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March 2013の記事

March 30, 2013

ワイン会@ベルエポック

 ベルエポックにて定例ワイン会。
 コースメニューは、春らしいものが続き、いずれも繊細な料理であった。

【オードブル】
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 これは面白い料理。
 「蛤とトリュフ入りスクランブルエッグ。菜の花添え」
 蛤とトリュフとそれに卵に菜の花と、いずれも味と香りの強い素材が、うまく調和していた。
 玉子の火の入れ方も絶妙で、丁度良いふわふわとした半熟ぐあい。

【メイン】
1

 メイン料理は「仔羊腿肉のロティ塩包み焼き」。
 この大きな塩の包みに、骨が一本出ていて、なんだか妙な形。

【メイン】
2

 塩包みから出されて、取り分けられた仔羊肉。
 素材の良さがじつによく分かる、味の整えかたが素晴らしい。

【ワイン】
3

 本日のワインの主役は、DRCリシュブール1993年。
 ヴィンテージによってはロマネ・コンティをも凌駕するとも称される希少なワインである。
 複雑にして、華やかな香りで有名なワインであるが、たしかに時とともに刻々と微妙に香りを変えていく万華鏡的な香りが特徴的な見事なもの。

 …ただ、こういう芸術的なピノ・ノワールのワインって、一番いい状態で飲むために、どこで、いかに、どういうふうに飲むか、とか考えて行くと、なにがなにやら分からんふうになり、じつに難しいであろうな。特に抜栓のタイミングについては。
 ブルゴーニュの赤ワインは、いいもの持っていると、あまりに微妙繊細ゆえ、その管理だけでも大変すぎる気がする。

 それはともかく、リシュブール以外も、やはりいいワインばかりであり、料理とワイン、いずれもとても楽しめた夜であった。

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アケボノツツジ@行縢山 平成25年春

 暖かい春となり、既に街の桜は満開を過ぎて、散ってしまっているが、九州宮崎の山は今頃から春の花の真打であるアケボノツツジが咲き始め出す。
 宮崎では、行縢山が一番最初の方の時期に咲くので、偵察がてら行縢山に登ってみた。

1fleure

 行縢山では雌岳稜線上にアケボノツツジが集中しており、その稜線に出れば、まずはポツポツと咲き始めたアケボノツツジを発見。
 一輪だけでも、豪華な雰囲気を持つ、華やかな花である。

2

 さらに歩を進めて行くと、ピンクに染まった樹木が見えてきた。
 このアケボノツツジ、七分咲くらいだが、付けている花の数も多く、また蕾も多いことから、満開の時期は樹全体が燃えるようなピンクの色に包まれるであろう。

 九州の山の春は、アケボノツツジで始まる。
 今年もようやく春を迎え、そしてアケボノツツジをトップバッターに、これから多くの花を楽しめることになる。

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March 24, 2013

屋久島いわさきホテル

【屋久島いわさきホテル】
0gate

 屋久島は九州の南の洋上に高さ2000m近い巨大な山が一つ突き出たような形の島なので、亜熱帯から亜寒帯までの気候を持ち、豊富な自然を有する、まさにsuper nature islandである。
 その魅力を存分に知るには、やはり宮之浦岳登山が一番であるが、けっこうハードな山系であり、ある程度山歩きに慣れた人でないと、それを経験するのは難しい。
 それでもヤクスギランドや、白谷雲水峡などは、トレッキング程度の運動で十分に楽しめ、そしてそこで十分に屋久島の魅力を知ることは可能だ。
 しかし、そのような運動もしたくはないなあ、という無精な人にとっては、屋久島で一番有名なホテルである、「屋久島いわさきホテル」が、屋久島を知るために、最適のお勧めとなる。

【いわさきホテル ロビーラウンジ】
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 ホテルのロビーラウンジ。
 6階まで吹き抜けの巨大な空間でのガラス窓の外には、屋久島の森と、山岳が広がっている。雄大な風景だ。
 例えば、何も知らせずにここに連れられて来た人がいるとして、その人が外を見たら、「わ、なんだいったいここは。ここは絶対日本じゃないだろ?」と思うに違いない、日本離れしたワンダーランドである。

【部屋から】
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 部屋からの眺めも、山側は同様に、圧倒的な緑の世界が広がっている。
 日本のジャングルとでも言いたくなる、一面の濃い緑だ。

【バルコニー】
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 バルコニーに出てみると、太平洋も見ることができる。
 山岳方面には今日登ったモッチョム岳が見えるはずだが、ガスの中。
 …本日は天候が悪いのでなんだが、晴れの日は、山、海、森の織りなす景色はさぞかし美しいであろう。

【夕食メニュー】
7menu

 夕食のメニューはこんな感じ。
 屋久島の素材を使ったものについては、アミューズに力を入れているようである。
 コースは全体として、リゾートホテルによくある「宿泊料に食事代込みプラン」で出て来る標準的レベルのものである。

【夕食】
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 メインは和牛のステーキ。
 屋久島来て、しばらく赤ワイン飲んでいなかったので、久々の赤ワインはやっぱり美味しい。

【庭園】
2hego

 いわさきホテルは屋久島の自然を模した広大な庭園を持っており、ここを散策すれば、疑似屋久島ツアーを経験できる。
 屋久島独自の様々な植物が植えられていて、ヘゴ園は、いかにも亜熱帯的光景。

【庭園】
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 屋久島の花は、屋久島石楠花が名物だそうで、旬の時期は色とりどりに咲き乱れ、じつに見事なものだそうだ。

【大滝】
4cascade

 庭園の奥には滝もある。
 これは人工のものでなく、天然製。
 展望台から見ると、かなりの落差のある迫力ある滝である。

【大滝】
5takitsubo

 滝壺近くまで下りて滝をみれば、二股の滝なのであった。

【遊泳禁止】
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 この滝壺、「遊泳禁止」の看板があったが、屋久島の人って、こんなところでも泳ぐ人がいるくらい水泳達者ぞろいなんだろうか?

【モッチョム岳】
Moco

 庭園内を散策するうち、樹々のあいまから、ようやくガスの切れ目にモッチョム岳の姿を見ることができた。

【屋久島2】
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 いろいろと見所の多かったホテルをチェックアウトして、宮浦港に行き、フェリー屋久島2へと乗る。
 5日間の屋久島旅行、得るもの多く、愉しき旅であった。
 …ただ、もう少し天気が良かったらなあ。
 屋久島旅行って、常に天気が問題となることを、改めて知った。

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March 23, 2013

登山:モッチョム岳@屋久島

【モッチョム岳】
Mt

 屋久島は島全体が大きな山であり、宮之浦岳あたりを中心として、四方八方に尾根を伸ばして一塊の山となっている。
 あまりに山の規模が大きいため、宮之浦岳のように島の奥にある山は、海岸周辺の町からはその姿を見ることができない。しかし、尾根の先端部にあるような山々は、町からよく見ることができ、これらの山を総称して「前岳」という。
 その前岳のなかで特異な山容から有名となっている山が二つあり、一つは愛子岳、もう一つはモッチョム岳である。
 天気がよければそのうちの一つに登ろうと思っていた。
 本日の天気はあまりよいとは言えないが、登れないほどの天気でもない。では登ろう。そして、前岳のうち、昨日のサイクリングで、より印象的であったモッチョム岳に登ることにした。

【登山口】
1entrance

 モッチョム岳の登山口は観光名所の「千尋滝」のところにある。
 奥に見えるのがそれである。
 よく整備された登山口であり、駐車場も舗装されている。
 ここに車をとめ、さあ出発。

【登山道】
3way

 モッチョム岳は巨大な太針のような形をした山なので、そういうルートになるのは当然なのではあるが、最初から急登の連続である。登山道はあまり整備はされておらず、滑りやすい足元に気をつけながら、時には樹の枝、根っ子をつかみながら登って行く。
 この急登がえんえんと続き、高度を稼いでいく。
 展望も利かない道なので、ただただ山道を見ながらの黙々とした登山。
 なんとはなしに、山の名がモッチョムなので、ストックを突きながら、「モッチョム♪ モッチョム♪ 」とリズムを取りながら登っていく。
 …「モッチョム」というのは地元では隠語なんで、まああんまり口ずさむような言葉じゃないんだが、モッチョム岳の傾斜にはちょうどよい語呂であった。

