ロンドン橋がロンドン橋でなかった話
都市にはその都市を一発で示すような象徴がたいていはあって、ロンドンだと、ビックベン、ロンドン橋、二階立ての赤バス、ロンドンタクシーなどがそれにあたる。
映画の一シーンやニュースの画像でこれらが出たなら、誰でもその場所がロンドンということが容易に分かるであろう。
ロンドンを訪れて、まずはそれらを目当てに散策してみることにした。
名所が数多くあるテムズ河沿いを歩くうち、遠目にロンドン橋が見えてきた。ロンドンに来たのが初めてであるからして、ロンドン橋を見るのも当然初めてであり、鮮やかなる印象を受ける。
さてロンドン橋まではあとどのくらいであろうと、Google Mapで確認すると、それがやけに近い位置にあることが分かった。1km以上は離れているはずなのに、数百メートル先がロンドン橋ということになっている。
これはもしかして遠近法マジックというもので、じつはロンドン橋ってとても小さくて、そのため実際よりも遠くに見えるのかなあ、などと思いつつ歩くうち、「ロンドン橋」の一つ手前にある橋に着いたので、そこを渡り、中ほどから写真を撮ってみた。
しかし、その橋、名前がプレートに書いてあったが、それは「London Bridge」、すなわちロンドン橋である。あれっと思い、Google Mapをまた見てみると、まさにこの橋がロンドン橋であることが判明した。どうりで近かかったわけだ。
なんたることぞ。
そして、私が「ロンドン橋」と思っていたものは何かというと、それは「タワー・ブリッジ」であり、ロンドンの橋といえば誰もがそれを思いつく、この立派な造形の橋は、本名「タワー・ブリッジ」だったのだ。
「落ちる、落ちる」と全国の子供たちから歌われる不幸な橋「ロンドン橋」は、近代建築による堅牢な橋であり、落ちることはまずないと、実物を見た私は自信をもって言える。
さてロンドン橋、地理的に重要な位置にあることは分かるけど、橋そのものはいたって普通の橋である。
テムズ川にはたくさんの橋がかけられており、その多くは美麗な装飾をまとっていたり、豪華な色彩に塗装されたりしていて、どれも目立つのに、ロンドン橋は機能性重視というわけなのか、この橋のみ平凡な印象であった。
ロンドン橋を渡って対岸を歩き、そしてロンドン橋ならぬタワー・ブリッジへと。
ゴシック様式の二つの塔を持つ跳開橋であり、中世の雰囲気濃厚な、威厳ある橋であり、やはりこの橋のほうがはるかに目立つ。
それにしても、ロンドンに来なかったら、私は一生この橋をロンドン橋と思い込んでいたわけで、……まあそれでなにが困るということもないのだが、といあえず訂正できておいてよかったなり。
そして、この橋をロンドン橋と勘違いしているのは私だけではないようで、どころかそちらのほうの人が、日本のみならず世界的に多いようで、「ロンドン橋」あるいは「London Bridge」をキーワードにしてGoogle画像を検索すると、ずら~りとタワー・ブリッジの画像ばかりが並んで出て来るのはいっそ壮観である。
こうして「ロンドン橋」を見物し、そして道路には二階立バスやロンドンタクシーはいくらでも走っており、あとの見るべき名物はビッグ・ベンということになるが、それはなんと修理中であり、真っ当な姿を見ることはできなかった。残念。
これはロンドンが「また来いよ」と言っている、というふうに思っておこう。
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