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March 19, 2015

ヴィオラ奏者に目が釘付け@マーラー第六番 ドゥダメル指揮 香港2015

Gustavodudamel

 今年の香港アートフェスティバルの目玉は、ドゥダメルであった。
 彼は現代の音楽界で、ナンバー1の実力を持つとも称される若手指揮者であり、将来的には伝説的な名指揮者に成長するであろうとも言われており、注目度も高い。

 どの音楽雑誌をみてもそういう評価であり、それで私はドゥダメルのCDを何枚か聴いてみたけど感想といえば、器械体操みたいな演奏をする人だなあ、というものであった。
 器械体操の名手がジャンプ、ターン、着地、それぞれがキッチリ決まり全体としてまとめあげていくように、ドゥダメルの音楽は各パートの旋律がきっちりと奏でられ、どの楽器も鮮やかに鳴り、デジタル的に全体像がとても分かりやすい。聴いていると、楽譜が立体的に迫ってくるような迫力も感じる。極めて明晰でクリアな音楽であり、見事なものだと思った。…ただしそこには、余韻とか、含有とか、神秘性とか、そういうアナログなものが欠片もないように感じられ、私にとってはどうもピンと来ない演奏でもあった。
 まあ、それはあくまで録音を聞いての感想で、ライブでは違った姿も見られるであろうと期待しコンサートに臨んだ。

 演奏が始める。
 すると私はヴィオラの首席奏者の女性の演奏、というかパフォーマンスに、目が釘付けとなってしまった。
 交響曲の演奏では、オーケストラの団員は指揮者の指示に従い演奏するわけで、みな指揮者の指示通りに団体の一員として演奏する。だから個の演者が目立つことはないはずなのだが、このヴィオリストは、演奏の強弱に従い、身体を激しく動かし、身体をうねらせ、ねじらせ、あるところでは悶え苦しむかのようにして演奏する。リズムの良いところでは、それに合わせて足をバタバタと動かすので、足音が聞こえないかと心配してしまったりする。そして音楽が緩徐楽章とかで、情緒深いところでは、陶然とした雰囲気で身体をゆらせて演奏する。
 とにかくやたらに目立つ演者であり、そして彼女の動きを見るだけで、今がどういう演奏かがよく分かってしまう、音楽の化身のような、なんとも個性ある演奏をしていたのである。

 こんな奏者は初めて見たし、絶対有名人だと思って、あとで「ロサンゼルスフィル・ヴィオラ奏者・目立つ」のキーワードで検索したら、あっさりと1ページ目にその奏者の記事「Carrie Dennis is easy to notice in the Los Angeles Philharmonic 」が見つかり、彼女はCarrie Dennisという名前の人だということが分かった。
 そしてその記事は、ロサンゼルスタイム誌なのだが、「オーケストラの団員は集団の一員として演奏するのであり、ソロパート部を除いては、奏者が目立つことはない。しかしロスアンゼルスフィルのヴィオラ主席奏者Carrie Dennisだけは、100人以上が演奏しているなかでも、誰しも容易に彼女を見つけることができる」と始める記事は、我々が普通に思う疑問、いったい彼女はなぜああいう演奏をするのか? 他の楽団員は迷惑に思わないのだろうか? なぜ靴の音がしないのだろうか?(→答え 特性靴を履いてるから) 指揮者はどう思っているだろうか? そもそも彼女はいったい何者なのか?(→超一流のキャリアを積んできたヴィオラ奏者) という疑問に全て答えている、いい記事である。

【Carrie Dennis】
Carrie_dennis

 まあ、とにかくなにかに、―おそらくは音楽の神みたいなものに憑かれたような演奏をするCarrie Dennisに目が釘付けとなり、ドゥダメルのエレガントな指揮姿にあんまり目がいけなかったのは、少々残念であった。

 あ、目はヴィオラ奏者のほうに集中してしまったが、肝心の演奏はちゃんと耳を傾けていました。
 この演奏では、私がマーラーの中期以後の交響曲に感じていた、数が勝負というふうな、音がmassとして迫ってくる、そしてそこに生じる独特の濁りというか、翳りというか、そういうものが感じられぬ、各旋律が分離してきっちりと聞こえてくる、ときには室内楽的な明快さも感じさせる、…まあ事前にドゥダメル的な音楽と思っていた音楽が、マーラーでも鳴っていた。そしてこのような「明晰な」演奏をマーラーの第六でやられると、終楽章は個人的には辛いものがあった。迫力はあるけど、何度も繰り返される旋律が、結局はただの音符の羅列のように聞こえ、もうこのへんで結構という気になってしまう。それは、マーラーが表現したかったものと、そうとう離れているような気がした。
 こういうマーラーもありなのかもしれないのだろうけど、やっぱりよく分からなかったのというのが私の実感であった。

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