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July 2012の記事

July 29, 2012

サイクリング:京都美山荘→栗尾峠→高雄→高槻→伊丹空港

 美山荘までの行きは時間の関係で伊丹空港から京都駅までバスを使ったが、本日は時間をゆったりと使えるので、美山荘から伊丹空港までの100kmほどの道のりを自転車で行くことにする。
 行きは花背峠を越えて来たけど、帰りは少々遠回りになるが、高雄を経由して京都市に入り、それから国道171号線を使って伊丹空港に着く計画とした。

【美山荘】
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 しっかりと朝食を食って、美山荘を出発。
 午前中で、すでに暑い。

【名犬クロ】
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Chien

 美山荘の飼い犬クロも暑そうにしている。
 クロは柴犬なので強いはずなんだけど、周りの犬のほうがもっと強いそうで、よく尻尾をかじられているそうだ。

【高雄方面への分岐】
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 山のなかにちょっとした集落があるところが、鞍馬方面と高雄方面の分岐点。左に曲がって橋を渡ると鞍馬方面で、まっすぐ行けば高雄方面。

【国道477号線】
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 酷道とも称される477号線は、たしかに花背峠あたりは酷道であるが、こちらの川沿いのルートは広々とした道で、路面の状態もよく快適に走行できる道だ。
 時速30kmで快調に進んでいく。

【桂川】
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 国道477号線は桂川に沿って走る道で、休日を利用して水遊びしている人たちをよく見た。

【栗尾峠へ】
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 国道477号線から162号線に入って栗尾峠を目指す。
 向かい山に、栗尾峠越えの道が見えているが、気温は30度である。
 これは山越えは暑くなりそうだ。

【栗尾峠からの眺め】
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【栗尾峠】
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 栗尾峠は160mほどの高さを登ることになる。
 さほどの高さはないのだが、漕ぎ続けるうちに、暑さがどんどん増してくる。
 心拍数は上がりっぱなしである。
 それでもなんとか峠に着けば、展望所からは桂川と京北の町が見え、なかなかの光景。
 そして峠を過ぎて、風を受けながらクールダウン。

【いのししラーメン】
8

 峠を降り切ったところに、ラーメン店があった。「いのししラーメン」が名物らしく、さすが山間部のラーメン店である。
 昼飯時ということもあるのだが、こんな辺鄙なところにあるのにけっこうにぎわっていた。

【北山杉】
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 栗尾峠を下りてからの道は、山の植林がとてもよく整備されている。
 これがかの京都の名物「北山杉」なのであって、近頃のまったく整備されていない荒れた杉林ばかり見ている私としては、ずいぶんと新鮮に感じられた。
 …それにしても気温は上がるばかりで、33度である。

【中川トンネル】
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 162号線を走行していると、「笠トンネル」という長大なトンネルがあり、こちらは自転車で走行したが、次なる長大なトンネル「中川トンネル」は、標識はないものの自動車専用トンネルっぽかった。
 左側に、川に沿っての旧道らしき道があり、こちらを通行することにする。

【中川町】
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 この旧道は中川町を通るもので、トンネルの方はバイパスのようであった。
 中川町は北山杉を扱う木材工場と古い構えの家々が立ち並び、風情のある町であった。

【神護寺前】
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 162号線を走り続けるうち高雄に入る。
 ここは神護寺が有名な観光地であるが、桜の季節でも紅葉の季節でもないのに、けっこう観光バスが来ていた。
 この暑いさなか、神護寺の階段を登るのは大変だとは思うのだが、それでも人を引き付ける魅力のあるところなんだな。

【御経坂峠】
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 御経坂峠の登りは80mほど。
 それでもこれだけ暑いと足にはこたえる。
 とりあえず、ノルマの峠はこれで終了。
 あとは伊丹空港までの50kmは、下りか、あるいはフラットな道となる。

【京都市内】
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 京都市内に入れば、さらに暑い。
 しかし、ここは金閣寺の前の通りなのだけど、この暑いなか金閣寺に参る観光客もまた多いのであった。

【国道171号線へ】
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 京都市内を北から南へ真っ直ぐ走ると、国道171号線への分岐へとぶつかる。
 171号線をひたすら走れば、やがて伊丹空港に着く。

【桂川】
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 美山荘の前の寺谷川が桂川の支流だったわけだが、その桂川に沿ったり離れたりして走行するうち桂川もだいぶ川幅が広くなった。
 171号線はさらにこの川に沿って走行するわけで、国道477~171号線を走るこのサイクリングコースは「桂川コース」とでも称してよいようなコースであった。

【国道171号線にて】
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 街中をずっと走って行く国道171号線、とにかく暑かった。
 街そのものに暑さが充満し、かつアスファルトの照り返しも強いし、車の熱気も吹きかけて来る。
 体感温度としては40度を軽く超えている。
 これに比べれば、山のなかの33度なんて涼しい部類であった。

 そして峠越えコースでは、登るときは暑いが、それを我慢して下りに入れば、風を受けて涼しくなり、メリハリが利いている。
 しかし街中のフラットコースをただただ走っていると、熱が身体にこもる一方で、これは真面目に身体を冷やさないと熱中症になりかねないと思った。

【CoCo壱番屋にて】
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 とにかく涼しいところで休憩を、と最初に見つけた飲食店CoCo壱番屋に入った。
 店内に入れば、別世界のごとくクーラーがきいており、涼しい涼しい。そして栄養補給と水分補給を兼ねて、アイスコーヒーを注文。
 カレー屋に入ってカレーを注文しないのもなんだが、サイクリング中にカレーなど食っては胃がもたれてしょうがない。

【伊丹空港】
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 カレー屋でだいぶ体調が回復し、そしてまた暑いなか自転車を漕いで行く。
 午後4時をまわると、日も傾き、だいぶと楽になった。
 そして飛行機が急峻な角度で跳んでいる姿が見えだしたら、空港は近い。
 国道171号線を離れ、飛行機のほうへ向かって行き、ようやくにして伊丹空港到着。
 走行距離102.5km、獲得標高580mのサイクリングであった。

 本日のサイクリングの要所は栗尾峠越えと思っていたが、なんのなんの、街中の平坦な171号線のほうがよほど暑くて苦しく、けっこうな精神力と体力が要った。

 「阿蘇望」変更の、「京都三峠越え」。
 二日間で、花背峠、栗尾峠、御経坂峠の3つの峠を越え、合計140.7km、獲得標高1380mを走ったことになる。阿蘇望には高さではまったくかなわないが、しかし体力の必要度では似たようなものであった。
 なにはともあれ、自分としては夏のノルマを果たした満足感はじゅうぶんにあります。

