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February 2013の記事

February 15, 2013

隕石の落ちて来た日

Inseki


 流れ星がさして珍しいものでないのを知ったのは、もう30年以上も前、学校行事で深夜の阿蘇の山道を歩いているときであった。
 まったくの山奥であり、街の灯りも届かないので、周囲は漆黒の闇である。夜空には普段見えない等級の低い星も輝き、まさに満天の星空であった。だから、普段は街の灯りに埋没してしまうような、明るさの乏しい流れ星も、流れれば確実に見ることができ、1時間に1~2個は確認できた。
 黙々歩く道中では流れ星を数えることくらいしかやることはなく、これで何番目だなとか数えて歩くうち、その何番目かの流れ星が一際長い尾を曳いて夜空を伝い落ち、それからいきなり明るさを増し、一瞬夜空の底全体を輝かせて、それから消えた。打ち上げ花火のような流れ星に、周囲の歩く者たちも立ち止まって感嘆の声を上げた。その後しばらくして、「ジュワ~」という音が届き、その後さらにして焦げた臭いが漂ってきた。
 
 今にして思えば、その流れ星は隕石落下であり、…流れ星はそれからいくらでも見たが、隕石落下はそれ以来見たことがないゆえ、珍しい経験であったわけだ。


 2月15日、ロシアに隕石が落ちたというニュースが入った。
 宇宙を漂っていた直径20m弱の隕石は、地球の引力にひかれて大気圏に突入し、ロシア・チェリャンビスク州上空で破裂。強い閃光と、それから衝撃波を発し、ロシアの地上に衝突した。

 隕石は今までもたくさんのものが地球に落ちてきたわけだが、一瞬にして落ちるものなので、その映像を残すことは難しかった。しかし、21世紀となり容易に映像が得られる時代を迎え、隕石落下を記録した多くの写真や動画が発信された。
 これほどまでに大量の、そして詳細な隕石落下の映像を見られるのは、やはり文明の進歩の有難さである。


 この隕石落下では多くの負傷者が出たそうで、かの地の人には気の毒な出来事であった。
 …しかし、ネット上にいくらでもある映像を見ていると、不謹慎ながら「ああ、自分もナマで見てみたかったなあ」と思わざるを得なかった。

 阿蘇のあの小さな隕石、おそらくは地上に着くまでに燃え尽きた隕石でさえ、あれほど美しかったのだから、青空に白煙を刻みながら猛速度で走り、そして強烈な光を放ったこの隕石は、ほとんど神話の世界のような、非日常的な荘厳な風景を見せてくれたに違いない。


 とか感想を述べたが、隕石、じつはとんでもなく恐ろしいという話もついでにしておこう。

 今回のロシアの隕石は、直径が20mほどで、さほど大きいものではなく、被害も広範囲には渡ったが、建物が吹っ飛ぶとか崩壊するとかの、強烈なものはなく済んだ。
 しかし、隕石というものは、大きさにおいてピンからキリまであり、ピンレベルのものが落ちて来ると、その災いは甚大になる。
 地球の40億年の歴史のなかでは、生物にとって破局的な災害をもたらす隕石は何度も落ちて来た。

【ユカタン半島への隕石衝突図】
Insekirakka

 破局的災害をもたらした隕石で最も有名なのが、6550万年前にメキシコ・ユカタン半島に落ちた直径10kmほどの大隕石。
 この隕石に衝突により地球の気候は激変し、それまで地球を支配していた大型爬虫類、すなわち恐竜が絶滅することになった。

【バリンジャー・クレーター】
Photo

 人類の時代にも大隕石は落ちて来た。
 写真は有名なアリゾナのクレーター。これは5万年前ほどの落ちて来たもので半径20kmを焦土に変えた強力なものであった。
 しかし、その程度ではじつは小レベルであった。

 現人類は、種として2回絶滅の危機があった。そして、そのうちの一つが1万3000年ほど前に北米に隕石が落ちて来たことにより起こった。
 隕石衝突後、地球はヤンガードリアスと呼ばれる寒冷期に入り、人類の数は激減した。
 この隕石はクレーターは残さなかったが、衝突の痕跡は北米大陸の広範囲に残っている。


