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June 2017の記事

June 17, 2017

オペラ:ジークフリート@新国立劇場

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 ワグナー作の「ジークフリート」は、大変楽しく面白い劇である。
 主神ヴォータンの血をひく英雄ジークフリートは孤児として生まれ、森のなかでニーベルング族のミーメに育てられていた。ミーメはラインの宝を守っている巨人族のファフナーから宝を奪うためという目的のみに、ジークフリートを育てていたため、ジークフリートはまともな教育を受けていなかった。本能のみで育ったようなため、己の怪力自慢の暴君に育ち、成人してからは養父ミーメも手がつけられない。ジークフリートはミーメを疎んじ、腕の良い鍛冶職人であるはずのミーメが鍛錬した刀をすべてへし折り、そしてミーメが所有していた折れた名剣ノートゥングを自ら鍛え直し、この名剣を持って森から出ていくと宣言する。
 ミーメはせめてファフナーは退治してもらいたく、ジークフリートをファフナーの住む洞窟の近くまで連れて行く。そしてそこで大蛇に化けたファフナーとジークフリートの諍いが始まり、ジークフリートはノートゥングでファフナーを切り斃す。そこでジークフリートは世界を支配できる力を持つ指輪を手に入れる。それを横取りしょうとしたミーメをついでに切って捨て、ジークフリートは小鳥の声に導かれ、妻を求めて旅に出る。目的地は、戦乙女ブリュンヒルデが眠る、炎で囲まれた岩山である。
 そこは主神ヴォータンが守っておりジークフリートの行く手を阻む。ヴォータンの武器である槍は世界で最も強力な武器のはずだった。しかしジークフリートはヴォータンの槍をノートゥングで折ってヴォータンを退かせる。
 何人の侵入も許さなかった炎もジークフリートを拒むことはできず、炎を突破したジークフリートは至高の美女ブリュンヒルデを得て、二人の歓声のうちに舞台は幕となる。

 ジークフリートはとにかく強く、そして思慮も分別もない脳筋男なので、なんでもやりたい放題、己の道を突き進み、欲しいものを全て得ていく。シンプルにしてストレートな英雄譚。いちいち難しいことは考えずに筋を追うことができる。
 そしてジークフリートは、舞台はずっと出ずっぱりで、咆哮のような強いテノールで歌いっぱなしであり、5時間近い舞台を一人で支配するという、過酷な役である。それゆえ「ジークフリート」は本格的な公演の実現が困難なことで知られている。これは作曲者ワーグナーの作劇法に問題があった、というふうに誤解されがちだが、じつはワーグナーの時代にはそれを歌える歌手はふつうに居たので、ワーグナーは悪くない。なにより現代音楽界の、人気歌手を消耗させ、育つまでに使い切ってしまうシステムに問題がある。

 それはともかく、ジークフリートを歌える歌手がいない、というのは何十年も前からのオペラ界の深刻な問題であった。しかしひさしぶりに本格的な力強い声を持つヘルデンテナー、ステファン・グールドが現れた。
 私は前回の「ワルキューレ」で彼のジークムントを聞き、これぞヘルデンテナーと感心して、今回のジークフリートを楽しみにしていた。
 そして一幕から終幕までずっと飛ばしっぱなし、ハイテンションの彼の素晴らしい声を聞くことができ、ほぼ理想に近いジークフリートを聞くことができ、感銘を受けた。

 さらには、そのほかの歌手の出来もよく、劇全体としても高水準のものになっていた。日本でこのような素晴らしいワーグナーの演奏を経験でき、たいへん満足した夜であった。

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June 15, 2017

ミヤマキリシマ2日目@九重:扇ヶ鼻~星生山

 日曜日は予報では曇りだったのだが、いつの間にか雨の予報にと変わり、そしてその通りに朝から雨が降っている。しかし朝のニュースをみると、午後には雨が上がり、その後は雨は降らないとの予報になっていた。
 ならば雨上がりを待って出発しよう、ということにした。
 赤川温泉に泊まったのは、ミヤマキリシマの名所扇ヶ鼻に登る予定だったからである。しかし、雨あがりのあとに赤川ルートを使って扇ヶ鼻に登る気にはとうていならず、予定を変更して牧ノ戸ルートで扇ヶ鼻に登ることにし、赤川から牧ノ戸へ移動。

 この時期の休日は、牧ノ戸の駐車場は満杯になり、道路に車があふれでているのが常だが、さすがに雨が降っている日は登山者は少なく、容易に駐車することができた。
 そして、11時前には雨が上がったので、出発した。