【空港でビール】
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 自転車で汗を大量にかいたあとは、なんといっても生ビール。
 ついでに大阪名物の蓬莱の豚饅を食いながら、熱中症にもならずに無事に伊丹空港にたどり着けたことにひと安心するのであった。


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July 28, 2012

和食:夏の美山荘二泊目

 摘草料理の宿、美山荘にての二泊目。
 夏の名物メイン料理である「鮎の塩焼き」と「鯉の造り」は昨日と同様に出て来たが、他は異なる料理であり、美山荘の更なる魅力を楽しめた。

【先付】
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 鮎の馴れ鮨。
 熟成のよくきいた馴れ鮨で、すでに鮎の香り等は吹っ飛んでおり、濃厚にして豊潤な醍醐の味。
 これは初っ端から酒の進む肴だ。

【八寸】
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 八寸は蓮の葉に載せて、清涼感がたっぷり。
 季節の野菜は、オクラ、唐辛子、インゲン豆、ジュンサイ、それにゴリと合鴨。

【汁もの】
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 京都ならではの白味噌に、生麩。
 白味噌はやさしい甘さ。

【向付】
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 琵琶鱒を燻製ふうに。
 豊かな味の魚である。

【鯉の造り】
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 琵琶鱒に続いて、鯉の造りも登場。
 今回のメンバーは宮崎の人たちであり、宮崎は小林市にも鯉の名店「泉の鯉」があり、そことの違いについて談話。
 結論からすれば、どちらも個性があり、とても美味しい。

【蒸物】
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 甘みの濃厚な坊ちゃん南瓜をくりぬいて、茸―山鳥茸(ポルチーニ茸と同じ種類だそうだ),卵茸を蒸したもの。花山椒も添えて、味と香りの豊かな食材が一斉に互いを強調しあう、にぎやかな料理。

【揚物】
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 鯉はウロコを外してそれをカリカリに揚げてから、味噌で味付けした鯉の身を包みこんで揚げるという複雑な手間をかけての料理。
 鯉の味も良いが、このウロコの食感もまたたまらない。

【御凌ぎ】
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 御凌ぎは鮎の鮨。
 こういうのを食べると、鮎が鮨のネタになぜならないかが、なんとはなしに分かったりする。
 それにしても、形と色の美しい鮨である。

【椀物】
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 なんと7月末に松茸が。
 とはいっても京丹後のものではなく、こればかりは長野から取り寄せたもの。
 魚は当然鱧と思えるが、しかしじつは鯰なのであった。
 山の里にある美山荘では、鱧は出さないのである。
 出汁は濃い目の椀で、これに松茸、鯰がうまく拮抗している。

【焼物】
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 美山荘はまわりでいろいろと茸が取れるのだが、今回は「虚無僧茸」が取れたので、そのフレッシュな取れたて茸を焼物で。
 ただ炭火で焼くだけで、ここまで美味しい料理となる、これぞ調理の芸とそして自然の恵み。

【ご飯】
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 昨日は鮎雑炊であったが、本日は鮎の炊込みご飯。
 いやはや、鮎の香りに満ちた、超絶的に美味い炊込みご飯である。
 もともとの米もたいへん良いものを使っているので、それが鮎との相乗効果で、これだけでノックダウン級の素晴らしい料理である。
 今までで相当の量の料理を食べているのに、みなでお代りまっしぐらであった。


 美山荘、食材も豊かで、また調理の工夫も奥深く、食べていて底がしれない。
 常連W氏は、「美山荘は一泊はもったいない。連泊しないと本当のすごさは分からない」と言うが、たしかにその通りであると思った次第である。


【部屋:すもも】
Room1

View

 昨日とメンバー構成が変わったので、私は本日は一人で「すもも」に宿泊。
 この部屋は、他の部屋と異なり、一人で静かに過ごしたい人がおもに使う部屋のようである。
 この部屋、どうにも既視感がある。
 というか、俵屋の「寿」の部屋と天井がそっくりなのだ。
 美山荘と俵屋は、どちらも中村工務店が手掛けているので、ところどころ似通ったところがある。
 ただし、部屋のつくりとして、俵屋は凝集していき、美山荘は解放されていく、そういったコンセプトがあるようで、全体としてはまったく違った意匠になっているのもまた面白い。

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美山荘周囲の山道を散策してみる:峰定寺~三本杉~こもれびの森~大悲山古道~山村都市交流の森 

 美山荘のあるあたりは山奥であり、本来なら人が通うようなところではないはずだけど、平安末期に修験者たちの修行の寺として峰定寺という寺が開かれ、細々とながら人の訪れる地となっていた。
 そして美山荘は元々はその峰定寺の宿坊であり、寺が寂れたのちは、旅館となって今に至っている。ゆえに美山荘は、峰定寺の参道にある。
 美山荘に泊まって峰定寺を参らぬわけにはいかないので、行ってみた。

【参道】
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 美山荘からすぐのところに、寺への入り口がある。
 峰定寺建立は平安末期、かの平清盛の造営による、歴史的にたいへん由緒ある寺である。

【峰定寺山門】
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 峰定寺山門。古き山門の構えも良いが、これを守るがごとき槙の大木も大変趣きがある。
 本堂へは山門より400段ほどの石の階段を登っていくことになる。
 この右手奥に社務所があるので、そこで参拝料を払ってから登りましょう。
 なお、この山門からの登りはお参りなので、写真撮影は禁止となる。

【本堂(京都府HPより)】
Busyouji

 山形の山寺なみの峻嶮な石段を登って行くうち、本堂に着く。
 京都の清水寺と同じタイプの、崖に無理やり建物を組む懸造りであり、元々の標高があることから、ここから眺める風景は高度感抜群。
 風通しもよく、野鳥や虫の声を聞きながら、絶景を眺めながらのんびりと過ごしたい気分になるが、この本堂は宗教的理由により滞在は10分までという縛りがあるので、適当なところで下山。

【地図】
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 地図によればこの一帯は大悲山山麓ということになるらしい。
 美山荘前の林道から、峰定寺の御神木「三本杉」へ行けるようなので、次はそこまで行ってみることにした。

【三本杉へ】
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 林道からは、この分岐を登っていけば三本杉へと至る。

