三鈷峰:大山神神社~宝珠尾根~三鈷峰~親指ピーク~野田ケ山~川床
伯耆大山は縦走路が崩れており、数ある峰のうち、登山が出来るのは西端の弥山と東端の三鈷峰しかない。
昨日登った弥山はポピュラーであり、普通は「伯耆大山に登る」というときは、こちらのほうをさすことが多いみたい。しかし、三鈷峰もまた素晴らしい峰であり、大山を訪れるときはこちらも登りたい。
好天が二日続いたGW前半、昨日に引き続き、大山博労駐車場に車を止め、三鈷峰に向かってGo。
駐車場からは参道を歩き、大神山神社へ向かう。
大神山神社横の登山口から、宝珠尾根を目指す。
登山道は、昨日の整備されまくりの夏山登山道とは異なり、いわゆる普通の登山道だ。
宝珠尾根の道は、ところどころ崩壊しており、気をつけて登らねばならない。
尾根に乗り上げれば、樹々のあいまから大山北壁が見える。
宝珠尾根の道は、いくつも難所があり、固定ロープで安全を確保しながら登る必要がある。
高度が上がると樹々の丈が低くなり、眺望が開けて来る。
伯耆大山の第一の魅力は峻厳な北壁だと思うが、夏山登山道と比べ、こちらのほうがより近くを登るので、さらに迫力が増し、じつによい眺めだと思う。
宝珠尾根の道は、いたるところかなり崩れており、こういうところはいかにも危なかっかしい。
上宝珠山への登り口で、谷への道に「立入禁止」の標識があった。
ここが大山名物「砂滑り」の入り口であり、ここを下れば、元谷まで一直線の下り道となるわけだ。
ところで、宝珠尾根を登っていると、元谷のほうからずっとゴゴゴという音が鳴っている。その方向を見ると、無数の大中小の岩がずっと転げ落ちているのであり、伯耆大山は現在進行中で崩壊している山なのである。
この砂滑りの道、webとか見ると今でも使っている人がけっこういるようだが、ここ行くと、運が悪ければ、土石流レベルの岩の雪崩に遭遇しかねないから、標識通り使わないほうがいいに決まっているルートであろう。
上宝珠山を過ぎると、ようやく大山の稜線が見え、そしてユートピア避難小屋も見える。
稜線に乗り上げれば、左手には目ざす三鈷峰、右手には大山の猛々しい稜線が見える。
まずは三鈷峰を目指す。
時系列的に後の写真になるが、稜線のさらに上の位置からだと、こういうふうに見える姿のよい山である。
三鈷峰、近づくと、相当に崩れている山ということが分かった。
ほとんど瓦礫を積み上げたような山であり、登山道も無理やり通しているような感じである。
その瓦礫のなかの登山道を通り、山頂へ。
展望の開けた山頂であり、360度の絶景を楽しめる。
屏風のように立つ大山もいい姿であるが、こちらは200mほど標高が低いので、なんだか見下ろされているような感じがしてしまうのが、少々残念。
山頂から山小屋方向に引き返す。
この稜線じつに景色がよい。
ただし、途中で稜線が崩壊しているため、通行止めになっている。
とりあえずは通行止めの所まで行ってみた。
大山、人気ある山ゆえ登る人は多く、この標識を無視して通って行く人も幾人もいたが、ある人は途中で恐くなり引き返し、ある人は上方でヘリが飛んでいるので「監視かも?」と思い引き返し、ある人はそのまま進んでいた。
まあ、いろいろな人がいるのです。
下山はユートピア小屋から野田ケ山経由川床への道を行くことにする。
地図ではここから野田ケ山までは破線のヴァリエーション扱いとなっていたので、地図と眼前の地形を見比べてみて検討。ルート自体は迷いようもないし、途中の親指ピークあたりは崩壊がひどいようだが、通れぬこともないみたいだったから、予定通りここを下山。
なお、人気高い大山の、そしてGWというに、三鈷峰からのこの道を行ったのは、写真に写っている左手の男女二人組(下山中)と、それから右手の男性一人(登山中)、それに私のみであった。
おもしろい道だったけど、行程が長すぎるせいか、あまり使われてないルートのようである。
三鈷峰からの下りは、大山の南壁を見ることができるのが魅力である。
大山は北も南も両側とも切り立っている、ほんとうに一枚の壁のような山であり、ゆえにどちらかみても迫力ある。
ただし、両側切り立っていることから、縦走路は幅が狭く、しかも現在進行中で崩れているため、非常に危険であり、死亡者も出ていることから通行禁止となっている。
まったく、こういう崩れっぱなしの支点もないような登山道は、技術・経験があればどうこうなるというものでもなく、度胸と運が全てという、「まともな思考の人は通らない」道となっている。
それでも、縦走路を数人のグループが通っていた。
無理矢理のスタカットというわけでもなく、各々別々の行動であり、そして剣ヶ峰直下では、一人ずつ走って渡っていた。なんで走るんだろう?