 まったく、隕石が生物界にもたらす災いの大きさには、恐れを覚えてしまう。

 ただ、今のところ、地球には、地球そのものを壊すような隕石はぶつかってはいない。まあ、そんなものがぶつかれば確実に人類は終了であるわけだが、ここで、そんなものがぶつかってしまった星を紹介。

【水星 カロリス盆地】
Caloris

 水星は太陽に近づきすぎているので、観測の難しい惑星なのであるけれど、惑星探査機によって、巨大なクレーターがあることが分かった。その直径は水星の4分の1にも及び、過去に巨大な隕石が衝突したことを示していた。
 調査の結果、その巨大隕石は水星がまだ形成の初期のころにぶつかったらしく、質量は水星の6分の1ほどもあったと判断された。
 質量が6分の1ということは、直径は2分の1に近いわけで、水星本星と比較すると、たいへんな大きさである。
 これを適当に図にしてみると、

【水星・隕石衝突の図】
Mercury

 まあ、ほんとに適当な図だなあ、というのはともかくとして、こんなものにぶつかられてはたまったものではない。
 この巨大隕石に衝突された水星は、地表の成分の多くを宇宙に吹き飛ばされ、形も組成も、軌軸や軌道も変わってしまった。水星は、その組成にずいぶんと謎があったのだが、隕石衝突したという過去があるなら、すんなりと謎が解けるそうだ。


 さすがに地球はここまでの隕石には出くわしていないが、それでも宇宙には直径100kmを越える小惑星はいくらでもあり、将来それらが地球に落ちて来る可能性は決してゼロではない。直径100kmレベルの小惑星に衝突されては、その災害は、やはり破局的なものになろう。
 小惑星がどう動くかは誰にも分からず、それこそ神のみぞ知る、という領域なのであるが、ただし巨大な小惑星がいったん動いて地球に近づいて来たら、現代の科学では、それは確実に把握でき、そしてそれが地球にぶつかるかどうかもほぼ確実に計算できるそうだ。
 だから、他の大災害、…地震や火山噴火とは異なり、その災害は突発的に生じるということはなく、カウントダウンとともに、地球は衝突の日を迎えることになる。
 そういうカウントダウンは、経験したくもあり、したくもないようであるが、とりあえずは、そのようなことが起きる可能性はゼロではないということを、改めて心に命じておこう。

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February 11, 2013

座論梅を見に行く

 梅の季節となってきた。
 町中、いたるところで白紅の梅が花を咲かせている。
 宮崎の梅では、新富町の「座論梅」が一番有名であり、ちょうど満開であるとのこと。家から自転車で行くと往復で120kmくらいの距離なので、天気も良いことだし、サイクリングがてら見に行くことにした。

【尾鈴サンロード】
2

 往きは広域農道である尾鈴サンロードを使ってみた。
 この道は道幅が広く、整備もよいが、車の通行量は少なく、自転車で走るにはもってこいの道である。

【都農ワイナリー前】
1

 広域農道、都農ワイナリー前からそのまま直進できるかと勘違いしていたが、行き止まりになっていた。引き返すのも面倒なので、いったん10号線に入って、44号線から座論梅を目指す。

【座論梅へ】
3

 44号線の坂を下っていったら、ようやく座論梅への標識。

【湯の宮 座論梅】
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 往きは70kmほどかけて到着。
 「湯の宮」とは地名。神武天皇が東征のさいに湯あみしたという故事に由来する、由緒ある地名なのだ。

【座論梅】
6

 梅はほぼ満開。あたりには品のある梅の香りが満ちている。
 座論梅は、写真のごとく幹が地を這うごとく伸びていて、元々の一本の梅の木が、その伸びた幹から株を出し、そしてまわりに広がっていく、独特の形態の梅である。

【座論梅】
5

 こっちの写真のほうが、梅の木の寝方のぐあいがより分かりやすい。
 縦方向よりも、横方向に伸びていっている面白い梅なのだ。


 梅を満喫したのちは、国道10号線を使って戻る。好天のもと、合計120kmほどの快適なサイクリングであった。

 …………………………………
 本日の走行距離:122.7km

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February 10, 2013

雪解けの由布岳

1

 金曜日に雪が降り、土曜日には山頂部が冠雪していた由布岳であったが、土日と気温が高くなり、さて日曜はどうなっているだろうと思っていたが、…正面登山口から見る由布岳は、雪は全て溶けていた。