【三本杉1】
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 登ることしばらくして、三本杉が見えて来る。
 …でもこれって、二本杉じゃね?
 そしてここに「クマに注意」との看板がある。
 京都府もここまで来れば熊がいるんだなあ。
 そういえば、美山荘でもたまに熊のジビエが出るとか言っていた。

【三本杉2】
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 この角度から見れば、ちゃんと三本杉に見える。
 直径6mに及ぶ杉の大木が、根本から三本に分かれて立つ、神秘的存在感を持つ大杉であった。

【登山道】
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 三本杉を見て引き返す予定であったが、三本杉の奥にもまだ山道がある。
 獣道とか杣道とかではなく、きちんとした踏跡のある登山道のようなので、登っていくことにした。

【尾根】
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 植林の森にだんだんと自然の樹が混じってくるころ、尾根筋に出る。
 明るく開けたところで、ここから山道は整備され、マウンテンバイクも走行可能なような遊歩道となる。

【不思議物件】
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 ここで不思議物件発見。
 ドラム缶の空いている面に、網で覆ったようなものである。
 たぶんイノシシやキツネをとらえる罠だろうな、と思っていたが、あとで宿の人に聞くと、そういう野性動物を捕えるワナは、このへんでは檻構造になっており、これはワナではないであろうとのこと。
 たしかに、よく考えればこういう怪しげなものには、イノシシとかは最初から近づかないだろうな。
 では、これはいったい何なのだろうか?
 空気穴をわざわざ側面に空けてあることから、生き物となにか関係はあるとは思うのだが、…もしかしたらこの中になにか飼っているとか。

【道標】
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 この遊歩道は、要所要所に標識が立てられており、道迷いがまずないという、たいへん親切なものであった。
 ただし、どこにも地図が立てられていないので、じつはこの標識がまったく役に立たない。
 「こもれびの森」も「野鳥の森」も「センターエリア」も、携帯で調べられる地図には載ってなく、どこがどこやら分からない。「八丁平」と「峰床山」はGoogle地図には載っているが、はるか遠くの地であり、あくまでも方向を示す記号にしか過ぎない。

【東屋】
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 とりあえず高いほうへ歩いていき、頂上まで来ると、ここが「こもれびの森」らしく、そこに展望所があった。
 ここで周囲を見渡し、地形を確認。
 頂上まで来ればあとは戻るだけなのだが、理想的には大悲山まで行って、そこから下れば美山荘である。
 しかし今の地点は大悲山とは谷で区切られて、尾根筋ではつながっていない。それでそのルートで帰るのは無理なので、今いる山を越えることにした。

【ちしょろ尾根】
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 Google地図では、このあたりの名のある地区は「山村都市交流の森」しかないのであるが、地形から考えるに、「センターエリア」というのがその「交流の森」らしいので、標識に従ってセンターエリアに向かうことにした。

【大悲山古道】
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 尾根沿いに下って行くと、林道にと合流。
 そこに今通った道は「大悲山古道」であるという標識があった。
 平清盛、西行、俊寛妻子が通ったという歴史のある道なのであった。

【交流の森】
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 林道を道なりに歩いていくと、交流の森へと着いた。
 このあたりの杉を用いたと思わる木造の建築物が、いくつも建っている山間の行楽地である。
 夏休みゆえ、バーベキューを楽しむ人、川遊びを楽しむ人がたくさん集っていた。

【上桂川】
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 交流の森に出たのちは、上桂川に沿って舗装道を歩いていく。
 上桂川は鮎釣りをする人でにぎわっていた。

【美山荘へ】
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 歩くうちに、「美山荘へ2km」の標識が。
 このあたり、昨日自転車で走っているうちは気づかなかったけど、だらだらした登りであった。
 自転車ではたいしたことないけど、こういう緩やかな登りは、歩いているとけっこうきつい。

【桂雅堂にて】
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 美山荘まで1kmくらいのところで、空は明るいのに、突然の豪雨。
 山歩きするとき雨具を持参しないことは有り得ないのだが、今回は山歩きする予定がまったくないまま歩いてしまったため雨具の用意がない。
 途中にあった、「桂雅堂」という料理旅館の軒先にて雨宿り。
 豪雨は、いわゆるゲリラ豪雨であり、10分くらいで小降りになったので、それからまた歩くことにした。

【美山荘前】
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 気温はたいへん暑く、アスファルトはとても熱せられており、雨は路面から蒸発し、道には靄みたいなものがかかっている。
 そして背後から日がうっすらと雲を通して射しているので、私の目の前には小さな虹がずっとかかっている、という妙な体験をしつつ、美山荘へと到着。

 濡れ鼠姿で戻ってきた私が通るのを見て、仲居さんはただちにタオルと浴衣を持ってきてくれた。
 サービスの行き届いた宿なのではあるが、…昨日自転車で汗まみれ姿で来たのといい、今日の山越え濡れ鼠姿といい、たぶん私は変な客と思われているだろうな。

【風呂】
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 暑いなか山を越えようが、大雨で濡れようが、風呂に入ればすべてはすっきり。
 そして昨日は日が暮れての風呂であったが、本日は日が残っている。
 それゆえ、外の美しき渓流を眺めながらの、気持ちよい入浴を楽しめた。

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July 27, 2012

和食:夏の美山荘 一泊目

 「摘草料理」で有名な料理旅館美山荘だけあって、自然豊かな周囲の地から得られた食材をふんだんに用いた、個性あふれる料理を楽しめた。

【八寸】
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 田螺の突出しのあとは、鮮やかな色の料理の並ぶ篭入りの八寸。
 ミョウガ、イタドリ、卵黄味噌漬け、根曲がり茸、稚鮎、川海老、蕨海苔巻き、橡蒟蒻揚げ、等々。
 魚や海老は、宿の前を流れる渓流、寺谷川で獲れたもの。山菜はもちろん、宿の周りの山からのもの。

【向付】
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 造りは鯉である。
 洗い風にはしているが、臭みを取るというわけではなく、身をさらに引き締める感じで。この鯉には、鯉特有の泥臭さはまったくなく、鯉独自の淡い味と香りのみが感じられる。なんでも何ヶ月も清流で泳がせて、完全に泥を抜くそうである。

【強肴】
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 山菜はシオデ。それに蓮根。
 シオデといえば「山のアスパラガス」とも称される、クセの少ない山菜である。
 幻の山菜とも呼ばれることもあるが、探せば山のなかに普通に生えてはおります。私も大学生のときは大学の裏山に群生があったので、早春によく取ってきて食っていた。
 このシオデは時期が外れているので、生のままというわけではなく、保存処理をされていたようで、独自の味付けがされており、それはそれでよかった。

