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May 18, 2011

祖母山ミステリ(その2) 「長ハシゴの謎」

 今年の春登山系webで、祖母山で話題になっていたものがあった。
 それは山頂直下の岩場の長いハシゴであり、天狗岩方向からの縦走路からは、はっきりと見えるものであるが、それは今まで存在しなかったものであった。
 この長ハシゴを見た人の感想が、いろいろとブログ等で語られており、それらは、
 (1)「知らぬ間にあんなところを通って来たんだ。すごい所を通ったもんだ」と感嘆しているもの。
 (2)「妙なところに長いハシゴがあるな。あんなところは通った記憶はないが、いったいあれは何なのだろう」と不思議に思うもの。
 との2つのパターンが大体である。
 そのハシゴ、写真を見れば、正規の登山道とはまったく違うところに掛けられており、普通に祖母山を登山するぶんにはここを通ることはあり得ない。それで、一般的な感想としては(2)が正しいことになる。
 もっともなかには、「変なところにハシゴがあるな、それではそこを通ってみよう」と、わざわざこの長ハシゴのあるところまで行き、それを使った人もいる。
 ネットの普及した時代、いろいろな人が、いろいろな行動をする、それを容易に知ることができ、面白いものである。

 さて、この長ハシゴ、じつは私も実物を見たことがない。
 それでアケボノツツジを見に行くついでに、実際はどうなっているのだろうと調べてみることにした。

【祖母山山頂部】
View

 私が訪れたときはハシゴは倒されており、岩場で横になっていた。
 ネットでの情報によれば、立っているときは、絵で示すような感じで岩に立て掛けられていた。
 このハシゴ、祖母山山頂に続く岩のなかほどまでに掛けられているように見える。じつはそうではない。
 -ここの岩場は岩が同質なので、岩場の立体的構造がどうなっているかが見た目に分かりにくいので、以下に分かりやすく説明する。

 【祖母山山頂部 図説】
Rocks

 この岩場の岩群は、手前はブロッケン岩と名付けられた大きな岩であり、その奥が祖母山山頂から直接続く岩壁となっている。そして、長ハシゴはブロッケン岩に掛けられたものである。だから、このハシゴを登れば、ブロッケン岩の上に出ることができる。

【祖母山山頂部 図説2】
Rock_and_root

【ブロッケン岩を横から見たところ(写真は小屋番さんのものを拝借)】
Sideview

 もう少し詳しい説明をすると、正規の登山道は、このブロッケン岩と山頂の岩場の間にある。そこは鎖場、ハシゴ場の多い、祖母山登山のクライマックスといえる難所である。
 それゆえ、この岩場のところで正規の登山道を通っているなら、この長ハシゴは通ることはおろか、見ることもないわけだ。

【長ハシゴ】
Ladder

 長ハシゴへの取りつくところは分かっているので、縦走路からそこに入り、垂直に近い崖を登っていくと、岩場のバンドに出て、そこにハシゴがあった。
 どこにも固定はしてなく、下に落ちないようにロープで縛っていた。
 これをブロッケン岩に立て掛け、登ってみた。ハシゴに乗ると、さすが1700mを越える垂直の岩場だけあって、すごい高度感である。アケノボツツジの咲く、祖母山の岩場でのこの高度感、…なんか既視感を覚えるなあ、と思ったらすぐ思い出した。

【祖母山山頂直下バットレス登攀】
Sobo_3

 これは6年前、祖母山直下の岩場、バットレスの1ピッチ目の登攀シーンである。
 このときは小屋番さんにビレイ(ロープ確保)してもらいながら登ったのだが、1700mの高さでの登攀だけあって、高度感抜群であった。ついでにアケボノツツジもきれいであった。
 祖母山は山頂周囲に面白い岩場がたくさんあって、整備もよくされているので、九州在住で岩登りが趣味の人なら一度は経験してみたいところである。
 ただし、岩登りをするまで、登攀具をもって1700mを登らないといけないという過酷な条件がネックとなっており、あんまり有名どころにはなっていない。

【ブロッケン岩】
Pins

 その高度感抜群で、あんまり固定のよろしくないハシゴを登り切ると、ブロッケン岩の上に出る。
 ここには通常とは異なる支点が2つ打たれており、どうやら本来は長ハシゴはこのピンに固定されていたらしかった。
 ブロッケン岩の上は普通に歩けるので、ここを南側に行けば、正規の登山道と合流することができる。

