« 阿蘇望@2011年(1) | Main | 小松左京氏死去の報を聞いて »

July 24, 2011

阿蘇望@2011年(2)

 昼食を終えて、阿蘇望午後の部である2つの峠越えへ出発である。
 阿蘇望の核心部―もっとも困難であり、それを越えればサイクリングの完遂が予期できる部―は、地蔵峠越えという評判であり、私もじっさいに走る前はそう思っていたのだが、午前中に県道28号線からアスペクタへの150mの坂を登ったとき、ここが真の核心部と思い知った。
 そのため地蔵峠越えはゆっくり進み余力を残すようなサイクリングをしようかと思っていたのだが、…この坂はそのような甘い考えは許してくれない。

 午後になって暑さが増してくるなか、地蔵峠への道は10%くらいの勾配の坂が延々と続いているので、体力とともに気力も削られる。知らぬまにギアは使いきっているので、最後のギアで根性で登り続けねばならないと思うと、さらにきつくなる。

【エイドステーション 地蔵峠駐車場】
1

 坂の途中にある、九州自然歩道の地蔵峠駐車場でのエイドステーション。
 ここで冷たい水分と塩分を十分に補給し、ついでにバナナでカロリー補給。
 写真でみるとこの坂はたいした坂でないと思うだろうけど、なんのなんの、10%くらいはある坂であり、スタートしようとした人が最初のペダルの踏み込みができなくて転んだり、ペダルを回せない女性サイクリストをサポートスタッフが押して出発させていたりした。
 そういうスタートはあんまり見ない光景ではあり、地蔵峠、おそるべしというところである。

【地蔵峠 坂】
Slope

 先のエイドステーションの坂を横から見た図。この方向からみると勾配も分かりやすいか。

 それにしても暑い。
 そして選手は暑いのだが、この暑い中ずっとエイドステーションでサポートしてくれたスタッフたち、あるいは交通整理をしてくれたスタッフたちには本当に頭が下がる思いである。
 この九州屈指の観光地で、このような大規模なサイクルイベントを実行できた熊本県サイクリング協会とそれを支えたボランティアスタッフに、ただただ感謝。

【なんごう橋(地蔵峠)】
2

 先のエイドステーションで水分塩分エネルギーを補給したのちも、あと2kmの登りがある。あのカーブを曲がれば峠、あのカーブを曲がれば峠、とか思いながらもいくつものカーブに裏切られるうち、なんとか道が平坦になり、地蔵峠が見えて来た。
 パーキングエリアに駐車している田中サイクルのサポートカーの応援部隊の黄色い歓声を受けながら、なんとか地蔵峠に到着。
 なんごう橋という名前のこの橋は、その名前の通り、阿蘇の南郷谷が一望のもとに見渡せる絶好のビュースポットである。
 ちなみに本物の地蔵峠は阿蘇外輪山の稜線上にあり、歩いてしか行けないところにあるので、阿蘇望で言うところの地蔵峠は、厳密には「いわゆる地蔵峠」である。

 峠を過ぎてからは、西原町へ向けてずっと下りになる。
 下り道になってスピードが上がると、自転車の前輪がガタガタと激しく揺れ出した。見た目には路面はそれほどの悪路に思えなかったので、これはパンク?と思って停車してタイヤを調べたが、空気圧は正常である。
 この道は見た目以上に路面の状態が悪く、けっきょくは下り坂はずっと前輪が揺れ続け、気持ちの悪いサイクリングとなった。

【県道28号線へ】
3

 阿蘇外輪山を越えて、西原町に下り、これからまた峠を越えて阿蘇のなかに戻ることになる。信号待ちしている人たちと、暑いですねえ、きついですねえとか言葉を交わしながら、青信号とともにスタート。
 ひさしぶりに車の多く通る道路を走りながら坂を登っていくと、最後のエイドステーション「萌の里」に着いた。時刻は午後3時15分。ということは、あと残り20kmを時速11km以内で走れば、時間内にゴールできることになる。よほどのアクシデントがない限り、その数字は余裕の数字だ。こりゃアスペクタへの登り道で心が折れたとして、そこから自転車押して歩いても、充分時間内にゴールだな、とか不埒なことも考えた。