 一挙に登山する気持ちがダウンしてしまったが、せっかく来たので登ってみることにする。
 普通に登ると時間が余るので、本日は左横に見える飯盛ヶ城に寄ってみることにした。

【飯盛ヶ城山頂から由布岳を望む】
2

 この山は正面登山口からはどのように登るのが本ルートなのかよく分かないのだけど、草ばかりのどうでも歩いていい山なので、とりあえず頂上に向けて歩いていくと、そのまま頂上へと到着した。頂上はちょっとした広場になっており、そこに頂上標識は倒れたままとなっている。

【由布岳マタエ】
3

 飯盛ヶ城を降りて、由布岳登山道に合流して、マタエに到着。
 いい天気であり、空が青い。

【西峰山頂】
4

 マタエから障子戸の鎖場を越え、西峰へとまず登る。
 向いに見える東峰の御鉢内は、日が射さないこともあり、まだ雪が残っている。

【西峰北斜面】
5

 西峰の北斜面にも雪というか霧氷が残っていて、日に輝き、美しい風景であった。そして、御鉢巡りルートの登山道にはまだ雪があり、サクサクと雪を踏みしめていく雪道を楽しめることになった。

【御鉢巡り】
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 本日は天気がいいこともあり、登山者の数は多く、御鉢巡りをしている人が何人もいた。
 私の前を行く二人組は、岩場の難所を巻かずに、岩の上を果敢に直行している。そのコースはたぶん4級レベルを超える難度なので、この人達かなり腕が立つんだろうなと思っていたら、岩場のなかほどで立ち往生してしまっていた。
 追いついた私に「ここ、どう行くんですか」と聞いてきたので、「いったん戻って、右に巻いたらどうですか」と答えた。「どう行ったらいいか分からないので、先に行ってください」と言われ、私は横を抜けていった。
 ここの岩場、たしかに間違いやすいところであるのだが、夏ならいざしらず、冬の雪がある時期は先行者の足跡がしっかり残っているのに、そこで迷ってしまうのはいったいどうしたものなんだろう、とか思ってしまった。

【東峰山頂】
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 御鉢を抜け、稜線に戻るとこちら側は雪は消えていた。
 東峰山頂にも雪は、なし。
 雪はないものの、いい天気で、冬の青空の美しさはまた格別のものがあった。


 2月も来週からは中旬。
 どうやら九州の冬は過ぎてしまった気配。
 一昨年のような雪まみれの山々までは期待はしないものの、もう少し雪山を楽しみたかったなあ。

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February 09, 2013

寿司処ちはる@大分市

3


 大分市では「寿司処ちはる」という店で、夕食。
 この店は某寿司店店主より大分市ではここの寿司が一押しとのことで、訪れてみたかったのである。
 肴は、平目雲丹巻き、関鯵、鯖、鯛。河豚の刺身と湯引きのポン酢あえ。甘鯛塩焼き。唐墨、などなど。
 魚はやはり大分名物の新鮮な関鯵、関鯖の造りのぷりぷりとした食感がまずは印象的。他の素材もなかなかいい。
 そして握りは、烏賊、カマス炙り、車海老、鯛、〆鯖、大トロ、イクラ、雲丹、玉子。追加で干瓢巻きといったところ。
 大分だから鮮魚系鮨かなと予測していたが、適度な手入れもなされていて、自然体な鮨であり、これは普通に美味しく味わえる鮨であった。


【高性能ママチャリ】
Bike

 この店は自転車乗りの集う店らしく、そして若く活気ある店主も自転車乗りでもあり、隣の客(ピナレロドグマ持ってるそうだ)とともに自転車の話がはずむ。
 そして最近の店主の自慢は、市場に仕入れに行く時に使う自転車を、トレックのクロスバイクを改造した高性能ママチャリにしたとのこと。
 スポーツバイク的な自転車に、鍵、スタンド、泥除け、荷台、ライト、カゴ等をつけ、運搬能力に秀でたママチャリに改造したというわけであるが、…もとのトレックが格好よすぎるので、これは単なる「前カゴつきクロスバイク」にしか見えんなあ。

