテナも小さなもので済むようになった。
 じっさい、巨大アンテナは現在ではオーバースペックなものであり、この手のアンテナはもう製造されていない。

【巨大アンテナ】
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 それゆえ、この巨大アンテナは「過去の遺物」に近いものといえる。まあ、まだ現役なのだが。

 (3)のなぜ山口市?という疑問に対する答えはなかなか難しい。通信衛星というものが静止衛星というものを理解していないと、答えは出てこないだろう。
 地球は丸いので、360度を三つに分割して、120度ずつ担当する衛星が3つ空に固定されていれば、全地球の通信はカヴァーできる。そしてじっさいにそのような衛星が3つ存在しているのだが、日本は太平洋とインド洋上にある衛星の範囲に入っている。その両方を担当するのに、山口市というロケーションが最適だったのである。というより、日本において山口市より東では、インド洋上の衛星の電波は受信できない。

 さらに山口市には好条件がいくつもあった。
 このような一国の通信を一手に担っている重要施設は、天災に強いことが求められる。山口市は天災の少ない土地であり、たしかに台風、地震、雪害、水害等の損害の記事はあまり見たことがない。
 そしてそれに加え、衛星通信施設には、周りに余計な電波が少ないことが必要とされる。本来なら天災の少ない地には人が集まり、大きな都市が形成され、電波が多くなりそうだが、山口市は天災が少ないわりには、辺鄙、というか人の少ない地であり、業務妨害となるような電波源は少なかった。

 そういうわけで、奇跡的に好条件が重なり、この地山口市にたいへん立派な衛星通信施設が建設されたわけだ。


 今まで私が述べたことは、このセンターの付設施設である「KDDIパラボラ館」に、豊富な画像、映像、音声、模型等々を使って、詳しく説明されており、宇宙開発、通信技術の歴史がよく分かって、たいへん面白い。
 山口市には観光名所が多いけど、この「パラボラ館」も、観光のさいぜひ寄ってほしい、隠れた名所である。

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 KDDIパラボラ館  

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February 10, 2019

雪の寂地山@中国山地

【雪道】
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 中国山地遠征の二日目は、山口県最高峰の寂地山。この山に雪が積もっていなかったら、この界隈の山はどこにも雪は積もっていないであろう、という山である。
 登山口めざして国道187号線を走っていると、はじめのうちは全く雪を見なかったが、高度が増すにつれようやく雪が見えて来た。

 県道434号線に入って、標高776mの松の木峠を越えたところで、立ち往生している車がある。狭い道なので、通せんぼして、私の車が進めない。これは九州方面から遠征してきた車の一団の一台で、暖冬に油断して、みなノーマルタイヤで来たそう。
 急カーブの凍結斜面で止まられては、こちらが牽引して助けるわけにもいかず、彼らが懸命に播いた融雪剤の効果を待って、ようやく車が動いたところで、向うに進めた。
 雪道は、なにが起こるか分からないから、時間には余裕を持って行動すべきと改めて思った。

【五竜の滝】
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 寂地峡キャンプ場が登山口。
 寂地峡ルートでまず登山を開始。入り口には、名所「五竜の滝」。この滝は巨大な岩から垂直に落ちて来る滝で、登山道はそれに沿っており、最初は階段を使っての急勾配を登ることになる。

【木馬トンネル】
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 五竜の滝横の登山道を登りきると、長いトンネルがある。高さ160cmのところが途中にあるので、気をつけるようにと標識があった。
 暗いなか歩くうち、天井が低くなったところがあったので、そこをかがんで通り抜け、あとは安心して歩いていたところ、いきなり頭を岩にぶつけ、まさに目から火が出た。低いところは複数個所あったのだ。まったく油断大敵とはこのことである。

【登山道】
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 初期段階のアクシデントから気をとりなおし、歩を進めていくうち、道も白くなってきた。

【登山道】
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 寂地峡ルートはトンネルを越えてからは、沢沿いのゆるやかな道をえんえんと歩く。
 葉を落とした樹々から青空が見え、白い世界を照らし、美しい世界が広がる。

【登山道】
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 立派な木橋を越えたところが、寂地山への稜線への取りつきとなり、これからはぐんぐんと高度を稼いでいく。