【俵山峠へ】
4

 国道28号線からバイパスを外れて、俵山越えの旧道に入る。
 緑あふれる山々のなか、巨大な風車がいくつも回る風光明媚なところなのであるが、さすがに今回は風景を愛でる余裕もない。
 俵山峠越えの道は、地蔵峠に比べ勾配が緩めなので、あれより楽なはずだが、疲労が蓄積しているため、疲労度は似たようなものだった。

【俵山峠へ2】
5

 だらだらした坂を登っていくうち、下腿の筋肉が硬くなってきて、痙攣を起こしそうな雰囲気になったので、いったん停車して、水分と塩分を補給し、足をほぐす。ここまできて無理をすることはない。
 あと50mくらい先の駐車スペースにいる地元の人が、登り行くサイクリストたちに、「あと少しで峠で~す」と応援の声をかけている。
 …しかし、この「少し」が遠いんだよなあ。

【俵山峠】
6

 そんなに勾配はないはずだが、やたらに勾配を感じる坂を越えて、ようやく俵山峠の駐車場チェックポイントへと到着。よれよれでございます。
 先行していた田中サイクルのサポートカーから、全身に水をかけてもらい身体を冷やす。ついでに冷え冷えのおしぼりで顔をぬぐうと、元気が回復してきた。

 俵山峠は、西側から見る阿蘇五岳の景色を楽しめる。ここからの阿蘇内輪山の眺めは、大観望からの「寝観音」に匹敵する絶景だと思う。

 俵山峠を越えたころには、Aコース参加者600名も相当にばらけているので、他に人を見ることなき状態で、一人いっしんに下っていく。
 そして県道28号線に合流してもしばらくはずっと下りが続き、やがて阿蘇盆地のフラットな道になる。役場前の交差点で右折し、さてこれからが最後の関門、アスペクタへの登り道である。

【アスペクタへの登り道】
7

 前半の2つの峠を越えて昼食会場のアスペクタへ戻るとき、この登り道が疲労の残った足には、非常にハードな道であることを知った。そして午後、さらに2つの峠を越えて疲労がより蓄積した足にとって、3kmで150mを登るこの道は、やはり予想通りのハードルートであった。
 「4つの峠越え」が阿蘇望のウリであるが、私的には阿蘇望は「4+0.5の峠越え」であったことよ。
 それでも懸命にペダルを漕いでいくうち、確実にゴールは近づいてくる。
 頑張った人にしか得られない、きついなかに満ちて来る、あの高揚感を感じながら会場へと入っていった。

【ゴールへ】
8

 阿蘇望、最後まで楽はさせてくれない。
 阿蘇望のゴールの最終路は、コース一番の激坂である。ここを最後の頑張りとばかり、ペダルを回し、ようやくゴール。
 到着時刻は午後4時40分。無事に制限時間内に完走できました。121.7kmの距離を7時間15分かけて走破。実走行時間は6時間9分であり、平均時速は19.8km。
 自分としては満足いく数字である。

【延岡チーム ゴール】
Goal

 緑と白の横縞ユニフォームの延岡チームは私のあとを数人走っていたが、制限時間以内に順次ゴール。
 出場者10名のうち、9名は完走。残る一人も峠は4つ越えることができ、実質上はみな完走である。今回の阿蘇望は例年よりも条件が厳しかったらしく、完走率は58%という低い値だったが、延岡チーム、県北は坂がおおいせいか、みんな鍛えが入っているなあ。

【回収車】
Car

 ゴールする人を眺めているうち、回収車も登場。
 リタイヤした人と自転車を回収する回収車って、小型バスみたいなものばかり見ていたが、ここではトラックである。なんか斬新な印象。
 車種はともかくとして、これに乗る羽目にならなくてよかったなり。


 午後5時を過ぎて、延岡チームは撤収。
 車での帰り道、高千穂あたりから雲行きがあやしくなり、雷とともに土砂降りの豪雨となった。
 時間が少しばかりずれていたら、この豪雨は阿蘇望直撃だったわけであり、当然サイクリングは途中中止となっていたわけで、これは幸運であった。