【揚物】
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 揚げ物は、寺谷川で獲れた川魚。味女泥鰌、ゴリ、ハヤ。
 泥鰌って田圃に住んでいるものと思っていたけど、「味女泥鰌」はきれいな水に住む泥鰌で、高級魚のたぐいだそうだ。
 W氏は翌日川でシュノーケリングで遊んでいて、この味女泥鰌の泳ぐ姿の撮影に成功し、喜んでいた。

【進肴】
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 この塩釜焼、中を取り忘れたけど鮎である。
 少々塩の味が強すぎるけど、酒はよく進む。

【椀物】
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 今日は土用の丑の日であったわけだが、そういうわけでもないのだろうけど、椀物は鰻。
 鰻は白焼きで、淡泊な味わい。それに川海苔豆腐。
 出汁はけっこう強めで、いわゆる「京都の出汁」とは異なるものであり、これが美山荘の個性なのであろう。

【凌ぎ】
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 御凌ぎは「琵琶鱒の鮨」。
 あっさりの味の川魚が続いてきたけど、琵琶湖の鱒はけっこう濃厚な味。
 鱒の強めの味が、鮨にはよくあっている。

【焼物:鮎(まだ生きている)】
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 夏の美山荘のメイン料理、鮎。
 宿の渓流沿いの生簀に飼っている鮎を料理の都度持ってきて焼きます。
 当然、串刺しされても、ピクピクと動いています。

【生簀】
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 鮎といっしょに、鯉も泳いでいる。

【鮎:塩焼き中】
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 鮎は目の前で、備長炭でじっくりと焼き上げます。
 鮎の脂が落ちてそれが焼け、いい香りが部屋中に満ちて来る。

【鮎の塩焼き】
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 7月は末であるけど、京都の山奥の鮎はまだ小ぶりである。
 この鮎も鯉方式でしっかりと砂を吐かせてから料理になるので、鮎の野生くささみたいなものはなく、鮎のエッセンスのみをまとったような、とても上品な味となっている。
 小ぶりなのと、焼き加減がよいため、頭から骨まで全部食べられます。

【炊合わせ】
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 賀茂茄子、三度豆、それに京都牛。
 茄子と牛の組み合わせというのが、なかなか面白い。

【ご飯】
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 〆は「鮎炊込みご飯」と思いきや、連泊ゆえ「鮎雑炊」。
 これは香りといい、味といい、そしてご飯そのものといい、絶品といってよいもの。
 皆でお代りしまくりの、たいへん美味しい料理でありました。

【楓】
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 美山荘一泊目は、「楓」の部屋。
 部屋には広い月見台が、渓流に張り出されおり、ここから眺める清い水の流れ、そして樹々の緑、とても落ち着く空間である。

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サイクリング:京都駅→鞍馬→花背峠→美山荘 (「阿蘇望」が「京都3峠越え」に変更になってしまった話)

 日本の暑さはひたすら耐えるものと相場は決まっているものの、夏に打ち克つ耐暑トレーニングみたいなものをすれば、さほどの暑さは気にせずに夏を乗り越えられることを、私は昨年の「阿蘇望」参加で知った。
 7月末という酷暑の時期、阿蘇の四つの峠を越え、2800mの高さと120kmの距離を8時間以内で走り切る「サイクルマラソン阿蘇望」は、やってるときはきついけど、達成したのちの充実感は得難いものだし、おまけに暑さへの体力の獲得ができ、一夏をそれなりの快適さで過ごすことができる。
 九州のサイクリストとしては、参加しないと損なようなイベントだ。
 それゆえ、今年もエントリーをしておいた。

 ところで、料理旅館美山荘の常連である食通W氏から、恒例の「美山荘で鮎を食おうツアー」を7月27日に行うので、それに参加しませんかとのお誘いがあり、仕事をやりくりすれば行けないこともなかったので、参加することにした。
 ただし阿蘇望が29日ゆえ、京都と熊本を行き来するタイトな日程ではある。

 この「美山荘」、京都の有名な旅館であるが、京都とは名ばかり、とまでは言わぬけど、一般の人が「京都」と考えているところから相当に北に外れた山の奥に存在している。そしてその地図を見てみると、概略図では以下のコースだ。

【京都駅→花背峠→美山荘】
Photo

 京都駅から鞍馬まではだらだらした登り、そして鞍馬からはけっこうハードな登りとなり、花背峠までそのきつい坂を500m以上登る面白そうなコースである。
 自転車乗りなら、一回は走ってみたいコースだ。
 それで、輪行で自転車を持っていき、京都駅から美山荘まで自転車で行くことを考えた。

 けれども、美山荘の翌々日には「阿蘇望」が控えている。
 もしこれを実行した場合、花背峠を登った疲れが脚に残ってないわけはなく、阿蘇望完走へのハードルが高くなってしまう。ハード極まりない阿蘇望へは十分なコンディションで臨むべきだ。阿蘇望をなめてはいけない。
 それゆえ、花背峠越えは計画だけにとどめ、実行はいずれ機会があれば、ということにしておいた。


 ところが、なんたることか7月上旬に記録的な大雨が阿蘇を襲い、その大水害によって交通網はズタズタに寸断され、サイクリング大会はとても開ける状況になく、今年の「阿蘇望」は中止となってしまった。残念ではあるが、気持ちを切り替えることとした。
 まずは、耐暑サイクリングを京都方面に変更とし、ついでに「美山荘」は連泊として、世評高い美山荘の積み草料理を存分に味わうこととした。

【宮崎空港にて】
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 宮崎も梅雨は開け、晴天である。
 飛行機に自転車を積み込み、まずは伊丹空港まで。

【京都駅前】
Kyoutostation

 伊丹空港から京都駅まではバスで行き、駅前で自転車を組んで、さて出発。

【河原町】
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 京都市内を走る。
 この時点で暑い。とにかく暑い。
 京都市は完全にヒートアイランド化しており、熱気が街全体にこもっている感じである。
 そしてコンビニや商店の前を通ったときにドアが開いていると、エアコンの冷風がどっと吹いてきて、これは大変気持ちの良いものではあるが、…こういうヒートアイランドはエアコンなければとても暮らせないなあと実感した。

【鞍馬へ 1】
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 北山あたりから都市中心部から離れ、住宅街のなかを走る。

【鞍馬へ 2】
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 やがて道は山のなかに入って行き、川沿いの道となり、涼しくなるはずだが、案に相違してまったく涼しくならない。

