阿蘇望(2014)撤退記
九州のみならず全国から坂好きのサイクリスト達が集う、夏の一大イベント阿蘇望。
夏の暑い時期に峠を4つ、計2800mの高さを自転車で登るという、マニアックなサイクリング大会である。
この大会は天候に恵まれない年が続いていたのだが、週間天気予報をチェックしていると、当日は「曇りのち晴れ、最高気温31度」という、阿蘇望にふさわしい過酷な条件を楽しめそう、というか苦しめそうな条件になっていた。
ところが前日になって、予報が変更となり、日曜の阿蘇は曇りのち雨という予報になってしまっていた。いったい阿蘇望に何人雨男(or女)が参加しているんだい、と愚痴りたくなるような話である。
それでも、午前中は天気はもつようなので、とにかく二つ峠を越えて、午後の二つの峠をどうするかは昼食休憩中に考えることとし、DNSはせずに、前日から阿蘇に入った。
受付時の阿蘇の風景。雲が一部かかっているが、全体的には好天である。
朝起きて外を眺めると、厚いく雲が低く立ち込めている。明らかに雨雲であり、一目でやる気が失せる風景だ。
ついでに天気図をチェックしてみる。
九州では梅雨は明けたはずなのに、前線の尻尾が九州に戻ってきている。この前線の尻尾は気圧の配置から、これから九州を南下する動きとなる。そして前線の移動時、前線の高さから、九州では阿蘇を中心に雨が降るそうであった。
とりあえず予報からは前線の動きはゆっくりしているとのことで、午前中はなんとか天気は持ちそうなので、予定通りに阿蘇望に参加することにした。
出発時の天候は曇り。そして蒸し暑い。スタートを待つ間は、立っているだけで汗が出るほどである。
阿蘇望が始まって30分ほどしてから私たちの番が来て、スタートラインについた。
山は天候が悪く、霧で満ちているのでライトを今から点灯しておいてくださいとの注意があり、ようやくスタート。
ローソンの交差点から草千里浜へ向けての登りとなる。吉田線では、蒸し暑く、風も吹いていないので、ペダルを回すごとに暑さがつのり、最初から阿蘇望のきつさを思い知る。
延々と続く坂を黙々登って行くうちに、吉田線で一挙に風景が広がる所に出る。
ここのところは、阿蘇望随一の絶景だと思う。
阿蘇望唯一のトンネル、火の山トンネル。
ここを過ぎると、吉田線はけっこう楽になる。
そして草千里浜に近づくと、あたりは霧が立ち込め、気温が下がり急に涼しくなった。
涼しい阿蘇望なんて阿蘇望じゃないよという説もあろうが、登ってる最中はそんな気などおきず、この涼しさがただただ有難い。
しかし、草千里浜の高さになると霧は濃くなり視界がまったく利かない。それに小雨も降り出した。
草千里浜に着いたことには、視界はより悪くなり、雨粒も大きくなりだしてきた。
天候がどんどん悪くなるなか、最初の峠である草千里展望台に近づくころ、前方にママチャリを発見。あの重たいママチャリでこの高さまで登るとは大した豪脚である。
とはいえ当たり前のことながらスピードは出ず、ロードバイクに次々に追い抜かれていったけど、みなから「すごいですね~」と声をかけられていた。
私も素晴らしい脚力ですね、とか声をかけて追い抜き展望台に到着。小雨が降っているので休憩する気もおきず、写真を数枚撮っただけで坊中線の下りに入った。
小雨のなか濡れた路面でグリップが悪いので、ブレーキを常にかけながら下って行く。ロードバイクとは、「乾燥した舗装路を走ることに特化したデバイス」なので、濡れた下り坂は危ないことこのうえない。
そういうふうに徐行していくと、…何台ものバイクに抜かれる。そのうち、例のママチャリにも抜かれてしまった。 ママチャリって、登りは遅いけど、下りは速いんだなあ、とか感心しつつ下っていったら、雨が本格的に降りだし、土砂降りとなった。坊中線はただっ広いところであり、雨宿りするようなところもないので、とにかく第一エイドへと向かう。
