ブルックナー第七交響曲@プロムシュテット指揮バンベルク交響楽団
名指揮者プロムシュッテットによるブルックナーの第七交響曲が宮崎市のアイザックスターンホールで演奏されるので、行ってきた。
公演の演目は「未完成交響曲」と「ブルックナー」の組み合わせ。なんだか微妙な組み合わせであり、この二つの曲の愛好者はあんまり重ならないと思う。
・・・おそらくは今回の演奏会では、ブルックナーが演奏の本命なのだが、しかしそれだけだと客が集まらないだろうから、よりポピュラーな「未完成」を主催者がつけ加えたとみた。
「未完成」は日本で人気のある曲であり、昔のLPって、とにかくA面あるいはB面に「未完成」入れときゃ、それなりに売れたという時代があったわけだし。
開演。
まずはシューベルトの「未完成」。
この曲、旋律は美しいとは思うけど、流れが悪いのでどうにも好きになれない。
美しい旋律が流れ、それが情緒を高めて行くと、急にジャ・ジャーンとその流れを妨げる音楽が入り、それからやり直し。またクライマックスに近づくと、同じく邪魔する音楽が入り、ずっとその繰り返しであり、イライラすることこのうえない。
シューベルトには美しい旋律をつくる才能はあったが、交響曲を組み立てる才能はなかったのだと思いたくなるが、でも「グレイト」みたいな傑作もつくっているし、どうにもよく分からない。
聴きながらいろいろと、才能の無駄使いとか、感性の違いとか考えているうちに「未完成」は終了。
そして20分間の休憩ののち、ブルックナー第七開演。
静かな弦のトレロモから始まり、雄大な第一主題が流れると、一挙にブルックナーの世界に引き込まれる。神秘的で、思索的で、祈りに満ちた第一章、この壮大で深遠な世界は、オーケストという巨大な楽器のみが奏でられるものであり、ずっとその世界にひたることができた。
バンベルク交響楽団は、LP、CDのみならず、私がそれを聴いたのは今回が初めてなのだが、中、低音楽器が特に充実しており、こういうふうな重厚な音楽を演じるにふさわしい楽団だったと思う。
なかでもチェロの演奏者達は大活躍。首席奏者は顔を真っ赤にして、懸命に弓を引き、「未完成」のときとはうってかわっての大違いの気迫の入り方であった。
この曲のメインである第二楽章も演奏は快調。ホルン、チューバが時々盛大に音を外していたのは御愛嬌として、音の流れは良く、クライマックスに向けてどんどん緊張感を高めて行き、見事な盛り上がりをみせた。(クライマックスでシンバルが鳴らなかったのは個人的にはちょっと残念だった。原典版にないのは知っているが、あれ、私好きなのである。)
第三、第四楽章は、スピード感が見事。とりわけ、フルート奏者は踊るように演奏していて、それがこの楽章の舞踏感とうまくマッチしていて、見て、聴いて楽しかった。
第四楽章、混乱ある秩序のうちに、盛大にフィナーレを迎え、見事に着地。
観客の大拍手に、齢89才というプロムシュテット氏が、何度も舞台に出てきて、歓声に応える。
素晴らしい演奏であった。
遠きドイツの地から、宮崎の地に、本場の音楽を持ってきてくれておおいに感謝いたします。