【打ち上げ】
9

 延岡チーム、参加者と応援隊は延岡に戻って、田中サイクルにて打ち上げの宴会である。
 暑くとも、つらくとも、苦しくとも、それをやり遂げれば確実に喜びが湧くというものがあり、阿蘇望はまさにそれであった。持てる力を出し切ったという満足感と充実感は、何にもまして得難いものだ。
 もっとも、では来年も出るかといえば、それは微妙なのだが。

【宴のあと】
10

 やがて宴は終わり、コンロの火も消されていく。
 こうして、平成23年私の夏は終わった。
 あの暑い中、自転車を漕ぎ、坂を登っていた日々は、既に過去のものとなり、…さて次はなにをしようかな。


 …………………………………

 阿蘇望2011(1)

 …………………………………

|

« 阿蘇望@2011年(1) | Main | 小松左京氏死去の報を聞いて »

自転車」カテゴリの記事

Comments

阿蘇望に出るサイクリストはハンパない
でっす 特にAコースは・・・・

湯平さん、時間内 完走 おめでとうございます
それと差し入れありがとうございました。

良かったですね~ 阿蘇望!
何か 他の大会と感動が違います。
また出たいです。
今度はAコースで?????

Posted by: キヨシ | July 26, 2011 07:01 PM

阿蘇望、こういう無茶なものに敢えて参加する人は、それなりに鍛えた人ばかりだったでしょうから、みな登りが強かったですね。
きつくてつらくて大変だったですけど、完走の喜びは、だからこそひとしおのものがありました。
私ら40過ぎの者は体力はどんどん落ちていく一方ですので、キヨシさんも来年参加をお勧めいたします。
完走すればもちろんのこと、リタイヤしても、必ずいい思い出になると思います。

Posted by: 湯平 | July 26, 2011 07:36 PM

本当にお疲れ様でした!!

湯平さんの記事を読ませてもらって、来年は自分も出てみようかなって思いました。
(私と一緒で、初めて出てみようかなって思っているサイクリストにとっては、湯平さんの記事は凄く丁寧で、分かりやすく、走りに反映できる文章だと思います^^)


次の目標が決まるまでは、ゆっくり?してくださいね。

Posted by: YOGEN | July 26, 2011 09:27 PM

これだけの雄大な景色のなかを、高度を稼ぎながら走れるイベントはそうはないでしょう。
ぜひとも一度参加する価値ありです。

私のブログがその一助になっていただければ、幸いです。

Posted by: 湯平 | July 26, 2011 10:08 PM

私のブログと大いに違って、分かり易く表現豊かな文章で
この記事を見て参加してみたいと思うサイクリストが
増えることでしょう(笑)

それにしても暑さは容赦なく痛めつけるもんですねえ。
今でも脹ら脛が痛いです(泣)

Posted by: itijouji1969 | July 27, 2011 01:55 PM

阿蘇望は九州でも有数のサイクルイベントなので、検索すると、サイクリストのブログがたくさんヒットします。
ヒルクライムでは途中でなかなか足をおろすわけにはいかず、写真が乏しくなりがちですが、それらのブログでは、私が撮りたかった風景がしっかりと載っており、楽しくなります。
私としては、阿蘇登山道で応援していた悪魔おじさんの写真を撮れなかったのが残念です。
数多い、楽しき阿蘇望のブログのなかで、私のブログも阿蘇望の魅力を伝えるものの一つになれば幸いであります。

酷暑のなかのヒルクライム。私はなんとか足が攣らずに完走できたのは、事前のトレーニングのおかげだと思っています。

itijouji1969さんが、朝練の積み重ねで国東を制したように、私も盛夏のなかのヒルクライムトレーニングで、阿蘇望を制した、と思っています。

Posted by: 湯平 | July 28, 2011 12:05 AM

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 阿蘇望@2011年(2):

« 阿蘇望@2011年(1) | Main | 小松左京氏死去の報を聞いて »