【LIVESTRONG】
Livestrong

 ちなみにこのトレックは、リブストロングカラーであった。
 かの堕ちた英雄ランス・アームロング氏由来のリブストロングであるが、そのうちなくなってしまうのであろうから貴重品になります、とこれも自慢であった。

 そんなこんなの自転車談をしながら、大分の美味しい夜を過ごしたのであった。

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雪を期待してまた久住へと。

 九州の雪山シーズンはもう終わったかなと思っていたら、連休手前の2月9金曜日に大寒波が北部九州に到来し、大分福岡でドカ雪が降ったとの情報。
 これは九重・由布あたりで雪山が期待できそうなので、先週に引き続き九重まで行ってみた。

【牧ノ戸登山口】
1

 金曜はたしかに雪だったのだが、土曜日には一転して高気圧が張り出し、天気はよく、そして気温も上がっている。雰囲気はすでに春。どうにもこのごろの気候は変化が激しすぎ。
 牧ノ戸登山口では残念ながら雪は少ししか認められなかった。

【沓掛山から】
2

 それでも沓掛山から見る山々の姿は、樹林帯では霧氷をまとっていて、少しは雪山らしい雰囲気はある。
 しかし、登山道には雪は積もっていない。

【西千里浜】
3

 先週と同様に、西千里浜は泥沼化していた。
 元が湿原なんで、そうなりやすいとはいえ、歩いていて楽しいものではまったくない。

【久住分かれから】
4

 連休初日で、天気もいいことから、本日は登山者も多く入っていた。
 ぞろぞろと久住、御池へと向かう登山者たち。

【久住山山頂】
5

 久住山山頂に着いて、ひと休憩。
 前回と同じく、見事な好天であり、360度の風景を楽しむ。

【御池】
6

 せっかくなので御池もついでに行ってみた。
 氷のうえ、博多弁の山ガールたちが登山靴でスケートを楽しんでいた。

【御池】
7

 犬の姿も。
 靴なしで氷の上を歩くのは、冷たかろうと思うのだけど、マイペースで進んでおりました。

【三脚】
8

 天狗ヶ城を経由して下山。
 沓掛山を過ぎたところには、夕日を狙っているとみえる、三脚に設置されたカメラがあった。
 この好天で、澄んだ空ゆえ、美しい夕日が期待できそうである。


 久住の雪は少なかったが、由布岳は山頂付近にまだ雪が残っていたので、明日は由布岳に登る予定とし、いったん大分市に引きあげることにした。

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February 05, 2013

河豚料理@ふじ木

 冬を代表する魚、河豚は今頃が最も白子が美味しくなるわけであり、ふじ木へと河豚料理を食べに行った。

【河豚刺し】
1

 とはいっても、河豚はやはりまずは河豚刺しから始まる。
 本日の虎河豚は、3kgとけっこうな大きさのもの。このサイズのものは宮崎ではあがらなかったので、下関から取り寄せたそうだ。
 旨み、歯ごたえ、すべてよし。

【ヒレ酒】
2

 ふじ木のヒレ酒は、ヒレがたっぷり入っているので、香りがまた豊かである。
 一杯飲んだくらいでは香りは減らないので、継ぎ酒を重ねて行く。

【さえずり】
3

 河豚一匹から一本しか取れない、のどの部分の「さえずり」。コラーゲンたっぷりである。これを塩焼きで。
 今回はカウンター貸し切りの7名での食事会だったのだが、店主はそのために7匹仕入れていたわけで、たいしたものである。

【白子】
Sirako

 冬の河豚は、白子もまるまると太っている。
 素材がそのまま、「どうだ、美味しそうだろ」と主張しているような、そんな見事さ。

【白子焼き】
Sirakoyaki

 白子は定番の塩焼き。
 旨みが、熱を入れることにより、さらに濃厚になる。

【白子椀】
Sirakowan

 白子は椀でも。
 鰹節の出汁で、大根おろし、柚子、葱をからめ、そこに炙った白子。
 過剰なまでの旨みと香りが椀のなかにつまっている。とても楽しい椀。

【河豚鍋】
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 河豚鍋は、ちょうどいい塩梅に煮られたところで、皿に盛られて出て来る。
 これを、ふじ木自家製ポン酢で食べて行く。

