宮廷料理@辰園(台北市)
旅行ガイド本「地球の歩き方」を見ていて、レストランの項を調べると最初のほうで紹介しているレストラン「辰園」では宮廷料理を出していて、この料理は台湾では一軒しか出されてないということが載っていた。
「宮廷料理」とは、あの「満漢全席」のことである。だいぶと前に開高健や邱永漢のエッセイで名前だけ知っていて、憧れの念を持っていたまま、ずーと放っておいた料理が実際に食べられる機会がある、ならばそれは経験してみたい。
そして満漢全席は清王朝の皇帝が食していた料理であって、「熊の掌」「猿の脳味噌」「駱駝のコブ」等々、今となってはゲテモノとしかいえぬ料理がメインの珍味シリーズなのだが、さすがに現在では相当にアレンジされているだろうから、その変遷具合も確かめたいという好奇心もあった。
そういうわけで、「辰園」に宮廷料理の予約を取り、Go。
( じつは一行で済ますほどあっさりとはいかなく、いろいろと前後で苦労したが、まあ異国の旅行とはそんなものでしょう )
「辰園」は、潮州料理の店。新鮮な海産物は浅めの味付けで調理し、それからフカヒレやアワビはそれなりに手を加えてその素材自身の旨みを強めて呈する、そういった料理が得意な料理である。
「地鶏と高麗人参の滋養茶」
このスープ、ほとんど漢方薬の乗りの味なんだけど、食前酒に似て、これからいっぱい食べるための、胃薬みたいな感じのスープであり、・・・美味いとは思わぬが、相当に手間暇かけた複雑な味わいが面白い。
「子豚の黄金丸焼き」
中国では肉料理は豚が主役のようで、そして皮の調理には特に技術をこらしている。
そしてカリカリに爽やかに焼けた皮がこの料理の主役。周りの野菜やクラゲを口直しに、カリカリと食いましょう。
「極上フカヒレの姿煮」
フカヒレは、・・・いい食材なのだけど、中国では極上のスープで煮る料理しか出てこないのは何故なんだろう。
いや、とっても美味しいんだけど。なんか他に料理法はないのかと。
「大正海老と帆立のチキンソースかけ」
なんだか甘ったるそうなソースだけど、じつはさっぱり系統の、鶏の出汁が滋味ふかく感じられるソース。海老の素材もよい。
「極上アワビと茸の煮込」
有難そうな名前の料理。
アワビは複雑な味がたっぷりつまっていて、相当に手を加えたものであり、濃厚な味である。
「季節の蒸し魚」
広東料理系の「清蒸鮮魚」的な料理。
魚はたぶん鱸だったと思うけど、味付けはあっさりしており、魚の旨みがよく感じとられた。
「京風味手打ち麺。
〆の炭水化物は、京風味手打ち麺」
素朴な味付け肉と、柔和な腰の麺。中国でよくある系統の、ほっこりとした感じの麺料理。
ツバメの巣の杏仁ココナッツソース風味、季節の果物。烏龍茶。
というわけでの「宮廷料理コース」。
立派で豪華感のあるコース料理なんだけど、しかし皇帝が食していたコース料理にしては、平凡なような気もするであろう。べつだん珍味系の食材もなかったし。
けれどこの店の「宮廷料理」とは、じつは料理がメインではなかった。
辰園での宮廷料理。その流れ。
レストランに入り、「宮廷料理」を予約しているといったら、専用の広い個室案内される。そして清王朝の皇帝の衣服を示され、それを着用にするよう言われ、着衣したところで記念撮影。そのままの格好で食うことも可能なのだけど、さすがにこういうシルクの高価な衣服で料理を食う気もせず、普段着に戻り食事がスタートする。
個室では宮廷衣装の給仕の女性がずっと付きっきりでサーブ。(部屋に置いている卓上コンロで、担当の女性がスープ料理のたぐいを調理するのは、ちょっとやめてくれよとは思ったが。)
そして、宮廷料理のサービスとして、お土産に辰園特製のお茶と塩で造った人形とメニューを書いた扇がもらえる。
そういうわけで辰園の宮廷料理とは、「古の皇帝が食っていた料理の再現」というわけでなく、「皇帝が経験していた豪華な衣服で優雅にサービスを受けながらの食事」という、バブリーな気分で食事を楽しむのが目的の料理であったみたい。
これって、多人数で、みんな皇帝の衣服を着てわいわい騒ぎながら食べていたらたしかに面白そうだけど、私のように、食事を目的にして最少人数で訪れたら、部屋の空間は無駄だし、給仕の着飾った女性も時間をもてあましていたし、なんだか思いっきりはずしていたようであった。
料理はもちろん良かったのだけど、なんだかいろいろと反省すること多き、辰園の料理であった。
【大事な教訓】 初めてのレストランを訪れるときは、事前にくれぐれも調べましょう。
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