映画:スター・ウォーズ 最後のジェダイ
スペースオペラの大作、スター・ウォーズは当初から9作での構成が予定されており、それは宿命の一族「スカイウォーカー家」の物語が主軸となるものであった。
1~6部はルーカスによって作成されたが、残りの3部は、ルーカスが体力的に無理だったのか、製作の権利を他社に移し、新たな製作陣でつくられることとなった。
その再開された3部作は、「スカイウォーカー家の物語」という基本設定は継承されており、今回は4~6部の主人公であった、ジェダイ史上最高の才能の持ち主「ルーク・スカイウォーカー」についてかなりの割合をもって描かれ、彼の運命についてのいったんの結末をみせている。
のだけど、なんか、どうにも納得いかず、もやもやしたものが残るのが、今回の映画の問題点といえば問題点ではあった。
まあ、最初から「ジェダイ」というものが、もやもやした、あやふやなものであったから、そうなるのもしかたのないものかもしれないが。
スター・ウォーズ世界では、「フォース」というものが世に満ちており、それを操る能力を持ち、かつその操作法の修業を積んだものがジェダイと呼ばれる。
その能力は、遠隔操作でものを動かしたり、あるいは人の呼吸を止めて命を奪ったり、……は近代的動力・兵器が存在している世なのであまり大きな意味はないとして、その他に人の思考を読んだり、思考を操ったりする、というものがある。これは人間社会において、たいへん強力な能力であり、それを持ったジェダイは社会組織の上層部に位置し、「裁定者」「調停者」等の役割を果たしている。しかしそれは同時にたいへん危険な能力でもあり、それゆえジェダイは独自のマンツーマン方式による厳格な教育法を取り入れ、さらにギルド内に厳しい戒律を課している。
けれども、そんな危険かつ便利な能力は、かならず一定数の者によって、それが善意が悪意かにかかわらず、本来の使い方と違った方法に用いられ、世を混乱に巻き込んでしまう。
だいたいが、ジェダイの徒弟システム自体がうまく運用できたいたとはとうてい思えず、スター・ウォーズで幾組も出て来た子弟コンビは、かなりの割合で破綻している。マスター・ヨーダだって、ジェダイとしては偉大だったのかもしれないが、師匠として有能であったとはとうてい思えぬし。それで、ジェダイにおいて一定の割合で、「悪いジェダイ」が生まれ、それが災厄の原因となる。
とにかく、ジェダイがあの社会にとって、常に厄介な存在であったことは間違いない。
スター・ウォーズ弟7作では、若きフォース使いレイが、隠遁した伝説のジェダイ騎士ルークのもとを訪れ、ライトセーバーを渡すところで幕となっていた。
その続編の今作では、とうぜん今までの作品群の基本設定を受けつぎ、ルークが師匠となってレイを鍛える、ということにならねばならないのだが、すんなりとはそうならない。
なにしろルークは、自己であれ他者であれ、ジェダイという存在に疲れ果てており、ジェダイは滅ぶべしという信念に行きついているので、まっとうな修行が始まるわけもない。そして、ついにはスカイウォーカーの一族であり、ルークの甥であるカイロ・レンが暗黒面に堕ちた真の理由も明らかにされ、若きレイはルークとの決別を決意する。
というわけで、ルークは今作において、廃人に等しい扱いを受けている。
エンドアの戦いから30年経ち、伝説的存在となってしまったルークにはいろいろあったではあろうし、それに元々ルークはそれほど心の強い人ではない。(スカイウォーカー家の男性のメンタルの弱さは、まさにお家芸みたいなものだし)
それゆえ、ルークがあれほど心が弱っているのはべつに不思議はないが、しかしその30年間については映画はなにも説明していないので、観る側としては、最初にルークがレイから渡されたライトセーバーをぽいっと捨てたところで、???となり、その後の展開も?マークが続いてしまう。特にカイロ・レンとのシーンは、弟6作目のルークを知る人には最大級の?マークが頭に浮かんでしまうであろう。
でもまあ、とにかくルークの物語を最後まで描いたのは、それはそれで結構なことだとは思う。
なによりルークを演じた、マーク・ハミルの演技は素晴らしいものであった。マーク・ハミルにとってルーク・スカイウォーカーは、人生と一体化したような、幸福でもあり不幸でもある、運命的な役であったわけだが、あの複雑な役を見事に演じ切っていたと思う。つまりは観客にとっては理解しがたいルーク像も、マーク・ハミルの熱演により、これもやはりルークなのだと、納得させるものはあったのだから。
そして終幕近く、孤島に座禅するルークをバックに二つの太陽が沈むシーン。ああ、ルークはこの二つの太陽とともにずっとあったのだと、Epi4から見続けて来たファンにはぐっとくる感動的な名場面であった。
・・・ルークのことばかり書いて、他のことには手が回らなかったが、2時間半近い長尺のわりには、見所が多くて、そんな時間を感じさせない面白い活劇だったと思う。
「スター・ウォーズ」というものに思い入れのあんまりない人には、映画にすんなりと入っていける、よい娯楽映画であろう。
【Binary Sunset】
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スター・ウォーズ 最後のジェダイ 公式サイト
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