【ミノコシ峠】
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 道は稜線へと出る。
 ここから北側の斜面の樹々は霧氷を纏っていた。

【稜線】
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 稜線上は、標高1200m近くあるので雪の量は多い。昨夜はそれほど雪は降っていなかったらしく、新雪は10cmくらいで、その下の雪は固めであった。

【稜線:登山者】
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 稜線上を黙々とラッセルしていくうち、私と逆方向から来たパーティと出会った。
 登山口から、ミノコシ峠の次の小ピークまでは、誰の踏み跡もない雪山であった。登山道が埋もれた白い雪原を、自分の感覚で道をつくっていくラッセルは、雪山登山の醍醐味である。
 しかし、人間は誰しも楽をしたがる存在であり、このパーティが視界に入ったとき、私は「あ、これでもうラッセルしなくて済む」とつい思ってしまった。
 ラッセル、きついっす。

【稜線登山道】
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 小ピークから先は、多人数によって踏み固められたトレースを有難く使わせてもらい進んでいく。

【寂地山山頂】
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 そして寂地山山頂。
 霧氷をまとったブナ林が美しい。
 しかし展望は利かなかった。

【登山道】
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 下山は寂地林道コースにて。
 山の斜面には雪はたっぷりであった。

【寂地林道】
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 このコースは、長い林道を歩かねばならない、少々退屈なコースである。

【犬戻りの滝】
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 林道からはいったん沢沿いの遊歩道に下り、それからいくつかの滝を見る。
 照葉樹の多いところであり、新緑や紅葉のシーズンはさぞかし美しくなるものと思われた。

 遊歩道からはまた林道にもどり、それから元の登山口に到着。

 昨年はこの時期、寂地山の隣にある冠山に登り雪の多さに感嘆したけど、今年は暖冬のせいで、さほど雪は積もっていなかった。
 この連休、「史上最強の寒波」のせいで、東日本はたいへんな日々だったようだが、西日本は比較的平穏であり、それは良いことではあるんだろうけど、わざわざ遠征してきた私には少々拍子抜けの日々であった。

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February 09, 2019

白木山@広島市

 九州の登山愛好者からは今シーズンは、「雪ないねえ」というのが合言葉のようになっているくらい、雪のない冬である。
 そして2月連休は「史上最強の寒波」が日本列島に到来ということであったが、それは九州までは届かず、まとまった雪は降らないもよう。
 それで連休は雪を求めて、中国地方まで遠征ということにした。

 ネットで、「広島のお勧めの雪山」と検索すると、お勧め1位は広島市郊外の白木山であった。山頂からの展望がよく、そして山頂部は広々としているので雪原もきれい、さらには白木駅が登山口なのでアプローチも良い、との良条件の山だったので、まずは白木山を目指すことにした。

【登山口】
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 高速ICを下りて白木山駅にと着いたが、途中の道、そして風景、まったく雪がない。
 白木山本体には雲がかかっており、よく見えない。雲のなかは雪山であることを期待して登ってみよう。

【登山道】
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 白木山の登山道はよく整備されており、一合ごとに標識とそれにお地蔵さんが設置されていて癒されるものがある。
 しかし、一合、二合、三合と進めていくも、まったく雪の気配がない。

【山頂】
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 結局山頂まで雪景色はなかった。
 東京にさえ積雪をもたらした「史上最強の寒波」は、中国山地では空振りであった。
 山頂一帯にはガスがかかっており、眺望もあまり良くなかったが、北側に霧氷が残っていたのは幸運であった。

【登山道】
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 下山は別当山経由で。
 こちらの道はあまり使われていないようで踏み跡がはっきりしない。そしてカシミールの登山地図も微妙に間違っており何度か道をロスしたけど、ある程度下りれば道もはっきりしていた。

 土曜夜も雪は降るとのことで、その雪に期待して明日も登山である。

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Sirakiyama


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February 03, 2019

定例走行会:三社参りと餅突きと節分

 今年初の田中サイクル定例走行会は2月3日節分の日に開催。
 1月に行っていなかったので、まだ済ませていない三社参りから。

【春日神社】
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 延岡といえば、まずは春日神社。
 正月をはるかに過ぎているけど、参拝客は多い。