【鞍馬駅】
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 ゆったりした登りは鞍馬寺まで続く。
 普通、「京都」というのはこの鞍馬かあるいは貴船くらいが北限でしょうね。

【花背峠へ 1】
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 鞍馬を過ぎると、道の勾配はぐっと増して来て、また道も狭くなり、山道という雰囲気になる。
 高度はけっこう稼いだし、林のなかなのでいいかげん涼しくなっていいはずだが、まだまだ暑い。
 温度表示板を見ると、29度だって。
 そりゃ暑いはずだ。

【花背峠 2】
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 花背峠への道はさらに勾配を増していき、九十九折りの坂が連なる。
 このあたりも大変暑く、自転車漕いでいると心拍数が危険領域まで上がって来る。
 用心のためにときどき足を着いて休憩し、呼吸を整えることにした。
 べつだん足着き禁止というわけでもないし、それになにより我が身が大事である。

【京都バス】
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 離合も困難なこんな山道でもバスは走っており、広河原と京都市内を往復しているバスが定期運行されている。
 このバスはたいへんユニークで、鞍馬広河原間は、バス停と関係なくバスは停車し、自宅の前とかでも停められるそうだ。またバスが通行していることを知らせるために、音楽をずっと鳴らしている。
 その音楽が「Annie Laurie」で、京都と全然関係ないスコットランド民謡のもの哀しい旋律が、この鄙びた地の山道には妙にあっていた。

【百井峠への分岐】
8

 京都北部は坂の宝庫で、この分岐を右に行けば、激坂である百井峠である。
 興味はそそられるが、とても行く気力はない。

【美山荘へ17km】
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 花背峠への道は、有名旅館美山荘への道でもあり、美山荘へは要所要所に道標があるので迷うことはない。
 それにしてもこの暑いなか、まだ17kmあるのか。

【花背峠】
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 暑い暑い、きついきついと言いながら、それでもペダルを回している限り自転車は進んでいくのであって、ようやくにして花背峠に到着。
 ここにも温度表示板があるが、本来一番気温が低いこの地で、かつ午後6時を回っているのに27度である。
暑いはずだよ。

【花背の里】
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 花背峠からはしばらくは下りであり、平坦になったところで、ひょっこりと人家が現れてくる。
 その多くが合掌造りであり、…京都にもこんなところがあったのだと感心。
 これは冬の雪積もる時期など、さぞ見応えある風景となるでしょうね。

【美山荘へ 1】
12_2

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 美山荘へは川沿いの道をずっと走行する。
 坂からの下りはそれなりに涼しくはなったのだが、平坦な道になるとまた暑くなってくる。いいかげんにイヤになってくるが、やがて美山荘への道は川の支流沿いへと分かれる。
 美山荘はまだまだ遠い。
 まったく、なんと不便なところにあるのだろう。
 この暑いなか京都駅から自転車で来る身にもなってくれよ、と理不尽な憤りまで生じてきてしまう。

【美山荘へ 2】
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 それでもずっと川沿いを走れば、美山荘がこの山奥にある理由も分かってくる。
 賀茂川からずっと続くこの川は上流に行けば行くほど水は澄み、そして周囲の植生も豊かになる。
 「摘み草の宿」は、やはりこのようなロケーションにあるべきであろう。

【美山荘】
Miyama

 川沿いの道をずっと行くうち、道はいきなり通行止めになった。
 「あれっ?」と思い、周囲を見渡したら、左横に美山荘があった。
 ホっといたしました。

 なにはともあれ、本館へと。
 まずは一声、暑かったですわ、と言うと、仲居さんから「今日の京都は今年一番の暑さだったとニュースで報道していました。たいへんでしたね」と言われた。
 また妙なときに来てしまったようです。

【風呂】
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 なにはともあれ、風呂である。
 美山荘は温泉ではないけれど、渓流沿いに素晴らしい風呂がある。
 日が暮れてしまったため、外は見えなかったけど、それでも雰囲気よろしい素晴らしい風呂であった。

【夕食開始】
Hassunn

 京都駅出発が午後4時だったので、距離からして午後6時くらいには着くかなと思っていたが、途中のあまりの暑さに、到着は午後7時を越えると思った。それで、食事会には東京からの遠方の人もいるため、「適当に始めておいてください」と伝えておいたが、せっかくだからと私が到着するまで待ってくれておいて、それから食事会開始。
 いやはや、どうもすみません。

 まずは八寸から開始。
 この八寸が、宿の周りで取れる食材を用いた、風情あるものであった。
 そして味付けがやや濃いめで、これがビールにとても合うものであり、ビールをぐいぐい飲んで、幸せいっぱいの気分にひたるのであった。


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July 25, 2012

読書:サイコパスを探せ! 狂気をめぐる冒険(著)ジョン・ロンソン

Photo


 テレビドキュメンタリー作家である筆者は、精神病についての取材を行っているときに、ある精神宗教団体の人物より、トニーという哀れな人物を救ってくれとの依頼を受ける。

 トニーという青年は傷害罪を犯して捕まった。彼は留置所に入れられているときに他の犯罪者から「実刑だと7~8年は刑務所に入ることになる。しかし精神病者と診断されれば、精神病院に入ることになる。精神病院は刑務所よりもずっと快適に過ごせるところだ」とアドバイスされた。トニーは頭の良い男であり、以前に観た映画で覚えた精神病者のふりをし、それはうまくいって精神病患者と診断され、精神病院に収容されることに成功した。

 しかし、ここで大誤算が生じてしまった。精神病院は病気を治すところなので、トニーは精神病が治癒したと診断されれば、そのとき退院することが出来る。けれど、トニーは精神病者のうち「サイコパス」と診断されてしまった。
 サイコパスについては、日本でも池田小学校事件という、典型的なサイコパスによる悲惨な事件が起きたため有名になったけど、「良心や思いやりが先天的に欠けており、社会の規範を容易に破り、己の思うがままに犯罪を犯す。そしてその行為を決して後悔や反省しない」という異常人格者がサイコパスであり、社会秩序の破壊者である。

 サイコパスの特徴は、生まれついてそういう人格ということであり、そしてその人格がずっと変わらないということにある。すなわち、精神病患者のうち、サイコパスは決して治らない。
 だからサイコパスという診断がついた時点で、トニーは退院できる可能性がなくなり、じっさいにトニーは12年間も精神病院に入れられたままとなってしまった。
 そういう状況に陥ったので、トニーは精神科医に「じつは自分は精神病ではない」と懸命に主張するのであるが、その主張こそ彼が精神病者そしてサイコパスの証拠となるわけで、彼が退院できる目途は全く立たない。