【万代杉】
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 そうやって、モッチョム♪ モッチョム♪ と登って行くと、稜線に出て景色が突然に開ける。
 そしてそこにあるのが巨大な屋久杉である。これぞモッチョム杉、と言いたいところだが、そうではなくて他の名前があり、「万代杉」である。この杉、あの縄文杉よりでかいんじゃない?と思うほどの巨木であり、枝も四方八方に広がっていて、樹の姿がたいへんよろしい。
 でかい屋久杉を見たい!と思うなら、縄文杉より万代杉のほうが私としてはお勧め。
 ただし、ここまで来るのはけっこう大変なため、縄文杉より見るためのハードルは高い。

 …ところで何千年も生きているような屋久杉って、どの杉もせいぜい20m伸びたところで、おそらく雷の直撃にやられて、そこで幹が詰まっている。
 前線がしょっちゅう通過する厳しい環境で生き抜いて来た屋久杉の巨木は、「我が身を犠牲に森を守ってきた」とでもいうような、独特の荘厳感がある。

【登山道】
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 万代杉を過ぎたところから、傾斜はやや緩くなり、そして森はさらに深くなる。
 地面に岩は苔むしていて、いかにも屋久島という雰囲気が漂う。

【モッチョム太郎】
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 万代杉の次に位置する、モッチョム岳のもう一本の屋久杉の巨木「モッチョム太郎」。
 これも巨大な杉であり、なにかの生き物のような怪異な形の幹を持つ。

【神山展望台】
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 モッチョム太郎を過ぎると、尾根の傾斜が強くなり急登となる。またもモッチョム♪ モッチョム♪ とリズムをとりながら登っていくと、やがてようやく展望の利く「神山展望台」にと出る。
 本来ならここで視界が一挙に開け、モッチョム岳に続く稜線や、900m直下に広がる太平洋を望む、抜群の風景を楽しめるはずだが、…ガスに覆われていて何も見えない。
 まあ、下からモッチョム岳を見たときから、山の上半分はガスに覆われていたからそれも当然なんだが、残念である。

 ここで進行方向の藪がガサゴソと動き、青年が一人現れ、「あ、そっち道あるんですね。そこ下山路ですか?」と尋ねて来る。なんでも道に迷って、モッチョム岳頂上への道を見失ったそうだ。
 こんな一本道の登山道で、しかも稜線上なのに、どこをどうやったら道に迷うのだろう?と不思議に思ったが、とりあえず「君の今いるところを、そのまま真っ直ぐ行けば頂上だと思うよ」と答えておいた。

【鞍部から】
7roche

 その青年、神山展望台から進むうちあまりに下って行くので、下山路に入ってしまったと思い込んで引き返し、頂上への道を探していたそうだ。
 …しかし、地図みれば、モッチョム岳は頂上手前でいったん下り、それからきつい登り返しのある道なのは分かりきってるんだが。地図も持たずに初めての山に入るなよ、と言いたくなってしまう。というか、言った。
 ついでにその青年は屋久島が好きでよく訪れるのだが、登山自体は今回が生まれて2度目の登山だそうだ。2度目が曇天のモッチョム岳単独かよ。チャレンジャーだなあ。

 けれども初心者のわりには登山そのものはしっかりしていて、こういう難所でも、するすると素早く登って行く。体力ありますな。若さって、素晴らしい。

【痩尾根】
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 鞍部から登り返して、ようやくモッチョム岳山頂への痩尾根となる。
 この痩尾根は、稜線が両側スパッと切れ落ちていて、本来なら高度感抜群のはずなのだが、ガスのせいでなにも見えない。

【モッチョム岳山頂へ】
Mo

 そうしてようやくガスのなか、モッチョム岳山頂の巨大な岩が見えて来た。
 ここは直登は無理なので、東側にまわって、岩溝、あるいはロープを使って、山頂に登ることになる。

【モッチョム岳山頂へ】
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 先行の青年は無事登頂。感極まって、歓喜の叫び声をあげていた。なんとしても登りたかった山だったそうだ。
 私もそれからロープを使って登頂。

【モッチョム岳山頂】
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 こうして、苦労してきつい傾斜を登ってたどり着いたモッチョム岳山頂。
 ここからは360度、素晴らしい屋久島の風景が広がっているはずだが、ガスにてまったく視界がよくなく、残念なり。

【稜線】
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 それでも山頂で写真を撮っているうちに、強風にて、ガスが一瞬吹き払われ、今まで歩いていた稜線を見ることが出来た。
 花崗岩と樹々がおりなす、美しくも峻厳な世界。
 これ見られただけでも、登った甲斐がありました。

 山頂で休憩し、青年君と雑談。
 青年君は私がデジイチで写真を撮っているのを見て、「自分も写真が好きでNikonのデジイチを持っているけど、故障が怖くてザックの中に入れているので今日の登山では万代杉しか撮っていない。普通にもっとデジイチで写真を撮りたいのだけど」と言うので、デジイチみたいな精密機器だって、ウエストバッグに入れるなり、サコッシュに入れるなり、あるいはタスキ掛けにしたところで、繊細に山歩きすれば故障なんてしないよ、とadviceしておいた。
 まだまだ屋久島に滞在するとのことで、おおいに屋久島を満喫してください。

【登山口】
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 山頂からは元来た道を下ることになる。
 下りは、ますますガスが濃くなってきて、そして雨も降り出したので雨具をつけて下山となった。
 万代杉を過ぎてしばらくすると、下のほうから千尋滝の轟音が響き出し、その音の大きさによって登山口が近付いてきていることが分かる。

【千尋滝】
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14cascade

 登山口からは千尋滝はすぐなので、よってみた。
 千尋滝は、巨大な花崗岩の壁を側面に、高さ80mを落ちる滝で、屋久島にしか見られないような豪快かつ雄大な滝である。
 アプローチは容易であり、屋久島を訪れたときは寄ってみるべき滝である。

【モッチョム岳】
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 車で外周道路に出て、またモッチョム岳の方向を見てみる。
 やはり山の上半分はガスに覆われており、…今度来るときは是非天気の良いときにと思った。

【屋久島いわさきホテル@尾之間温泉】
Hotel

 本日の宿は、この山のすぐ近く、尾之間温泉にある「屋久島いわさきホテル」。
 温泉につかったあとは、ビールとワインを楽しむことにしよう。

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March 22, 2013

民宿:送陽邸@屋久島永田

【永田浜】
Plage

 永田浜は屋久島の山岳を形成する花崗岩が砕かれて出来た砂が流れて来て作られた美しい浜である。5月から7月にかけては、多くの海亀が産卵に訪れるという、希少価値も持っている。
 沖には、温泉で有名な口永良部島が見える。

【送陽邸】
Hotel

 その永田浜の傍、東シナ海を見下ろすところに民宿送陽邸がある。
 古民家ふうの、ずいぶんと歴史ある建築物に見えるが、それも道理で、過疎化が進んでいた永田集落の古民家をそのまま移設して宿にしたものだそうだ。

【部屋】
Room

 送陽邸は名前の通り、日が沈む方向に面しており、東シナ海に沈む美しい夕日が自慢なんだけど、本日は厚い雲がおおっていて見られず残念。

【夕食】
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 送陽邸の夕食は、海の民宿の定番である、新鮮な魚介類。
 刺身は地元で取れた魚、アカバラ、アオダイ、ハガツオだそうだ。

【夕食】
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 刺身の次は、炭火焼。
 魚はカマスにキビナゴ。ミズイカも。それから野菜。肉は鹿肉である。屋久鹿は保護されているので、たぶん島外の鹿肉とは思われる。

【ツマミ】
3fume

 これはコースにはなかったのだが、酒のアテとして私が追加。ラッキョウと鰹の生燻製。

 ビールを飲んだのち、冷酒を私は頼んだわけであるが、その時給仕をしていた宿の主人の息子さんが「ビールと酒を飲んだのち、焼酎も飲むとチャンポンになって悪酔いしますので、避けたがいいですよ」とアドバイス。私は普段は焼酎は飲まないので、「焼酎は頼みませんよ」と答えておいた。