【天下神社】
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 天下神社は激坂を越えて行く。

【永田神社】
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 永田神社も劇坂を越えて。
 どちらの神社も劇坂の上にあるので、当然小高いところにあり、いかにもパワースポット的な雰囲気がある。

【餅突き】
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 2月であっても餅突きをしてはいけないということはない。
 そして突き立てのお餅って、やはり美味なのである。

【餅&恵方巻】
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 本日は節分のため、恵方巻も登場。紅白餅に恵方巻、なんだかいろいろと賑やかである。


 冬真っ最中2月のサイクリンだったけど、気温は春なみで、それなりに快適なサイクリングであった。
 今年の暖冬は、九州の人はみな有難がっている。私も九州人の常として、寒いのは苦手なので、この気候は悪くはないのだが、山に雪が積もらないのだけは困っている。

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February 02, 2019

雪の向坂山

 1月下旬に到来した寒波は去り、山々の雪は溶けてしまっているようであるが、五ヶ瀬スキー場のカメラを見てみると、それなりに雪はあるようなので、向坂山にでも登ってみることにした。

 スキー場へ向かうとき、下のほうのシャトルバス出発場の前で停車させられ、林道は凍結しているところがあるのでバスを使ったほうが良いと言われたけど、スキーに来たならともかく、登山に来てスキー客用のバスを使うのもいかんだろうから、丁寧に断り、そのまま上のほうの駐車場へと行った。

【スキー場リフト】
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 スキー場駐車場からリフトを望む。
 う~む、雪ねえな。

【林道入口】
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 スキー場からリフトを使うと、向坂山はすぐ登れるけど、別に向坂山のピークハントに来たわけでもないので、普通に林道から登ってみる。

【沢道】
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 林道をずっと登って行くと遠回りで大変なので、最初の沢をつめてショートカットする。この沢は大雪のあとなどは雪に埋もれて楽しそうだが、今日は雪は表面を覆う程度。

【ネット】
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 この沢は左側に鹿除けの防護柵があり、そしてその横にずっと鹿の足跡があったのだが、途中倒れた柵があり、そして鹿の足跡はそこに入りこんでいた。
 これは、メンテナンスが必要である。

【林道】
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 沢を登りつけたところで、さっき歩いていた林道と合流。
 林道をまたいで、今の沢を続けてずっとつめれば、向坂山山頂にダイレクトにたどり着けるはずだが、そこから先はネットが張っていて立入り禁止である。

【五ヶ瀬スキー場】
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 人で賑わうスキー場に到着。今年は雪不足で困っていた五ヶ瀬スキー場も、先週の寒波のおかげでフルオープンまではたどりつけた。

【スキー場】
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 ゲレンデの端を歩いて、登山口前まで到着。
 この場所はゲレンドの出発点でもあり、そこに登山の格好で現れると、なにか場違いな感がある。

【眺め】
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 向坂山の山頂は樹が多くあまり開けていないので、九州脊梁山地の眺めはここからが一番良い。
 好天のもと、雄大な山脈の姿が見られる。

【登山道】
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 登山口から山頂まで登山道はよく整備されている。

【向坂山山頂】
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 山頂着。ここから白岩峠まで稜線の雪道を歩いて行く。

【稜線登山道】
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 白岩峠まではゆるやかな登山道。日当たりのよいところでは、雪はあらかた溶けていた。

【白岩峠】
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 白岩峠からは、霧立越と呼ばれる10km以上に及ぶ登山道が続いているのだが、本日はここまでで下山にかかる。

【登山道】
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 今回は念のためワカンを持ってきたけど、あえて使うようなところはなかった。それでもせっかく持ってきたので、ワカンで歩行。
 人もたいして通ってない雪道なので、私のワカンとそれに鹿の足跡のみ残っている。

【林道】
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 そして林道に合流。ここでワカンを外して、それから足を踏み出したら、いきなり滑ってあせった。この道はスキー場の従業員の人達が車で走行しているので雪が固められていたのだ。
 それにしても溝の深い登山靴でさえ滑るような道を、スタッドレスは平気で走るのだから、スタッドレスの性能にいまさらながら感心した。
 ここからはアイゼン装着して慎重に歩行し、下山となった。

 寒波は当分来そうになく、今年の九州の雪山は、どうにも、しゃっきりしない。

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