坊中線は開けた地なので、眺めはよく、晴れた日にはたいへん気持ちのよい道なのだが、雨の日はただただ辛い。
第一エイドに着いたときも雨は土砂降りのままで、さらには雷まで鳴り出した。そうとう近いようで、定期的に稲光とともに轟音が鳴り響く。
予報よりも前線の南下が早くなったようで、午前中から天気が大崩れである。とても自転車を走らせられるような状況になく、第一エイドには雨宿りする人がふくれあがる一方となった。
天気図からして、サイクリングを続けるなら前線を追いかけることになり、この悪天候はずっとついて回るであろう。それに条件の悪い山間部は雷の巣みたいになっているのは明らかであった。
ロードバイクは雨のなかを走るようにはできていないし、特にびしょ濡れの下り坂は危険きわまりない。ハードなコースである阿蘇望ではそれはなおさらだ。
さらにはこの雷。フルカーボンバイクなんて雷の餌みたいなものなので、遮蔽物なきまっ平の道路を走っていると直撃の危険さえある。
この大会、常識的に考えて中止だろうし、どころか現在の時点でレッドフラッグが出てもおかしくない。どこで旗振るのかは分からないが。
というわけで、この時点で私はあっさりとDNFを決断。山ヤの私は、退却の決断は早いのである。
まあ、私と同じ考えの人はいくらでもいて、リタイヤする人は続出であった。車でエイドまで迎えに来てもらったり、早々と回収車に乗り込む人もいた。
私の場合は田中サイクルのサポートカーが走っていたので、店主に電話連絡して、スタート会場まで運んでもらうことにした。
エイドには田中サイクルのメンバーが数人雨宿りしており、「天気図からは天候の回復は望めない。どうせ大会は中止になるだろうし、なによりこんな天候のなかで走る気はしないから、サポートカーで自分は戻るけど、どうします?」と私は相談を持ちかけたが、若いK君はまだ頑張りたいとのことで、雨の勢いが少々弱まったところでコースに飛び込んでいった。元気だな~。ベテランPさんは少々様子をみたいとのことで、結局田中サイクルメンバーでは、私ともう一人がサポートカーに乗り込み、出発会場のアスペクタまで戻ることとなった。
車内からは雨のなか走っているサイクリストを応援。
走っている人たちが羨ましくも思えるが、またいつ豪雨、雷が訪れるか分からん状況で走る気はやっぱりしない。
アスペクタ会場に到着。まさか車で戻るとは思ってはいなかったが、仕方ない。
田中店主、有難うございました。
そして、アスペクタ会場にはこのように大会中止のお知らせが。
まあ、当然の判断ではあろう。
今までのコースでも怪我人がいくらでも出ておかしくはない状況であったわけだし、これ以上進めるわけにはいかんでしょう。
会場に戻っても雨ざらしのアスペクタで何をやるという気もせず、さっさと帰宅することにした。
阿蘇のなかは悪天候であったが、外輪山を越えた高千穂は晴天である。
天気図からは、そうであろうとは思うけど、それでもなんか納得いかん風景であった。
帰宅して天気図を確認。
阿蘇望が行われていた午後は、このように九州では阿蘇望のコースのみ、狙ったように雨が降っていた。
九州中の雨男(or女)がこぞって阿蘇に集結したような、阿蘇のみアンハッピー、残りの九州はハッピーな7月最後の週末なのであった。
阿蘇望は、やっぱり難しい。
7月末というのが気候の不安定な時期であるし、それに山岳部の阿蘇はその影響を最も受けるところだ。
でも、この不安定さを含めた全てが阿蘇望の魅力と思いたい。
それはともかく阿蘇の山々も、阿蘇望も逃げない。
また来年、健康と体力を保持して、この魅力あふれる阿蘇望を走りたいと思う。
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