 さて、夕食も半ばを過ぎると主人が各席を回り出し、挨拶をする。それが話好きな人であり、永田の町、屋久島、そして宿の歴史の話などをして、いろいろと面白い。
 私の席を訪れて話がはずむうち、主人はサービスで焼酎を勧めてくる。その焼酎は地酒の「三岳」というものであり、試しに飲んでみると、これがまろやかでなかなか飲みやすい。そういうわけで、私は焼酎もけっこうな量を飲んでしまい、…なるほど店主の息子さんのアドバイスはこういうことだったのかと分かった。


 で、けっこう酔っぱらって部屋に戻り、海の音を聞きながら就寝し朝を迎える。

【岩風呂】
Roche_bain

 送陽邸自慢の岩風呂。
 ここで湧く鉄分たっぷりの鉱泉を沸かしたもので、いかにも効きそうな湯である。
 海を眺めながらの朝風呂を楽しんだ。

【朝食】
Petit_dejuener

 朝食も地のものを使ったもの。焼き魚は地獲れのサワラである。屋久イモのとろろもあります。
 自家製漬物も美味しかった。
 隣の席のドイツ人御夫婦が、漬物のお代りを主人に所望し、「Pickles」と頼むも主人が困ってしまい、御夫婦が私に「Can you speak English?」とか聞いてくるからとりあえず「a little」と答え通訳をして、それからいろいろと会話した。
 でも私が最後に「Auf Wiedersehn !」と言ったのが通じた気配がなかったのは悲しかった。大学の第二外国語はドイツ語履修したんだけどなあ。

【うみがめ館】
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 宿をたってまずはすぐ近くの「うみがめ館」に寄ってみた。
 永田浜は日本で一番海亀が上陸する地であり、このうみがめ館で資料を拝見し、海亀のことを勉強。
 一度は海亀の上陸を見たくなってしまった。

 さて、本日も昨日同様に午前中は曇りで午後は雨というさえない予報であるが、とりあえずは雨は降っていないので、屋久島の有名な山「モッチョム岳」に登ることにする。

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屋久島一周サイクリング

 今回屋久島を訪れた目的は、大きなものが二つ。一は宮之浦岳登山で、もう一つは屋久島一周サイクリングである。
 屋久島での観光を楽しむには常に天候がネックとなる。なにしろ一年中雨の多いところなので、一日好天の日が少なく、そして本日の天気予報は午前が曇り時々晴れ、午後は降水確率50%ということで、さほどよい天気ではないが、サイクリングには支障なさそうである。
 というわけで、本日は予定通りに屋久島一周サイクリングを行うことにした。

【安房の夜明け】
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 安房の町で、太平洋より登る日を眺めつつ朝を迎える。
 本日の宿は、島の位置で言えば安房の反対側にある永田にとってある。それでまずは永田まで車で移動。

【送陽邸】
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 送陽邸の駐車場に車を止め、自転車を組み立てて、午前8時30分スタート。
 奥に老人が写っているが、この人から「自転車で一周するなら時計回りがいいよ」のアドバイスあり。日本は左側通行なので、島を一周するなら通常は海側に近く走るよう時計回りになるので、もとからそのつもりではあったが、屋久島一周はだいたい時計回りする人が多いそうだ。
 ちなみにこのご老人は、あとで知ったが宿の主人であった。

【東シナ海展望所】
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 宮之浦までは、高さ100mほどある坂をいくつも越えて行く。
 そのうち一番高い峠には、「東シナ海展望所」という休憩所がある。
 東シナ海、それに口永良部島を見ることができる。
 夕方には海に沈む夕日がさぞ美しいであろう。

【宮之浦】
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 屋久島の中心地宮之浦。
 「スーパーネイチャー屋久島」なんて碑もあるが、屋久島ってたしかにsupernatureなところであった。

【小瀬田】
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 アップダウンだらけの屋久島周回道路であるが、宮之浦から安房くらいまではアップダウンの規模も小さくなり、さほどの体力を要さずに走られるお気楽ロードである。
 小瀬田には「愛子」の名のついた宿や店が多いが、そのわけはこの地に立つ山の名前による。

【愛子岳】
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 屋久島では山を、海に近い部にそびえる「前岳」と、その奥にあり人家のあるところからは容易に見えない「奥岳」の二種類に分けているが、前岳の代表的存在である愛子岳。
 標高1235m、三角錐の山頂を天に突き立てた秀麗な姿の山である。

【安房】
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 本日の朝、車で出発した安房にまた戻って来た。
 安房川に、まんてん橋が見える。
 立ちならぶ山岳のうち、右奥に見えている一番高い山がたぶん愛子岳。

【モッチョム岳】
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 自転車を走らせるうち、愛子岳とならんで前岳を代表する山「モッチョム岳」が見えて来た。
 これもまた形のいい山である。

【モッチョム岳2】
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 モッチョム岳を眺めながら走るうち、走行距離が50kmを越えた。
 屋久島一周がほぼ100kmなので、半分の距離を走ったことになる。
 現在時刻11時20分でまずまずのペースである。

【モッチョム岳正面像】
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 モッチョム岳は三角錐を半分に切ったような形なので、眺める位置によってその姿を大きく変える。横から見ると尖塔のようだが、正面から見ると衝立のようだ。

【モッチョムビュー・トーン】
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 昼食休憩はモッチョム岳の見えるところでとろうと思っていたが、その名も「モッチョムビュー」という、それに最適のカフェレストンがあり、そこで昼食タイム。

【昼食】
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 サイクリングはまだ半分残っているので、がっつり栄養補給を取るために、ハンバーグ定食とした。

【バス停にて】
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 栄養補給を行ったのちまた出発。
 しかし午後から崩れるとの天気予報とおり、雨がパラパラと降り出した。
 屋久島の外周道路はバスの定期路線が走っているので、バス停が豊富である。そのバス停に止まり、とりあえずはウィンドブレーカー装着してからまた出発。

【雨宿り】
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 雨はやむ気配はなく、どころか本降りになり、雷も鳴り出したのでたまらず雨宿り。
 待つうち20分ほどすれば、ようやく小ぶりになって来た。といって雲の厚さからして、雨があがるとは思えず、ここで雨具を上下装着して再出発。

【道路】
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 舗装路は雨に濡れ、走りやすいものではなくなり、これからは慎重に走行。
 雨のときの自転車走行の基本は、とにかく「ゆっくり」ということである。

【大川の滝へ】
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 雨のなか走るうち、遠く特徴的な滝が見えて来た。
 あれが有名な大川の滝であろう。

【大川の滝】
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 大川の滝は、日本の滝100選にも選ばれている名滝。
 88mの落差を持つ、大きな滝だ。
 雨の日のサイクリングなんて、いいことはなに一つないんだけど、滝ばかりは雨のときのほうが流量が多く、迫力があります。

【西部林道へ】
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 大川の滝を過ぎると、いよいよ屋久島一周サイクリングの核心部「西部林道」が始まる。
 遠く見えるあの道へ、高さ300mばかりを登っていかねばならない。

【西部林道】
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 300mを登ったあとは峠になっているわけでもなく、山の中の高い道を、左手に海を見ながらの走行になる。

【西部林道】
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 「林道」というわりには片側一車線の立派な道路だなあ、と思ううち、道路は狭くなり、ここから本格的な「西部林道」となった。鹿に注意なんて看板もある。

【西部林道】
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 西部林道というか屋久島西部は、東側とは植生が異なっており、亜熱帯性の植物が鬱蒼と茂る森となっている。ヘゴなんかが生えているとジャングルの雰囲気だ。
 そしてこの森は野生動物が豊富であり、屋久鹿や屋久猿をいくらでも見ることができた。

【西部林道】
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 くねくね道のコーナーを曲がると、突如巨大な一枚岩の岩壁も見えたりして、とても風景の楽しめる道である。

【永田岬】
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 アップダウンが続きながらも道が下り基調になってくると、東シナ海に突き出た永田岬、そして屋久島灯台が見えてきて、西部林道も終わりが近い。

【屋久島灯台】
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 周回道路から外れてはいるが、せっかくなので屋久島灯台にも寄ってみた。
 灯台というところがたいていそうであるように、やたらに急峻な道を行く必要があった。

