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June 26, 2011

読書:ジェノサイド (著)高野和明

 内乱続くコンゴ共和国のジャングルに暮らすピグミー族の一村落で、人類を破滅に至らせかねない強毒性のウイルスが蔓延しているという情報がアメリカに入った。 
 それに対応するため、政府は各々特殊技能を持つ腕利きの傭兵達を集めて強力なチームが結成し、ミッションが行われることになった。チームには「感染したピグミー族を全員抹殺すると同時に、彼らのなかにいる一匹の『奇怪な生き物』も始末すること」という、奇妙な命令が下される。

 傭兵チームはその奇妙な命令に不審感を抱きながらも、ゲリラの跋扈するジャングルを進み、やがてピグミーの村に到達し、『奇怪な生き物』に遭遇する。
 『奇怪な生き物』の正体は、すぐに明らかになる。それはピグミー一族のなかに生まれた突然変異の人類、つまり新人類であった。
 このミッションは、現人類を遥かに凌駕する知能を持つ、超常的存在を知ったアメリカが、それがまだアフリカという未開の地にいるうちに始末をしてしまおうと決意して行ったものだったのである。

 傭兵達はこの「汚い仕事」が終わったのち、彼らもアメリカから始末されることを知り、高い知能を持つ『新人類』の力を借りて、ゲリラとアメリカを敵に回して、コンゴから脱出を図ることになる。
 そしてその脱出行を続けるうち、世界規模で異様な現象が生じるようになる。それにつれ、このミッションを本当に操っているのは、アメリカでもなく、また彼らが連れている『新人類』でもなく、もっと高次の存在が介在していることが明らかになってくる。
 このとき表題のジェノサイドの真の意味がはじめて分かって来る。ジェノサイド(民族虐殺)はピグミー一族に対してのものだったと思っていたのに、じつはジェノサイトのターゲットは、人類そのものであったことが。

 アメリカ、コンゴ、日本、ヨーロッパと、舞台はめまぐるしく動き、全ての伏線がうまく収拾されたところで、物語はいったん幕を閉じることになる。よく練られた筋である。
 そして物語は全編を通して、迫力と驚きに満ち、ほぼ600ページを一挙に読ませる力を持っている。

 人類の進化を題材にしたSFは古来よりたくさん書かれており、名作も多いが、このジェノサイドはその名作群に十分に肩を並べられる作品であろう。

 著者の高野和明氏は寡作な小説家であるが、どの本もレベルが高い。そして、これだけのレベルを保つには、今の刊行ペースが目いっぱいなんだろうな。もっと著者の本を読みたいけれど、そういう事情なのだろうで、これは仕方ない。


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 ジェノサイド (著)高野和明

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