 なおブロッケン岩には、支点がいくつも作られており、ここを登ったり下ったりするときは、ハシゴのみに頼らず、その支点を利用したほうが安全でありましょう。

【祖母山直下岩場】
Rock

 祖母山は岩の山であるが、山頂周囲はよく整備されており、しっかりした支点がいくつもある。
 写真はブロッケン岩とは違うが、その近くのバットレスの最上部のところ。ここも支点があるので、きちんと確保していれば先の方まで安全に行ける。
 ちなみにこれは遊んでいる姿ではなく、山頂から登山者たちが捨てたゴミが岩場に引っかかっているのを掃除しているところである。一番右端が小屋番さんである。
 これは定期的に行われていた、祖母山清掃登山のうちの一シーンである。

【長ハシゴの謎を解く】
Root

 さて、この正規登山道から外れた位置にある謎の長ハシゴは、いったい何の意味があるかといえば、もちろん意味はあるので、それは迂回路用なのである。
 祖母山の山頂直下の岩の間の登山道は、冬の間は凍ったり、雪に埋もれたりで、非常に危険なルートと化す。そのため、そこが通れなくなったときのための、もう一つの補助ルートなわけだ。
 私の記憶している限りでは、以前はこの迂回路は赤で示す、ブロッケン岩の基部を巻いていく巻き道であったはず。細いバンドの通過部にはトラバース用にロープも張られていたが、今回確認するとロープは外され、使いにくくなっていた。
 そして新しく青線で示すルートが開発されたみたいである。


 この新ルートは誰がつくり、ハシゴは誰が用意したかといえば、そういう人は一人しか思い当たらないので、山頂を過ぎたのち、九合目小屋に寄ってみて、小屋番さんにハシゴのことを聞いてみた。
 ハシゴはやはり小屋番さんが冬期用に整備したものであった。
 ただし今年の冬はあまりに積雪が多くて条件が厳しかったので、小屋番さんがあの岩場までたどり着けずハシゴを立てることが出来なかった。それで肝心の厳冬期には役には立てなかったとのこと。そしてある程度雪が少なくなってから、ようやく岩場に行けたので、凍結時の緊急用にハシゴを立てておいた。そしてさすがに5月になればもう用はないだろうと、5月3日にハシゴを外して横にしたとのことである。

 …え? 私、立ててしまったんですけど。

 それで、本当は私がまた戻ってハシゴを外しておくべきなんだけど、今日は午後5時から仕事なもんで、さっさと下山する必要があり、それをやってる時間の余裕がない。
 小屋番さんに、ひたすら謝り、あとをよろしく頼んでおいた。
 小屋番さんは「○○さんはいつも大変だからねえ」と笑ってくれたが、…この埋め合わせはいずれします。次は冬期用の燃料か、あるいは非常食を荷揚げするかでもしてみよう。

 というわけでの、最後がまったくしまらなかった祖母山ミステリであった。
 祖母山は謎多く、そして厳しいけれども、また楽しい山なのである。


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 【大事な注意】

 どうもまだ梯子は残っているようです。この梯子は固定されていないし、取りつくまでの道も整備不良です。正規登山道に対して、このルートははるかに危険なので、無雪期は使わないようにしてください。


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 (参考)
 ・祖母山頂上周囲の岩場については、長崎のJimmyさんのページが詳しいです。
 ・祖母山ミステリ(その1)はこちら

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Comments

詳細なレポートありがとうございました。
よくわかりました。

お疲れさまでした。

Posted by: 延チョン | May 18, 2011 09:03 PM

今年は祖母山にはすごい雪が降り、山頂への直下の岩場が雪に埋もれた状態になっていました。山頂へは迂回路はあったのですが、それを知らずに、あの岩溝の正規登山ルートを強行突破する人や、あそこから尾平登山口まで撤退する人がいて、それはかえって危険なことに思えていました。
迂回路自体は登山ガイド本にも載っていません。一応、祖母傾山系の最も詳細な情報が載っている小屋番さんのwebページに、載ってはいます。→(1)http://www1.ocn.ne.jp/~sobokata/obirakara.htm
→(2)http://www1.ocn.ne.jp/~sobokata/veiw1.htm

ただし、リンクが分かりにくく、一般の人には知られていないルートになっております。
今回は、そのルートがどうなっているかの検証も兼ねて訪れました。
小屋番さんともいろいろ相談しましたが、決定的ルートをつくるのは難しいみたいでした。

Posted by: 湯平 | May 18, 2011 11:04 PM

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