地球最後のニホンカワウソ
ニホンカワウソはかつては日本中の河川に広く生息しており、人々の身近で暮らしていた、さして珍しいものではなかったそうだ。
日本の河川に住む生き物としては、最大級の大きさであることから、妖怪の「河童」のモデルになったという説もある。
しかし、ニホンカワウソは毛皮が良質なことから乱獲が進み、昭和に入ってから数が激減したため保護獣に指定され、1964年には天然記念物となった。
カワウソは、もしかしたら今の若い人たちには吉田戦車の漫画のほうが有名になっているかもしれない。
このカワウソ、本物の可愛いニホンカワウソとは似ても似つかぬ、いかにも吉田戦車風スタイルの怪しげな生き物であるが、このカワウソは友達の河童を強く嫉妬している。
それは河童がハワイに旅行に行ったことをたまたま知ったためで、それを知って以来、ハワイに行けないカワウソは、河童が羨ましく羨ましくてならない。
なぜカワウソがハワイに行けないかといえば、カワウソは天然記念物であり、絶滅危惧種に指定されているため、国外への持ち出しが禁止されているからである。そういう貴重種である以上、自分の意思がどうあれ、カワウソは国外には行けないのだ。
河童もカワウソなみの貴重種のはずであるが、日本政府からは貴重種の指定はないので、渡航は自由なのである。それで、上の画像は、羨ましさのあまり友達の河童を攻撃しているカワウソの図。
ニホンカワウソといえば、高知のイメージがあり、そして高知県須崎市は「カワウソの町」として、カワウソを市のマスコットとして、そのキャラクターの絵がいろいろなところに貼られている。
今年の1月に私が高知を旅行したとき、須崎市も通ったけれど、町のあらゆるところにあったカワウソの絵を見て、ここがカワウソの本場であることを知った。そしてできることなら生のカワウソを見たいと思い、カワウソを飼っているであろう水族館がないかなあ、などと思いながら街を走ったのであるが、そのようなものは見つからなかった。
まあ、とりあえず、私は希少で珍しいものながら、ニホンカワウソはまだ高知県に生息していると思っていたのである。
しかし、環境省は平成24年8月28日、ニホンカワウソは既に絶滅していると発表した。
ニホンカワウソは1979年にその姿を認められたのを最後として、30年以上、誰もその姿を見ていない。このような大型獣が誰にも姿を見られてない以上、絶滅したと判断するしかないとのことであった。
…なんと、ニホンカワウソはとっくの昔に絶滅していて、地球上にはもはや存在していないのであった。
そういうわけで、1979年、この写真に撮られたニホンカワウソが最後の一匹であったようだ。
このニホンカワウソは、両親から別れたのち、仲間を探してずっと高知の川で暮らしていたであろうに、誰とも会うことは出来ず、ずっと一匹で暮らし、そして誰にも知られぬまま孤独のうちに生を終え、そしてその一匹の死をもって、地球上からニホンカワウソは姿を消したのである。
なんとも哀しく、せつない話である。
とはいえ、生物である以上、種の寿命というのは確実にあり、ニホンカワウソのみならず、全ての生物は絶滅の運命を持っている。
今、地上で繁栄を謳歌している人類だって、その運命は決して免れない。
それが何万年後か、何百年後か、あるいは数日後か、それは誰にも分からないけど、人類も種の寿命を迎え、そして最後の一人となる人は必ずいる。
その最後の一人となった人は、何を見て、何を聞き、そして何を思うのであろう。
人類最後の一人、という魅力的なテーマでは、いろいろとSFが書かれているが、そのなかで私にとって最も印象的であったSFの一編、ブラッドベリの「火星年代記」の一章を紹介したい。
厳密にいえば、一人ではないのだが、いきなり人類の絶滅を見る羽目になった者の視点からの地球の描写。
登場人物は火星への移民の一人。
火星にはわずかの移民が住んでいたのであるが、ある時、彼は先住人であった火星人の幽霊のごときものに、「君たちはここで住むしかなくなった。だから火星の土地を君に渡そう」と言われ、広大な火星の土地の権利書を渡される。
なにがなんだかよく分からないまま、地球で何事か起きたのだろうかといぶかり、火星の夜空を眺めるうち、それは起った。
Earth changed in the black sky.
It caught fire.
Part of it seemed to come apart in a million pieces, as if a gigantic jigsaw had exploded. It burned with an unholy dripping glare for a minute, three times normal size, then dwindled.
黒い空で地球の姿が変わった。
それは炎に包まれた。
地球の一部はまるで巨大なジグソーパズルが爆発したかのように、百万の破片に分裂した。地球は燃え上がって汚い水滴のような閃光を瞬時に放ち、3倍ほどの大きさに膨れ上がったのち、それから小さくなった。
【地球】

地球が、そして人類がどのような終末を迎えるかは分からないが、この小説のように全面核戦争で燃え尽きる、なんてのは止めてほしい。
小説での描写そのものは、大花火みたいで、とても美しいけど。
それにしても、今読み返すと、この場面の年代は2005年11月ということになっているんだな。
2012年現在、ブラッドベリの予想に反して、人類は火星に移民どころか、火星への有人宇宙旅行さえできていない。しかし、とりあえずは滅亡もまだしていない。
私が生きているあいだは、地球も、そして人類も滅びてほしくはないけど、さてどうなることやら。
…………………………………
引用文はRay Bradbury作The Martian chroniclesの"November 2005: The off season"より。
火星年代記: レイ・ブラッドベリ作 1950年出版
……………………………………
【Résumé(まとめ)】
Au Japon il y avait des grands mammifères que s’appelle « Nihonkawauso » que habitait le fleuve. ll a été désignée comme monument naturel, et il était célèbre.
Kochi province est célèbre comme son habitat, Suzaki-ville fait l’animal fétiche.
Meis Ministère de l'Environnement a annoncé que s’ éteinait à le 28 oût, 2012. Le animal éteinait avant plus de trente ans.
Cette photo est l’ animal que a été vu la dernière fois. Ce animal est considéré comme le dernier.
Il a vécu beaucoup dans la solitude, est mort dans la solitude, les résultats, Nihonkawauso a disparu de la face de la terre.
C'est une histoire triste et solitaire.
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Comments
男のロマンというと語弊がありましょうが、7年前に私に鮎釣りを教えてくれた地元タクシーの運転手が綾北川源流の秘境の釣行中に 「先生、ありゃあ間違いないですわ。俺は ニホンカワウソを見たんですよ」、といってました。
ホントなら一大スクープなのですが残念ながら彼は一年後に骨腫瘍で亡くなられたのです。私は鮎釣り道具一式も彼に預けていたのですが一緒に火葬されたようです。
今となっては真偽を確認する手だてもありませんが。。。動物文学で鹿児島出身の椋鳩十氏の作品にも昭和20年代までは宮崎から大分の渓流に普通に棲息していたと記されてました。ロマンだなあ。
Posted by: 天ちゃん | September 05, 2012 11:06 PM
こういう絶滅した動物って、独特の物語がありますよねえ。
オオウミガラスとか、リョコウバトとか、ロンサム・ジョージとか、あるいは日本のトキとか、地球最後の一匹の記録が残っている動物の、その記録を読むと本当に心が痛みますが、そういう記録もなしに、ひっそりと地上から姿を消した動物のことを考えると、さらに心悲しくなります。
その運転手の目撃したニホンカワウソ、宮崎の川を、今も泳いでいてほしいと、せつに思います。
まさに男のロマンです。
Posted by: 湯平 | September 06, 2012 12:04 AM