フランス食紀行(4) サンドランス Senderens
パリに戻っての夕食、第一軒目はサンドランス。
フランス料理界ヌーベル・キュィジーヌの鬼才と呼ばれたアラン・サンドランス氏の店である。本来は三つ星レストランであったのだが、店の新方向を探求するために星を返上し、より多彩な人が訪れるようなレストランを目指しているそうだ。
そして店内に入ってみると、ここはたしかに普通のフランス料理店とは雰囲気が全く異なっている。
調度品や内装は、よくいえばカジュアル、悪くいえば安っぽい。そして特筆すべきは照明であり、壁際に飾られている鏡の前の明かりは、赤・黄・青と刻々と色を変え、どうにも落ち着かない。
そして天井からはピンクの照明がテーブルを照らし、その照明は蝶の模様を透かしているので、テーブルの上をこんな蝶が舞っている。
面白い趣向といえばいえるのだろうが、この照明は料理店としてはいかがなものかと思わぬでもない、というか思う。
このピンクの照明で料理がどう見えるかいえば、上の写真のごとし。
これは「Saumon demi-snacké (origine Écosse), sushi de légumes et pamplemousse」という料理で、皿の上に乗っているのは「スコットランド産の鮭と、野菜とグレープフレースの寿司」である。
さすがに店のなかで見た実物の料理は、目と脳の働きにより、写真ほどまでにはピンクがかっては見えなかったのであるが、それでもせっかくの料理の色彩がずいぶんと照明に邪魔をされていた。
私は今回のフランス食べ歩きのために、高性能コンパクトデジカメSony RX-100を購入したのであるが、RX-100なら、とりあえずRaw dataで記録しておいて、あとでホワイトバランス補正したらどうにかなるかと思っていたけど、いろいろ条件をいじってもこれが限界。かえってノイズが強く出て、どうにも妙な写真となってしまう。
Photoshopを使えばまだなんとかなるのかしれないが、私にはスキルないっす。
これはこの店の名物のオマール海老のバニラ風味(Homard a la Vanille)。
バニラの強い香りが海老の香りを邪魔しそうに思える料理であるが、なんのなんの、海老も香りが強く、そして二つの香りが相乗効果でなんとも言えぬ香りと、そして味をつくっている。
…しかし、色がなあ。
こういう写真を並べていると頭がくらくらしてしまう。
とかなんとか言いながら、前菜にメイン、全てがとても美味しかった。
どの料理も工夫に満ちていて、時代の先端を行くという意気込みをおおいに感じられたし、そしてそれにまったく破綻がなく、コースとしてまとめあげていたのも素晴らしい。
そして、サンドランスでは、それぞれの料理に対してワインを一杯ずつ合わせており、これが料理・ワインともに存分に魅力を味わえた。これは、あとで行ったムーリスも同じ方式だったけど、これこそ最もマリーアジュを楽しめる手法だと思った。
フランス料理店の常として、ここでもデザートは大量に出て来た。これは最初の一皿。
ところで、私たちが日本人ということで、最初に厨房のパテシィエが紹介された。彼は埼玉からお菓子の修業に来た若い日本人であり、何の伝手があるというわけではなかったのだが、サンドランスという店に魅力を感じて、自分で紹介状を書き、そして独力で就職したとのこと。
こういう活力ある人たちが修業したのち、また日本に戻ってきてくれると、日本のデザートの文化はもっともっと向上するのではと期待する。
サンドランス、照明と内装はいただけなかったが、料理とワインに関しては見事なものであった。
そしてこの店のもう一つの特徴としては、「使いやすさ」というものがあったと思う。サンドランスが三星を返上してまで求めたもののうちのそれが大きな部分であったのでは。
他の三星レストランでは店の雰囲気にどうしても非日常的なものを求める緊張感があったのに対し、サンドランスではそのような雰囲気はなく、ビストロ風な、気楽に料理を楽しもうという雰囲気があふれていたように思う。
そして、他の店では英語がもっぱら飛び交っていたのに対し、この店のみはフランス語のほうが多く、地元の人がよく使っているようであり、地元の人に愛されている店なのであろう。
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