【沓掛山から】
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 沓掛山からの眺め。
 扇ヶ鼻と星生山は、ミヤマキリシマが見事に山肌を染めている。

【扇ヶ鼻】
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 扇ヶ鼻のミヤマキリシマはほぼ満開。素晴らしい眺めである。

【扇ヶ鼻】
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 登山道のまわりを一面ミヤマキリシマが囲う、御伽話のような道を登って行く。

【登山道】
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 私同様に雨上がりを待って登山を開始した人が多かったようで、私が扇ケ鼻を下りる頃から、どんどんと登山者が増えてきた。
 そのなかに、ひときわにぎやかな韓国人の団体客があった。
 大型バス3台利用して、百人近いほどの人が行動していた。登山でこれほどの団体を管理するのって大変だと思うのだけど、どうやら牧ノ戸から久住山までの行程を各々の力量にまかせて、自由に行動するやりかただったらしく、小グループでの行動。おかげで、大行列に遭遇せずに済んだ。


【星生山へ】
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 扇ヶ鼻から下って、それから星生山へと向かう。

【星生山】
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 扇ヶ鼻ほどの量はないが、それでも星生山のミヤマキリシマも今がピークであり、美しい。

【星生山】
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 星生山山頂から西千里ヶ浜方面を望む。
 扇ヶ鼻のミヤマキリシマもよいが、その隣の肥前ヶ城のミヤマキリシマも、豪華に咲き誇っており、この二つの峰を見下ろすこの風景は、素晴らしいものであった。

【星生山】
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 久住方面を望む。

【星生山】
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 三俣山、平治、大船方面を眺める。
 昨日登った山々。
 それぞれ、ミヤマキリシマのピンクの帽子をかぶったような姿となっている。

【久住山】
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 久住山の山肌にもミヤマキシリマがちらほらと咲いている。
 久住山にも登って、南面の群落を見たかったが、今日は登山開始が遅かったので、ここでタイムアップ。

 このあとは西千里ヶ浜から牧ノ戸へ下山。
 午前中に雨には降られたものの、そのおかけで、雨露に濡れたミヤマキリシマの花は、とても瑞々しく美しいものであり、それを楽しめたのは望外の幸運であった。


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June 10, 2017

ミヤマキリシマ一日目@九重:三俣山~大船山~平治岳

 ミヤマキリシマの季節は梅雨と重なるので、雨のせいでミヤマキリシマ見物は中止、ということによくなる。6月第二の週末も予報はずっと雨だったのだが、二日前に突然雨から晴れとなり、これはラッキーと、九重へと出かけた。

【星生山】
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 本日のコースは長者原を出発して、三俣山、大船山を周回するコースをとる。
 三俣山への登山道を行くと、正面に星生山が見えて来る。
 荒々しい山肌を、ミヤマキリシマの群落がピンクに染め、いきなり素晴らしい風景を見せてくれる。

【すがもり越え】
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 すがもり越えから三俣山に登る。三俣山の山肌のミヤマキリシマも花のつきがよく、稜線に入ってからの眺めが期待できる。

【登山道】
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 登山道の満開のミヤマキリシマ。奥に大船山。

【三俣山】
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 稜線に出ると、山頂からの山肌のミヤマキリシマの花が見事に咲き誇る姿が、正面に現れる。おどろくような風景。

【三俣山西峰から】
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 本峰にかけての山肌にも、びっしりとミヤマキリシマが咲いており、これも素晴らしい風景。

【三俣山本峰山頂】
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 まずは本峰にと登ってみる。
 ここから御鉢を眺めると、御鉢(大鍋)そのものにはミヤマキリシマは乏しいものの、鞍部のミヤマキリシマが満開であり、御鉢を巡ることにした。

【御鉢鞍部】
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 御鉢の切れ込んだ最低標高部に大きなミヤマキリシマの群落があり、ここは満開。

【御鉢(大鍋)】
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 三俣山名物の大鍋、ミヤマキリシマはあまりない。
 まあ、ここは紅葉の名所だから、秋にまた訪れることにしよう。
 で、大鍋には降りず、そのまま北峰に登っていき、御鉢巡りを続ける。

【三俣山南峰から】
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 御鉢を巡って、南峰に到着。ここから坊がつるに下って行く。
 南峰の斜面のミヤマキリシマも見事に咲いている。

【坊がつる】
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 南峰からの急傾斜を下り、坊がつるへ。
 ここから平治岳を見ると、登山道のある南斜面のミヤマキリシマが一面に咲いている。
 今年の九重は、どこもかしこもミヤマキリシマがとんでもないことになっていた。

