石川編(6) 金沢市
天気予報では今日は荒れるとのことだったが、外を見ると、台風なみの暴風雨である。しかも雷まで鳴っている。こりゃ、どこにも行けんわ。
ちなみにこの暴風雨は金沢の冬の風物詩であり、別名「ブリ起こし」といって、この風が吹くことによって日本海の魚が富山湾に入ってきて、豊潤なる魚のシーズンが始まるそうだ。ある意味金沢にとっての「恵みの風」なんだけど、九州に人間にはきついです。
ホテルで時間をつぶしたのちに、夕食の「割烹檜」へとタクシーで行った。
金沢市は和食の名店がずらりと揃っているところであり、「つる幸」「浅田屋」「銭屋」「金城楼」…といったところがまずは有名どころであるが、「割烹檜」は「知る人ぞ知る、知らない人は知らない」という店で、知る人にとっては金沢一と評されるほどの店だそうだ。
その「割烹檜」、ここもまた郊外の辺鄙なところにある。
人家まばらな山の中腹に、いきなり旧家の豪邸が出現して、それが割烹檜である。なんでもドーベルマン好きの店主が、ドーベルマンを飼うために人が住んでいないところに家を建てた(というか移築して持ってきた)のであり、昔はもっと周りに家がなかったそうだ。
まあそういうわけで知る人しか知らないといった感じの店なわけで、この広い店に客は私一人であった。
料理は、
・香箱ガニ
・鯛の白子椀
・造り(タコ、大トロ、松葉ガニ)
・ズワイガニ焼き
・芝茸と里芋の椀もの
・トラフグの鍋
・稲庭ウドン
40年以上金沢で店を営んでいる店主は金沢で入る最良の素材を供することをずっとやっているのだが、高級素材が、けっこうな量で、どーんどーんと出て来る、押しの強い料理であり、迫力ありますね。
加賀料理は、もっと繊細なものかと思っていたが、豪放磊落な料理でありました。
作務衣に高下駄の店主は、快人であり怪人であり、話題は豊富で、その人生もけっこうハチャメチャであり、いやはや面白かったです。お弟子さんもいいコンビでありました。
店主は秋田の酒蔵の息子であり、ビールのあとに酒を頼んだら、「この酒ならタダです」と言って「割烹檜」という店の名前をつけた酒を勧めるので、その酒を瓶(500cc×2)飲んだわけだが、ほんとに酒代タダであった。商売っけあるんかいな。
【芝茸椀】
写真は芝茸の椀。
店主が裏山の自分しか知らない場所で採って来た茸を使っての料理。
この茸自体の味もたいへんいいけど、それを支える鰹出汁が相まって、生きいきとした、この店ならではの椀料理になっています。
料理を終わったのちは、お弟子さんに案内されて、店の奥や二階を見物。
東北の豪農の旧家を移築した建物ゆえ、まずは広さに感心し、そして流れた歳月にもまた感慨を受ける。
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