【雑炊】
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 〆は河豚雑炊。
 写真見るだけで、あの豊潤なる河豚の香りがあざやかによみがえって来る。
 冬は、河豚に始まり、河豚に終わる。
 今年の冬も河豚に大満足であった。

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February 03, 2013

冬の大船山

【法華院山荘の朝】
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 法華院山荘での朝を迎える。
 朝日に照らされ、山はモルゲンロート風に染まっていた。
 山荘の横にある「氷のアート」よりよほどアートっぽい。

【山と半月】
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 空には半月もかかっていて、赤く染まった山と、青空と、白い月がいい感じの風景をつくっていた。

【坊がつるの日の出】
4

 坊がつるは盆地なので、日の出は遅い。
 8時を過ぎてようやく山際から日が姿を現した。

【登山道】
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 大船山は久住と違って、樹が多いから、雪が残っているかなと期待していたが、残念ながら、登山道には雪がなかった。
 これは相当高度を稼がないと、雪を見られそうにない。

【稜線部】
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 稜線に出て、樹木帯に入れば、やっと雪が積もっていた。
 少ない区域ながら、雪山を楽しめました。

【大船山山頂】
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 昨日に引き続き、本日も抜群の好天。
 澄みきった青空のもと、遠くに阿蘇五岳を眺める。
 いわゆる「寝観音」の姿。


【御池】
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 山頂から見ると、御池は凍っていたので、ここにも行ってみた。
 氷は厚く、ここは当分残りそうである。

【雨ヶ池へ】
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 坊がつるから雨ヶ池に行く登山道は、以前とルートが変わって、別の歩きやすい新登山道が造られている。オンシーズンには一日に万単位の人が入る山なので、やはりきちんとした整備が定期的に行われている。
 あとは、三俣山の登山道の整備が必要だな。今はすがもり越からの一本しか登山道がないので、不便になっている。元は5つくらい登山道があったのに。

【長者原氷祭り】
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 長者原に着くと、「氷祭り」が開催中であった。
 雪の彫像や、氷の彫刻。
 けっこうな手間暇をかけて造られたものたちであった。
 ただし気温が高く、もう春の陽気であったため、いずれも場違い感が漂っていたなあ。

 今年は冬のピークが年始年末に来たようで、2月になってからどうも雪が積もらない。
 このまま春になってしまいそうな雰囲気濃厚であり、…九州の雪山シーズンはもう終わりなのかなあ。

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February 02, 2013

泥々の久住山、そして法華院山荘

 前回登ったときには雪は乏しく、カチカチに凍っていた久住山であったが、2月になったのでもう雪はしっかりと積もっていると思い、九重へと出かけてみた。
 …しかし土曜日になって、日本全国を高気圧が覆い、南方から温かい空気を吹き込んだため、突然4月なみの暖かさとなった。

 でもまあ、道路とかの雪は溶けているだろうけど、さすがに2月なら標高1500m以上は雪の世界だろうと思って訪れたが、甘かった。

【長者原から】
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 今回は法華院に一泊して、久住山と大船山に登る予定としたので、出発は長者原から。
 やまなみハイウエィに沿った道を、牧ノ戸峠に向けて登って行く。

【牧ノ戸峠】
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 300mほどの高さを登って、久住山への登山口である牧ノ戸峠に到着。
 気温はたしかに春なみで、冬用のアウターではたいへん暑かった。

【登山道】
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 登山口から登るうち、下山してきた人から「今日の久住は泥だらけで、田圃みたいだった。とても大変だったので、気をつけてください」と言われた。
 コンクリの登山道を抜けると、…たしかに泥だらけの道となっていた。
 雪と氷が、この陽気で全部溶けたとみえる。

【沓掛山から】
3

 登山口の最初の急傾斜を登るうちは、暑くてたまらなかった。それでも標高1500mを越えると、さすがに涼しく、というか寒くはなってきた。
 沓掛山に登れば久住山への全体的な眺望が利くが、雪などまったくなく、ほとんど春山の世界である。

【西千里浜】
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 好天のもと、西千里浜から星生山と久住山のツーショット。
 素晴らしい眺めなのであるが、足元は泥々の道が続く。

【久住分かれ】
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 久住分かれの窪地も、ぬかるんだ泥沼みたいになっていた。