 もっとも、サイコパスは初めから退院不能の存在とされていたわけではなかった。
 人間社会を脅かすプレデター(捕食者)であるサイコパスについては、その存在が1990年代に定義されてから、アメリカではずいぶんと治療についての研究が為された。
 なかには、麻薬(LSD)を用いた怪しげな治療法もあったのだが、それらの治療法のどれもがそれなりに効果を上げ、治療を受けたサイコパスの多くは自分の犯した罪を認め反省した。それで「サイコパスは適切な治療をすれば治る」との報告もなされた。
 しかし、その「治ったはずのサイコパス」を退院させ、社会に戻すと、彼らの再犯率は80%というとんでもない高い値となった。
 つまり、サイコパスは「治ったふりをする」ことに長けた人種であったのだ。

 結局、サイコパスの治療についての研究は打ち切られ、そしていったん犯罪を犯したサイコパスを刑期が終わったからといって釈放あるいは退院させても、また犯罪を犯すに決まっているので、サイコパスは刑期の長短にかかわらず、ずっと精神病院に閉じ込められることになった。

 バットマンに出て来るアーカム精神病院のごときものがアメリカには実在するわけで、アメリカというのは、ずいぶんと極端なことをする国、とも思えるが、サイコパスによる社会的、人的被害は膨大なものであろうから、政府は国民をサイコパスから守るためにもサイコパスを隔離する施策というのは、妥当とも思える。


 トニー救出の依頼から、筆者はサイコパスに興味を持つようになり、刑務所や精神病院の中にいる以外のサイコパスを探したり、それらしき人にインタビューをしたり、というふうな内容の本である。
 ユーモアに富んだ文章で、面白い記事をいくつも並べる形式で書かれており、読みやすい本であるが、ただし書かれているサイコパスの陰惨さと救いのなさもまた印象的な本である。

 トニーが脱出できたかどうか、その後の運命等については、本書を参照ということで。


 ジョン・ロンソン著 サイコパスを探せ


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July 14, 2012

宮崎の夏は「冷や汁」で @ふじ木

 今年の南九州は梅雨が明けそうで明けそうでなく、蒸し暑い日々がずっと続いている。当然に食欲も減衰する一方になるのだが、それでも夏には夏で美味いものがあるのであり、宮崎市の「ふじ木」に行ってみた。

【造り+椀物】
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 造りはシブダイ、ミズイカ、ウニ、中トロ。
 どれもよい身質のものばかりであるが、このなかではメインはシブダイ。
 南九州限定のような魚であるけど、脂の乗り具合、香りの良さ、歯ごたえ、白身魚として最高級レベルのものである。
 椀物は、鱧に蓴菜。夏の定番であります。

【鮎の塩焼き】
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 鮎も当然夏の定番。
 五ヶ瀬川の天然鮎は、鮎独自の香りに満ちている。
 焼き具合もたいへんよろしい。

【アサヒガニ】
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 アサヒガニは他ではあまり見ないけど、宮崎ではよく使われる食材。
 カニとはいいながら、海老に近い上品な味である。

【冷や汁】
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 宮崎の夏の料理の〆は、やはり「冷や汁」。
 一見、味噌汁のぶっかけご飯のようであるが、それの進化版。
 味噌に鯛の出汁を合わせ、それにゴマやキュウリを乗せて、美味さたっぷり、さらに清涼感たっぷりの、夏の暑い時期でも、どんどん箸が進む、そういう郷土料理である。

 宮崎の夏は、「冷や汁」を食って乗りきりましょう。

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July 13, 2012

映画:スノーホワイト

 誰もが知っているグリム童話「白雪姫」、の実写版。
 そのまま実写にするとたいして面白くもない筋なので、現代風にアレンジされている。

 意地悪い継母は原作よりさらに凶暴性が増し、夫の国王を暗殺して女王となり、圧政を敷く。幼き王姫白雪姫は女王に疎まれ塔のなかに幽閉される。やがて白雪姫は美しく成長するが、白雪姫が自分の地位を脅かす存在になったことを知った女王は彼女を殺すよう命じる。暗殺者の手から強引に逃れた白雪姫は、森に逃れ、そこで新たな勢力をつくりあげ、七人の小人とレジスタンスを率い、女王の城に反撃の戦を開始する。

 従来の「庇護すべき愛らしい存在」であった白雪姫が、敢闘精神に富んだ武闘派として活躍するという、そのへんのミスマッチングが売りのようである。
 SWのレイヤ姫とか、アミダラ姫とか、あるいはナウシカのような、ああいった「強い姫さま」が好きな人には受ける映画ではあると思う。

 ただ、この映画、誰もが指摘するであろう重大な欠陥がある。

 童話「白雪姫」の名場面、女王が魔法の鏡に「鏡よ鏡、世界が一番美しい女性は誰?」と問う場面、これは映画にもあるのであるが、そこで鏡が「今日までは女王様でしたが、明日からは白雪姫です」と答えるシーン。
 ここで全世界の観衆が、「え~、そんな馬鹿な。女王様は白雪姫よりも、ずっとずっときれいですよ」と突っ込みを入れたであろう。
 童話なら美人は美人と書いていればそれで済むが、映画では美人は女優が演じているので、美人と肩書をつけていればそれで済む話ではない。
 そして、ここで演じている女優が問題になる。

【女王:シャーリーズ・セロン】
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【白雪姫:クリステン・スチュワート】
4


 前後左右、縦横斜め、どこから見ても正統派美人であるシャーリーズ・セロンは、「美人である」という理由だけで、存在感たっぷりの女王を演じている。これにベテラン俳優らしい演技力も兼ねているので、さらに存在感が増している。
 それに対してクリステン・スチュワートは、個性派美人というわけではなく、やはり同じ系譜につながる正統派美人である。しかし、その美人度においては、相撲で例えるならセロン女王を大関とすると、さすがに幕下とまでは言わないが、平幕力士のレベルの美人である。ゆえに同じ土俵に立つと、勝負にはならない。

 というわけで、「自分より美しくなった白雪姫の存在のため、自分の魔力が減じて半狂乱になってしまう」女王の苦悩・懊悩が、見ている観衆に全然ピンと来ないため、女王はなにを焦ってジタバタしてるんだい、とどうしても、白けた感じになってしまいます。
 完全にミスキャストでありますな。