【永田浜】
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 灯台を見て元の道に戻りしばらく走ると、うつくしい永田浜が見えて来た。
 ここは日本で最も海亀の上陸する浜としても有名。

【永田浜】
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 永田浜がさらに近付くと、ゴールはもうすぐである。

【送陽邸】
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 屋久島一周を終え、送陽邸に無事到着。
 時刻は午後3時50分。8時間弱かけての屋久島一周であった。走行距離は結局99.3kmで、100kmは越えなかった。
 雨さえ降らなかったらもっと楽しいサイクリングであったのだが、…まあ午前中は快適なサイクリングであったので、それでよしとしよう。

【送陽邸岩風呂】
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 さて宿に着いて、汗をかき、雨に濡れた身にいちばんの御馳走は、宿自慢の海を見渡す岩風呂。
 東シナ海を眺めながら、今日の疲れを癒すのであった。

 …………………………………
 本日の走行距離 99.3km 
 走行時間5時間21分 
 平均速度18.5km/h


 屋久島一周


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March 21, 2013

味処ふるさと@屋久島安房

 宮之浦岳登山を終え、屋久島の安房(あんぼう)というところで宿泊。
 安房は屋久島の観光拠点のようなところであり、縄文杉や宮之浦岳、あるいはヤクスギランドなどを訪れるときはここが一番便利がよい。普段閑散としているこの町も、屋久島のオンシーズンのときは、観光客であふれかえる地になるそうだ。

【安房の町】
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 安房の繁華街(?)みたいなところ。
 安房は屋久島では2番目に大きな町であり、繁華街(?)は微妙にゴーストタウン的雰囲気があるが、ここはこれなりに栄えているところだそうだ。

【味処ふるさと】
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 繁華街にはいくつかの食事処、居酒屋があるが、安房ではイチオチらしい「味処ふるさと」を訪れた。
 この店は基本的には2000円から3000円までのコース料理しかなく、郷土料理主体のメニューとなっている。
 とりあえず3000円のコースを注文。「量が多いですけど、食べられますか?」と聞かれたが、「今日は宮之浦岳縦走してカロリーを大量に消費しているのでたぶん大丈夫です」と答えた。

【突出し】
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 突出しは、ワラビおひたし、ツワブキにしめ、新ジャガ煮。
 ワラビとツワブキは今の時期、近くの山にいくらでも生えているそうで、お代り自由だそうだ。
 生ビールのツマミにもたいへん良く、登山後の乾いた身体にビールがどんどんと入っていく。

【造り】
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 造りは、トビウオにカンパチ。
 屋久島の刺身はやはりまずはトビウオ。
 ちなみに安房の港は、日本で最もトビウオが水揚げされるところだそうである。

【カンパチあら煮】
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 屋久島ではカンパチもよく獲れるそうで、これも名物となっている。
 南九州風に、ややきつめに甘辛く煮つけられている。

【屋久イモふわふわ焼】
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 屋久イモという屋久島で栽培されるヤマイモを、やわらかく焼いたもの。
 ヤマイモの香りと味がけっこう濃厚である。
 ちなみに屋久イモは亜熱帯で育つ山芋であり、屋久島の特産品だそうだ。粘りの強さが特徴であり、形は以下に示すように、あんまり山芋らしくはない。

【屋久イモ(参照画像)】
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 その他、アスパラ焼や、豚ホルモン煮込みなどが出て、腹が相当に満たされたのち、さらに、そのあと鶏手羽の塩コショウ焼き。

【鶏手羽焼き】
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 これもけっこう地鶏風の、鶏の味のしっかりしたものであった。
 

【たんかん】
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 漬物、御飯、味噌汁で〆たのち、デザートは屋久島名物「たんかん」。
 とても糖度の高い柑橘系果物で、南国的な甘さがある。


 屋久島の郷土料理は昨日の「潮騒@宮之浦」でも食べたけど、あちらは一品料理形式なので一つ一つの量が多く、一人で食うのはたいへんだった。こちらはコース仕立てになっているので、屋久島の代表的な郷土料理の品々をほどよい量で食べることができ、「屋久島の料理」を経験するのに適していた。
 「屋久島の料理」といっても、ようするに屋久島の人たちが家庭でもよく食うたぐいのものなのであるが、「味処ふるさと」は気のいいおばちゃんが、自宅で家庭料理をふるまうような気安さで料理を出してくれ、じつに雰囲気がよろしい。
 この店、屋久島安房を訪れたときには、お勧めである。
 …もっとも、もとから有名な店なのであり、オンシーズンにはすぐ超満員になってしまうそうだ。

【まんてん橋】
Hotel

 「味処ふるさと」は、安房川にかかっている「まんてん橋」のすぐ傍にあるが、これも渡ってすぐ傍にある、今夜の宿「屋久島山荘ホテル」へと、いい酔いかげんで歩いて帰って行った。


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登山:宮之浦岳縦走(荒川登山口→縄文杉→永田岳→宮之浦岳→淀川登山口)

【荒川登山口】
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 主に縄文杉観光に使われる荒川登山口の朝は早い。
 自家用車の乗り入れは禁止されており、この登山口へは屋久杉自然館からバスで行く必要がある。そのバスの時刻が、始発は4:40で、最終は6:00という早さ。縄文杉を訪れるためには、最低でも午前7時には荒川登山口から出発しなさいよ、とのことなのであろう。
 縄文杉だけなら午前6時のバスでも良いだろうが、私は目的は宮之浦岳なので4:40の便を使用。
 荒川登山口に着いたときは、まだ夜は明けていない。

【トロッコ道】
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 登山装備を整え、5:40出発。
 荒川登山口からは8kmほどトロッコ道を歩いて行く。
 枕木のうえを歩くので歩きにくく、ヘッドライトで足元を照らしながら慎重に歩を進めて行く。

【トロッコ道】
3

 やがて朝日は昇り、まわりの景色が見えて来た。

【トロッコ道】
4

 トロッコ道は沢の上などは木板を渡しており、こういうところは歩きやすい。
 そしてこのトロッコ道はよくメンテナンスされており、線路はきれいで、ゆがみなどもない。

【トロッコ道】
5

 メンテナンスされているのも当然であって、このトロッコ道はいまだ現役なのであった。
 そうなると、屋久島きっての人気観光スポット縄文杉行くのに、トロッコ列車走らせれば便利なのにと思った。屋久杉運んでいたようなトロッコに人間が運べないはずはなく、黒部渓谷みたいに観光トロッコ走らせれば、さらに人気が増すだろうに。

【山桜】
6

 朝日を受け、山肌に満開の山桜が見える。

【屋久鹿】
7deer

 屋久島は自然豊かなところであり、野生の動物も豊富だ。
 屋久島固有種の鹿である屋久鹿もたくさん見ることができた。
 屋久島は全体が鳥獣保護区であり、そして観光客慣れしているようで、この島の鹿は人が近寄ってもなかなか逃げようとはしない。

【大株歩道へ】
8entrance

 8kmほぼ平坦なトロッコ道を歩いたのち、縄文杉に到る大株歩道へと入る。
 ここからは登山道である。

【ウィルソン株】
8wilson

 大株歩道の名前の由来になっているウィルソン株。
 500年前に伐採され切株だけとなっているが、屋久杉というのは強い木なので、まだ朽ちることなく残っている。
 中は大きな洞になっていて、入ることも出来る。

【縄文杉】
9jomon_cedar

 大株歩道にはいろいろな巨杉があるが、そのなかの大スター縄文杉に3時間かけてようやく到着。
 今までの名前のついた巨杉もたいへん大きかったが、さすがにこの縄文杉はそれに輪をかけてでかい。
 …ただ、樹の形がどうも寸詰まりふうになっており、どうにも景色がよろしくない。でかいだけという感じの巨杉であり、一回見れば十分か、というのが正直な感想である。

【新高塚小屋】
10neu_takatuka

 縄文杉の標高は1300m。ここから登りはやや急となり、新高塚小屋あたりから稜線沿いの道となる。
 新高塚小屋は「鼠の住処」ということで有名だが、覗いてみてもべつに鼠はいなかった。

