無量塔の朝食
旅館の朝食とは面白いものである。
朝食のおかずは、イコール酒の肴であり、あまりに気合を入れすぎたものを出せば、客はそれに感応して朝から酒を飲み、さらに飲んで、そこで一日が終了してしまう。
…それじゃあんまりなので、力を抜いた料理を出せば、まあ、普通の朝食になりがちだ。
私の経験した限り、日本の旅館で一番美味い朝食を出すのは、長崎雲仙の「半水盧」であり、ただしここは車で来たので、そこで酒を我慢するのに苦労した記憶がある。そういうわけで、旅館としては、「美味いけど酒は飲みたくなるような朝食」を供することに、ずいぶんと苦労しているのでは、とか思ってしまう。
ただし旅館としては、これを避けるには、和食でなく洋食を出せば、少なくとも客は日本酒を朝から飲む気にはなれず、そこで全力投球の朝食を出せるとか、の話にもなる。だから名旅館と称される旅館は、朝食に洋食を充実させているんじゃないのかな?
以上は私の勝手な思いなのだが、それはともかくとして由布院においては、旅館の朝食の洋食のレベルはすごく高い。由布院を代表する旅館「亀の井別荘」も「玉の湯」も、その朝洋食は傑出したレベルのものである。
無量塔も以前は朝食に洋食が出ていたのだが、和をベースとした強引な洋食であり、あんまり一般受けするようなものではなかった。
そのうち無量塔では、洋食を専門にする料理人が、旅館附属の料理店「アルテジオ・ダイニング」のシェフとなったので、朝食で洋食を希望する人は、そこに行って本格的な洋食を食べるシステムになっていた。ここが無量塔という旅館の、こだわりのすごさではある。
ところが、「アルテジオ・ダイニング」が閉店ということになって、無量塔で朝の洋食が復活となった。
ひさりぶりに経験する無量塔の朝の洋食。
昨日に出た無量塔の夕食の旨さを凝集したような、そういう料理だ。
鍋のなかの野菜と卵と、それにソーセージをパンに詰め込んで、そこで荒い味のワインをぐいぐい飲みながら、食ってみたい。真にそう思う料理である。
まあ、それじゃあ車に乗れなくなるから、コーヒーを飲みながらの朝食になったわけだが、でも、この洋食の濃厚さは、すでに由布院名物といってよい存在になっていると思った。
【参考】「アルテジオ・ダイニング」の料理長は、今は別府の旅館「神和苑」内のイタリア料理店の料理長として腕をふるっています。
Web pageはここ。
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