このときちょうど私は下山中の男女二人組に追い付いて、その縦走路の光景を眺めながら雑談していたのだが、そのうちの男性は以前崩壊する前の縦走路を知っており、「あそこはナイフリッジになっているので、一挙に行ったほうが安全なんです」と解説してくれた。
振子山を過ぎてから次は親指ピークへの登り返しである。
このピークずいぶんと崩壊している。
こんなところ無理やり道をつくらんでも、巻き道作ればよいだろうと思ったが、近づくと側面方向は到るところ崩壊しており、とても巻き道など作れるわけないことが分かった。
ここに限らず三鈷峰のルートは、どこかしこと崩壊しており、登山道として維持できるのはそんなに長くないような気がする。
いずれ、なにかの天災でダメージがあると通行止めになるのは必至と思われ、三鈷峰~川床を経験したい人は早めに行ったほうがいいと思う。
親指ピークを過ぎ、次のピークから、親指ピーク方向を振り返る。
ここから見ると、振子山もまたずいぶんと崩壊している。
そして後方の二人組を見ていると、親指ピークの前で女性がそれ以上行くのを拒否したようで、男性だけが鞍部に荷物を置き空身で親指ピークに登り、そしてそこから引き返したみたいであった。
野田ケ山は、一見なだらかな山に見えたが、ここへの道はけっこう急傾斜であり、楽はさせてくれない。
なんとか野田ケ山山頂へ到着。展望はきかない。
ここに来れば一応の安全地帯であり、ここから先は、踏み外せば落命、というところはない。
野田ケ山からの下り道はずっと樹木のなかである。コブシの白い花が、ところどころ咲いている。
登山道が平たくなってきたら、そろそろ大休峠である。
樹木帯が切れ、太めのブナの樹が立ち並ぶ広場が大休峠。ここには避難小屋もある。
大山寺から大休峠にいたる道は、昔は峠越えの重要な道だったようで、石畳の道となっている。歴史ある道なのだ。
大休峠から川床へは遊歩道扱いとなっており、定期的に標識が設置されている。
ずっと山のなかを歩いて来たが、このあたりまで来ると、水音、そして舗装路を走る車の音が聞こえ出し、人の住む地も近い。
うつくしい清流の阿弥陀川にかかる木橋を渡ると、すぐに川床へ出る。
遊歩道は、県道158号線の舗装路に出る。いちおうここが川床登山口なのであるが、私は博労駐車場から登ったので、それまで歩いて行かねばならない。
登り100m、距離3.8kmの舗装路歩きは、けっこうきつい。
県道158号線は左手に大山と大山スキー場を眺めながら、ゆるい登り坂を歩いて行く。
この坂を、ロード乗りのグループがずっと登って行った。
彼らは弱脚気味で、途中でへたって休憩とかしていたので、歩いている私と抜きつ抜かれつ登ることになる。まだ若い人たちだったので、「君たち、それでいいのか」と心で突っ込みながら歩いたが、まあこの舗装路歩き、退屈せずには済んだ。
ようやく駐車場に着くと、山から見えていたときより、だいぶ車の数が減っている。
今回は行程が長く、8時間くらいかかったので、私の下山時刻が遅く、それで弥山に登ったひとたちの多くは既に帰っているようであった。
伯耆大山、二日かけて、弥山と三鈷峰の二つを登った。
弥山への一直線の眺めよい登山道と、山頂の庭園。三鈷峰の荒々しい道と、大迫力の大山北壁の眺め。いずれも魅力あふれるものであり、やはり伯耆大山に登るときは、この二峰はかならず登るべきと思った。
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