読書:十字軍物語(2) 塩野七生(著)
キリスト教国家の一種過激な宗教戦争運動により、イスラエルはキリスト教国家のものになり、そしてパレスチナの地に十字軍国家が建国されたあらましが第1巻であり、第2巻はそれに対するイスラム側の反撃を書いている。
じつのところ9回に及ぶ十字軍遠征は、キリスト教側の戦いに一貫性というものがなく、長期戦略というものが欠落しているので、読んでいて「こいつら、いったいなにやってるんだい」と思ってしまい、あんまり興がのるものでもない。
第2巻はそのてんでバラバラなことをやっているキリスト教側に対して、イスラム側に若き英明な男サラディンが登場する。彼はイスラム諸国をまとめあげて、総力戦を仕掛けて、そしてイスラエルはイスラムの手に戻ることになる。
ようやくにして知恵と戦略を持つヒーローが舞台に出て来るので、これで物語は面白くなってくる…と、思いきや、案外にサラディンに対する著者の書き方は淡々としており、それよりも著者の興味は十字軍国家のほうに、よりそそがれている。
著者は、「十字軍国家はなぜ滅びたのか」よりも、「十字軍国家はなぜ200年も存続できたのか」ということに注意を向けている。
たしかにパレスチナの地に飛び飛びに存在していた十字軍国家は、自前の軍は弱小規模のものしか持たず、イスラム側から攻められたときは、ヨーロッパ国家の軍の遠征による救援を仰ぐのが常であり、しかしそのヨーロッパ軍はあんまり頼りになるものではなかった。
その悪条件のなか、十字軍国家はその弱小の軍だけでも、なんとか200年持ちこたえていた。それこそあの強敵サラディンでさえ、イスラエルは落としたものの、全十字軍国家の征服までは出来なかった。
その十字軍国家の強さの秘密を、著者なりに考察を進めていっており、そしてその解説は説得力あるものであった。すなわち、十字軍国家を存続させていた力は、その地で生きると決意した者たちの、常に背水の陣のごとき精神でいた、意思の力であると。
そして、強大なイスラム国家に取り囲まれた、ヨーロッパからはるか離れた地で、強い使命感と責任感をもって絶望的な戦いを続けていく、病めるイスラエル王と、そして騎士団の姿は、悲愴なまでに美しいものがある。
次の3巻は、十字軍のハイライト、英雄サラディンとその宿敵獅子心王リチャードI世の死闘の物語となるのだろうけど、次回の英雄たちの物語、さて著者はいかに描くのであろうか。
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十字軍物語(2)
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