« 祖母山ミステリ(その2) 「長ハシゴの謎」 | Main | 祖母山写真館 »

May 19, 2011

祖母山山頂直下ハシゴ場降雪時の迂回路について

 昨日の長ハシゴミステリの続編。

 山は秀れた景観や美しい植物などの宝庫のようなところだから、写真撮影の対象も多く、それらを発信するwebページが多くつくられている。
 そして、自分が登ったことのある山の記事を読むのはとりわけ楽しいものであるが、冬の祖母山を題材にしたもので気になることがあった。

 今年の冬は記録的な量の雪が祖母山系に積もったわけだが、当然、祖母山縦走路は難路と化した。特に、頂上直下の岩溝、ハシゴ場と鎖場が連続するところは、ハシゴと鎖ごと登山道が雪に埋もれてしまい、ここから山頂へ進むことが困難を極めることとなった。

 このハード極まる難所に対して、
 (1) 持てる技術の全てを使い、なんとか登り切った人
 (2) 登るのを諦め、適当なところでビバークした人
 (3) 登るのを諦め、元来た道をライトで照らしながら下山した人
 などなどの人がいたことが、webページを読むと分かった。
 その他には、この難所にたどり着く前に縦走路で力尽きて、ヘリコプターで救助された人もいた。今年の冬の祖母山はすごかったのだ。

 ここのハシゴ場は、元々危ないところであり、滑落してしまうと命はないに等しいところであり、過去に幾度も重大な遭難事故が起きている。雪が無くとも、祖母山のmost dangerous zoneなのである。
 ところが、祖母山縦走路での避難小屋は、ここを越え、山頂を越えた九合目小屋しかないわけで、ビバーク道具に不備がある場合、なんとしてでもここを山頂には行かねばならないこともあり得る。

 そういうわけで、実は祖母山山頂近くには、この岩溝を通らずに迂回して山頂に行くルートが作られている。
 私が今年積雪した祖母山に登ったとき、この迂回路を山頂側から観察したが、全く使われた形跡はなかったので、意外と九州の岳人には知られていないようだ。
 (小屋によく集っていた、さんらく会や、やまびこ会の人たちとかは当然知っているのだろうけど)

 今回はそれについての解説。

 本来は私ごときが書くようなものでもないのだろうが、祖母山に関しては最も詳しいガイドのページである、小屋番さんの祖母傾最新情報のこの迂回路の解説部、
 
 (1)http://www1.ocn.ne.jp/~sobokata/obirakara.htm
 (2)http://www1.ocn.ne.jp/~sobokata/veiw1.htm

 そこの部分がリンクの先が複雑になっており、辿りつきにくいのと、またルートについてあっさりと書かれていて、詳細がやや分かりにくい。

 それで、私が長ハシゴを観察しに行ったからには、乗りかかった船なので、解説を行うことにしてみよう。

 (1) 天狗岩方面から

【標高1700m地点】
11700_point

 まずは天狗岩方面から山頂に向かっての縦走路、1700mの標識のある地点。ここを黄色線のごとく普通に下れば、山頂直下のハシゴ場にすぐ着く。しかし、その道が使えなくなった場合は迂回路の登場だ。そのルートは赤線で示す道になる。
 以前はこの入り口に、「冬期専用です」との注意書きをぶら下げたロープが張ってあって分かりやすくはあったのだが、いつのまにかなくなっている。

 ここを杣道に従い登りつめていくと、ブロッケン岩の基部に出る。現在はハシゴが用意されているので、それを使えばブロッケン岩に登ることが出来る。そしてブロッケン岩を歩いていけば、ハシゴ場の続きである正規の登山道に合流することができる。

 以上が天狗岩方面からの迂回路の使用方法。図で示せば、途中までが赤線、それから青線のルート。

【ルート図説】
Root15


 (2) 山頂方面から

 これとは逆に山頂方面からハシゴ場に来て、そこが通行困難と分かった場合は、…この場合は引き返すのがbetterとは思われる。
 先に解説したやり方と逆に、ブロッケン岩まで行ってハシゴを下りればいいようなものだが、ハシゴが常にかかっているというわけではない。下で横になっているハシゴを上から立てるのは不可能なので、その場合はハシゴを使えない。
 そのときはブロッケン岩を巻く方法もあるのだが、一応それを解説。

【ブロッケン岩への道】
Blocken1

 山頂直下、ハシゴ場に下りず真っ直ぐ行けば、赤丸で囲んだブロッケン岩が見える。

【ブロッケン岩基部へ】
Rock23

 山頂からブロッケン岩方向に行き、ブロッケン岩を直接下るのが困難と判断した場合、南方向に下りてから岩を巻く方法がある。
 矢印で示した岩がブロッケン岩の端であり、ここまでは容易に下りられる。

【図説】
Root15_2

 先のルート図を再掲すれば、左の赤丸をつけた岩が、その矢印の岩である。
 ここに着いて、この岩を降りて、細いバンドをトラバースすれば、ブロッケン岩を巻けるわけだが、この岩に少しばかり高さがあり、下りるのがけっこう難しい。以前は補助ロープがあったのだが、いつのまにかそのロープが岩の間に挟まってしまい、使いにくくなっている。ロープなしでも下りられないことはないのだろうが、とても人には勧められない。特に冬期などは使うべきではないだろう。ここはまた整備しなおす必要があるとは思う。

【基部の岩】
Rock3

 写真で示すように、ロープが岩にはまりこんでしまっている。


 ハシゴ場については、山頂側からはここが通れなくとも引き返せばいい話だが、やはり問題は天狗岩方面からになる。
 頂上直下のハシゴ場が通行困難になる条件時って、縦走路だってとんでもない状態になっているのは間違いなく、天狗岩方面からそこまで辿りつける人は、相当な技術を持っている人に限られるとは思う。そういう人たちでさえ、今年の冬は、越えられず、危険な目にあったりした。
 そういう困ったとき、スマートフォンなどを使って、「祖母山、雪、通行不能」とかで検索して、このページがなにかの助けになれば、うれしく思う。

 …もちろん、この迂回路だって、冬期は非常に厳しいルートにはなっているに違いないので、その際の通過はあくまでも自己責任ということで。
 ちなみに、ブロッケン岩は支点が豊富なので、ロープも使いながら行けばより安全に登れるはず。祖母のような岩山の積雪期にロープ・カラビナ等持参しない人もまずいないとは思われるので、ここでそれらの出番となります。

|

« 祖母山ミステリ(その2) 「長ハシゴの謎」 | Main | 祖母山写真館 »

登山」カテゴリの記事

Comments

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 祖母山山頂直下ハシゴ場降雪時の迂回路について:

« 祖母山ミステリ(その2) 「長ハシゴの謎」 | Main | 祖母山写真館 »