オペラ:皇帝の花嫁 リムスキー・コルサコフ作曲
香港音楽祭の第三夜は、オペラ「皇帝の花嫁」。
そんなものは知らん、という人が大多数であろう。私も事前にプログラムを見るまで、こういうオペラがこの世に存在することさえ知らなかった。
ロシアの有名作曲家リムスキー・コルサコフの作曲によるもので、ロシアではけっこう有名なオペラだそうだ。しかしロシアのオペラ自体がマイナーな我が国では知名度はゼロに等しく、いまだに本邦では演奏されたことがない。どころか、アジア全体でも演奏されたことはなく、1899年にこの作品が作られて以来、100年以上経っての今回の香港での上演がアジア初演となるそうだ。そしてたぶん今回一回きりの演奏となるであろうから、ほとんど幻のような作品なのであり、これを生で見た経験のある人は極めて少ない。それゆえ見たことがなにかの自慢のタネになるかもしれない。
このオペラ、事前にどんなものか調べておこうかと思い、CDをアマゾンで探したが、さすがマイナー曲だけあって、なにもなかった。ただしオペラを映画形式で撮ったDVDがあったので、それで一通り勉強しておいた。(半世紀前につくられたこの映画は、ロシアの風景が美しく撮られており、なかなかの逸品。ソ連という国は、政治と経済は出鱈目だったけど、芸術のレベルは高かったことを改めて認識。)
劇場、最前列の席に座り、そして幕が開く。
最初、DVDで聞いていたとおりのバリトンのアリアが始まる。そのあと、イワン・セルゲーヴィッチという若い男が紹介され、朗々たるテノールの歌声を響かせる。いかにも主役級の歌なのであるが、映画にはそのような人物は出ておらず、「誰だ、こいつ?」と思ったが、そのうちヒロインの婚約者と判明。映画のほうは時間内に収めるため、イワンの歌と出番をカットしまくっていたみたい。イワンの歌は良いものが多かったので、カットは残念であった。
舞台の演出は変にモダンにいじったものではなく、帝政ロシア時代の建物、内装、風景、衣装をそのまま再現したものであり、演奏もいたってスタンダード。
オペラの筋は、どろどろの愛憎劇であって、見ていて面白い。また音楽も分かりやすく、どれも美しい旋律のものであった。
オペラというものは本来はさして高尚なものではなく、どころか民衆の娯楽として支持されていた。現代で言えば、人気テレビドラマに似たようなものであった。
この「皇帝の花嫁」はまさにそういう感じで、いかにも「古き良き時代のオペラ」という感じであった。4時間近い上演、退屈することなくおおいに楽しめた。
ところでこのオペラ、プログラムでは指揮はロジェストヴェンスキーであった。80歳を越えた大指揮者が、遠いアジアにまで演奏に来るのだと、その気力・体力に感心したけど、…夕方に体調を崩して演奏が出来なくなり、アシスタント指揮者の指揮に変更になったとの知らせがあった。がっかりすると同時に、しかたないかと少々納得もした。
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