【久住山】
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 相変わらずの強風の吹きぬける、久住山の稜線を通って行き、久住山山頂に到着。
 好天のもと、360度の景観を楽しむ。
 さすがに標高1786mの高さとなると、たいそう寒かった。

【御池】
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 久住山を下って、御池へと行く。
 これだけの量の氷は、少々気温が上がったくらいでは溶けないようで、しっかりと残っていた。
 この上を真っ直ぐ渡って行き、中岳への登山へと向かう。
 …アイゼンつけてなかったので、登山靴ではよく滑る。そして、おりからの強い西風に押され、何もしないのに、ヨット状に向うに滑っていけたのは気持ちよかった。

【中岳】
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 九重の最高峰、中岳。標高は1791mである。
 ここからは、大船山と坊がつるを一望でき、雄大な光景を楽しめる。

【天狗ヶ城】
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 中岳と双耳峰の一峰をになっている天狗ヶ城にも登ってみた。
 さきに登った中岳に、登山者が数人いるのが見える。

【天狗ヶ城】
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 本日はたいへん好天であり、空気も澄んでいて、稲星山の奥には祖母山もはっきりとその姿を見ることができた。

【御池】
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 御池にはテントを設営している登山者がいた。
 山のなかでのテント設営というものは、テントと同じ面積の平たい土地を探すのがまず大変なわけだが、氷面のうえには、完璧な平面が膨大にあるわけであり、これはなるほどユニークな発想だと思った。
 夜中に強風が吹いてペグが外れて、表面を滑ったりしないかなあとか、気温が上昇して氷が割れたりしないかなあ、などとは心配はするが、…まあチャレンジャーなんでしょうね。

【北千里浜へ】
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 久住分かれに戻り、過剰なほどの黄ペンキに導かれ、北千里浜へと下りて行く。

【北千里浜】
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 いつもは、砂利と岩と、それから硫黄の臭いばかりの、地獄的風景である北千里浜も、本日は雪解けの水が中央を川のごとく流れており、生命力を感じる風景。

【法華院温泉山荘】
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 北千里浜から坊がつるへと下りていき、本日のお宿の法華院山荘に到着。
 九州に山小屋はいくつかあれど、営業を行っているのはここだけである。
 普段は閑散とした山荘であるけど、ミヤマキリシマと紅葉のオンシーズンには人が満ちあふれる。
 今はオフシーズンゆえ、やはり閑散としていた。

【夕食】
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 夕食はこんな感じ。
 法華院山荘は、林道経由で車が入って来るので、材料は、まあ普通。
 それよりなにより大事な酒類は、これは豊富にあるので、存分に飲みましょう。

【温泉】
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 温泉の宝庫九重にある山荘なのだから、当然に温泉も湧いている。
 標高1300mにあるので、夜や朝はとくに寒く、そのときこの身体が芯からあったまる硫黄泉はたいへん気持ちよい。
 ただし、10年以上も前に私がここに泊まったときとは違って、浴槽がプラスチック製となっている。以前は、木製の浴槽であり、そして全体的にもとても鄙びた感のある浴室であり、いかにも「山奥の湯治場」という雰囲気が満ちていて、趣深かったのだが、…まあ時代は変わって行くのである。

【アート】
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 今の時期はちょうど「長者原氷祭り」というのが行われており、長者原周囲で雪と氷のアートが飾られていた。
 法華院山荘もそれに参加しており、このような氷の壁をライトアップしていた。

【アート】
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 撮影条件を変えてみると、もう少しはアートっぽくなったか。

【山荘内】
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 本日の法華院山荘は宿泊客はあまりおらず、私の部屋は一室貸し切りになったとはいいとして、それだと寒い。
 ストーブは廊下にしかないので、部屋よりもよほど廊下のほうが暖かく、戸は開けっ放しにして就寝とした。

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February 01, 2013

映画:レ・ミゼラブル

 ミュージカル映画は好きなのでたいていは観ているが、「レ・ミゼラブル」ばかりは原作がなんとも悲惨な筋なので、観る気が起きなかった。誰もが懸命に生きているのに、誰もが結局は不幸になり、主人公もほとんど救いのないまま死を迎える。惨めな人々の群像、…まあ「レ・ミゼラブル」という題名がそれそのものなので、そういう筋なのは仕方ないにしても、あえてそのような小説の映像作品を見に行く必要はないと思っていた。

