サイクリング:京都駅→鞍馬→花背峠→美山荘 (「阿蘇望」が「京都3峠越え」に変更になってしまった話)
日本の暑さはひたすら耐えるものと相場は決まっているものの、夏に打ち克つ耐暑トレーニングみたいなものをすれば、さほどの暑さは気にせずに夏を乗り越えられることを、私は昨年の「阿蘇望」参加で知った。
7月末という酷暑の時期、阿蘇の四つの峠を越え、2800mの高さと120kmの距離を8時間以内で走り切る「サイクルマラソン阿蘇望」は、やってるときはきついけど、達成したのちの充実感は得難いものだし、おまけに暑さへの体力の獲得ができ、一夏をそれなりの快適さで過ごすことができる。
九州のサイクリストとしては、参加しないと損なようなイベントだ。
それゆえ、今年もエントリーをしておいた。
ところで、料理旅館美山荘の常連である食通W氏から、恒例の「美山荘で鮎を食おうツアー」を7月27日に行うので、それに参加しませんかとのお誘いがあり、仕事をやりくりすれば行けないこともなかったので、参加することにした。
ただし阿蘇望が29日ゆえ、京都と熊本を行き来するタイトな日程ではある。
この「美山荘」、京都の有名な旅館であるが、京都とは名ばかり、とまでは言わぬけど、一般の人が「京都」と考えているところから相当に北に外れた山の奥に存在している。そしてその地図を見てみると、概略図では以下のコースだ。
京都駅から鞍馬まではだらだらした登り、そして鞍馬からはけっこうハードな登りとなり、花背峠までそのきつい坂を500m以上登る面白そうなコースである。
自転車乗りなら、一回は走ってみたいコースだ。
それで、輪行で自転車を持っていき、京都駅から美山荘まで自転車で行くことを考えた。
けれども、美山荘の翌々日には「阿蘇望」が控えている。
もしこれを実行した場合、花背峠を登った疲れが脚に残ってないわけはなく、阿蘇望完走へのハードルが高くなってしまう。ハード極まりない阿蘇望へは十分なコンディションで臨むべきだ。阿蘇望をなめてはいけない。
それゆえ、花背峠越えは計画だけにとどめ、実行はいずれ機会があれば、ということにしておいた。
ところが、なんたることか7月上旬に記録的な大雨が阿蘇を襲い、その大水害によって交通網はズタズタに寸断され、サイクリング大会はとても開ける状況になく、今年の「阿蘇望」は中止となってしまった。残念ではあるが、気持ちを切り替えることとした。
まずは、耐暑サイクリングを京都方面に変更とし、ついでに「美山荘」は連泊として、世評高い美山荘の積み草料理を存分に味わうこととした。
宮崎も梅雨は開け、晴天である。
飛行機に自転車を積み込み、まずは伊丹空港まで。
伊丹空港から京都駅まではバスで行き、駅前で自転車を組んで、さて出発。
京都市内を走る。
この時点で暑い。とにかく暑い。
京都市は完全にヒートアイランド化しており、熱気が街全体にこもっている感じである。
そしてコンビニや商店の前を通ったときにドアが開いていると、エアコンの冷風がどっと吹いてきて、これは大変気持ちの良いものではあるが、…こういうヒートアイランドはエアコンなければとても暮らせないなあと実感した。
北山あたりから都市中心部から離れ、住宅街のなかを走る。
やがて道は山のなかに入って行き、川沿いの道となり、涼しくなるはずだが、案に相違してまったく涼しくならない。
ゆったりした登りは鞍馬寺まで続く。
普通、「京都」というのはこの鞍馬かあるいは貴船くらいが北限でしょうね。
鞍馬を過ぎると、道の勾配はぐっと増して来て、また道も狭くなり、山道という雰囲気になる。
高度はけっこう稼いだし、林のなかなのでいいかげん涼しくなっていいはずだが、まだまだ暑い。
温度表示板を見ると、29度だって。
そりゃ暑いはずだ。
花背峠への道はさらに勾配を増していき、九十九折りの坂が連なる。
このあたりも大変暑く、自転車漕いでいると心拍数が危険領域まで上がって来る。
用心のためにときどき足を着いて休憩し、呼吸を整えることにした。
べつだん足着き禁止というわけでもないし、それになにより我が身が大事である。
離合も困難なこんな山道でもバスは走っており、広河原と京都市内を往復しているバスが定期運行されている。
このバスはたいへんユニークで、鞍馬広河原間は、バス停と関係なくバスは停車し、自宅の前とかでも停められるそうだ。またバスが通行していることを知らせるために、音楽をずっと鳴らしている。
その音楽が「Annie Laurie」で、京都と全然関係ないスコットランド民謡のもの哀しい旋律が、この鄙びた地の山道には妙にあっていた。
京都北部は坂の宝庫で、この分岐を右に行けば、激坂である百井峠である。
興味はそそられるが、とても行く気力はない。
花背峠への道は、有名旅館美山荘への道でもあり、美山荘へは要所要所に道標があるので迷うことはない。
それにしてもこの暑いなか、まだ17kmあるのか。
暑い暑い、きついきついと言いながら、それでもペダルを回している限り自転車は進んでいくのであって、ようやくにして花背峠に到着。
ここにも温度表示板があるが、本来一番気温が低いこの地で、かつ午後6時を回っているのに27度である。
暑いはずだよ。
花背峠からはしばらくは下りであり、平坦になったところで、ひょっこりと人家が現れてくる。
その多くが合掌造りであり、…京都にもこんなところがあったのだと感心。
これは冬の雪積もる時期など、さぞ見応えある風景となるでしょうね。
美山荘へは川沿いの道をずっと走行する。
坂からの下りはそれなりに涼しくはなったのだが、平坦な道になるとまた暑くなってくる。いいかげんにイヤになってくるが、やがて美山荘への道は川の支流沿いへと分かれる。
美山荘はまだまだ遠い。
まったく、なんと不便なところにあるのだろう。
この暑いなか京都駅から自転車で来る身にもなってくれよ、と理不尽な憤りまで生じてきてしまう。
それでもずっと川沿いを走れば、美山荘がこの山奥にある理由も分かってくる。
賀茂川からずっと続くこの川は上流に行けば行くほど水は澄み、そして周囲の植生も豊かになる。
「摘み草の宿」は、やはりこのようなロケーションにあるべきであろう。
川沿いの道をずっと行くうち、道はいきなり通行止めになった。
「あれっ?」と思い、周囲を見渡したら、左横に美山荘があった。
ホっといたしました。
なにはともあれ、本館へと。
まずは一声、暑かったですわ、と言うと、仲居さんから「今日の京都は今年一番の暑さだったとニュースで報道していました。たいへんでしたね」と言われた。
また妙なときに来てしまったようです。
なにはともあれ、風呂である。
美山荘は温泉ではないけれど、渓流沿いに素晴らしい風呂がある。
日が暮れてしまったため、外は見えなかったけど、それでも雰囲気よろしい素晴らしい風呂であった。
京都駅出発が午後4時だったので、距離からして午後6時くらいには着くかなと思っていたが、途中のあまりの暑さに、到着は午後7時を越えると思った。それで、食事会には東京からの遠方の人もいるため、「適当に始めておいてください」と伝えておいたが、せっかくだからと私が到着するまで待ってくれておいて、それから食事会開始。
いやはや、どうもすみません。
まずは八寸から開始。
この八寸が、宿の周りで取れる食材を用いた、風情あるものであった。
そして味付けがやや濃いめで、これがビールにとても合うものであり、ビールをぐいぐい飲んで、幸せいっぱいの気分にひたるのであった。
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