 …ただ、もしも自分がこの映画の責任者になったと仮定した場合、では誰を白雪姫に選べばいいのだろうと思うと、確かに難しい。
 白雪姫は原作によれば、「雪のように白い肌、赤い薔薇のような唇、黒壇のように黒い髪を持つ女性」であるが、このタイプの役者からして少ないのに、しかもシャーリーズ・セロンより美しい、横綱級の美人女優って、今の映画界にはいないよなあ。
 まあ昔の役者でいいなら、エリザベス・テイラーなんかが見事にその条件にははまるとは思う。

【エリザベス・テイラー】
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 さすがにエリザベス・テイラーが白雪姫の役なら、鏡がセロン女王に「白雪姫のほうが女王より美しい」と言っても、観衆は充分に納得してくれるであろう。
 ただし、エリザベス・テイラーがそういう役をやったら、その時点で映画がまったく違ったものになるのは明らかで、映画全体として収拾つかなくなるだろうなあ。

 てなことを鏡のシーンから考え続け、どうにも映画そのものに集中できない妙な映画であった。


 白雪姫 公式サイト

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July 09, 2012

鳥取名物の岩牡蠣+徳島の美味い魚を光洋で食す

 昨年鳥取を訪れたときに、観光案内をしてくれた人と地元の寿司店で飲んだ。そのときに私は「鳥取の名物って、ズワイガニと梨くらいかな?」と言ったのだけど、鳥取には他にも名物があるぞ、とばかり今が旬の鳥取産の岩牡蠣を送ってくれるとのmailがあった。

 岩牡蠣はたしかに美味しい食材だが、私は食い方を生食しか知らない。これがマガキだと生食以外にも、焼き牡蠣、蒸牡蠣、土手鍋、グラタン、フライ等々あるわけだが、…とりあえずは、岩牡蠣の料理のレシピなどを光洋で飲んでいるときに店主に聞いてみると、岩牡蠣は処理も料理も大変なので本職に任せてみるのが一番とのことであった。

 というわけで、話の流れのついでに、クール宅急便で届いた岩牡蠣を光洋に持っていくことにした。

【岩牡蠣】
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 鳥取の村中水産という業者が扱っている岩牡蠣。
 けっこう品質の良い岩牡蠣をそろえていることで有名なところのようだ。

【岩牡蠣料理】
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 牡蠣というのは貝殻が険しく、貝柱も太くて、強固に口を閉ざしているので、開けるのも大変なわけだが、本職が専用の道具を用い開けてくれます。

【岩牡蠣 生 その1】
Oyster

【岩牡蠣 生 その2】
3

 岩牡蠣はまずはなんといっても生。
 ちょっとしたアワビサイズの大きな身は、旨みたっぷりで、海の香りに満ちた濃厚な牡蠣の味が広がる。
 この豊かな味こそ、海の魅力をそのまま伝えるごときもの。
 
【岩牡蠣 焼き】
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 次には、蛤焼きの要領で、半生に焼いた岩牡蠣。
 旨みと香りがぐっと凝集され、さらに歯ごたえが増し、これもまた美味し。

 初夏の岩牡蠣、たしかにこれは素晴らしい食材である。
 鳥取は砂丘と梨ばかりが有名ではるが、これはもっと有名になってよいと思う。

 そして本日私が岩牡蠣を持ち込むのを知って、ホール担当の四男氏がわざわざシャブリを用意してくれた。あまりに定番ながら、たいへん牡蠣によく合うのであった。


 さて、光洋には二日続けて来たけど、ネタは昨日と似たようなものかと思ったら、本日は白身魚に良いものが入っていた。
 近頃宮崎県産のものにこだわっている店主であるが、すごく良いものがあると、やはり遠方からでも仕入れてしまうのである。
 本日のすぐれ物は、徳島産の鯛に鱸。
 鳴門海峡の荒潮に揉まれた魚たちは、やはり一味もふた味も違うのである。

【造り:鯛・鱸】
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 見ただけでも美味さが保障できる美しさ。
 白身魚は新鮮なうちは歯ごたえと甘みはあるものの、旨みは熟成させないと出てこない、しかし熟成させると歯ごたえが失われてしまう、という面倒な食材であるが、この白身魚―特に鯛は、歯ごたえも甘みもしっかりあるのに、さらに旨みも充分という理想に近いもの。
 まあ、このレベルのものはそうそう仕入れられるものではないのだろうが、ちょうど良いときに来たものだ。

【鱸の淡々】
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 光洋一行は先日徳島を訪れ、そこで「古今青柳」で名物料理「鯛の淡々」を食べ、それにインスパイアされて出来たメニュー「鱸の淡々」。
 本家の淡々は、酒と昆布であっさり風味に鯛の頭を炊き、そこで極限までに鯛の旨みを引き出すという狂おしい料理であるが、光洋ではそれに辛味や酸味も加え、もう少し賑やかな「淡々」を狙っている感じ。
 本家に比べると、味のまとまりがいまいち悪く、まだ発展途上の料理には思えるが、そのうち立派な看板料理になりそうでもある。

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July 08, 2012

大ウナギ+金目鯛@光洋

 光洋から「期間限定の海の大ウナギ」が入荷したとの知らせが入った。
 大ウナギといえば鹿児島の池田湖のものが有名であるけど、あれってナマズみたいな外見で、身はたるんでいるようであり、あんまり美味そうには思えない。

【オオウナギ(Wikipediaより)】
Oounagi

 とはいえ食ったことがないものを勝手に美味しくないと決めつけるのもなんだと思い、話のネタに食ってみることにするか。
 …しかし、オオウナギって天然記念物じゃなかったっけ。食ってもいいんかいな?とも思いながら、光洋へと。

【鰻@光洋】
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2

 というわけで出て来た鰻であるが、残念ながら(?)オオウナギではなく、「海で獲れた大きい鰻」であった。つまりは普通に食される、ニホンウナギ=Anguilla japonicaである。
 まあ、こっちのほうがオオウナギより美味いに決まっているので、これはこれでいいのだが。
 皮目をパリっと焼き、身にはやんわりと熱の入った鰻は、なかなかに美味。
 北海道産の赤ワインも、鰻の味と煮ツメによく合っている。

 鰻もメインの一つであったが、本日のさらなるメインは金目鯛。

【金目鯛 兜煮】
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 金目鯛はやはり煮漬けが美味。
 とくに頭周辺の、よくしまった身が食感も味もたいへんよろしい。

