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March 15, 2013

映画:アルゴ

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 1979年のイランアメリカ大使館人質事件を元にしたドキュメンタリータッチの映画。
 イランの急進派学生たちによって占拠された米国大使館からは、6人の大使館員が脱出できた。彼らはカナダの大使公邸に匿われていたが、滞在が長期におよび、イラン側から見つかる可能性が高くなってきたため、国外に脱出させねばならなくなった。
 しかし革命後のイランは、外国人の出入国は厳しく管理されており、いきなり6名もの外国人を無事に国外に連れ出すことは、通常の手法では不可能である。
 それで国務省はCIAに依頼して、脱出計画を練らせた。

 数々の計画が立案されたが、「イランに外国人が6人いる理由」をイラン当局に納得させるいい方法がなかなか作れない。当時の混乱時のイランって、今の北朝鮮みたいなもので、まっとうな外国人の立ち寄るところではなかったのである。
 結局今のイランを訪れる外国人は、SF映画を撮りたい映画撮影スタッフくらいしかいないだろうということで、(CGなどない時代、SF映画は奇抜な風景を求め、辺境の地でロケをするのが当たり前であったから)、大使館員を映画スタッフということにして脱出させる計画が採用された。

 しかし、いきなりイランに行って大使館員を映画スタッフになりすまさせても、肝心の映画が存在しないと絶対に不審に思われる。そのため、国務省は結構な予算を使い、架空の映画「アルゴ」の作成を開始する。
 このあたりが大変面白い。
 映画作製の要として、まずは大物プロデューサーを雇う。彼は彼の元に送られている没脚本のうち、「最もくだらない脚本」として「アルゴ」を選んだ。それから役者を決め、ポスター、台本、絵コンテも作成し、マスコミを招いて大々的に発表会を行った。
 ここでのポスターや、役者の衣装がそのまま「フラッシュゴードン」であり、(バーバレラもいたか?)、B級テイストがじつに濃厚であって、かなりの笑わせどころである。

【フラッシュゴードン】
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 「アルゴ」のポスターも、こんな感じであった。

 さて準備も整い、CIAチーフは映画作成者の身分でイランに渡り、カナダ大使館を訪れ、匿われている大使館員たちに「アルゴ計画」について説明する。しかし、大使館員たちは、そんな怪しげな計画に乗れるか、と拒否をする。
 たしかに観ている我々にとっても怪しさたっぷりの計画であり、脱出時に米国大使館員という身分がばれたら死刑が必定の当の本人たちにとって、そうそう簡単には了承できないであろう。
 しかしながら、結局この方法しかないことに大使館員たちも渋々納得し、脱出計画に乗ることになる。

 カナダ大使館を出て、それから飛行場に到り、飛行機の離陸。
 このあたりはスリルに満ちた展開で、まさに手に汗を握るシーンの連続である。


 この「アルゴ計画」、やっぱりどう考えても無理があり、突っ込みどころがたくさんある馬鹿らしい計画なんだけど、これが現実に採用されたというのは驚きである。
 しかしながら、映画では脱出行にずいぶんと困難があったように描かれていたが、実際にはすんなりと国外に出られたそうだ。
 あまりの馬鹿らしさが、かえって盲点となって、スムーズに計画が為されたということなのであろう。

 前半部、架空の映画をつくるところは映画好きにはたまらないし、また後半の脱出のサスペンス劇も秀逸。いい映画であった。

 …この映画、最初の公開時に観たかったんだけど、どこもやっていなかったんだよなあ。オスカー受賞のおかげで、しっかり観ることができました。

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 映画アルゴ:公式サイト

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