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March 16, 2014

映画:キックアス2

Kickass2poster

 前作キックアスは、タイトルロール駄目ヒーロー「キックアス」のへっぽこ活劇と思いきや、脇役であるはずの美少女殺戮兵器ヒットガールに見せ場を全部とられてしまった、という内容の映画であった。
 続編は、さすがにキックアスも主役らしい活躍はするが、他にも主役級の人物が幾人も登場し、彼も含めての様々なヒーローと悪役達の群像劇であった。

【キックアス@デイヴ】
1

 前作ではヒーローを諦めたはずのキックアスではあったが、やはりヒーローは一回やったらやめられないものらしく、ヒットガールを師匠に肉体と体術を鍛えあげ、前作よりもよほどヒーローらしくなっている。
 しかしながら現実社会でのヒーロー活動は、犯罪すれすれみたいなものであり、父親から「ヒーローごっこは麻薬よりタチが悪い」と叱られ、それでもヒーロー活動を進めていったところ、悲劇が彼を襲う。
 そこから、いかに立ち直っていくかが、この映画の重要な筋の一つである。

【大佐@ジム・キャリー】
3

 この映画で出て来るヒーロー達は、若手はほとんどコスプレ感覚のごときノリでやっているのに対し、大人のヒーローはそれぞれに深い心の葛藤を抱えている。
 ヒーロー団「Justice forever」のリーダー的存在である大佐は、ギャングの用心棒をやっていたけど、宗教により回心を経験して、正義の活動に人生を捧げているという、きわめて真っ当なヒーローである。
 ただ、誰もが思うことだろうけど、この役をジム・キャリーがやっている理由がさっぱり分からない。この映画では役者の格でいえば、ジム・キャリーが一番格上だろうけど、そのジム・キャリーをわざわざ使っているわりには、役が重厚すぎる。リドラーなみに弾ける必要はないにせよ、どこかでジム・キャリーならでは芸が見たかった。

【マザーファッカー@クリス】
2

 前作でギャングのボスであった父親を殺され、復讐の念に燃えるクリスは、しかし周囲の大人たちから相手にされない。「父の死は事故であった。お前は学校に戻り勉強して、まっとうな社会人になりなさい」と皆から諭されるだけである。
 ギャングのボスの一人息子であるクリスがそのように扱われる理由は、彼が凡人であり、悪事をする度胸も度量もないことを誰もが知っているからである。
 しかし、クリス本人だけはそのことを知らないし、認めない。
 クリスは周囲の無理解(?)に煩悶するうち、母の遺品のSM衣装を身に着けたところ、絶対悪の怪物「マザーファッカー」として目覚め、(と本人だけが思い込み)、金にものを言わせて悪の軍団「Toxic Megacunts」を結成し、街に破壊と混沌をもたらす。
 …しかし、その悪の軍団のボスのわりには、クリス本人だけはたいしたことはできず、結局はへっぽこな男のまま、終幕へといってしまう。
 この映画ではクリスの立ち位置だけは異色であり、他のヒーローもヴィランも、それなりに自分流の行動しているのに対し、クリスだけはずっと「その器でもないのに、無理やり自分の器以上のことをやろうとしている」違和感を引きずり続け、妙な悲愴感がある。
 クリスはギャングのボスの息子に生まれなかったら、じつはいいやつだったはず。

【マザーロシア】
7

 世界中から悪党を集めたチーム「Toxic Megacunt」、そのなかでも最も凶悪な人物。待遇も特別で、クリスは彼女に週給5万ドルを払っている。
 彼女はクリスとは対極の「生まれながらの悪人」であり、全ての悪事を何の躊躇もなく、その卓越した身体能力を駆使して、ばったばったと遂行していく。
 マザーロシアの身体能力は、まさに「一人軍隊」ともいうべきものであり、警察官が山と来ようが、子猫をひねるように倒していく。
 こんな怪物、どうやったら倒せるのだろうと誰もが思うが、いちおうラストのヒットガールとの対決でその答えが示される。

【ヒットガール@ミンディ】
6

 前作の実質上の主人公ヒットガール、ミンディ。
 狂気の父親により殺人兵器として育てられたミンディは、普通の少女時代を知らずに育った。父なきあと、養父はそういう不幸なミンディにまともな少女時代を送らせてあげて、そしてミンディが真っ当な人間に生まれ変わることを望んでいる。
 ミンディもそれなりに努力はして、ハイスクールで学生たちと交友を持とうとはするが、生まれつき人を惹きつける魅力を持つ、少々世間知らずの美少女は、格好の苛めの対象である。
 将来のセレブを目指す学園の女王様一派により、ミンディは苛めを受けることになってしまった。しかし苛めるほうは、この小柄な美少女が、じつは猛獣よりも獰猛なモンスターであることを知らなく、結局本性を現したミンディによって手酷い返り討ちを受ける羽目になる。

 学生生活はさっぱりうまく行かず、ヒーロー活動も養父から禁止されており、ミンディは鬱屈した日々を送るのだが、やがてミンディのヒーロー魂に火をつける事件が起きる。でもそのことにより、彼女は自分がアウトサイダーであることを思い知らされた。


 …ヒーロー集団、Justice foreverのメンバーは大佐のように屈強な者もいるが、基本的には一般人の軽武装集団である。だから彼らもやれることは常人の域にとどまり、ヒーロー活動をしても、ただのコスプレ自警団として社会は容認してくれていた。
 しかし、ヒットガールレベルのスーパーヒーローとなると、その活動は社会の枠を突き破ってしまい、現実社会にその居場所はない。その卓越した力がゆえに、彼女の居場所は社会にはなく、スーパーヒーローの彼女はスーパーであるがゆえにアウトサイダーであり、そのことを悟ったミンディは街から去って行き、キックアスの世界から退場する。

 この映画、全体として演出はコメディ調であり、馬鹿らしさは前作同様に随所に満ちているが、前作と違って、ミンディ養父、デイヴ父、クリス叔父、執事等まともな人間もけっこう居たので、暴走する主人公達と彼らまともな人間の対比が、観客に「落ち着いて考える時間」を与え、一方的に馬鹿馬鹿しさを楽しむ、という映画になっていなかったのが特徴ではあった。

 さて、キックアスは三部作なので、三作目は一番の人気者ヒットガール抜きのキックアスの成長と、クリスのリベンジの物語ということになるのだろうが、…たぶんコケるな。
 この映画もどうやらコケているようだし。
 このシリーズの独特の世界観は好きなので、三作目も観たいけど、どうやら九州では一館か二館程度の上映になると予想しておこう。

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 キックアス2  公式サイト 

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