【段原】
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 坊がつるから大船山へと向かう。
 段原に出ると、大船山方向はミヤマキリシマの咲き具合があまりよくない。
 ミヤマキリシマを観察すると、まだ蕾の状態が多く、大船山に関してはピークはもう少しあとのようであった。

【大船山山頂】
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 大船山山頂から眺める北大船と平治岳。
 この山域のミヤマキリシマは九重でも別格とされているが、その通りの圧倒的染まり具合だ。

【段原】
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 段原に戻り、北大船へ登っていく。

【登山道】
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 美しく咲くミヤマキリシマのなかの登山道を進んでいこう。

【平治岳】
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 稜線から眺める平治岳。
 一時期は平治岳南峰のミヤマキリシマは虫害でひどいことになっていたが、そこから完全復活。
 峠から山頂に向けて、ずっとピンクに染まっている姿は、なんだかミヤマキリシマのお化けみたいな、異様な迫力を感じさせてくれる。

【大戸越え】
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 大戸越え。ここもミヤマキリシマの名所であるが、ピークは少々過ぎていた。
 ここから本日のメインの平治岳登山である。

【平治岳南峰】
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 高さはないが、急峻な登山道を登りつめると、この有名な風景が眼前に現れる。
 三俣山、坊がつるを背景に、山肌一面がミヤマキリシマに染まる平治岳。
 九重を代表する絶景。
 今年もこの風景を見ることができた。

【平治岳本峰】
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 本峰側の斜面も一面ミヤマキリシマが咲き誇っている。
 ここも、夢幻的な美しい風景だ。

【雨ヶ池】
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 九重を代表する景観を堪能して、坊がつるに下り、それから雨ヶ池経由で下山。
 長者原起点の周回ルートで、三俣山、大船山、平治岳と、ミヤマキリシマの名所の山々を訪れたが、いずれも見事な咲き具合であった。花の時期と、天候がうまくあった快心の登山であった。

【赤川温泉で】
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 下山してからは赤川温泉の韓国料理オーベルジュ「赤川温泉スパージュ」に移動。
 汗をおおいにかいたのちのビールは極上に美味いのであった。


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June 03, 2017

ミヤマキリシマ@阿蘇杵島岳~烏帽子岳

 ミヤマキリシマの季節。
 阿蘇もミヤマキリシマの名所であるが、昨年の地震のせいで、登れる山は限られており、今回はそのなかで杵島岳と烏帽子岳に登ることにした。
 この一帯は30万株ものミヤマキリシマの大群生があり、時期がよければ山肌が一面ピンクに染まる風景を楽しめる。

【杵島岳登山口】
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 6月最初の週末は、まだ梅雨前線が北上しておらず、好天である。
 まずは杵島岳へと登ってみよう。

【登山道】
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 登山道にはちらほらとミヤマキリシマが。


【杵島岳山頂】
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 杵島岳は火口にミヤマキリシマの群落があるけど、先の地震の影響からか、群落地の土壌が崩れており、少々悲惨な状態になっていた。

【烏帽子岳】
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 山頂から眺める烏帽子岳。
 う~む、あんまりミヤマキリシマは咲いていない様子。

【古御池火口群】
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 山頂からいったん下山して、窪地を通り、それから古坊中経由で烏帽子岳へと。

【登山道】
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 烏帽子岳への登山道。ここもちらほらとミヤマキリシマが咲いている。
 この標高では、花の時期は終わりかけのようであった。

【登山道】
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 草千里からの登山道との三叉路の高さのミヤマキリシマの群落。
 ほどほどの咲き具合。
 条件が良ければ、山肌全体がピンクに染まるのであるが、3~5分といったところ。

【登山道】
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 山頂に近付くと、ミヤマキリシマの群落の花の数はぐっと減った。
 散っているのではなく、そもそも蕾の数が少なく、今年の烏帽子岳はミヤマキリシマの外れ年だったようだ。

【烏帽子岳山頂】
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 山頂手前で、立ち入り禁止の標識。
 震災から1年以上たっても、まだまだ復旧中である。
 ここからの中岳、高岳の眺めは素晴らしい。

【草千里へ】
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 先の三叉路に戻り、草千里方向へ下山。

【草千里】
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 草千里へ降り、それから駐車場へと。
 一面の緑が美しい。
 今日はミヤマキリシマよりも、青空のもとの、生命力あふれる草原の緑のほうが印象的であった。

Photo

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