【金目鯛 鮨】
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 金目鯛には、しかし煮漬け以上に美味になる料理があり、それが光洋のスペリャリティである金目鯛の握り。
 金目鯛を松前漬けにして、皮目を炙り、それを赤酢の利いたシャリで握った鮨は、たいへん完成度が高く、光洋の自慢の逸品。
 これにシェリー風のワインを合わせると、見事なマリアージュであり、金目鯛の鮨の美味をいっそう味あうことができる。

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自転車:広域農道 門川→日向→都農

 延岡から門川、日向、都農を経て、川南、西都へと至る広域農道(日豊グリーンライン+尾鈴サンロード)のうち門川~都農間を走ってみた。
 この農道は宮崎県海岸沿いを走る国道10号線のバイパス的役割があるけど、農道というだけあって、主に山のなかを走っているので、カーブやアップダウンが多く、車の走行量は少ない。そのぶん自転車は走りやすく、また変化にも富んでいるため、走っていて楽しいルートでもある。

【門川町】
1

 延岡からは県道226号線と一体化している日豊グリーンラインが、門川町で五十鈴川を越える橋のところで、専用の広域農道となる。

【大池トンネル】
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 走るうち軽い登りとなり、その登りが大池トンネルでいったん終了。
 このトンネルを越えたところに、大池という小さな池がある。

【永田交差点】
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 並走する東九州道を眺めながら、小さなアップダウンを繰り返し走るうちに、日向市に入り、国道327号線との交差点が見えて来る。
 農道はここを真っ直ぐ走る。

【休憩所】
4

 永田交差点からはけっこうな高さを登る坂が始まる。
 登りつめる手前のところに休憩所があり、ここからは日向灘を眺めることができる。

【耳川】
5

 休憩所からの下りはいったん耳川で底となる。
 耳川は椎葉から流れている川である。

【石並川の橋】
6

 耳川からはまた登って行き、そして下って、下った底は石並川となる。
 ここで農道は90度向きを変えることになる。

【広域農道】
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 石並川からはまた登りとなる。この農道はこういう感じで山を登っては、川まで下り、そしてまた登るという感じになる。
 道は全体的に曲がりくねっているが、たまにまっすぐな道があり、一気に道の視界が広がるのがうれしかったりする。

【都農ワイナリーへ】
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 石並川からの登りはいったんは都農ワイナリーへの曲がり道までで終わる。
 このまま農道を行けば、西都まで行けるが、本日はここで終了とした。

【都農ワイナリー】
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 都農町はブドウの産地であり、ワインも自前で醸造している。
 都農町は、高温多湿であり、あまりブドウの産地には適していないのだが、いろいろと工夫を努力を重ね、今では質のよいワインを産する地として有名となっている。

【都農町】
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 都農ワイナリーは高台にあるので、眺めもよい。
 こじんまりした都農の田園調風景と、それに日向灘を眺めることができる。



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July 06, 2012

初夏の鮎

 宮崎県北の初夏は、なんといっても鮎である。
 それで、由貴亭@延岡市に鮎を食べに行った。

【おとり鮎 (そのまま食うのも可)】
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 今年は例年になく雨の量が多く、川が濁っていて鮎が不漁気味だそうだけど、それでもきちんと数を集めるのが店主の腕の見せ所である。

【鮎塩焼き】
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 鮎の一番美味しい食べ方は塩焼きだと思う。
 上手に焼かれた鮎は、美しい黄金色に輝く。この美しさを愛でつつ、パリっと焼かれた皮を破り、内臓をつつけば、鮎独自の藻の香りが立ち上る。ほこほこに焼けた身も鮎の味がとても豊かだ。
 今年も初夏を迎え、鮎を食べられる喜びにひたるなり。

 この店では、店主自らが釣ってきた天然鮎が出るわけだが、仕入れ、仕込み、調理まで行っている身として、鮎に対しての思い入れもあるみたいで、それで、目の前にはこういう色紙が張ってあった。

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 「身は焼かれてもあなたの喜ぶ顔がみたい」とのこと。
 釣られ、食われる立場の鮎が本当にそう思っているとはとても思えぬが、それでも、そう思って食うのも鮎に対する礼儀ではあるのだろうなあ、とも思いました。

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July 01, 2012

梅雨のなかの走行会

 定例の田中サイクル走行会。
 これからは暑くなる一方なので、本格的に暑くなる前の走行会である。
 7月とはいえまだ梅雨なので、雨が心配であるが、朝は一応晴れていた。
 しかし天気図を見ると、雨が降るのは必然と思え、ロードバイクで参加する気にはならず、(あとで丁寧に洗車しないといけないので、それが面倒)、クロスバイクにて出発。当然、雨具も用意した。

【五十鈴小前】
1

 前半は好天である。
 好天ではあるはいいけど、予想していた以上に暑い、暑い。さらに蒸し暑い。
 平地を進んでいるのに、山道を登ったなみに体力を消耗してしまう。

【五十鈴川沿い休憩所】
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 国道388号線を五十鈴川に沿って走っているうち、激しい雨が降ってきた。
 私は木陰で雨宿りしていたが、みな雨をものともせず進んでいくので、合羽を着て、最後尾を走ることにした。
 そして、一行は川沿いの休憩所にてストップ。ここで雨は小降りとなった。

【五十鈴川沿い道路】
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 雨はしとしと降っているが、おかげで涼しくなり、相当に走りやすくなった。
 川にはうっすらと靄がかかり、いい風景である。

【黒木トンネル】
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 黒木の交差点で向きを変え、北方への坂を登って行く。
 黒木トンネルあたりでピークに近づく。
 写真に写っている車は、田中サイクルのサポートカーである。

【雨降り中】
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 いったん小降りになった雨はまた激しくなったが、それでも元気に自転車隊は走行。
 雨のなか写真を撮ったが、あんまり雨は写っていないなあ。

【サポートカーの出番】
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 参加人数が多いと、アクシデントもそれなりの数があり、パンクが3件発生。
 そこは本職がさっさと修理してくれる。

 アクシデントはパンク程度であり、昼食休憩後は大瀬川に沿って走って、各々都合のよいところでいったん解散。


【ホテルメリージュ屋上】
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 しっかり走って汗をひたすらかいたのちは、ビアガーデンで飲み会である。
 よく走ったあとは、よく飲み、よく食べるのが、正しいサイクリングの楽しみ方だ。
 本日は、延岡の夜景を眺めながら、飲み放題、食い放題プランで、歓談の夜が更けるのであった。



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