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August 10, 2012

オリンピック雑感(2): 日本女子レスリング、強すぎ。

 ロンドンオリンピック、あまり前評判が高くなかった日本陣もけっこう健闘しており、各種目でメダル量産中である。ただし、メダルの色は銀・銅が多く、あと一歩のところですっきりしないので、競技を見ていて少々欲求不満にもなってしまう。

 どちらが金か銀かなんて、セレクトにセレクトを重ねて集った世界中のトップアスリートの、そのなかを勝ち抜いてきたもの二人の、あるいは二チームの争いなんだから、どちらかを取る確率は2分の1だろうにとか思ってしまうのだが、じっさいに競技を見ていると、金と銀の違いは紙一重どころか、歴然たる差があるのであり、金を取るべきものは順当に金を取る、というのが実感である。銀のレベルの者が金を取るのは、奇跡を期待するしかなく、そして奇跡など滅多に起きない。

 その、銀や銅ばかりで、やや欲求不満が残ってしまう日が続くなか、いきなり女子レスリングで金メダルラッシュである。
 そして、それが観ていてまったく安心でき、なんのハラハラドキドキもなく、日本の選手たちは金メダルを手中に収めた。金メダルとは、かくがごとく取るべし、という見本のようなものである。
 まあ、48kg級の小原選手は、決勝戦で少々危ういところもあったが、31歳というピークを過ぎた年齢なので仕方のないところはあった。

【48kg級 小原選手】
Obara

 この喜びよう、いいですね。

 63kg級では伊調馨が五輪三連覇、55kg級では吉田沙保里がやはり五輪三連覇という天晴れな成績で金メダルを取っている。
 まったく、日本の女子レスリング強すぎ。

 ただ、日本女子レスリング、歴史を調べると、一人の怪物の存在によってずいぶんと複雑な人間ドラマが生まれていることが分かる。
 上に示した小原選手の写真、たいへんな喜びようであるが、この歓喜の涙には深~いわけがある。

 小原選手は元は51kg級の選手であり、世界選手権で四連覇を果たすなど、無敵の存在であった。しかし北京オリンピックで初めて女子レスリングが種目に選ばれたとき、51kgは階級になく、オリンピックに出場するには体重を下げて48kg級に出るか、増やして55kgに出るかしかなかった。
 48kg級には彼女の妹がいるので、姉妹同士で争うわけにはいかず、体重を増やして55kg級に出ることになった。しかし、当時の日本の55kg級には吉田沙保里という途方もないモンスターがいた。51kgの四連覇の覇者も、吉田沙保里にはまったく歯が立たない。北京五輪出場をかけての試合では敗北を喫し、そしてこれはいわゆる完敗というものであって、なにを努力すればどうなるというレベルの敗戦でなかったため、将来を絶望し彼女は鬱になってしまったそうだ。

 ところが妹が引退したことから、また妹より強い48kg級の伊調千春も引退したことから、急遽五輪48kg級出場のチャンスが生まれ、国内戦を勝ち抜いたのち、見事に金を獲得した次第。
 あの号泣もよく理解できる、というわけだ。

【伊調馨】
Icho

 63kg級の伊調馨の試合は、見ていて他の選手とはまったくレベルの違う、格の違いを見せつけるものであった。この勝利で彼女は五輪三連覇を果たし、しかも153連勝という、まったくの負けなしである。
 このとんでもなく強い、無敵の女王とでも称すべく伊調馨も、じつはどうしても勝てない相手が一人いた。
 もちろんそれは吉田沙保里であり、元々は55kgの伊調馨は、同じ階級の吉田に二年続けて日本選手権で負けたことから、この階級に未来はないと悟り、それで体重を増やして階級を一つ上げ、それからは連勝街道まっしぐら、というわけ。


 こうしてみると、日本女子レスリング、いや世界女子レスリングでは吉田沙保里というとんでもない化け物がいることから、彼女を中心にしてレスリング界は動いていたことが分かる。
 今述べた伊調姉妹や坂本姉妹、それから彼女らと同様に強かった山本姉妹等は、常に吉田を意識せねばならず、また世界の強豪たちも世に出るためには、絶対に越えられない存在である吉田にどう対処すべきかを考えてから行動を決めねばならす、この10年間は55kg近傍のレスラーにとって、「吉田問題」は避けて通れぬ難問であった。
 「吉田さえいなかったら…」と思っている選手が、この世にたくさんいるであろうな。

 吉田沙保里は今回のオリンピックで、予定調和的にあっさりと三連覇をはたしたが、その成績をWikipediaで調べると笑ってしまう。

【吉田沙保里 戦績(Wikipediaより)】
Yoshida

 10年間、あらゆる選手権で負けしらず。
 取った金メダルは合計20個。当然、金以外のメダルはなし。メダルは全て、金・金・金…である。
 お伽話じみているが、こういう人が現実界に実在するわけだから、人間というのはその能力にはキリがないんだな。
 とにかく、私たちは吉田沙保里という伝説的存在を生の時間で見られたわけだから、じつに幸運なことであった。

【人類最強の女 吉田沙保里】
Yoshida_saori

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Comments

素直にテレビを見るよりも、このブログを見てから テレビを見たほうが ずっと 楽しい(笑)
 近いうちに 美味しいワインを ご一緒できそうです。旅話 心から 楽しみにしています。

Posted by: ホワイトアスパラガス | August 12, 2012 12:14 AM

オリンピック、普段はさして興味もない競技ばかりなんですけど、ついつい一生懸命観てしまうのが、オリンピック独特の魔力ですね。
おそらく人類が持つ世界最大級の視聴率獲得コンテンツだと思います。

美味しいワイン会、私も楽しみにしております。
旅話とともに、オリンピック談、それにフランス旅行予定などについても、たぶん盛り上がるのではないでしょうか。

Posted by: 湯平 | August 15, 2012 10:15 PM

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