寿司:喜邑@二子玉川
東京二子玉川に「喜邑」という寿司店があって、熟成系を主体とした独特な鮨を出していたのだが、あまりに独特過ぎて客が入らず、一部の鮨マニアにのみ有名であった。
だいぶと前にそこを訪れた宮崎の某寿司店主は、その鮨に感心してその技を応用した鮨を一時期出しており、その店主から「喜邑」の話を聞いた私は一度は訪れたいと思いつつ、東京にはほかに行くべき寿司店が多いので、二子玉川まで足を伸ばす気にもなれずに時が経つうち、時代がようやく喜邑に追いついたのか、喜邑はいつの間にか超人気店となり、典型的な予約の取れない店となってしまった。
それで喜邑はもう私に縁のない店とは思っていたのであるが、以前からの常連であった福岡の鮨マニアの某氏が九州の人にこの素晴らしい鮨を経験してもらいたいと思い、店主に頼んで日曜昼を貸し切り、参加者を募集した。
持っててよかった鮨マニアの友人、ということで早速私も手を上げ、九州組遠征隊の一員として、今や「幻の名店」と化しつつある喜邑へと行ってきた。
そして食べてみての感想といえば、確かに世評の通り、巧緻を尽くした独創的な鮨の数々。鮨の世界の奥深さと広がりを改めて知ることができた。
その鮨のいくつかを紹介。
本来鋭い歯ごたえと爽やかな旨みを楽しむスミイカは、かなり熟成を利かして、通常と異なる弾性のある食感と、濃厚な旨みのネタになっている。
カワハギは刺身の下に、肝がたっぷりと敷かれていて、肝が主役でそしてそのあとカワハギが後をひく味わいをみせる複合的な鮨。
新鮮さが命のはずの秋刀魚は何日も寝かせて、そこでねっとりとした食感と、豊かな味が新たな魅力を演出している。そして熟成によって、身がさらに美しくなっているのが面白い。
鰯は赤酢漬けで。普通の鰯と全く異なる色合いを見せていてまず驚く。そしてその漬け具合がまた絶妙で、鰯の本来の魅力を幾層倍にも高めている。
江戸前鮨の華、マグロをこの店では使わないので、それに対抗すべきものはカジキの漬け。もちろん熟成ものであり、味の豊かさと広がりが素晴らしい。
一通り出たあと、まだ食べていない食材をリクエスト、ということで出て来たのが赤ウニ丼。
雲丹ばかりは、いじりようがないようで、ちょっと今までのラインとは異なったが、とてもいい素材のものであった。
喜邑のネタはどれも個性が強く、ツマミならともかく鮨ダネとして用いるには少々厳しいとも思えるのだが、しかし喜邑の真の魅力は旨味濃厚なシャリにあり、各種の酢をブレンドしたシャリは、複雑な仕事を加えた鮨ダネにまったく負けない強く個性豊かな味のものであり、それで鮨全体としてのバランスが良く、どれも絶品ものの鮨となっていた。
美味い鮨であった。
この店に行くためだけでも東京に遠征する価値がある、そういう名店である。
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