サーラカリーナ福岡店閉店
福岡市のイタリアンの名店「サーラカリーナ」が今月末で閉店との知らせが突如届いた。
レストランが閉店するのにはいろいろと理由があり、もっとも多い理由は経営的問題なのであるが、サーラカリーナの場合は客はコンスタントに訪れているし、よい常連客も多くついている店なのでそれは考えにくく、なぜなんだろうと思ったけど、理由は閉店の2番目に多い理由、「店主の体調不良」なのであった。
そして、さらには店の借地期間の関係もあって、閉店とともに、あの瀟洒なレストランも取り壊され、更地になってしまうということで、物理的にもサーラカリーナはなくなってしまうのである。
これはたいへんと、店がなくなってしまう前にとにかく訪れることにした。
訪れたのはひさしぶりであり、緑あふるる蔦がさらに生い茂っていて、店の外観が変わっており、いったん通り過ぎてしまった。
【Ca' del Bosco Terre di Franciacort 2003】
サーラカリーナは一流のイタリアワインを仕入れている店であり、貴重なワインがいくつもセラーのなかにある。
店の突然の閉店により、それらのワインの行く末が気になるところであり、今回は料理にあわせるのでなく、ワインを主役として白・赤出してもらった。
白は、フランチャコルカの最高峰、カ・デル・ボスコのシャルドネ。ヴィンテージは2003年。この年には深い意味があり、サーラカリーナが薬院に開店した年なのである。
店とともに14年の年月を積み上げ、そして閉店の年に栓が開けられる。けっこう劇的。
ワインは当然、素晴らしい。
【Le Pergole Torte Montevertine 1994】
赤はトスカーナのワイナリー「モンテヴェルティネ」の最上キュベ、レ・ペルゴーレ・トルテ1994。20年以上の歳月をかけて熟成されたこのワインは、果実の豊かな香りとともに、奥深いコクがあってすこぶる美味であった。
キャビアのフェデリーニ。
ポルチーニとトリュフのラビオリ。
【パスタ】
この時期のサーラカリーナのスペシャリテ 桃の冷製カッペリーニ。
唐辛子とアナゴのパスタ。
食事に関しては、パスタ尽しをアラカルトで頼んだ。
サーラカリーナは、やっぱりバスタの実力が抜群に高いゆえ。
それにはもちろん理由がある。それこそ30年以上も前は、九州においてパスタって、洋食麺料理であり、「ミートソーススパゲッティ」か「ナポリタン」とかしかパスタの概念がなかったのだが、そこに今井シェフはまったく新しい概念を持ち出した。
まずパスタには形にしろ、細さにしろ、生麺、乾麺じつに様々な種類があること。そして茹で方、オイルの使い方、茸、野菜、スパイスの使い方等々。パスタには無限の素材と調理法があり、サーラカリーナで供されるパスタは、カルチャーショックものだったのだ。
そして、サーラカリーナは九州のイタリアンの最前線を走り続け、そこで修業したシェフたちが九州の第一級のイタリアンレストランを経営している。
今井シェフは、九州のイタリアン界にとってレジェンドであり、特別の存在なのである。
そして、今回食したパスタ料理、素晴らしものではあるけど、今井シェフがキッチンで陣頭指揮をとって料理していたころと比べると、微妙に違うものを感じてしまった。
今回の訪問は、私はサーラカリーナの料理というより、今井シェフの料理が好きだったんだなあ、と思い知った時間でもあった。
サーラカリーナは、でも、これで終幕というわけでなく、今井シェフは静養したあとは、また新たなところで店を起こしたいとの意思を持っているとのこと。
今井劇場はこれでEndというわけではなく、次の幕開けが、これから予定されている、そういうことだそうだ。
私も、次の開幕の日を、楽しみに待っております。