【展望所から】
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 屋久島は樹々が鬱蒼と茂っているため、登山道から展望はなかなか利かないが、稜線に出てからは樹がまばらなところもあり、そこからようやく宮之浦岳の姿を見ることができた。
 なにしろ屋久島の最奥部にある山なので、たどり着くまでの距離が長く、いつになったら着くんかいとか思いながらの登山ゆえ、姿がはっきりと見えると、やる気が俄然出て来る。

【宮之浦岳と翁岳】
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 稜線を両翼に広く張った雄大な宮之浦岳もよいが、その隣にある、岩塔を空に突き立てている翁岳も、またよく目立つ特徴的な姿である。

【稜線から】
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 標高1600mを越えると森林限界に達したようで、樹々は灌木だけとなり、見晴らしがぐんと良くなる。
 そうして、今まで稜線に遮られて見ることのできなかった永田岳も遠くにその姿を現した。巨大な花崗岩の岩の殿堂である。

【平岩岩屋】
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 宮之浦岳への稜線の小ピークが平岩岩屋。
 「ここからは強風に注意」との標識があり、じっさいその通りにここからの稜線は非常に風が強かった。
 海からの風の通り道となっているようであった。

【宮之浦岳へ】
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 平岩岩屋のピークを越えると、だいぶ宮之浦岳が近付いてきた。
 屋久笹の茂る野に、宮之浦岳へ続く登山道がくっきりと刻まれている。

【焼野三叉路】
16yakino

 登山道を地道に登って行き、宮之浦岳と永田岳への分岐の焼野三叉路に到着。
 この時点で、11時10分である。宮之浦岳はすぐ近くに見えており、だいたい20分くらいで山頂に着きそうだ。
 山頂からは淀川登山口までは基本下りであり、まだ時間的に余裕がある。
 それで、ここから見える永田岳があまりに格好良く、さらに天気も良いことから、永田岳にもピストンで登ることにした。

【永田岳】
17mtnagata

 永田岳は、巨大な花崗岩を積み上げ、それに屋久笹が覆っているような姿であり、白と緑のコントラストが大変美しい。

【永田岳登山道】
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 宮之浦岳の縦走路は山域が大きいわりにはさほど標高が高くないので、傾斜はゆるめであったが、永田岳への登山道はかなり傾斜がきつかった。

【永田岳山頂】
19mtnagatasm

 そのきつい傾斜を越え、山頂に到着。
 やはり眺めは抜群。
 谷の隙間から海と浜辺も見える。たぶん、永田浜であろう。

【永田岳山頂より】
20mtnagata

 永田岳に登ったあとは元来た道を使って宮之浦岳に登りかえすのであるが、振り返ってみれば、けっこうな高さを登っている。
 あの高さを下ってまたそれ以上の高さを登り返せねばならないのか、と少々うんざりしてしまった。

【宮之浦岳へ】
21mtmiyanoura

 焼野三叉路に戻って、宮之浦岳へと登る。
 見た目の姿とおり、永田岳よりは傾斜はゆるめであり、屋久笹のなかの道を進んでいく。

【宮之浦岳山頂】
22mtmiyanouraam

 登山者でにぎわっている宮之浦岳山頂に、午後1時にやっと到着。
 標高1936m、九州で一番高いところである。
 抜群の天候の恵まれ、山頂より360度、雄大なる屋久島の風景を楽しんだ。

 屋久島はとにかく雨の多い地であり、晴天の日が少ないことに加え、晴天の日でも容易に高峰の上のほうはガスに覆わるため、初めて登った宮之浦岳でこれほどの眺めを見ることが出来たのはじつに幸運であった。

 そしてこの日は好天が午後もずっと続き、宮之浦岳縦走のハイライトである、山頂から花之江河までの、楽園のごとき自然庭園を、ぞんぶんに楽しめたのもさらに幸運なことであった。

【宮之浦岳から栗生岳方面】
2garden

 今まで宮之浦岳まで歩いてきた、屋久笹の絨毯のような風景も良かったが、宮之浦岳を過ぎ栗生岳方面を見ると、さらに素晴らしい風景が広がっている。
 一面の屋久笹の野に、花崗岩の巨岩、奇岩が散在していて、空中庭園のような世界だ。はるか山奥の、人訪れること厳しき地に、このような楽園的風景が存在しているのだ。

【オーム岩(?)】
3omurock

 登山道を歩いて行けば、その奇岩たちのすぐ傍を通ることになる。
 この岩は縦方向にいくつも割れ、大きなダンゴムシのような形だ。
 これってナウシカの王蟲(オーム)に似ている。勝手にオーム岩と名付けた。

【ヘルメット岩(?)】
4rock

 これはどういう具合でこういうことになったのか、横方向にヒビが入っている。
 自転車のヘルメットにも似た形だ。

【ラピュタ岩(?)】
5robot

 微妙なバランスで岩が載っている面白い岩。
 宮崎アニメのつながりで言えば、ラピュタのロボットにも似ている。

【じつはモアイ岩(?)】
6toilet

 このラピュタ岩は、鞍部に設置されてあるトイレの近くにあり、まるでトイレを見守っているかのようなポジションだ。
 この方向から見ると、モアイ像のようでもある。

【登山道】
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 鞍部からは投石岳に向けて、また少しの登り返し。
 屋久島の山の特徴は、なんといっても水の豊富なことであり、山頂近くの縦走路でさえ水が流れ、あるところでは川のようになっている。

【登山道傍】
8water

 そしてその水がまたきれいであり、澄んだエメラルドグリーンである。

【黒味岳】
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 投石岳を越えると、名峰黒味岳の姿を見ることができる。
 山頂は巨大な花崗岩を積み重ねた独特の姿である。

【黒味岳山頂】
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 黒味岳は、淀川登山口からの距離が近いこともあり、人気のある山である。
 本日も山頂部に幾人も登っているのが確認できた。
 ここから望む宮之浦岳の姿も、また見事なものであろうな。

【投石平】
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 投石岳を下りきったところの鞍部は、広い平地になっていて、ここが投石平。
 6月には山石楠花が咲き乱れるそうだ。

【花之江河】
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 投石平を過ぎ、屋久島を代表する観光スポットの花之江河に到着。
 標高1600mに位置する、日本最南端の高層湿原であり、もうしばらくすれば湿原性植物で緑あふれる地となるのであろうが、今はまだそのような彩りはなし。
 それでも湿原独特のひんやりとした空気が心地よい。

【白骨樹林】
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 花之江河あたりは、白骨化した樹々がいくつも立ち並び、独特の風景をつくっていた。

【小花之江河】
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 花之江河から少し下ると、また同じような高層湿原がある。
 標高が下がって来ただけあって、樹木がまた大きくなってきており、先の湿原ともまた異なった風景となっている。

【展望所から】
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 登山道から展望所への脇道の案内があったので、展望所に寄ってみた。
 どれがどの山かは分からねど、みな風情ある姿の山々である。

【淀川】
15yodokawa

 この淀川にかかった橋を越えると淀川小屋である。
 淀川も、澄んだ水のながれる美しい川であった。

【淀川小屋】
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 淀川小屋。
 本日の宿泊者は3名ほどのようであった。

【登山口へ】
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 小屋を過ぎ、登山道を下っていけば、登山口まであと何kmという標識が規則正しく続き、そろそろ登山が終わりに近いことが分かって来る。

【淀川登山口】
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 そうしてゴールの淀川登山口に到着。
 16:20分の到着時刻であった。荒川登山口を出たのが5:40分だったので、10時間40分歩いたことになる。これだけ長時間山歩きしたのも久しぶりだな。

 さて、ゴールしたのはいいとして、つぎは車を置いている屋久杉自然館へ戻らねばならない。
 それでタクシーを呼ぼうとしたが、…携帯が通じない。
 まあ、携帯が通じないのは予想していたが、やっぱり通じないのは口惜しかった。
 宮之浦岳山頂では携帯の電波は届いていたので、本来はそこでタクシーを予約しておくべきだったのだが、初めての山なもんで、登山口への到着時刻にイマイチ正確性を持てなく、躊躇していたのである。
 それで、「もしかして」淀川登山口で携帯を使えることを期待して下山したのだが、やはり「もしかして」と思ったことが、もしかすることなどなく、敢え無く撃沈。