 しかし、ミュージカル映画としては異例のロングランとなり、また評判も大変良いので、ならば見てみようかと、封切りからずいぶん経ったのちに観ることにしてみた。


 幕明け、囚人達が巨大な難破船を港に引き入れる壮大なシーンに圧倒される。まさに大画面で観る映画の醍醐味。それから、ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウエィ…など、綺羅星のごときハリウッドスターが何人も出演している豪華な配役、これもまた映画の醍醐味である。そして、彼らがまた歌が上手い。向うのスターって、とんでもない競争を勝ち抜いて来た人たちであるからして、やはりみんな芸達者なもんだなあ、と感心。

 そして、そのなかでもとりわけエポニーヌ役の女優が、やたらに歌が上手い。声が美しく、声量も豊かで、表現力も優れている。
 エポニーヌは、「レ・ミゼラブル」という劇のテーマ、「報われぬ愛」「報われぬ献身」「報われぬ人生」といったものを凝集させたような存在であり、劇の象徴ともいってよいような重要な役割だから、当然に歌も重要度が増すため、このような役者を配したのであろう。
 まったくエポニーヌが歌うシーン、ソロの「on my own」が説得力があるのは当然として、マリウスとコゼットの二重唱にからむ「a heartfull of love」にしろ、集団での歌「One day more!」にしろ、彼女の歌がそこに入ると、その歌声が歌全体の芯となって突きぬける、そんな強い存在感を示し、彼女のパートになるとついその歌に耳を集中させてしまう。

【サマンサ・バークス】
Smantha

 この存在感抜群のエポニーヌを演じる俳優は初めて見るし、また映画のポスターにも載っていなかったので、あとで知ったのだがサマンサ・バークスという人であった。この人、じつのところ映画俳優ではなく、ミュージカルスターであり、本物のミュージカルのほうの「レ・ミゼラブル」で現在エポニーヌをやっている人であった。…本職そのものであり、そりゃ、上手くて当たり前だ。

 ところで、この重要な役であるエポニーヌは、じつは最初は、歌って踊れる美人スター、アマンダ・セイフライドにオファーがあったそうだ。

【アマンダ・セイフライド】
Amanda

 アマンダは「レ・ミゼラブル」の大ファンであり、当然内容を詳しく知っていた。
 それでアマンダはそのオファーがあったとき、「私にエポニーヌが歌えるわけがない。でもレ・ミゼラブルには出たいので、コゼットをやらしてちょうだい」と答え、そうしてコゼット役をゲットしたそうだ。
 「レ・ミゼラブル」において役の大きさからいえば、エポニーヌ>>コゼットなので、欲のない人というか、誠実な人というか。(しかし、プロデューサーは「あんた、コゼットやる歳じゃなかろう」とは突っ込まなかったのかな)

 アマンダは具体的には、「エポニーヌを歌うには、『聴く者の心まで激しく揺さぶるような高音』が必要だが、私には出せない」と言ったそうで、それは全く正しい意見なのであり、アマンダに断られたのち、プロデューサーは『聴く者の心まで激しく揺さぶるような高音』を持つスターを探すのに四苦八苦することになった。

 ミュージカル映画はあくまでも映画であり、名作ミュージカルを映画にするには、配役には映画スターを出すのが肝要なところであって、…でもエポニーヌを歌える俳優はハリウッド中探しても見つからなかった。そして、その必要とされる歌唱力を持つ者を採用するにあたって、結局ミュージカルでエポニーヌを演じている者をそのまま用いるという、ある意味安易で、かつ確実な方法が取られた次第。
 でも、サマンサは他のスターと比べると、たしかに持っているオーラはやや乏しいが、演技はそれなりに上手く、そして何より歌が圧倒的なので、この配役は成功であろう。

 エポニーヌという役は、「レ・ミゼラブル」の核でもあるので、この役の成功は、そのまま「レ・ミゼラブル」の成功ともなっている。


 冒頭に上げた映画クリップは、「On my own」が映画用に装飾されて入っているので、改めてサマンサがステージで「On my own」を歌っているビデオクリップを紹介しておこう。
 (というか、映画クリップはエポニーヌの心象風景の描出があまりによく出来過ぎていて、観ていて心が痛くなる。)

【On my own Samantha Barks】

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