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February 15, 2013

隕石の落ちて来た日

Inseki


 流れ星がさして珍しいものでないのを知ったのは、もう30年以上も前、学校行事で深夜の阿蘇の山道を歩いているときであった。
 まったくの山奥であり、街の灯りも届かないので、周囲は漆黒の闇である。夜空には普段見えない等級の低い星も輝き、まさに満天の星空であった。だから、普段は街の灯りに埋没してしまうような、明るさの乏しい流れ星も、流れれば確実に見ることができ、1時間に1~2個は確認できた。
 黙々歩く道中では流れ星を数えることくらいしかやることはなく、これで何番目だなとか数えて歩くうち、その何番目かの流れ星が一際長い尾を曳いて夜空を伝い落ち、それからいきなり明るさを増し、一瞬夜空の底全体を輝かせて、それから消えた。打ち上げ花火のような流れ星に、周囲の歩く者たちも立ち止まって感嘆の声を上げた。その後しばらくして、「ジュワ~」という音が届き、その後さらにして焦げた臭いが漂ってきた。
 
 今にして思えば、その流れ星は隕石落下であり、…流れ星はそれからいくらでも見たが、隕石落下はそれ以来見たことがないゆえ、珍しい経験であったわけだ。


 2月15日、ロシアに隕石が落ちたというニュースが入った。
 宇宙を漂っていた直径20m弱の隕石は、地球の引力にひかれて大気圏に突入し、ロシア・チェリャンビスク州上空で破裂。強い閃光と、それから衝撃波を発し、ロシアの地上に衝突した。

 隕石は今までもたくさんのものが地球に落ちてきたわけだが、一瞬にして落ちるものなので、その映像を残すことは難しかった。しかし、21世紀となり容易に映像が得られる時代を迎え、隕石落下を記録した多くの写真や動画が発信された。
 これほどまでに大量の、そして詳細な隕石落下の映像を見られるのは、やはり文明の進歩の有難さである。


 この隕石落下では多くの負傷者が出たそうで、かの地の人には気の毒な出来事であった。
 …しかし、ネット上にいくらでもある映像を見ていると、不謹慎ながら「ああ、自分もナマで見てみたかったなあ」と思わざるを得なかった。

 阿蘇のあの小さな隕石、おそらくは地上に着くまでに燃え尽きた隕石でさえ、あれほど美しかったのだから、青空に白煙を刻みながら猛速度で走り、そして強烈な光を放ったこの隕石は、ほとんど神話の世界のような、非日常的な荘厳な風景を見せてくれたに違いない。


 とか感想を述べたが、隕石、じつはとんでもなく恐ろしいという話もついでにしておこう。

 今回のロシアの隕石は、直径が20mほどで、さほど大きいものではなく、被害も広範囲には渡ったが、建物が吹っ飛ぶとか崩壊するとかの、強烈なものはなく済んだ。
 しかし、隕石というものは、大きさにおいてピンからキリまであり、ピンレベルのものが落ちて来ると、その災いは甚大になる。
 地球の40億年の歴史のなかでは、生物にとって破局的な災害をもたらす隕石は何度も落ちて来た。

【ユカタン半島への隕石衝突図】
Insekirakka

 破局的災害をもたらした隕石で最も有名なのが、6550万年前にメキシコ・ユカタン半島に落ちた直径10kmほどの大隕石。
 この隕石に衝突により地球の気候は激変し、それまで地球を支配していた大型爬虫類、すなわち恐竜が絶滅することになった。

【バリンジャー・クレーター】
Photo

 人類の時代にも大隕石は落ちて来た。
 写真は有名なアリゾナのクレーター。これは5万年前ほどの落ちて来たもので半径20kmを焦土に変えた強力なものであった。
 しかし、その程度ではじつは小レベルであった。

 現人類は、種として2回絶滅の危機があった。そして、そのうちの一つが1万3000年ほど前に北米に隕石が落ちて来たことにより起こった。
 隕石衝突後、地球はヤンガードリアスと呼ばれる寒冷期に入り、人類の数は激減した。
 この隕石はクレーターは残さなかったが、衝突の痕跡は北米大陸の広範囲に残っている。


 まったく、隕石が生物界にもたらす災いの大きさには、恐れを覚えてしまう。

 ただ、今のところ、地球には、地球そのものを壊すような隕石はぶつかってはいない。まあ、そんなものがぶつかれば確実に人類は終了であるわけだが、ここで、そんなものがぶつかってしまった星を紹介。

【水星 カロリス盆地】
Caloris

 水星は太陽に近づきすぎているので、観測の難しい惑星なのであるけれど、惑星探査機によって、巨大なクレーターがあることが分かった。その直径は水星の4分の1にも及び、過去に巨大な隕石が衝突したことを示していた。
 調査の結果、その巨大隕石は水星がまだ形成の初期のころにぶつかったらしく、質量は水星の6分の1ほどもあったと判断された。
 質量が6分の1ということは、直径は2分の1に近いわけで、水星本星と比較すると、たいへんな大きさである。
 これを適当に図にしてみると、

【水星・隕石衝突の図】
Mercury

 まあ、ほんとに適当な図だなあ、というのはともかくとして、こんなものにぶつかられてはたまったものではない。
 この巨大隕石に衝突された水星は、地表の成分の多くを宇宙に吹き飛ばされ、形も組成も、軌軸や軌道も変わってしまった。水星は、その組成にずいぶんと謎があったのだが、隕石衝突したという過去があるなら、すんなりと謎が解けるそうだ。


 さすがに地球はここまでの隕石には出くわしていないが、それでも宇宙には直径100kmを越える小惑星はいくらでもあり、将来それらが地球に落ちて来る可能性は決してゼロではない。直径100kmレベルの小惑星に衝突されては、その災害は、やはり破局的なものになろう。
 小惑星がどう動くかは誰にも分からず、それこそ神のみぞ知る、という領域なのであるが、ただし巨大な小惑星がいったん動いて地球に近づいて来たら、現代の科学では、それは確実に把握でき、そしてそれが地球にぶつかるかどうかもほぼ確実に計算できるそうだ。
 だから、他の大災害、…地震や火山噴火とは異なり、その災害は突発的に生じるということはなく、カウントダウンとともに、地球は衝突の日を迎えることになる。
 そういうカウントダウンは、経験したくもあり、したくもないようであるが、とりあえずは、そのようなことが起きる可能性はゼロではないということを、改めて心に命じておこう。

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