今年の大降雪のせいで、祖母山は3つある登山口に行く道路が全て閉鎖されていて、近づくこともできなかったのだが、そのうちの一つ尾平登山口までの道路の除雪が行われて通行可能になったそうなので、尾平から祖母山に登ることにした。
【尾平登山口】

県道7号線を緒方町側から通り、尾平登山口へ。
登山口駐車場は切り返し用程度しか除雪されておらず、そしてコミュニティバスが一台止まっているのみであった。その周囲にも車は止まっておらず、3月1日の土曜日はどうやら祖母山の登山者は私一人のようである。
【登山口】

このように、登山口から雪が積もっている。
アイゼンを装着して、スタート。
【祖母山】

尾平から見る、祖母山稜線の風景。どの峰も、雪が積もっている。
【宮原登山道へ】

宮原分岐までは、旧鉱山の仕事の人のものらしい踏みわけがあったが、宮原登山道入り口からは、まったく人の足跡はなし。
ということは、これから私は一人で雪道を歩くことになる。トレースのない雪道を、1100mの高さ登るのは、時間的に無理であろうから、この時点で本日の山頂到達は諦め、とりあえず稜線あたりまで行くことを目標にした。
【渡渉部】

渡渉部は、雪解け水のせいか、水量が多めである。
ここを渡ったら、登山道は倒木や落ちた枝で荒れており、本来の登山道がよく分からなくなっていたので、尾根に直登して本来の登山道と合流した。
【登山道】

いったん尾根に出たら、日当たりのせいか雪がなくなっていた。
アイゼンを外して登って行く。
【登山道】

雪がないのはやっぱり楽だなあ、と思いながら歩いていると、標高800mあたりから雪が出現し、この後はずっと雪道であった。
【登山道】

標高1100を過ぎ、少し下ったところで、登山道は尾根をトラバースする。
それは知っているので、ここを右に曲がって行ったら、妙な谷に入っていってしまった。
トラバースじゃなかったっけ?と不審に思いつつ、もと来た道を戻り、まっすぐ行ったら藪に拒まれた。もう一度引き返し、やっと正規の登山道を見つけ、トラバース。
…雪が降っていると、元の道が見えなくなるし、全体の感じが変わってしまうので、いくら慣れ親しんだ道とはいえ、慎重に道を探す必要がある。
【水場】

ここはトラバースの道にある水場。
普段は枯れていることの多い水場であるが、今回は雪解け水が、さらに登山道の雪を溶かしながら流れていた。
【登山道】

ラッセルを続けながら、標高1300mを越えると、傾斜も緩やかになり、稜線が近い。
【宮原】

そして、稜線の1400m地点、宮原へと。
ここで縦走路に出るわけで、ひょっとしたらトレースがあるかも?と思っていたが、そういうことはなく、まっさらの雪があるだけであった。
本日の祖母山は、私の貸し切りであった。
【縦走路】

標高が高いのと、縦走路が窪んでいるため、縦走路は今までよりずっと雪の量が多い。膝まで埋るラッセルと黙々と続けて行く。
【縦走路】

下を見れば、こんな感じ。
誰も歩いていない白く深い雪に、自分の足跡を刻んでいく。
【縦走路】

膝ラッセルを続けていき、標高1500mくらいの地点に着いたところ。
このペースだと祖母山山頂にはあと1時間半~2時間くらいで着きそうである。しかし、そうすると下山時には確実に日が暮れ、ヘッドライトでの下山となる。足元の怪しい雪山でそういうことはしたくないので、このあたりで時間切れが妥当な判断であろう。
ただ、山頂周囲は、今までに見たことのないような大量の雪があるだろうから、それには興味がある。
だからコンロ、コッヘル、非常食等、装備は一通り揃えているので、山頂に行ったあと、山小屋泊ということもちらりとは考えたが、…山小屋泊するには肝心の酒を持ってきていない。酒なしの小屋泊はきついので、(酒飲みの登山愛好者にしか分からない感覚ではあろうけど)、やはりここで終了ということにした。
明日の日曜日、もし尾平から祖母山に登る人がいたら、ここで途切れてしまったトレースを見て、「なんでこんなところで引き返しているんだい。ここまで来たなら、山頂まで行けよ」とか思うに違いないが、そういうわけだったのです。
【登山道】

下りは自分の足跡に従って、順調に下山。
今回の大雪は、樹々にも多くのダメージを与えていて、枝や、葉がたくさん落ちていた。
でも常緑樹の葉が、白い雪に落ちているさまは、蓬餅みたいで、妙な美しさもあった。
【祖母山】

尾平に着き、祖母山を振り返る。
稜線は雲に覆われ、たぶん雨が降っている。
この雨で雪も相当に溶けるだろうし、祖母山の雪もあと一週間くらいであろうか。
2014年の2月は、九州の山に大量の雪が降り、どこも素晴らしい雪山となっていた。そして週末の天候も良いことが多く、今年の2月は九州の山好きにとっては忘れらないシーズンとなったことであろう。