ミュージカル:レ・ミゼラブル@クイーンズ劇場
ピカデリーサーカス駅を出ると、そこはミュージカルの聖地ウエスト・エンド。数多くの劇場が立ち並び、そこでいくつものミュージカルが開催されている。
今回の目的の一つはクイーンズ劇場での「レ・ミゼラブル」。この高名なミュージカルが最初に演奏された地での、まさに本場の演奏であり、さらにはオリジナルの演出で行われているのは、今ではロンドンだけなので、それも楽しみにしていた。
ロンドンの劇場は、歴史のあるものが多く、それゆえ規模が小さく、また設備も古い、ということになりがちであり、クイーンズ劇場はまさにその典型であって、ずいぶんとこじんまりとした、そして音響がややこもりがちの施設であったけれど、それが幸いして、音のリアル感が強く、演奏が進むにつれ、舞台と観客とが一体化したような迫力あるミュージカルを経験できた。
役者については、世界中からこれを目当てに人が集う演目に選ばれただけあって、どの人も歌が上手く、また演技も立派であった。
とりわけ良かったのが、ヤング・コゼット。
コゼットって、レミゼのなかでは、少女時代で役割が終わっていて、成長してからはマリウスの恋人としての脇役的立場しか与えられていない、さして劇中重きを置かれていない役なんだけど、コゼットを歌った役者がじつに素晴らしく、まさに天使のような美しい声で、情感豊かに各パートを歌うものだから、彼女が歌いだすと、舞台の雰囲気が一変して、明るく、幸せあふれるものになり、舞台を支配してしまう。
観ていて、コゼットって、こんなに重要な役だったのかあ、とか思ってしまった。
そしてそれで何が起きるかというと、マリウスとコゼットのかけあいの歌のところ、彼らが愛の二重唱を歌うところは、たいてい片思いのエポニーヌが絡んできて、「なんて私は惨めなんだろう」「私って何というつまらない人生を送ってるんだろう」と哀切なる心情を歌い、それが観客の心に痛切に突き刺さるわけだが、この舞台ではコゼットがあまりに良すぎて、カップルの幸せオーラが強すぎるため、エポニーヌの歌が二人の歌に割り込むと、観客としては、つい、「エポニーヌ、お前じゃま」とかひどいことを思ってしまう。
ああ、なんて可哀相なエポニーヌ。
とはいえ、エポニーヌって「徹底的に可哀相な存在」なのだから、これはこれでいいのかもしれない。だからこそ、エポニーヌの最後のところ、傍目には悲惨であるけど、しかし彼女なりの幸せをつかむところが、より印象的、感動的になったし。
それやこれやで、観て聞いて、いろいろな新発見もあり、そして改めてこのミュージカルの偉大さも知り、たいへん充実した時間を過ごせた。
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