読書:民主党政権はなぜ愚かなのか(著)辻貴之
民主党が政権をとって2年以上がたつわけであるが、この間政治は目を覆わんばかりの迷走を続け、やることなすこと全てトンチンカンであり、民主党がなにをやっても支持率を下げるだけの結果に終わり、既に代表は3人目となり、現内閣はもはや残務整理係のごときありさまになっている。
普通選挙が始まってからの日本の政党政治の歴史のなかで、ここまで無能な政権はマレであり、日本国民はそのような政権を選択してしまった己の不覚さと愚昧さを嘆くのみ、といったところなのだが、本書では、嘆くだけではどうにもならないだろう、民主党の愚かさがいかなる原因によるものかそれを究明しないと、のちに生かせないと前向きに考える。
その分析、「民主党政権はなぜ愚かなのか」が、そのまま題名となっているのが本書である。
私は、民主党政権の愚かさとは、すなわち国民の愚かさなのであり、国民は結局は自分のレベルにあった政治しか選べないというだけの話だと思っていたけど、著者は違う角度から民主党の愚かさに切りこんでいる。
それによれば、「民主党の愚かさ」には、きちんとした理由があり、民主党は政党誕生の時から「愚かさ」が、その存在理由の根本であった。だから民主党は愚かなのが当たり前で、今現在の国民が呆れかえっている民主党の愚かさは、あまりに当然にして自明のことであり、呆れかえるほうがおかしいと。
かなり無茶な主張のように思えるが、しかし著者は精神病理学的アプローチも用いて、けっこう説得力をもって話を進めている。
著者の分析では、世の中には、社会が成り立っている秩序やシステムを、ぶち壊してしかたない衝動を持っている、「破壊衝動の持ち主」が少ないながらも、確実に存在している。そして、民主党の設立時のメンバーは、客観的にみると、その破壊衝動の持ち主、すなわち精神的な患者ばかりである。
破壊衝動はどうして生じるかといえば、愛情を親から与えられなかった少年時代を過ごした者たちに生じやすく、著者は、鳩山氏、小沢氏がまさにその典型像であることを詳しく説明している。
そのような破壊衝動を持った者たちが政権の中枢になれば、やる政策は決まっている。この社会の破壊である。
…たしかに、民主党の行う政治は、迷走であり、逃走であり、逆行であったり、いったい何をやろうしているかまったく分からないところがあるが、しかし、「日本社会を破壊する」ことに関しては一貫しており、著者の主張は、その点でよく納得いくものだ。
話を現実に戻せば、破壊が好きな民主党の第一世代が退却した現在、さすがに今の民主党内閣は「破壊衝動者の巣窟」ではないとは思うが、さて破壊されまくった日本社会を、野田内閣はいかにして立て直していくのであろうか?
その方法については本書でも少し触れられてはいるが、道険しき、といったところである。
民主党政権はなぜ愚かなのか(著)辻貴之
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