旅館:佐勘松庵@宮城松島
東北旅行最終日の宿は、奥松島の佐勘松庵。
日本三景の一つ松島は有名な観光地であり、瑞巌寺あたりはいつも人で賑わっているが、そこからさらに湾内の奥へ進んだところにある奥松島は、人が来ることも少なく、そこに建つ佐勘松庵は隠れ家的な雰囲気のある、静かで落ち着いた宿である。
佐勘松庵のウリはなんといっても、部屋から直接眺めることのできる松島湾の風景。
窓の下にはすぐに海があり、そして松島湾には白い岩肌のうえに松を乗せた島々が点在して、日本画ふうの景色をつくっている。部屋から、この風景が日が傾くごとに刻々と変わっている姿をみるだけでも、あきることがない。
この宿の風呂は温泉ではないが、風情ある大浴場が内風呂と露天とある。
客室が11室と小規模な旅館ゆえ他の宿泊客に会うことも少なく大浴場はゆったりと使える。
夕食はいろいろな食事処があるが、「海が見える」とのことでレストランにした。
…ただし、秋分を過ぎた時期には日はさっさと暮れるので、食事時には暗い風景しか眺められなかった。東日本は、九州と比べ日が暮れるのが早いのでどうも戸惑ってしまう。
前菜は、山菜の和えもの、蓮根唐揚げ、栃餅、味噌卵黄、カレイ一夜干し、子持鮎、などなど。
山の幸、川の幸、海の幸を使った、素朴だがけっこう手のかかった料理。
これも前菜の一つで、ただの活き雲丹と思いきや、雲丹の殻を使ったミニ雲丹丼である。
魚の名産地三陸での造りは、鯛、鮪、牡丹エビに秋刀魚。
秋刀魚は毎日食べている気がするが、三陸の秋刀魚はいずこで食べてもたいへん美味しいのである。
椀物は本シメジと蟹真丈の椀物。出汁はやや強めだが、真丈そのものが蟹がたっぷりで味が強めなので、これはいいバランスである。
焼物は地元の仙台牛のロースト。
牛肉も味が豊かなものだが、地の野菜もまた濃厚な味であり、ここが良い素材に満ちた土地であることが分かる。
蕪のシチュー煮にイクラを散りばめたもの。
創作系の和料理であるが、華やかで、また随分と手の込んだ味付けの、面白い料理であった。
御飯は穴子飯。
穴子飯は広島宮島が有名だけど、松島もまた穴子の名産地なのであり、それゆえ穴子飯も名物なのだ。
日本三景のうち、二景が穴子飯が名物というのも面白い。
意外とあっさりした味付けであり、今までたくさん食べて飲んだあとも、しっかりと入ります。
夕食を終え部屋に戻ると、日はとっぷりと暮れ、窓の外には夜の海が広がっている。
宿からライトアップがなされており、海がやわらかく光っている。
夜の海に幾本が立っている杭は、浅蜊取り用のものとのことである。
東の海に面している宿なので、日の出を楽しみにその時間を待っていたが、島の縁から日の昇るはずのところは雲に覆われ、ぼんやりした日の出しか見られなかった。
今回の東北旅行では、日の出に関してはツキがなかった。
佐勘松庵は広大な敷地を持っており、そこに遊歩道がある。
雑木林のなかを、松島湾を眺めながら歩く道であり、観光客の賑わいのない静かな松島の風景を楽しむことができる。
朝食は素朴系の胃が疲れない料理。
卓には炭火のコンロがあり、それで仙台名物笹かまぼこと、松島名物「松島こうれん」を自分の好みのぐあいに焼きあげる。
松島こうれんは、地元のお菓子であって、上品な甘さと、サクッとした食感が特徴。
この旅館は、静かで落ち着いた雰囲気がまず良く、そして料理は素材、調理とも高いレベルにあったし、またなんといっても部屋からの景色が良く、なかなかの名旅館であった。
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