ツルツルの大崩山
年末年始、日本全国に大量の雪が降り、当然に九州にも降ったが、そのあとはたいした雪は降っていない。それでも気温は寒いので、まだ雪は残っていることを期待して大崩山へと登ってみることにした。
祝子ダムから大崩山を観察。
残念ながら雪はあまり積もっていないようである。
それで車に積んではいたものの、ピッケルと前爪アイゼンは役に立ちそうにないので、持っていかないことにした。
…そのせいで、あとでえらい目にあってしまった。
祝子川渡渉点から見る、小積ダキの威容。
本日は空気も澄んでいて、この巨大な岩の塔が、鮮やかによく見える。
大崩山を象徴する眺め、袖ダキより眺める下湧塚、それに小積ダキ。
左側にある小積ダキの岩壁は凍っており、巨大な氷壁をなっていた。
下部が崩壊した袖ダキの登山道に寄ってみたら、…なんと凍っていた。
下部が崩壊していようがいまいが、こんなツルツルの岩は歩行不能である。
袖ダキから下湧塚への登山道は、雪が吹きだまって来るところなので、雪の多い時期はたいそう積もるわけだが、せいぜい5~10cmの積雪であった。
下湧塚に取りつき、稜線の岩稜帯に上がるところがここであるが、岩一枚の表面がツルツルに凍っている。
これは大変だ。
今回は前爪なしの6本爪アイゼンを装着していたため、氷壁を登るときのスタイル、前爪を打ちこみながらの登り方が出来ない。しかたなく、横爪に氷を引っかけながらの、変な登り方をしないと上に身体を持ち上げられず、安定がたいへん悪い。しかも、支点のロープも凍っており、これもツルツルで信頼おけない。
ツルツルの岩をなんとか乗り越え、下湧塚の岩稜部へと出た。
ここは展望の良く利く、高度感抜群の気持ちのよいルートなのだが、ここの岩も凍っていた。
この岩は、ここから左側に滑り落ちると、100%命はないので慎重に進んでいった。
下湧塚から中湧塚に登ると、ここも当然凍っていた。そして、中湧塚からいったん上湧塚へ向けて降りるルートも、ツルツルに凍っている。
下湧塚と違い、こっちは下りのルートなので、さらに難易度が高い。
ここも苦労して降り、…さてこの後どうするかだ。
普通に行くなら上湧塚へ出て、それから坊主尾根を降りて行くのだが、あちらのルートは、凍っていたならさらにハードそうな岩がけっこうある。
小積ダキ分岐から降りたところの巨大な一枚岩や、坊主岩周囲の岩稜帯などなど。
今回は明らかに装備に不備があるので、本日の登山はここで終了として、麓のトラバースルートを通って下山することにした。
というわけで、下湧塚方向へと向かう巻き道を行くことにする。
この道は、樹林帯のなかにあり、岩は出てこないから、まあ問題ないだろうと思ったのだが、…そうはいかなかった。
この巻き道、だいたいは樹木のなかにあるのだが、途中、3本ほどの涸沢を越えるところがあり、そこが凍っていた。
まあ、水平方向のトラバースだから6本爪アイゼンでもなんとかはなるのだが、それでも2点支持で氷壁をトラバースするのは、たいへん心臓に悪い。足を片方上げたところで、誤って滑ったら、一挙に氷の沢を滑り落ちて行くことになる。
ここでピッケル一本あれば、安心感は全然違うのだが、…まったく後悔先に立たずである。
そんなこんなで、進退きわまった目にも少々あったりしたが、なんとか3本の沢を越え、下湧塚分岐の安全地帯まで到着。
ほっといたしました。
いやはや、このルート、凍った岩稜帯よりも、よほど神経と技術を使ったわい。ここは、冬期は通行不可にしたほうがいいんじゃない、と思ったほどの難易度。
帰りの下山路で、乳房岩にも寄ってみた。
やはり凍っており、登るのは不可能であった。
本日の登山は、雲ひとつない好天で、空気も澄んでおり、眺めは抜群であったのだが、眺めを楽しむほどの余裕は途中でなくなり、それからはいかに安全に大崩山を脱出するかしか考えられぬ、なんとも反省点の多いものとなってしまった。
大崩山は、学ぶこと多き山である。
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