 とりあえず地図によればここから8kmほど行ったところにあるヤクスギランドに公衆電話が設置されてあるそうなので、そこまで行ってタクシーを呼ぶことにして、面白くもなき舗装路をてくてく歩くことにする。

【川上杉】
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 ヤクスギランドまでは屋久杉の名木が何本もあるので、それを見ながらの観光散策とでも考えておこう。
 歩きついでに、山が開けたところではドコモの電波が入ることもあるのでは?と淡い期待をして、時々電波状況をチェックしていたが、そのようなことはなかった。
 「ドコモ、この子はやれば出来る子なんです」とか言えればよかったが、やはり出来ない子であった。
 それはそうと、最初に見えた名木が「川上杉」。遠くからでも、はっきりとこれは屋久杉だなということが分かる大きさと高さ。
 縄文杉よりも、私にはこの川上杉のほうが気にいったなあ。

【紀元杉バス停】
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 歩くうち、バス停が見えて来た。
 こんなところまで定期路線バスが来ているのだな、と感心。

【バス停時刻表】
21kigen

 時刻表を見ると、14:49にバスがある。
 今の時間が16:42であり、2時間早くここに着けばバスに乗れていたわけである。
 そうなると、永田岳に寄るのをやめて、あと所々の名所での休憩も短時間にしておけば2時間は節約できたから、そのようにすれば公共交通機関を使っての宮之浦岳縦走は可能だったわけだ。
 このブログに、「宮之浦岳 日帰り縦走」で検索してきて訪れた人のために、いちおう情報提供。
 でもまあ、そんな時間に追われての登山なんて楽しくないだろうから、とても勧められないけど。

【紀元杉】
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 川上杉に続き、次の屋久杉は紀元杉。
 これもまた立派な巨木である。
 樹齢は約3000年ということであり、そうなると「紀元前杉」のほうが、名称としては正しいのでは、とか突っ込みを入れたくなった。

 4kmほど舗装路を歩き、次の屋久杉は「仏陀杉」だよなあ、とか思いながら歩いていると、下山中の東京ナンバーのBMWがそばに止まり、「バス逃したんですか? よかったら乗って行きませんか」と声をかけてきた。
 感謝感激雨あられ、とはこのことであり、有難く好意に甘えさせていただき、屋久杉自然館まで送ってもらった。
 おかげで余計な歩行と時間を省け、暗くなる前に屋久杉自然館へと着くことが出来、有難きこと、このうえなしであった。

【屋久杉自然館】
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 そういうわけで、真のゴールの屋久杉自然館にやっと到着。
 日暮れも近い。
 今日は夜明けから、日暮れ近くまでずっと山のなかにいた一日であった。

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March 20, 2013

屋久島、白谷雲水峡

 3月下旬は5日間使って屋久島を訪れた。日程は、
 20日(水)雨のち曇り 白谷雲水峡散策
 21日(木)晴れ     宮之浦岳縦走
 22日(金)曇りのち雨 屋久島一周サイクリング
 23日(土)曇りのち雨 モッチョム岳登山
 24日(日)雨      尾之間散策
 というぐあいであった。
 覚悟はしていたけど屋久島は雨の多いところであり、雨が降らず、一日中天気が良かったのは一日だけであった。ちょうどその日が長時間を要した宮之浦岳縦走であったのは、今から思えばたいへんラッキーであり、そして山行で観ることのできた風景は、地上の楽園とでも称すべき素晴らしいものであった。山も含め、森、川、岩、それに海と屋久島の自然は見事なものであり、「何故自分は今まで一度も訪れなかったのだろう?」と自問してしまうほどのもの。…まあ、何故訪れなかったかにはきちんと理由があり、交通の便が不便であり、またしょっちゅう雨が降っているから行く気が起きなかったわけだが、そのようなデメリットなど考えなくてよかったほど、屋久島は訪れるべき魅力に富んでいた。
 というわけで、しばらくは屋久島レポート。

 屋久島に着いたその日は、カーフェリーが午後12時半に宮之浦港着だったので、あまり時間がとれない。それで手軽に訪れることのできる人気スポット白谷雲水峡を訪れた。

【県道594号線】
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 屋久島は巨大な山が一個そのまま島になっている形態であり、海からすぐに山に入る道が始まる。白谷雲水峡へは宮之浦から県道を使って、えんえんと山に入っていくのだが、まずこの県道のあまりの立派さに驚いた。
 観光客くらいしか使わないような道路なのに、片側一車線の舗装路がずっと山奥まで続いている。一部、拡幅工事中のところもあったが、さすが世界遺産と感心してしまうほどの立派さであった。

【入り口】
1

 道は駐車場で尽き、その手前に白谷雲水峡の入り口がある。
 300円の入山協力金を払って、入山。

【弥生杉へ】
2

 まずは一番近くには弥生杉という名所があるので、よく整備された山道を登って行く。

【弥生杉】
3

 屋久杉にはいろいろと名前がつけられており、これは弥生時代から生えているとのことらしき「弥生杉」なる名。
 屋久杉というのは、とにかくでかい。
 そしてその一番の特徴を写真にとらえるのって、まあ不可能です。
 それでも、一応記念的に写真を撮っておく。

【歩道】
4

 弥生杉のコースはとくに道がよく整備されており、歩きやすい。

【苔むす森】
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 屋久島は雨が多く、湿度の高い地なので、いずこも苔がむしている。
 雨が降ったのち、光がさしたとき、独特の神秘感が生じている。

【三本足杉】
5

 弥生杉を見たのちいったん川そばまで下り、それから原生林歩道を歩いて行くと、またいろいろな面白い形の屋久杉がいくつもある。
 三本足杉は名前のとおり、三つ叉に幹が分かれていて、鼎のような形である。

【くぐり杉】
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 苔むす森のなか、杉をくぐっていくようなところもある。

 白谷雲水峡は、原生林コースからさらに太鼓岩のほうまで足を伸ばすのはメインコースとなるのだが、あんまり時間もなかったことからそれは止めておいて、原生林コースをぐるりと一周して、川沿いの道を元に戻った。

【飛流おとし】
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 川沿いの道を歩けば、水流にえぐられた花崗岩は、いろいろと面白い造形となっている。これは名所の一つの「飛流おとし」。


 白谷雲水峡散策後は宮之浦に戻り、ホテルにチェックインしてから夕食へと町に出た。
 地元の料理が食べられるらしい、「食事処潮騒」にて夕食。

【メニュー】
Menu

 トビウオ、ムツアラ、カメノテ、屋久イモ、鹿、といったところが屋久島名物らしい。全国ブランドである「屋久島の首折れサバ」は今日は入荷なしとのこと。

【トビウオ刺身】
Flying_fish

 最初はトビウオ刺身を注文。
 …トビウオって、けっこうでかい魚だったんだな。
 味は、鯵を大味にしたような感じ。

【トビウオ薩摩揚げ】
Flying_fish_2

 もう一品トビウオは焼くか揚げにしようかと思ったけど、せっかくなら鹿児島らしくと薩摩揚げで。

 どちらもビールによく合う肴で、ビールを4杯しっかり飲んで、ホテルへと戻った。
 明日は今回の屋久島訪問のメインである宮之浦岳縦走であり、午前4時40分にバスに乗って登山口まで行かねばならないので、さっさと就寝した。

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March 17, 2013

宮崎アースライド2013

 宮崎アースライドはツキのないサイクリング大会であり、初回は新燃岳の噴火にて中止、第二回は雷が鳴る豪雨にてDNF続出、ということだったので、今回もさてどうなることかと思っていたら、涼しい気候に薄曇りの空という絶好のコンディションで当日を走ることができた。

【スタート会場】
1

 スタートは、かつては宮崎観光の象徴であり、いまは廃墟となってしまったシーガイヤ前から。廃墟化してしまったので、無駄に広いスペースがあり、便利なことは便利であった。

【宮崎市内】
2

 この大会はスタートの設定に問題があり、市内の交通量の多いところを通っていき、そこを600人からの参加者が走るわけだから、ずっと渋滞が続いた。

【バイパス】
3

 市内の混雑したところを抜けると、ようやく走りやすくなる。
 フェニックスが立ち並ぶ、いかにも宮崎らしい風景。

【トロピカルロート】
4

 道はいったんバイパスから離れ、運動公園のなかを走り、トロピカルロートで海を眺めながらの走行。

【堀切峠】
5

 最初の峠は堀切峠。
 ここを越えると、道の駅フェニックスである。

【国道220号線】
6

7

 アースライド宮崎のキモである、日南海岸沿いの国道220号線。
 日向灘を左手に眺めながらの、長いフラットロード。幹線道路ではあるが、車の交通量は少なめで、自転車でも走りやすい。

