平成24年大晦日@京都市
年末年始はワンパターンの乗りで、京都市で過ごすこととし、大晦日は旅館柊家で。
すでに柊家の玄関は年始の慶賀モード。
お向かいの俵屋も同様であった。
本日の部屋は旧館一階の34号室。
柊家ならではのクラシックなたたずまいの部屋である。
額には「天寒松色間」と由緒ありげなことが立派な字体で書かれており、部屋全体を引き締めている。
庭もクラシカルな京情緒にあふれた坪庭。
宿のシンボルである柊の樹も植えられていた。
夕食。
八寸は、バチコ、海老芋揚げ、唐墨大根、アン肝身巻き、鯛けんちん等々、どれも酒の肴として抜群なものばかり。
酒が進みます。
これから、椀、造り、揚げもの、蒸し物、…と、いつもながらの豊かな食材を用いた華やかな柊家の料理。
メインは鰆の幽庵焼き。それに蓮根、はじかみ、柚子。和牛の味噌漬け焼き。頭芋と小蕪とブロコッリーの田楽。
どれも柊家独特の、分かりやすい味付けである。
〆の御飯は、穴子御飯である。
京都は穴子を好む文化があり、市場では焼き穴子がたくさん並べられているけど、柊家で穴子飯を見るのは初めての経験なり。
いかなる店でも、一年に一回しか出せないのが「年越し蕎麦」。
その年越し蕎麦を、京都の老舗旅館で味わう。
一年を無事終わり、新年をまた迎える。その実感が、蕎麦を食いながら、身にしみ渡って来る。
さて、年越し蕎麦を食い終え、一年の食のノルマを終えたので、その次は除夜の鐘である。
毎年行こうと思いつつ、人があまりに多く、そしてここ数年さらに人が増えている傾向があるため、いつも入れなかった知恩院に、今回は少々早めに向かうことにする。
旅館を出てすぐにある姉小路通り。
するとこのように行灯が道にずらりと並べられていた。
いまままで経験なき、新趣向である。
知恩院の前に、八坂神社へと寄る。
この神社は12時近くになると、途方もない量の初詣の客で、近づくのさえ困難になるので、その前に行く必要がある。
大晦日の八坂神社は、鐘はないけど、「おけら参り」というものがある。
神社で熾された火で、火縄に火をつけて、これをくるくる回しながら無病息災を祈るものである。
だから大晦日の八坂神社周辺には、これをくるくる回した人がよく歩いていて、夜道にとても目立ち、風情ある情景となる。
おけら火をくるくる回しながら、本日のメインの目的地知恩院へと向かい、大行列に並ぶ。
寺門に近づくと、整理係の人から「寺内は火気厳禁なので、おけら火は消してください」との注意の声がかかる。ゆえに、行列客のけっこうな数の人がくるくる回しているおけら火は途中で消えてしまうことになるのであるが、…よくは分からないのだけど、これって途中で消して御利益がなくなるということはないのかな。
ベルトコンベア式に行列は動き、ようやく大鐘楼へ。
NHKの中継などで全国的に有名になっている鐘つきを、初めてリアルで見ることができた。
独特の掛け声とともに、20人ほどの僧侶たちが巨大な鐘をこれも巨大な橦木で撞く。地の底から持ち上がって来るような、重量感あふれる鐘の音が、あたり一面に響く。
うむ。迫力満点である。
知恩院の鐘を傍で聞けたことに満足し、あとは宿へと向かう。
その途中、寺町通りに入ると、知恩院の鐘とは異なる、明るい、軽い響きの鐘の音が聞こえて来た。
矢田地蔵尊の鐘であった。
これは参拝客が鐘をつけるのであり、人々が順番に鐘を鳴らしていた。
鐘を撞きたし人は多く、これ全部それ目的の行列である。
108人は優に越えているみたいだけど、まあそのへんは融通きくのであろうな。