徳島編(4) 神山温泉→梨の峠→鳴門市+古今青柳 72.0km
温泉ホテルゆえ、朝からしっかりと温泉に入ったのち朝食。
温泉大浴場はそこそこにぎわっているホテルであるけど、朝の食堂をみるかぎり、客は少なく、二組のみ。
観光シーズンではないからなんでしょうね。
神山温泉のホテルの裏山は「創造の森」と名付けられ、現代アートのオブジェが色々と展示されている。
朝、あまりに寒いので、日が高くなって少しでも暖かくなってから出発しようと思い、しばし散策することにする。
下の写真は創造の森に至る田圃道だが、霜が降りて、地面はカチカチに凍っている。
創造の森-というか雑木林のなかに、写真に示すような「アート」が置かれている。どこがアートなんだい?という突っ込みは、やはり入れたくなります。
まあ、分かる人には分かるんでしょうね。
いつまでたっても暖かくなる気配はないが、だらだら居続けても仕方ないので、出発することにする。
さて、本日の予定は鳴門市である。
徳島県には有名な和食店が二つあり、そのうちの一軒「壺中庵」は昨日訪れたので、本日は鳴門の「古今青柳」を予約した。有名度でいえば「古今青柳」のほうがはるかに高く、全国的にも有名な店である。ただ、あんまりいい噂もきかないのは事実であり、それはそれで行ってのお楽しみということで。
「古今青柳」で食うからには、宿は「ホテルリッジ」が便利なので予約しようとしたら、オンラインでは満室になっていた。客室が10しかないホテルとはいえ、平日に満室か~と感心して、他のホテルを予約した。
…ちなみにあとで知ったのだが、こういうリゾート系のホテルは、食事の用意の関係上、満室でなくとも前日の午後くらいにはオンラインの予約を締め切ることが多いのである。だからオンラインで満室でも直接電話すると空いていることがあるので、簡単に諦めてはいけない。このあと訪れた沖縄・奄美ではこのパターンばかりであった。以上、私が今回の旅で知った豆知識。
これに対して、シティホテルやビジネスホテルでは、オンラインで満室の時は、ほぼ間違いなく満室である。
本日は2つ峠を越えて、瀬戸内海側の東かがわ市まで出て、それから鳴門市に出る予定とした。
そして最初の峠が「梨の峠」。
しかし、山間部を走るうち雨が降ってきて、止む気配もなく、強くなる一方である。それで、梨の木峠を越えたところで予定を変更して、国道192号線を走り、徳島市経由で鳴門市に向かうことにした。
この手の一般道は走っていて面白くはないが、雨のなかの峠越えはもっと面白くないので仕方ない。
徳島市方面に出て、それから四国一の川吉野川を渡る。
吉野川のはるか上流から河口付近まで自転車で走ってきたわけだが、広くて、長くて、そして変化に富んだ川である。
治水、たいへんだろうなあ。
徳島市から北上し、突き当たったところが鳴門大橋。
一週ほど前に淡路島側からこの橋を眺めたが、今回は四国側から眺めてみた。
この橋、絶対に四国側からのほうが良い。
なにしろこちらのほうが潮の流れが激しく、そして時間によっては鳴門名物の渦潮を見ることが出来る。
今も丁度橋の真下で激しい海流が起き、渦がいくつも巻き、遊覧船が渦の上で遊んでいる。
このあと近くの記念館に寄ったら、意外と見ごたえある施設で、鳴門大橋の建設の過程や、うず潮の出来る理由などを、様々な模型や写真、そして立体映像などを使って説明しており、全て観るのに相当に時間がかかってしまった。
夕食は、予定通りに古今青柳。
昨夜の壷中庵と同様に、部屋は料亭の雰囲気である。
しかもこの部屋は瀬戸内海と鳴門大橋に面しているので、本来なら素晴らしい風景も楽しめるはずである。
しかし今は冬なので、6時開始の時点で、外は真っ暗な闇に沈んでおり、風景もへったくれもなし。残念。
古今青柳は元々は徳島市にあったのだが、そこから何故この辺鄙な地に移転したかといえば、すぐ直下に「鳴門鯛」のあがる漁港があり、毎朝そこでいい鯛を直ちに仕入れることができ、仕入れ仕込みに大変便利だからだそうだ。
なお、瀬戸内海のこの界隈は「明石鯛」が有名であるけど、明石海峡よりも鳴門海峡のほうが潮の流れが早いので、「鳴門鯛」の方が身が引き締まっており、美味だそうだ。
たしかに、この鯛の造りは美味い。鮮度といい、味といい、一流のものだ。
ただし私は昨日、極上といってよい鯛の造りを壺中庵で食っていたため、感激までには至らなかった。
古今青柳の技術の冴えを知らせてくれる、文箱八寸。
小さな、細工菓子のような、色美しい数々の料理が文箱にぎっしりと並べられている。
箸をつけるのが勿体なくなる、美術工芸のごときもの。
これ、酒の肴としても最強に近きものであり、これだけでも相当に飲んでしまった。
古今青柳の看板料理、「鯛の淡々」。
鳴門鯛のうち最も美味しいとされる2kgくらいのサイズの鯛の頭を使ったもので、通常の兜煮のように甘辛く煮つけるのでなく、酒と塩、それに昆布出汁で煮たものである。あっさり目の汁に、鯛の旨みが溶けだし、それにより旨くなった汁がさらに鯛の旨みを高める。
単純にして複雑、薄いようで濃厚、いくつも要素が絡み合い、独自の高みに達している、古今青柳でしか味わえぬ料理。
これは素晴らしい。まさにノックダウン級の料理である。
これを食べるためだけでも、徳島鳴門の古今青柳に来る価値はある、そういうものであった。
その他、椀もの、焼きもの、揚げもの等々は、それなりに美味いものではあったが、文箱八寸と鯛の淡々のインパクトが強すぎ、あんまり印象に残っていない。
さて、古今青柳はサービスが丁寧であり、一人で食事している私に、貫禄あるサーブの男性が付きっきりで料理の説明を丁寧にしてくれた。おかげで鳴門の素材と調理法については詳しくはなった。ただ、カウンター割烹ではともかく、料亭では初めて経験する珍しいパターン。
ついでにその人に「一人で来る客は多いですか?」と聞いてみた。すると「2~3ヶ月に一回ほど、そういう人が来ます」とのことであった。ようするに、けっこう稀なことらしい。
もしかしたら、私はフードライターみたいなものに間違われていたかもしれない。
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