 この道を35km/時くらいで快適に走っていたら、九大サイクル部の学生さんに抜かれた。これはいい風除けが来たとばかり、ついつい後をつけていくと、けっこうな速度である。結局、飫肥までついていってしまったが、…えらい疲れてしまった。

【飫肥AP】
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 中間点である飫肥APに到着。ここは11時までに着かないと足切りなのだが、着いたのは10時30分。30分しか余ってなかった。かなりの速度で走ってきたはずなんだけど、最初のほうの渋滞で相当に時間を食ってしまったからなあ。

 そして飫肥APで、宮崎チームも参加していたことを知った。
 昨年の豪雨でこりてしまったような話が出ていたので、今回は誰も参加していないと思ってしまっていた。

【大戸野峠へ】
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 前半の海岸沿いのフラットルートとは一変して、後半は山越えである。
 大戸野峠へ約450mほどを登って行く。
 峠近くにはよく手入れされた飫肥杉が一面に植林されていて、きれいな風景であるが、…花粉症の人にはたまらなかっただろうなあ。

【峠を過ぎて】
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 峠へは取り付きのところから、頂上まであと○kmという標識が出ており、飫肥杉展望所あたりで、「あと1km」の標識があったが、そこから500mくらいで峠に着いてしまった。横道にでも入ってまだ登るのかな?と思ったら、そういうことはなく峠からはそのまま下りとなった。
 大戸野峠の写真を取り損ねたので、そこからしばらく下ったところにあるパーキングエリアで、満開の山桜とともに一枚。

【道の駅田野】
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 大戸野から半分くらい下ったところに第4APの「道の駅田野」がある。
 ここで宮崎チームの来るのは待ってから、それからまた出発。

【宮崎市内】
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 宮崎市内からは宮崎チームともに走行。
 宮崎チームにはもう一人、荷物満載のツーリングバイク乗りの青年も参加。一週間ほどかけてのサイクルツアー中に、ついでにアースライドも走っているそうだ。
 この装備でロードなみの速度で走り、登っていたから、相当な脚力の持ち主である。

【ゴール】
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 130kmほどの走行を終え、スタート地点へと戻った。
 ゴールした人たちには、宮崎名物地鶏の炭火焼がふるまわれている。
 県外の人も多く参加した大会だったので、これはけっこう人気があったようで、長い列ができていた。


 アースライド、初めて参加したけど、メリハリの利いたいいコースであったと思う。
 ただ、街中の渋滞はやはり辛いので、この点は改善が必要であろうな。
 次回からは大会の形態が変わるそうなので、そのへんの改善も期待。


 宮崎アースライド2013

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March 15, 2013

映画:アルゴ

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 1979年のイランアメリカ大使館人質事件を元にしたドキュメンタリータッチの映画。
 イランの急進派学生たちによって占拠された米国大使館からは、6人の大使館員が脱出できた。彼らはカナダの大使公邸に匿われていたが、滞在が長期におよび、イラン側から見つかる可能性が高くなってきたため、国外に脱出させねばならなくなった。
 しかし革命後のイランは、外国人の出入国は厳しく管理されており、いきなり6名もの外国人を無事に国外に連れ出すことは、通常の手法では不可能である。
 それで国務省はCIAに依頼して、脱出計画を練らせた。

 数々の計画が立案されたが、「イランに外国人が6人いる理由」をイラン当局に納得させるいい方法がなかなか作れない。当時の混乱時のイランって、今の北朝鮮みたいなもので、まっとうな外国人の立ち寄るところではなかったのである。
 結局今のイランを訪れる外国人は、SF映画を撮りたい映画撮影スタッフくらいしかいないだろうということで、(CGなどない時代、SF映画は奇抜な風景を求め、辺境の地でロケをするのが当たり前であったから)、大使館員を映画スタッフということにして脱出させる計画が採用された。

 しかし、いきなりイランに行って大使館員を映画スタッフになりすまさせても、肝心の映画が存在しないと絶対に不審に思われる。そのため、国務省は結構な予算を使い、架空の映画「アルゴ」の作成を開始する。
 このあたりが大変面白い。
 映画作製の要として、まずは大物プロデューサーを雇う。彼は彼の元に送られている没脚本のうち、「最もくだらない脚本」として「アルゴ」を選んだ。それから役者を決め、ポスター、台本、絵コンテも作成し、マスコミを招いて大々的に発表会を行った。
 ここでのポスターや、役者の衣装がそのまま「フラッシュゴードン」であり、(バーバレラもいたか?)、B級テイストがじつに濃厚であって、かなりの笑わせどころである。

【フラッシュゴードン】
2

 「アルゴ」のポスターも、こんな感じであった。

 さて準備も整い、CIAチーフは映画作成者の身分でイランに渡り、カナダ大使館を訪れ、匿われている大使館員たちに「アルゴ計画」について説明する。しかし、大使館員たちは、そんな怪しげな計画に乗れるか、と拒否をする。
 たしかに観ている我々にとっても怪しさたっぷりの計画であり、脱出時に米国大使館員という身分がばれたら死刑が必定の当の本人たちにとって、そうそう簡単には了承できないであろう。
 しかしながら、結局この方法しかないことに大使館員たちも渋々納得し、脱出計画に乗ることになる。

 カナダ大使館を出て、それから飛行場に到り、飛行機の離陸。
 このあたりはスリルに満ちた展開で、まさに手に汗を握るシーンの連続である。


 この「アルゴ計画」、やっぱりどう考えても無理があり、突っ込みどころがたくさんある馬鹿らしい計画なんだけど、これが現実に採用されたというのは驚きである。
 しかしながら、映画では脱出行にずいぶんと困難があったように描かれていたが、実際にはすんなりと国外に出られたそうだ。
 あまりの馬鹿らしさが、かえって盲点となって、スムーズに計画が為されたということなのであろう。

 前半部、架空の映画をつくるところは映画好きにはたまらないし、また後半の脱出のサスペンス劇も秀逸。いい映画であった。

 …この映画、最初の公開時に観たかったんだけど、どこもやっていなかったんだよなあ。オスカー受賞のおかげで、しっかり観ることができました。

…………………………………

 映画アルゴ:公式サイト

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March 09, 2013

映画:ジャンゴ 繋がれざる者 (※少々ネタバレあり)

1

 南北戦争が起こる2年前のアメリカ南部が舞台。
 ドイツ人歯科医師であるドクター・シュルツは、歯科業をやめ賞金稼ぎとなっていた。賞金首目当てに旅を続けるシュルツの次のターゲットは悪人3人兄弟なのであるが、彼は兄弟の顔を知らない。そこで兄弟が経営していた農場で働いていた奴隷が売られたことを知って、その奴隷ジャンゴを買い主から買い取ろうとして、夜買い主たちに会いに行く。しかしそれをあえなく拒否され、さらに銃を向けられたため、シュルツは早撃ちで相手を倒し、ジャンゴを奴隷の身から解放し、3人兄弟の確認役として雇う。

 ジャンゴは予想外に有能な男であり、彼の活躍により3人兄弟はあっさりと見つかり倒すことができた。シュルツはジャンゴが気に入り、彼をパートナーとして誘う。
 賞金稼ぎというのは返り討ちもあったりして、けっこう危険な職業であるが、ジャンゴは「白人を殺して金がもらえる。こんな素晴らしい職業はない」とのことで、ジャンゴはパートナーとなった。シュルツは、ジャンゴに銃の訓練や、銃撃の手法、覚悟なども教え、そしてジャンゴはめきめき腕を上げていく。


 ジャンゴにはある大きな目標があった。
 ジャンゴにはブルームヒルデという妻がいたのだが、夫婦で農場から脱出しようとして捕まり、拷問を受けたのち、その後二人とも別々に売られて、別れ離れになってしまった。ジャンゴはなんとしてでもその妻を取り返したい。

