映画:オール ユー ニード イズ キル
宇宙からの侵略者、というか侵略用機械「ギタイ」の攻撃によって人類は滅亡の危機に瀕していた。ここで反攻のために人類は持てる戦力全てを使った総攻撃をかける大作戦を行う。
士気を高めるために前線に広報活動を行うように要請された広報担当の将校ケイジ少佐は、己の臆病さから命令を断ったため、二等兵に降格され、強制的に前線に送られる羽目になった。
戦闘能力ゼロのケイジは、最初の攻撃で命を落とす。しかし死んだはずが気がつくと、一昨日に時間が戻っていた。また同じ攻撃に出るが、やはり命を落とし、そうなるとまた時間が戻っている。目が覚め、闘い、そして死に、また目が覚めるの無限ループ。
何をやろうが出口のない、一種の不条理劇。
ひとつ間違うとギャグになってしまいそうな筋なのだが、…じっさい前半の一部はギャグ映画みたいになっている。
なにはともあれ、目の前一つずつの危機を解決していくために、明日への切符をもぎ取ろうとケイジは努力を続け、やがて臆病者であった兵士は、数え切れぬループを繰り返すうち、百戦錬磨の鍛え抜かれた兵士に変貌を遂げていく。
このあたりのケイジ役のトム・クルーズの演技はまさに名優だけあって、じつに見事だ。
ところでこの映画、原作は日本のSF小説「All you need is kill」である。この小説、ラノベ風文章のわりに、内容は本格的なハードSFであり、独自の設定がしっかりしている。
原作から先に読んだ私としては、この映画には、なによりもヒロインである女兵士リタの活躍の映像を期待していた。原作では、リタは人類最強、というより人類のなかで唯一別格の存在であり、無敵であったはずのギタイ群を彼女はただ一人殺戮し続けていたわけで、その闘いぶりはまさに闘神というべきものだったから。
映画でも最初のナレーションでリタの活躍をテレビが報じ、人類のヒーローと褒めたたえている。ビルにも人類希望の象徴として彼女の姿が貼られ、そしてリタが大太刀片手に戦場に現れるシーンは格好いいの一言であり、これからリタがギタイを何百も破壊する姿が見られる、と期待するわけだが、…リタはギタイをいくつか倒したのみで、その後簡単に返り討ちにあって殺されてしまい、あれれ?となる。
まあ、予告編でリタがケイジとともにあっさりと爆発で死ぬシーンがあることから、妙には思っていたのだが、この映画はリタの強さは相当に改変されていた。
映画は原作とは筋が変更されていて、その筋の流れとして、リタが強すぎては話は進まないのでしかたがないとはいえ、原作を読んでから映画を観た人は、だいたいここを残念と思ってしまうのでは。
それでもリタの役割の変更は、映画ではもちろん意味のあるもので、前半でケイジを苛め抜くシーンの笑わせどころはともかくとして、互いをパートナーと認め合ってからの行動ぶり、それに心を通わせる情緒深い場面、どれも趣きあるものだ。
原作とはちがう魅力が十分にこの映画にはあった。
映画はループを続けるうち、解決法がどうやら別にあることが分かったことから、リタとケイジの作戦がいきなり変更となり、物語は人類存亡を賭けての終末戦へ向かっていく。
そして全てが終わってからの、ハリウッド風の強引なエンディングは、賛否両論はあるのだろうけど、それなりに整合性はとれていたとは思う。
設定の面白さ、トムの名人演技、よく出来た脚本、そして何よりも圧倒的な映像の迫力。とくに前半のビーチ上陸作戦は、まるでノルマンディ上陸作戦を実況中継したような迫力満点のものであり、観ておおいに満足できた映画であった。
そしてこの手の映画はやはりIMAXに限ると思った次第。
九州にひとつのみあるIMAXは、しかしあとしばらくすると上映はゴジラに変わってしまうので、IMAXで観たい人は急ぐべし。
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映画:オール ユー ニード イズ キル
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