 シュルツはジャンゴの妻奪回作戦に協力することを決めた。
 冬の間に賞金稼ぎでおおいに資金をためたのち、春になってその奪回作戦が始まった。
 まずブルームヒルデはミシシッピの大農場キャンディ・ランドに売られていることが分かった。農場主は冷酷無比なことで知られており、交渉は厄介そうな人物である。300ドル程度の奴隷女一人買い戻しに行ったとしても、怪しまれ、門前払いになるのは必定で、悪くすれば銃で撃たれる危険もある。
 それで、農場主のキャンディが黒人奴隷たちを命を賭けて闘わせる「マンディンゴ」の主催者でありその愛好者であることから、シュルツを同好者ということにして、闘士を買いに行くという口実で彼に会うことにする。そしてその闘士売買交渉のおまけとしてブルームヒルデを買い取ろうという計画を立て、それを実行に移すべくキャンディ・ランドを訪れた。

【カルバン・キャンディ】
2

 シュルツ・ジャンゴコンビの目指すキャンディ農場の農場主、カルバン・キャンディ。
 三代目のボンボンなので、それなりの教育は受けているはずだが、教養は低レベルであり、頭の程度も良くない。しかしなぜか自分は頭がいいと思い込んでいる。趣味は悪く、意地も悪く、ほんとーに嫌なやつである。

 その嫌なやつと、奴隷売買交渉というじつに嫌なことをやりながら、キャンディ宅で話は進む。

 やがて当初の計画は妙な具合にねじれていき、キャンディ激怒のシーンが始まる。生意気なジャンゴに不快感を感じていたキャンディは、キレたついでに一演説をかます。
 幼い頃から黒人に仕えられて暮らしていたキャンディはある疑問を持っていた。それは、「これほど虐げられている黒人たちが何故自分たちに反乱を起こさないか?」ということである。
 キャンディは独自に解剖学的見地からその謎を解いたと称し、「黒人とは生まれながらにしての劣等人種であるから、自分たちに従属するべき存在である」と言う。その証拠だと、頭蓋骨の標本をノコギリで切り、骨の窪みなるものを見せる。
 こういうトンデモ科学を、真剣に、憑かれたように、がなりたてるキャンディの姿は、デカプリオの怪演のおかげで鬼気迫るものがあるのだが、…また滑稽にも感じられてしまう。

【スティーブン】
3

 キャンディの疑問「黒人はなぜ白人に反乱しないのか?」は、もちろんキャンディのトンデモ説が答えなのではなく、じつはその答えの一つは、キャンディの目の前にある。ただし、キャンディは気付いていない。

 キャンディ家の代々に仕え、今はキャンディの執事である黒人の老人スティーブン。彼は主人の言うことには常にはいはいと従い、主人を幇間のようにして立てる、愚鈍な黒人奴隷に一見見える。しかし事実は、彼は極めて怜悧で優秀な頭を持っており、家の全てを管理している。そして彼は同種の黒人に対して特に厳しく、その厳粛な管理により、キャンディ家の秩序を守っている。さらにはキャンディ家には執事以外にも特権的な位置にある黒人が数人いる。

 このように、アメリカ南部では黒人は全て低層奴隷というわけでなく、黒人にもヒエラルキーがあり、黒人間でも支配関係があって、その安定した黒人集団の上に白人がいるという、重層的な支配関係がシステムとして完成されていたことが分かる。

 映画では、スティーブンのほうがキャンディよりずっと有能だということが示されてからキャンディの演説が始まる。だから、人種論について得々と演説をぶつキャンディの姿が、迫力はあるのだが、…非常にバカに見える。

【ドクター・シュルツ】
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 ドクター・シュルツは、緻密な計画と、冷静な判断力によって生き抜いてきた、凄腕の賞金稼ぎである。その仕事は、ほぼ完璧に成し遂げられていたわけだが、しかしキャンディ農場を訪れてからは、彼の思考・行動には少しずつ歯車が狂いだし、なにかと周囲との齟齬が生じだす。(相棒ジャンゴにもそれを指摘される)

 これは彼の人格に弱点があったためということが、だんだんと分かって来る。

 問答無用で人を殺しまくったり、子供の目の前でターゲットを殺したりするなど、その非道ぶりがあまりに印象的なので、ついつい誤解してしまっていたけど、シュルツはじつはヒューマニストなのである。
 彼はどう考えても博愛主義者であり、正義感に富んでいる。法律も重んじ、虐げられた者に対しても常に優しい。これは最初の登場シーンから一貫してそうであった。
 賞金稼ぎやってる者がなんでヒューマニストなんだという説もあろうが、賞金稼ぎの動機がヒューマニズムであることは、よくよく考えればなんら矛盾はなく、かえって合理的でもある。

 シュルツの前半生は映画ではなんら描かれてはいない。
 想像するに、まさかヨーロッパの歯医者が賞金稼ぎを目的にアメリカに渡ってくるわけもないので、歯科医稼業でひと儲けしようとやっては来たものの、アメリカ南部の、人間が人間を虐げ合うあまりにひどい世界に、彼の精神性がNoを突き付け、紆余曲折あったあげく、賞金稼ぎへと転じた、ということなのだろう。

 黒人など人間とは扱われず、家畜以下、牛馬以下、生かすも殺すも主人次第という思考が当たり前というか常識であった時代、彼の「黒人だって自分たちと同じ人間だろう」という思考は全くの異端であり、常識外れであった。
 だから他の登場人物もシュルツに対して「なぜこいつは白人のくせに黒人をパートナーとして、かつ彼の助けをしているのだろう?」と奇異に思い、彼の行動がまったく理解できない。
 それどころか、当のジャンゴからしても「いったいなんでシュルツは自分を助けてくれるのだろう」と不思議がっており、ついに彼の真意を知ることはなかった。

 奴隷制を憎んでいたシュルツはべつにのちの公民権運動みたいな「黒人に自由を!」なんて運動をやろうとしていたわけでもなく、またやる気もなかったろう。
 けれども彼の高い精神性は、奴隷制度に対して、ずっと嫌悪感、違和感を示し、その感情を解消するべき手法として、彼には賞金稼ぎという職業の選択しかなく、ずっと誰にも理解されぬまま孤独な戦いを続けていた。ジャンゴというパートナーを得たのちでも、結局は、彼は孤独なままだったのである。

 キャンディ農場に来てから、シュルツの調子がおかしくなっていくのは、つまりはキャンディ家がアメリカ南部の暗部を凝集し濃縮したような所だったからである。シュルツは、その空間が嫌で嫌でたまらなかった。その極限的な嫌悪の念が、彼の判断力や洞察力を鈍らせてしまい、やがては全ての計画を台無しにして、彼の破局を招くことになる。

【ジャンゴ】
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 タイトルロール、ジャンゴは主役のはずであるけど、物語の半分くらいは、シュルツのほうに存在感があり、脇役的存在となっている。
 しかしジャンゴは、シュルツほどの人物にその有能さを見こまれパートナーにされたくらいだから、彼はどんどん成長していく。さらにジャンゴには南部アメリカという黒人にとって地獄のような世界を生き抜いてきたので、精神は既に鍛えられており、やがてはシュルツよりも強靭な精神を持つ賞金稼ぎとなっていく。

 シュルツの破局以後は、もちろんジャンゴが主役となる。シュルツのような甘さ、弱さがないジャンゴは、傍若無人に大活躍するわけだが、これがタランティーノ得意の血肉の吹き飛びまくる殺戮劇。「虐げられたものの復讐劇」という見地からこの映画を観ていたなら、おおいにカタルシスを感じるところかもしれない。

 …しかしながら、私はこの映画をシュルツの孤独な戦いの物語と観ていたので、ジャンゴの派手な活躍は一種の後日談のようにして観ていた。


 南北戦争前のアメリカの奴隷制度というのは、人類の歴史のなかでも、最低最悪のものであったのは間違いなく、しかしそのひどい時代のなかで人々はそれぞれ懸命に生きてきたのも事実であり、その生きてきた人々の群像を戯画化しつつ魅力的に描いた映画。
 文句なしの傑作であり、アカデミー賞脚本賞受賞も当然といえよう。


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 ジャンゴ 繋がれざる者 公式サイト

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